医療保険においては、日本人の罹患率も高く治療が長期化しがちな、がん・心筋梗塞・脳卒中などの3大疾病、それらに糖尿病・高血圧性疾患・肝硬変・慢性腎不全を加えたに7大疾病に関する保証や特約を用意しているものが多いです。それでは、それぞれの失敗の治療のためにどの程度の費用かかるかについて、厚生労働省「医療給付実態調査/報告書 令和元年度 」をもとに紹介します。なお、ここで紹介する通院費用は1回あたりの費用であるため、例えば通院治療が複数回にわたる場合はその都度医療費や交通費が別途発生します。
また記事の後半では特約として付加される事がおおい「先進医療」に関する医療費についても紹介します。
3大疾病の治療にかかる医療費
3大疾病とは、日本人の死因のなかでも上位を占める「がん」「心筋梗塞」「脳卒中」の3つの疾病の総称のことです。罹患すると長期入院が必要になることもあるほか、退院後や通院治療の場合も投薬や検査、リハビリなどで治療が長期化しやすい 疾病といえます。
■がん治療にかかる医療費
(単位:円)
入院 | 通院 | |||
費用 | 自己負担額 | 費用 | 自己負担額 | |
胃の悪性新生物<腫瘍> | 650,555 | 195,166 | 40,186 | 12,056 |
結腸の悪性新生物<腫瘍> | 654,049 | 196,215 | 44,364 | 13,309 |
直腸S状結腸移行部及び直腸の悪性新生物<腫瘍> | 753,745 | 226,123 | 61,290 | 18,387 |
肝及び肝内胆管の悪性新生物<腫瘍> | 621,937 | 186,581 | 44,823 | 13,447 |
気管,気管支及び肺の悪性新生物<腫瘍> | 701,623 | 210,487 | 106,745 | 32,023 |
乳房の悪性新生物<腫瘍> | 586,020 | 175,806 | 57,632 | 17,290 |
子宮の悪性新生物<腫瘍> | 641,088 | 192,326 | 30,399 | 9,120 |
悪性リンパ腫 | 970,096 | 291,029 | 66,439 | 19,932 |
白血病 | 1,596,183 | 478,855 | 88,221 | 26,466 |
その他の悪性新生物<腫瘍> | 653,790 | 196,137 | 62,790 | 18,837 |
良性新生物<腫瘍>及びその他の新生物<腫瘍> | 562,691 | 168,807 | 19,537 | 5,861 |
■心筋梗塞の治療にかかる医療費
(単位:円)
入院 | 通院 | |||
費用 | 自己負担額 | 費用 | 自己負担額 | |
虚血性心疾患 ※心筋梗塞・狭心症を含む | 758,059 | 227,418 | 16,906 | 5,072 |
■脳卒中の治療にかかる医療費
(単位:円)
入院 | 通院 | |||
費用 | 自己負担額 | 費用 | 自己負担額 | |
くも膜下出血 | 943,777 | 283,133 | 17,334 | 5,200 |
脳内出血 | 704,376 | 211,313 | 19,468 | 5,840 |
脳梗塞 | 663,597 | 199,079 | 15,239 | 4,572 |
■3大疾病の入院期間
3大疾病は通常の疾病よりも入院期間が長くなる傾向にあります。厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」によると3大疾病の平均在院日数と傷病全体の平均在院日数の比較は以下のとおりです。また若年者が罹患した悪性新生物と全世代の脳血管疾患に関しては長期化しやすい傾向にあります 。
(単位:日数)
傷病全体 | 悪性新生物 | 心疾患 | 脳血管疾患 | |
総数 | 29.3 | 17.1 | 19.3 | 78.2 |
0~14歳 | 7.4 | 21.6 | 11.8 | 12.3 |
15~34歳 | 11.1 | 15.9 | 10.0 | 25.6 |
35~64歳 | 21.9 | 13.0 | 9.0 | 45.6 |
65歳以上 | 37.6 | 18.6 | 22.2 | 86.7 |
75歳以上 | 43.6 | 21.8 | 28.8 | 98.9 |
■4つの生活習慣病の治療にかかる医療費
