医療保険による所得控除 、確定申告や年末調整でのポイントは?

医療保険とは

民間の医療保険に支払った保険金は確定申告や年末調整の介護医療保険料控除の適用対象となります。自営業者や個人事業主など確定申告の必要がある人はもちろん、給与所得がある会社員の方も対象です。どのようなポイントや注意点があるかを解説します。

確定申告や年末調整で控除される医療保険

毎年、所得に対して確定申告や年末調整を行うときには、所得控除を受けることができます。控除とは課税対象となる所得額から一定金額を差し引く事で、扶養控除や住宅を購入した際の控除などさまざまな種類があります。その1つに生命保険料控除(旧生命保険料控除や介護医療保険料控除)があります。

確定申告は、例年2月中旬から3月中旬の約1ヵ月間、前年の1月1日から12月31日までの期間に対する課税金額を明らかにするものです。その1年間の収入や支出、さまざまな控除をし、所得を計算。その申告書を税務署へ提出し、期間中の所得税額を確定することを指します。。個人事業主や給与の収入金額が2,000万円を超える人、給与を2ヵ所以上から受けている人などが対象。となります(詳細は記事下部で別途記載)。

年末調整は、1年間に給与から源泉徴収した所得税及び復興特別所得税を実際に納めるべき所得税額と一致させるための手続きを指します。給与を受け取っている従業員(会社員)や役員が対象です。その年の1月1日から12月31日までの間の給与合計額から給与所得控除後の給与等の金額を求め、その後、扶養控除などの所得控除を差し引き、さらには住宅借入金等特別控除などが差し引かれて、所得税額が決まります。給与所得者の場合は、扶養控除等申告書を提出して年末調整をします。

こうした確定申告や年末調整の計算をするときに所得からいろいろな所得控除が差し引かれます。この所得控除の中に生命保険の契約で一定の要件を満たしている場合、支払った一定の金額が「生命保険料控除」となります。医療保険などの生命保険を契約している人は所得から控除することができるのです。

平成24年からの制度改正で控除額が変更。介護医療保険料控除とは?

確定申告や年末調整の生命保険料控除は、平成22年度の税制改正によって、それまでの「旧生命保険料控除」や「個人年金保険料控除」に加えて、新たに「介護医療保険料控除」が創設されました。この改正は平成24年分の所得税から適用されています。

そのため、平成24年分の所得税の計算には、契約している保険の内容によって「新生命保険料控除」「個人年金保険料控除」「介護医療保険料控除」が適用されています。

旧制度では2区分の控除額の上限は各5万円ずつの合計10万円、新制度では3区分各4万円ずつで、最大12万円まで控除が受けられます。

控除される医療保険のタイプとは?

平成24年以降に契約した保険のうち、介護医療保険料の対象になるのは、医療保険、医療費用保険、がん保険、介護保証保険、介護費用保険等の契約です。

ポイントとなるのは、「入院・通院等にともなう給付部分にかかる主契約保険料や特約保険料が対象となる」ということ。自身の入っている保険料がどれに当たるか、確認してみましょう。自身の保険料がどのタイプになるかは、毎年、10〜11月頃に保険会社から届く生命保険料控除証明書で知ることができます。給与所得者で年末調整が必要な人も、自営業者や個人事業主で確定申告が必要な人もこの証明書を会社や税務署に提出することで、控除を受けることができます。生命保険料控除証明書はなくさないようにしましょう。

保険料控除でどの程度税金が安くなるか

詳細は以下記述しますが保険料控除は最大で10~12万円となります。これは納める税金が10~12万円安くなるわけではありませんので注意しましょう。控除が適用された後の課税所得金額をもとに所得税と住民税が試算されます。

所得税率が20%の人が、保険料控除対象となる保険金を年間10万円支払た場合は、課税される所得から10万円を差し引いてから所得税率20%をかけて税額を計算しますので、10万円×20%=2.0万円、税が軽減されることになります。住民税は所得に比例して一律10%の課税がなされますので、約1万円分となります。上記のケース、10万円の保険金で所得税・住民税あわせて約3万円前後の税額控除がなされ、実質7万円程度の保険料になると試算できます。

なお所得税は課税所得金額に対して以下の計算式で算出できます。

課税所得金額 税額
195万円 課税所得金額×5%
195万円超~330万円以下 課税所得金額×10% - 97,500円
330万円超~695万円以下 課税所得金額×20% - 427,500円
690万円超~900万円以下 課税所得金額×23% - 636,000円
900万円超~1800万円以下 課税所得金額×33% - 1,536,000円
1800万円超~4000万円以下 課税所得金額×40% - 2,796,000円

医療保険の控除の対象になるのは?

医療保険の控除が受けられるのは、どのような人でしょうか? 控除の対象になるのは、保険料を支払っている契約者です。自身の保険料だけでなく、配偶者や家族の分の保険料を支払っている場合は、それらの保険料の控除を受けられる可能性もあります。まずは、自身がどのような保険にどの程度の保険料を支払っているかをしっかりと把握しましょう。

医療保険などの生命保険料はいくら控除される?

