医療保険への加入を考えるとき、さまざまな種類があり、どれを選んだらいいかわからないもの。医療保険は、ニーズや保険料、支払い期間などによってタイプが分かれます。それぞれの医療保険のポイントや選び方をご紹介します。
目次
医療保険の提供元による分類
医療保険の種類をひもとくと、まず運営する組織によって分類することができます。組織による分類では、国や自治体の運営による「公的保険」、民間の保険会社が個人に向けて提供する「個人保険」、民間の保険会社が法人向けに提供する「企業・団体向け保険」の3種類に分けることができます。それぞれの特徴を見てみましょう。
公的な社会保険制度
国や自治体が運営する社会保険制度があります。私たち国民が最低限の暮らしを送るために制度として導入されているもので、医療保険・介護保険・年金保険・労災保険・雇用保険などがあります。
公的医療保険制度では私たちが病院にかかったときは全額ではなく3割以下の負担で済むようになっていたり、収入金額に応じて個人が負担する医療費の上限金額を定める高額療養費制度などがあります。
医療保険制度では、自営業(個人事業主)、会社員、配偶者の3つの区分があり、加入する保険も異なります。それによって納める保険料や保障の中身も変わってきます。
個人向けの民間保険
民間の保険会社が個人に向けて提供する保険です。大きく分けると、生命保険と損害保険に分けられ、生命保険のなかの1つとして医療保険や個人年金保険などがあります。基本的には、公的保険で医療費は抑えられますが、そのほか備えたいリスクを考えて加入するのが個人保険です。保険各社からは、さまざまな保障内容のタイプが保険商品として揃えられています。
企業・団体向けの民間保険
企業や団体と保険会社が提携して提供する保険です。その企業や団体で働く従業員を対象にしていて、「共済」と呼ばれることもあります。個人保険よりも割安なことが多く、社員への福利厚生の1つとして考えられています。本人だけでなく、配偶者やお子様など家族で加入できるタイプが用意されています。
生命保険と医療保険の違いとは?
医療保険を検討したいと思ったとき、生命保険と医療保険がどう違うのかがわからないという人も多いのでしょうか。この2つはどのような関係性なのかを知っておくと、保険のしくみもわかってきます。
まずは生命保険とは、被保険者が死亡したとき、もしくは高度障害状態になったとき、あらかじめ指定した受取人が保険金を受け取る保険です。受取人は、夫や妻などの配偶者や子ども、兄弟など家族が多くなっています。もしものときに家族のこれからの生活を考えて、保険金を受け取れるのは大きなメリット。一般的に支払う保険料よりも、多くの保険金が支払われるので、安心できるというわけです。
一方の医療保険は、入院や手術に備えたもの。不慮の怪我や大きな病気にかかった時に給付金を受け取ることができます。
一見、全く違う生命保険と医療保険ですが、例えば、生命保険に医療保障を付け加えるということもできます。生命保険ではありますが、入院や手術で保険金が支払われます。
保険の保障内容は、「主契約」と「特約」の組み合わせで成り立っています。主契約とは契約のベースとなっているもので、特約はオプションとして付けられるものなのです。つまり、生命保険の主契約は、死亡保障で特約として入院保障や介護保障などが付けられるもの。医療保障の場合は、主契約が入院保障で特約が死亡保障やがん保障になってきます。主契約と特約に同じ保障が入っていれば、同じように給付金や保険金が支払われるのでややこしいのですが、生命保険と医療保険はベースが異なっているため、違うものなのです。
医療保険を探してはいたものの、生命保険による保証の必要性に気づき検討される人もいるでしょう。生命保険のしくみも以下説明します。
保障期間による生命保険の種類
生命保険は、保障期間の違いによって、「定期型」「終身型」「養老型」に分けられています。
定期型保険
定期型保険は、保険期間が決められているタイプのもの。契約したときに決めた期間に死亡または高度障害になったときに保障が受けられます。そのため定年までに万一のことが起きた場合など、一定期間で保障を受けたい人にはぴったりの保険です。保険料は掛け捨てタイプがほとんどです。保険期間が終わったあとや途中で解約しても満期保険金や解約返戻金がないか、あったとしても少額です。
よく「掛け捨てタイプ」「掛け捨て型」の保険といわれるのが、この定期型保険。終身型に比べて安価に設定されているので、「その期間だけ保障されればいい」「とりあえず保険に入っておきたい」と考える人には重宝されます。
定期型の保険は、保険期間が幅広く設定できるのも特徴です。保険期間を10年、20年などの年数で満了を設定できるタイプの他に、65歳まで、80歳までの年齢で満了を設定するタイプもあります。このように自分のライフプランに沿って、保険期間を設計できるのが定期型の保険です。その分、自由度の高い保険といえるでしょう。また、ライフステージや家計の変化に合わせて契約更新時に保障内容の見直しが図れます。