上記の3大疾病に加えて、日本人がかかりやすい4つの生活習慣病「糖尿病」「高血圧性疾患」「肝硬変」「慢性腎不全」をあわせた7つの疾病は7大疾病と呼ばれます。日本の入院患者のうち、およそ3人に1人が7大疾病で入院している といわれています。
(単位:円)
入院 | 通院 | ||||
費用 | 自己負担額 | 費用 | 自己負担額 | ||
糖尿病 | 459,151 | 137,745 | 19,178 | 5,753 | |
高血圧性疾患 | 403,973 | 121,192 | 10,760 | 3,228 | |
肝硬変 | アルコール性肝疾患 ※脂肪肝やアルコール性肝炎を含む | 464,376 | 139,313 | 18,023 | 5,407 |
肝硬変(アルコール性のものを除く) | 507,487 | 152,246 | 20,538 | 6,161 | |
腎不全 | 638,645 | 191,593 | 254,000 | 76,200 |
先進医療に関わる医療費
先進医療に関する医療費も紹介します。厚生労働省の「令和2年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」によると、先進医療を受けた人1人あたりの先進医療費用はおよそ110万円、医療技術ごとの先進医療費用を厚生労働省の調査をもとに見てみると以下となっています。
医療技術の例 | 1件あたりの先進医療費用 |
陽子線治療 | 約271万5,000円 |
重粒子線治療 | 約312万4,000円 |
高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術 | 約30万3,000円 |
MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法 | 約10万8,000円 |
家族性アルツハイマー病の遺伝子診断 | 3万円 |
なお、先進医療は「保険適用にするか検討中の段階の医療技術」のことを指します。2018年7月1日~2019年6月30日の実施報告では、先進医療を受けた人数は39,178人でしたが、先進医療の実施件数全体の9割近くを占めていた「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術(白内障の治療に使われる技術)」が保険適用の対象になったため、2019年7月1日~2020年6月30日までの1年間で先進医療を受けた人の数は5,459人と減りました。
各疾病別の平均在院日数と退院後に通院する割合
病気やケガに伴う入院の際には、治療費もそうですが差額ベット代の支払いや収入減にそなえる必要があります。また最近では退院後の通院治療も一般的です。各疾病別の入院期間(平均在院日数)と退院後の通院の割合は「厚生労働省平成29年患者調査」によると以下となります。特に脳血管疾患は78日と入院日数が多いことがわかります。この期間に差額ベット代や収入補填の必要がある際に、脳血管疾患のように長引く入院日数に備えたい場合は商品ごとの1入院の支払限度日数(三大疾病もしくは七大生活習慣病の場合)を確認するといいでしょう。また通院治療が継続する疾病も多いことから通院保障をつけるという考え方もあります。
退院患者の平均在院日数 | 退院後に通院する割合 | |
悪性新生物(ガン) | 17.1日 | 83.80% |
糖尿病 | 33.3日 | 87.70% |
心疾患(高血圧性のものを除く) | 19.3日 | 81.20% |
脳血管疾患 | 78.2日 | 53.30% |
肺炎 | 27.3日 | 59.00% |
乳房および女性生殖器の疾患 | 5.8日 | 95.90% |
骨折 | 37.2日 | 69.80% |
総数 | 29.3日 | 79.20% |
まとめ
いかがでしたでしょうか。医療費がどの程度かかるのかを知り、それを自分が貯金でまかなえる金額かどうかというのは、民間の医療保険加入有無のひとつの判断軸となるでしょう。また病気やケガによる働けない期間の収入減のリスクへの対応であれば医療保険の他の選択肢もあります。公的制度としては通算1年半の収入補填をする傷病手当金、民間の医療保険では働けない期間に支給される就業不能保険などがあります。また投資や貯金によって資産形成をして、リスクに備える方法もあります。家族構成や収入など、自分のおかれた状態を考えて、納得いく方法でリスクに備えるようにしましょう。