医療保険に加入しているなら、どんなときに入院給付や手術給付が支払われるかは知っておきたいものです。入院を終えた後通院したときも給付金がもらえるとしたらどうでしょうか? 実は医療保険のなかには、通院給付が支払われるケースもあります。今回は、医療保険の入院給付と通院給付が支払われるポイントについて、解説します。
目次
入院給付金が支払われるのはいつから?
医療保険で入院給付が受け取れるとは聞いていても、何日目から支払われるか、何日目まで支払われるか、何回目の入院まで保障されるかと問われると案外わからないものです。現在、入院給付金は1日目から支払われるのが一般的です。しかし、一昔前に契約しているもののなかには、数日間の免責期間があるタイプもありました。
免責期間とは入院していても給付金が出ない期間のこと。例えば、「入院3日目から」給付金が支払われる保険では、入院1日目と2日目は免責期間として給付金は出ません。たとえ、医療保険に加入していたとしても給付金が受け取れないことになります。こうしたことのないように、免責期間があるかどうか、1日目から入院給付金が出るのかは確認した方が良いでしょう。
各疾病別の入院期間(平均在院日数)は「厚生労働省平成29年患者調査」によると以下となります。
退院患者の平均在院日数 | |
悪性新生物(ガン) | 17.1日 |
糖尿病 | 33.3日 |
心疾患(高血圧性のものを除く) | 19.3日 |
脳血管疾患 | 78.2日 |
肺炎 | 27.3日 |
乳房および女性生殖器の疾患 | 5.8日 |
骨折 | 37.2日 |
総数 | 29.3日 |
特に脳血管疾患は78日と入院日数が多いことがわかります。脳血管疾患のように長引く入院日数に備えてたい場合は商品ごとの1入院の支払限度日数(三大疾病もしくは七大生活習慣病の場合)を見るといいでしょう。
またここ数年の医療保険では1日目から入院給付金が受け取れる商品も珍しくなくなっています。理由としては、医療技術の進歩により、手術や入院ではなく通院による治療が一般化してきたため入院日数が減ったことにあります。そのため、短期入院でも医療保険の入院給付が支給されるようになりました。
加入してから長い期間が経過した契約をお持ちの方はこうした事情が踏まえられていない可能性もありますので確認するのがいいでしょう。
日帰り入院でも入院給付金が支払われる?
1日目の入院から給付金が支払われるとしたら、「日帰り入院はどうなの?」と疑問が湧いてきます。最近は、テレビC Mなど流れる「日帰り入院からO K」というナレーションで、この言葉を知った方も多いのではないでしょうか?
日帰り入院とは、入院したその日に退院できるタイプのもので、通院との区別がつきにくいものです。ほぼ丸1日病院のベッドを使用させてもらったり、手術をしたりしたとしても、日帰り入院ではなく「通院」となるケースもあります。
日帰り入院になるか、通院になるかは、患者側の判断で決めることはできません。前もって担当医に入院になるかどうかを聞いてみるのがおすすめです。急な病気やケガによって病院にかかり事前に確認することができなかった場合は、治療の際の領収書を確認してみてください。領収書に「入院基本料」という項目があれば、1つの目安になります。それがない場合は、病院に確認してみましょう。もちろん、日帰りでも入院扱いの治療であれば、入院給付金が支払われます。
なお入院後に通院する割合は「厚生労働省平成29年患者調査」によると以下のようになっており、多くの疾病において通院治療も発生する可能性が半分以上、総数では約8割となっています。
入院保障の注意点
入院に関する保障といえば入院給付金があげられます。その入院給付金には注意点があったり、そのほかの保障があったりする商品もあります。そうした点もおさえておきたいものです。
入院の支払い限度とは?
入院給付金には、支払限度日数に関する決まりが設定されています。支払限度日数とは、その日を超えると、入院給付金で保障されなくなるものです。医療保険の入院給付金の支払い限度日数は、60日が多くなっていますが、30日と短いもの、360日と1年近くある長いものまでさまざまです。入院は、2回以上だったとしても同じ病気やケガの場合は、前回の退院日の翌日からその日を含めて180日以内は1回の入院とみなされますので、注意が必要です。
新しく医療保険に加入するときは、入院給付金の支払限度日数は、ポイントの1つになりますが、支払限度日数が長いとそれだけ手厚い保険となり、保険料も高くなる傾向があります。自分にとってどれくらいの保障が必要かを考えて加入を検討してください。
入院一時金とは?
入院保障では入院に数に応じた給付金が支払われるのが一般的ですが、そのほかに入院一時金が支払われる医療保険もあります。入院一時金は入院日数とは関係なく、1回入院することに対して一定の金額が支払われるものです。保険商品によっては、日帰り入院もカウントされ、支給される場合もあります。ただし、入院日数が長引くと、給付金の方がトータルして多く受け取れることが多くなっています。どちらの保障がよいのか、相対的に比較した方が良いでしょう。
入院給付金が支払われない入院とは?
