資産運用における理想的な利回りは?目安や決め方、計算方法を解説

投資

資産運用の初心者のなかには、どのくらいの利回りを目指すべきなのか悩んでいる人が多いでしょう。初めて資産運用を行う人が収益を得るには、現実的な目標を設定したうえで始めることが大切です。目標とする利回りが現実的でないと、リスクを大きく取りすぎたり、期待した収益を得られなかったりすることがあります。

この記事では、資産運用における利回りの目安や計算方法、自分に合った目標の立て方をわかりやすく解説します。

資産運用における利回りとは?

資産運用における「利回り」とは、投資金額に対する1年あたりの収益の割合のことです。収益には利子だけではなく、売買によって得られる利益も含まれます。

たとえば、100万円を投資して、1年後に10万円の収益を得た場合、利回りは10%です。

なお、利回りと似た言葉として「利率」があります。これは債券や預金などで用いられる言葉です。利率は、元本に対する年あたりの利子の割合を示しています。

資産運用での利回りの目安

資産運用を行う際、一般的に「3~5%」程度の利回りを目標とするのが適切だと考えられています。

日本では、長年デフレ経済が続いていました。しかし、近年では物価上昇が続いており、インフレに対する意識が高まっています。仮に年間2%のインフレが起き、資産運用の利回りがインフレ率を下回ってしまうと、実質的な資産価値は目減りしてしまうでしょう。

たとえば、年0.1%程度の利率である預貯金だけで資産運用をしていても、お金はほとんど増えません。物価が上昇すると、その分だけ購入できるものやサービスの量が減ってしまいます。

反対に、インフレ率を上回る利回りを狙うことで、資産価値の維持や上昇が期待できます。実際に、日本の年金の一部を運用し、世界最大の年金基金でもあるGPIFの名目運用利回りは、2001年から2023年までの23年間で、4.33%と、日本が目指す中長期のインフレ率2%を上回っています。そのため、3~5%の利回りを目指すことは一定の合理性があるといえるでしょう。

しかし、ここで示した利回りはあくまで一般的な目安に過ぎません。運用目標やリスク許容度などによっても狙うべき利回りが異なります。自分に適した利回りの考え方について、次の項目で詳しくみていきましょう。

資産運用で利回りを決めるときのポイント

資産運用を行う際は、闇雲に高い利回りを求めるのではなく、自身の状況や目標に合わせた「最適な利回り」を設定することが大切です。

運用目的を明確にする

まず、何のために資産運用を行うのか、目的を明確にしましょう。目的によって、目指すべき利回りや運用の方向性が異なります。

たとえば、老後資金のように長期的な運用が必要な場合は、多少のリスクを取ってでも、インフレに負けない程度の利回りを目指す必要があるでしょう。

一方で、数年後の住宅購入資金の確保を目的とする場合、高い利回りを目指すよりも、元本割れの可能性を低く抑えつつ、着実に目標金額に近づけるような運用が適しています。

運用目標を決定する

運用目的が明確にしたあとは、次に具体的な運用目標を設定します。目標金額や達成したい時期、毎月積立に回せる金額を逆算することで、必要な利回りがみえてくるでしょう。

たとえば、20年後までに2,000万円貯めることを目標とする場合、毎月5万円ずつ積み立てる場合は、約4.9%の利回りが必要です。毎月7万円ずつ積み立てる場合は、約1.8%の利回りで目標金額を達成でき ます。

リスク許容度を考慮する

リスク許容度とは「投資をする際にどの程度の価格変動(損失)まで受け入れられるか」を表したものです。投資において、リスクとリターンは表裏一体の関係にあります。高いリターンを目指すほど、リスクも高くなる傾向があるため、自身のリスク許容度を把握し、その範囲内で利回りを設定することが大切です。

リスク許容度は、年齢や資産状況、投資経験、性格などによって異なります。たとえば、若いうちは、投資で損失が出たとしても、時間をかけて取り返せるため、リスク許容度は高い傾向にあります。この場合、積極的にリターンを狙うのもよいでしょう。

一方で、年収が低い場合や定年を控えている場合など、リスク許容度が低い人は、高い利回りを目指さないほうがよいでしょう。なるべくリスクを抑え、堅実に資産形成できる方法を選択すべきです。

【金融商品別】運用利回りの計算方法と目安

金融商品によって利回りの計算方法や目安となる数値が異なります。ここでは、代表的な金融商品の運用利回りについて解説します。

株式投資の利回り

株式投資の利回りは「(売買損益+配当金-売買手数料-税金)÷投資額÷運用年数×100」で求められます。

たとえば、100万円を投資し、年間で10万円の売買益と5万円の配当金を得た場合、売買手数料が1万円、税金が2万円であれば、利回りは次のように計算されます。

(10万円+5万円-1万円-2万円)÷100万円÷1年×100=12%

利回りは銘柄によって大きく変わりますが、10%以上の利回りを目指すことも可能です。なお、株式投資においては、株価に対していくらの配当を受けられるのかを表す「配当利回り」を、投資先を決定する際の判断材料にすることもあります。