私たちが支払っている医療保険などの生命保険料でどのくらいの金額が控除されるのでしょうか? 生命保険料控除の金額を計算するときには契約日が関係してきます。チェックポイントは、契約日が平成23年12月31日以前か、平成24年1月1日以降かです。それによって、計算式が変わってきます。平成23年12月31日以前が旧契約、平成24年1月1日以降が新契約と呼ばれています。

旧契約に基づいた控除額

平成23年12月31日以前に契約を締結した旧生命保険料と旧個人年金保険料の控除額は、表の通りの計算式になります。控除額の上限は各5万円ずつで合計最大10万円までの控除となります。

年間支払保険料の合計 控除される金額
25,000円以下 払込保険料の全額
25,000円超 50,000円以下 (正味払込保険料×1/2)+12,500円
50,000円超 100,000円以下 (正味払込保険料×1/4)+25,000円
100,000円超 一律50.000円

新契約に基づいた控除額

平成24年1月1日以降に契約を締結した新生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料の所得税の控除額は表の通りの計算式になります。控除額の上限は各4万円ずつで、最大12万円までとなります。

年間支払保険料の合計 控除される金額
20,000円以下 払込保険料の全額
20,000円超 40,000円以下 (正味払込保険料×1/2)+10,000円
40,000円超 80,000円以下 (正味払込保険料×1/4)+20,000円
80,000円超 一律40.000円

旧契約と新契約が混在するときの控除額

保険契約の日付によって、旧契約と新契約の両方がある場合もあるでしょう。こうした場合、両方の保険料について生命保険料控除もしくは個人年金保険料控除を適用されたいなら、それぞれの控除ごとに(1)〜(3)のうち、有利なものを選択できます。

(1)新契約に該当する控除額(上限4万円)

(2)旧契約に該当する控除額(上限5万円)

(3)新契約と旧契約療法について適用を受ける際の控除額(上限4万円)

(1)〜(3)のいずれの場合も、介護保険料控除と合わせた最大の控除額は12万円となります。

新契約と旧契約が混在する場合の生命保険料控除額

適用限度額 12万円
<新契約> <旧契約>
新生命保険料控除(最高4万円) 旧生命保険料控除(最高5万円)
(新契約と旧契約の両方の控除の適用を受ける場合は合計で最高4万円)
介護医療保険料控除(最高4万円)
新個人年金保険料控除(最高4万円) 旧個人年金保険料控除(最高5万円)
(新契約と旧契約の両方の控除の適用を受ける場合は合計で最高4万円)

医療保険などの生命保険料控除の手続きをするには?

医療保険などの生命保険料控除の手続きは、給与所得者である会社員と自営業者や個人事業主などでは異なります。会社員の方は、生命保険会社から送られてきた生命保険料控除証明書を勤務先に提出することで、年末調整によって手続きされます。

自営業者や個人事業主の方は、原則として生命保険会社から送られてきた生命保険料控除証明書を確定申告書に添付して、確定申告の手続きを行います。

年末調整による控除の手続き

会社員が生命保険料控除を受ける場合は、次のようなステップで行います。

STEP1 秋に届く生命保険料控除証明書を保管しておく(なくした場合は保険会社に再発行してもらう)

STEP2 勤務先から配られる給与所得者の保険料控除申請書の必要事項を記入

STEP3 保管しておいた生命保険料控除証明書を添付する

STEP4 勤務先へ提出する

会社員の方で勤務先へ生命保険料控除証明書の提出ができなかった場合、確定申告で生命保険料控除証明書を書類に添付すれば還付申告をすることができます。年末調整で手続きできなかったら、こうした方法をとって手続きをしましょう。

年末調整することで所得税の一部が還付されます。ただし、住民税の課税は翌年になるため、還付ではなく、翌年の住民税額の計算によって軽減する方法がとられます。

確定申告による控除の手続き

個人事業主や自営業者の方は、確定申告を自分で行わなくてはなりません。例年、2月中旬から3月中旬が申告期間です(受付期限が土日に当たったり、コロナ禍による特別措置がとられたりする場合もあります)。

確定申告は、所轄の税務署に提出することで控除を受けられます。確定申告の2枚目第2表が生命保険料控除の金額を記載する用紙になっています。一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除、それぞれに計算した控除額を書き入れ、生命保険料控除証明書を添付して提出しましょう。

会社員や公務員でも確定申告が必要な方とは?

給与を受け取っている会社員や公務員、パート社員は、年末調整で控除できますが、会社員であっても次の条件にあてはまる人は確定申告が必要です。

・給与の収入金額が2,000万円を超える

・給与を1カ所から受けている人で、副業などの所得金額の合計額が20万円を超える

・給与を2カ所以上から受けている

・勤務先の年末調整の締め切り後に雇用契約した

・同族会社の役員やその親族などで、その同族会社からの給与のほかに、貸付金の利子、店舗・工場などの賃貸料、機械・器具の使用料などの支払いを受けた

・給与について、災害減免法により所得税等の源泉徴収税額の徴収猶予や還付を受けた

・在日の外国公館に勤務する人や家事使用人などで、給与の支払いを受ける際に所得税等を源泉徴収されないこととなっている

・110万円を超える金額の贈与を受けた

・空き家になった実家を売却して利益を受けた

まとめ

医療保険などの生命保険料の控除には、旧制度では2つ、新制度では3つの区分がありました。それぞれに適用される金額を年末調整や確定申告で申請すれば、控除が受けられます。会社員の方は年末調整で、個人事業主や自営業者の方や会社員でも確定申告が必要な方は確定申告で控除を適用できるようにしてみてください。

オカネノホンネ編集部

オカネノホンネ編集部

難しいお金の話を、ファイナンシャルプランナー技能士や保険・金融商品の専門家が忖度なし「ホンネ」でわかりやすく伝えます。

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