医療保険に加入して入院をしても、給付金が支払われない場合があります。つまり、医療保険には、給付金の保障対象外の疾病や手術があるということです。
入院給付金の対象になるかどうかは、一般的に治療を目的としているかどうかです。例えば、正常分娩や美容整形手術、抜歯やインプラント、健康診断や人間ドッグなどがそれにあたります。このほかにも、保険会社や保険商品によっても異なってきますので、保険約款を確認してみてください。
そのほかにも、入院給付金の対象外がある保障もあります。例えば、がん保険は契約後に3ヵ月または90日間は給付金が出ない期間が設けられていたり、免責期間がある場合があります。また、告知の結果によっては特定部位不担保、特定疾病不担保となって、特定の部位や特定の病気は保障されない条件を設定したうえでの契約になる場合があります。
通院でも給付金の対象となる場合とは?
医療保険で保障されるのは、病気やケガをしたときの入院給付金と手術給付金が主となってきます。そのほかに、保険商品によって先進医療やがん、女性特有の疾病、三大疾病になったときの保障がついていたり、特約で付加されたりしているでしょう。
通院でも給付金の保障がある場合としては、特約として一部の医療保険に付けられているタイプがあります。通院保障を希望するなら、そうした備えが付加されている医療保険を探してみましょう。ただし、すべての通院が保障に含まれるわけではなく、入院に関わる通院に限って保障されるようになっている事が多いので、注意が必要です。入院給付金が支払われるケースを前提として、入院後の通院が対象となっています。入院前の通院も保障となっていることもあるので、その点も確認してみましょう。
なお入院後に通院する割合は「厚生労働省平成29年患者調査」によると以下のようになっており、多くの疾病において通院治療も発生する可能性が半分以上、総数では約8割が通院する事になっています。
退院後に通院する割合 | |
悪性新生物(ガン) | 83.80% |
糖尿病 | 87.70% |
心疾患(高血圧性のものを除く) | 81.20% |
脳血管疾患 | 53.30% |
肺炎 | 59.00% |
乳房および女性生殖器の疾患 | 95.90% |
骨折 | 69.80% |
総数 | 79.20% |
通院保障は風邪などでは認められていません。保険商品の設計は、万一のリスクに備えかつ保険会社が健全な経営を維持できることを前提に考えられているので、風邪などほぼすべての人に複数回おこりうる通院を保障の対象にするのは難しい事情があります。
医療保険の通院保障はどうなっている?
実際の医療保険の通院保障はどうなっているのか、内容を確認してみましょう。前提となっている条件は、入院給付金の保障対象になっている病気がケガでの通院です。保険によっては、退院したあと120日や180日以内、入院前だと60日以内というものがあります。また1回の通院に対する保障限度日数は30日、保険期間通算で1,000日もしくは1,095日が多いです。
また通院保障には、医師による往診も含まれていますが、薬の受け取りなどの治療行為がないものは認められません。通院保障がついている医療保険でも商品によって異なるので、検討する場合は詳細条件までチェックするのがいいでしょう。
医療保険以外で通院保障される保険とは?
通院保障は医療保険のみならず、ほかの保険で通院給付金が受け取れるものがあります。その代表例が「がん保険」と「損害保険」です。この2つは、入院に伴う通院でなくても通院保障されます。そのほかにも就業不能保険、所得補償保険、介護保険なども医療のリスクに対応した保障内容を含んでいますので内容を確認してみます。
がん保険
がんの入院給付金の対象になっている入院を経て、365日以内の通院や、がんの手術・放射線治療・抗がん剤治療のために通院したときにがん通院給付金が支給されます。
傷害保険
補償対象になっているケガをした場合に、その日を含めて180日以内に治療を受けるために通院したときに、通院した日から30日を上限として傷害通院保険金が支給されます。
通院保障というと、医療保険が思い浮かびますが、がん保険や傷害保険でも通院保障が受けられます。がんやケガでの通院が心配な方はあらかじめこうした保険で備えておくのも1つの方法です。また、すでに傷害保険に入っている人は、ケガをした場合に通院保障が認められることを覚えておくと、万一のときでも安心して保障が受けられます。
就業不能保険・所得補償保険とは
病気やけがなどで保険会社が決めた就業不能状態になった場合に給付金を受け取れる保険です。収入が減ることに対して給付金で補うことができます。
介護保険とは
保険会社が決めた要介護状態になった場合に介護一時金や介護年金を受け取れるタイプの保険です。要介護のリスクに対して備えることができます。
民間の医療保険以外で病気やケガが保障されるもの
大きな病気やケガに対しては、民間の医療保険以外にもお金が支給されるものがあります。そうしたものも合わせて確認しておきましょう。
傷病手当金
会社員などが加入する健康保険では、傷病手当金という制度が用意されています。これは、加入者が病気やケガのために会社を休んだときに、休業連続4日目以降から最長1年6ヶ月の間、給与の約3分の2に当たる手当を受け取ることがでる制度です。こちらは自営業・フリーランスの人が加入する国民健康保険にはない制度なのでご注意ください。
全国健康保険協会の支給される条件は、次の1~4のすべて満たした場合です。
1、業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
2、仕事に就くことができないこと
3、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
4、休業した期間について給与の支払いがないこと
詳しくは加入する健康保険の規定をご確認ください。
まとめ
長期にわたる病気やケガは、入院や通院をともなうため、多くの出費をともないます。こうしたときに医療保険の入院や通院の保障はあると安心です。それだけでなく、自分の加入している保険がどのような保障を設けているかは必ずチェックしたいもの。その上で場合によっては、医療保険以外の選択肢があることも頭に入れておきましょう。備えがあれば、安心して人生を送ることができます。