債券の利回り

債券の利回りは、「{年間受取利息+(換金価格-購入価格)/保有期間}/購入価格×100」で求めるのが一般的です。

たとえば、100万円の債券を購入し、年間で受け取れる利子が1万円で、5年後に105万円で換金できるとすると、利回りは次のように計算できます。

{1万円+(105万円-100万円)/5年}÷100万円×100=2%

発行体(債券を発行する主体)の安全性によっても利回りは異なり、格付けが高く安全性の高い企業や国の債券ほど利回りは低くなる傾向にあります。一方で、格付けが低ければ利回りは高くなりますが、その分リスクが高くなるため、利子や償還を受けられなくなる可能性もあります。

総じて、株式より利回りは低い傾向にあり、1%に満たないこともあります。

不動産投資の利回り

不動産投資の利回りは、「(年間の家賃収入-諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100」で求めるのが一般的です。たとえば、物件価格が1,000万円で、年間の家賃収入が100万円、諸経費が10万円、購入時の諸経費が50万円の場合、利回りは次のように計算できます。

(100万円-10万円)÷(1000万円+50万円)×100=約8.6%

不動産投資での利回りは、建物の種類(マンションや一戸建てなど)、築年数(新築か中古か)、立地(都心部か地方か)などによっても変わりますが、10%以上の高い利回りを狙うことも可能です。

投資信託の利回り

投資信託の利回りは「(売買損益+分配金-販売手数料-信託報酬-信託財産留保額-税金)÷投資額÷運用年数×100」で計算できます。信託報酬とは、投資信託の運用・管理にかかる費用です。信託財産留保額は、投資信託の解約時にかかる場合があります。

たとえば、投資額が100万円で、年間に10万円の売買損益と3万円の分配金を受け取り、販売手数料が1万円、信託報酬が0.5万円、信託財産留保額が0.2万円、税金が2万円であれば、利回りは次のように計算できます。

(10万円+3万円-1万円-0.5万円-0.2万円-2万円)÷100万円÷1年×100=9.3%

利回りは、投資信託の種類によって大きく異なります。たとえば、株式中心のファンドと債券中心のファンドでは、一般的に株式中心のファンドのほうが利回りは高くなる傾向にあります。

運用利回りを高めるためのコツ

運用利回りを高めるには、以下で紹介するコツを活用することが重要です。

長期的に運用する

高い利回りを得るには、長期的な視点で運用することが大切です。

相場は常に上昇と下降を繰り返していますが、目先の値動きに一喜一憂して売買を繰り返しても、よい投資成果を得られるとは限りません。価格が一時的に下落しても、時間をかけて回復するケースもあるので、忍耐強く運用を続けることで安定的なリターンを得られるでしょう。

また、長期的な目線で運用することで、複利効果も得やすくなります。複利効果とは、投資で得た利益を再び投資に回すことで、利益がさらに利益を生む状態を指します。運用期間が長ければ長いほど複利効果は大きくなる傾向にあるので、高い利回りを狙える可能性があります。

投資対象を分散する

安定した運用利回りを狙うには、複数の資産や地域に投資対象を分散させることも大切です。すべての資金を一つの資産に投じた場合、その一つが値下がりしたときに大きな損失を受ける可能性があります。

しかし、複数の異なる種類の資産に分散して投資すれば、一つが下がっても他の資産で損失を補うことができ、全体のリスクを減らせます。投資対象を分散することで、安定した利回りが期待できるでしょう。

NISAを活用する

NISAは投資で得た売買益や分配金、配当金が非課税になる制度です。税金が引かれない分、手元に残る利益を増やせます。

また、ネット証券を利用すれば、NISAでの取引手数料が無料になるケースも多く、さらに利回りを高めることが可能です。

iDeCoを活用する

iDeCoは、加入者が自分で掛金を拠出し、選んだ金融商品を運用する私的年金制度の一つです。この制度の大きなメリットは、運用で得た利益が非課税になる点です。通常、投資で得た利益には税金がかかりますが、iDeCoを利用すると、その税金がかからないため、運用効率が大幅に向上します。

さらに、iDeCoでは掛金が全額所得控除の対象となるため、節税効果も期待できます。所得税や住民税が軽減されることで、実際に手元に残るお金が増え、結果として実質的な利回りも高くなります。

高すぎる利回りには注意

運用利回りが極端に高い投資商品には注意が必要です。一般的に、投資においてリスクとリターンは比例する関係にあります。短期間で大きな利益を謳う商品は、一見魅力的に思えるかもしれませんが、それに見合うリスクが隠れている可能性があるということです。

低リスクで高リターンを約束するような商品には、より一層の注意が必要です。リスクをほとんど取らずに大きな利益を得られるという商品は、現実的には存在しないため、詐欺の可能性が高いと考えられます。

まとめ

一般的に、資産運用における利回りの目安は、3~5%程度とされています。ただし、この目安は誰にでもあてはまるものではなく、各個人のリスク許容度や運用目的によって、適切な利回りは異なります。

また、極端に高い利回りを目指す投資商品には高いリスクが伴うため、初心者は安易に手を出さないように注意しましょう。

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オカネノホンネ編集部

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