ただし、保険期間が満期を迎えたあと、さらに更新すると、同じ保障内容でも年齢が上がると保険料が高くなります。同じ保険料にするために保障内容を薄くすることもできますが、年齢が上がるごとに病気のリスクは高まるもの。そうした方法はあまりおすすめできないので、更新すると保険料が上がると考えた方が良いでしょう。
定期型は、状況に応じて保険をカスタマイズしたいという方にとってはうってつけの保険タイプですが、保障されない期間のリスクを考えてチョイスする必要があります。
終身型保険
終身型保険は、亡くなるまで一生涯、保険期間が保証されるタイプのもの。終身保険に加入している限りは、何歳で死亡や高度障害になろうとも保険金を受け取ることができます。つまり、払込み期間が終わっても保障が続くということ。払い込み期間が65歳までで、その数年後に亡くなったとしても保険料は支払われます。
定期型は掛け捨てタイプで保険期間が終わっても、満期の保険金が受け取れませんでしたが、終身型は満期になると確実に保険金が受け取れます。さらには途中で解約しても、それまでの保険料を考慮して解約返戻金が支払われるようになっています。解約の時期にもよりますが、支払った保険料の積算額よりも解約返戻金の方が高いということもあり得ます。
考え方によっては、死亡保障は確保されたうえで、不要になったら解約して老後資金などの蓄えに回すこともできるわけです。つまり、保険の機能であると同時に積み立て貯蓄のように使うこともできます。そのため、終身型保険は、「貯蓄タイプ」「貯蓄型」と呼ばれることがあります。
保険料の支払い方には2種類の方法があります。1つめの「終身払い」は生涯にわたって支払い続けるもの。2つめの「短期払い」は一定期間で払い終えるものです。短期払いの場合は、65歳までなど、定年と同じ時期に設定されることが多くなっています。そうすると、働いている期間に保険料をしっかり払って、老後は安心して過ごすことができるわけです。ただし、一般的に保険料は定期保険よりも高額であることがほとんどです。しかし、契約更新がないため、保険料は契約時から変動がありません。
養老型保険
養老型保険は、定期保険のように保険期間が一定期間に決められています。定期保険と違うのは、保険期間の間に保険金が発生しなかった場合、死亡保険金と同額の保険料を満期保険金として受け取ることができます。ただし、保険期間中に解約すると、たいていの場合は払い込み総額よりも解約返戻金が少なくなってしまいます。そのため、満期まで払い続けることを前提とした保険タイプといえるでしょう。
養老型保険は、保険期間内に死亡や高度障害が起きると死亡保障が受け取れ、保険期間内に死亡や高度障害が起きなかったら、満期保険金を受け取れるというしくみです。そのため、死亡保障と満期保障のいずれかが保障されているタイプの保険となります。
ただし、途中で解約すると、解約返戻金はそれまで払い込み続けた保険金よりも少ない額になってしまうことがほとんどです。保険料は定期保険よりも高額なので、満期保険金を想定して、どのように使うか決めて保険を契約するのがおすすめです。
医療保険の種類
医療保険は、死亡保障がベースではなく医療保障がベースになっています。そのため、保証期間、保険料の払い方、掛け捨てか貯蓄型かでタイプが分かれてきます。
定期型と終身型
保障期間の違いによって、定期型保険と終身型保険があります。定期型保険は、10年、20年など保証期間が決まったもの。定年までの間の保障をしたいという方に向いています。一方の終身型保険は一生涯の保障期間があります。そのため定年の後も保障を得たい方に適しています。保険料に関しては、定期型は更新のたびに保険料は上がりますが、保険会社が決めた期間までは更新が可能となっています。
終身型保険:終身払いと短期払い
終身型保険は、保険料の払い方によって、終身払いと短期払いがあります。終身払いは保険料を一生涯払い続けるタイプで、短期払いは65歳や70歳で保険金を払い終えるタイプです。いずれも一生涯の保障が約束されていますが、短期払いは一定期間で保険料を払うぶん、終身払いよりも1ヶ月あたりや1年あたりの保険料が高くなります。
掛け捨て型と貯蓄型
医療保険の更新をしない場合に解約したお金が戻らない掛け捨て型とお金が戻る貯蓄型があります。貯蓄型は、生存給付金がついているタイプもあります。保険料は掛け捨て型の方が安いですが、戻ってくるお金まで考えると貯蓄型の方が安い場合もあるので、長い目で考えてみる必要があるでしょう。
引き受け基準緩和型と無選択型
医療保険は、加入する際に告知書という書類があり、健康状態を記入しなければなりません。このときに、引き受け基準緩和型と無選択型に分かれているのが一般的です。無選択型は選択されないので加入しやすいですが、保険料が高かったり給付金の支払いに限度があったりすることがほとんどです。
女性専用保険
女性特有の乳がんや子宮がんといった病気に保障がついた医療保険です。女性専用の商品として売られているものもありますが、医療保険に特約として付けられるタイプもあります。
まとめ
医療保険にはさまざまなタイプがあり、その分、選択肢が広いもの。保険料と保障をどう考えていくかも人それぞれです。しかし、医療保険の種類を知ると、何を選んでいくべきかが見えきます。働く期間や平均寿命が伸びていることも頭に入れて、自分らしい医療保険のライフプランを考えていきましょう。