終身保険を解約すると後悔する?適切なタイミング紹介します

保険全般

終身保険を解約した場合にどのようなデメリットが生じるのか、不安に感じている人もいるでしょう。解約することで保険料の負担を減らせる一方で、大切な保障を失って後悔するケースも少なくありません。

本記事では、終身保険を解約する際のデメリットとメリットを整理し、後悔しないための適切なタイミングや注意すべきポイントを解説します。

終身保険を解約して後悔する4つのケース

終身保険は、一生涯保障が続く死亡保険です。解約返戻金を受け取れる場合もあるため、貯蓄の代わりとして活用することもできます。

柔軟に活用できる保険ではありますが、無計画に解約すると思わぬデメリットが発生し、後悔するケースも少なくありません。以下では、終身保険を解約して後悔する具体的なケースについて解説します。

保障がなくなって家族に負担がかかってしまった

終身保険は一生涯にわたり死亡保障が続くため、契約者が亡くなった際に葬儀代をまかなうための資金として、活用されることが多い保険です。しかし、解約すると保障を失うため、家族が葬儀代などの費用を負担する可能性があります。

一般的に、葬儀費用は100~200万円程度といわれていますが、お墓の購入費用なども含めると、死後の整理資金はそれ以上に及ぶことも少なくありません。遺族が現役世代でなく収入が限られている場合や預貯金が少ない場合などは、このような金額をすぐに準備できないこともあるでしょう。

また、遺族の生活保障を目的として終身保険に加入している場合は、残された家族が経済的な困難に直面する可能性があります。

元本割れしてしまった

保険料払込期間中に終身保険を解約すると、受け取れる解約返戻金が支払った保険料の総額を下回る、いわゆる元本割れが発生し「損をした」と感じるケースがあります。

基本的に終身保険の解約返戻金は、契約期間に応じて徐々に増えていきます。しかし、保険料払い込みを終える前に解約すると、返戻率(解約返戻金÷払込保険料総額)は100%を下回ることがほとんどです。

また、契約直後は、解約返戻金がほとんど受け取れないケースもあります。保険料払込期間中の解約返戻金が低く設定されている「低解約返戻金型終身保険」の場合、この傾向は顕著になるでしょう。

新しい保険の審査に通らなかった

終身保険を解約したあと、新しい保険に加入しようとしたものの、審査に通らないケースもあります。

新しく保険に加入する際には、被保険者の健康状態を保険会社に知らせる「告知」が必要です。告知をもとに保険会社は加入の可否を判断しますが、過去の病歴や現在の健康状態によっては審査に通らず、保険に加入できないケースもあります。すでに終身保険を解約している場合、新しい保険に加入できず、結果として無保険状態になってしまうでしょう。

さらに、仮に新しい保険に加入できたとしても、「保険料が大幅に高くなる」「特定の疾病が保障対象外となる」などの特別条件がつく場合があります。このような条件のもとでは、以前の終身保険を継続していたほうがよかったと感じるかもしれません。

お宝保険を解約してしまった

「お宝保険」を解約したあとに価値に気づき、後悔するケースがあります。お宝保険とは、予定利率が高い頃に加入した生命保険のことを指します。予定利率とは、保険会社が契約者に約束する運用利回りのことです。

1980年代には生命保険会社の標準的な予定利率は5%台に達することもありました。しかし、1990年代以降は低下傾向にあり、現在では1%を下回る水準になっています。そのため、現在販売されている保険商品と過去に販売されていた商品の間には、保険料や返戻率に大きな差があるのです。

お宝保険を解約して新しい保険に加入する場合、同じ保障内容にした場合でも保険料の負担は大きくなる可能性があります。

終身保険を解約するメリット

終身保険を解約すると、保険料の負担を軽減したり、解約返戻金を受け取ったりすることが可能です。家計を見直したい場合や、一時的にまとまった資金が必要な場合は、解約も選択肢の1つになるでしょう。

以下では、終身保険を解約するメリットについて紹介します。

保険料の負担を減らせる

終身保険を解約すると、毎月の保険料の支払いがなくなるため、家計の負担を減らせます。保険料の支払いが重荷になっている場合や、収入が減少して支出の優先順位を見直す必要がある場合は、解約が有効な手段になるでしょう。

ただし「解約」ではなく「見直し」をすることで、一定の保障を残しつつ、保険料の負担を減らす方法もあります。一度解約した場合は、同じ条件で再契約できないため、解約は最終手段として考えておいたほうがよいでしょう。具体的な見直し方法については、次の章で詳しく解説します。

解約返戻金を受け取れる

終身保険を解約すると、契約期間に応じた解約返戻金を受け取れます。特に、保険料払込期間を終えたあとに解約すると、解約返戻金が払込保険料の総額を上回るケースも少なくありません。受け取った解約返戻金は、住宅購入費用や教育資金など、さまざまな用途で活用できます。

ただし、先述したように解約のタイミングによっては、元本割れする可能性もあるため、注意が必要です。また、特約などを付加している場合は、保険料の払い込みを終えても、解約返戻率が100%を超えるまでに時間がかかるケースもあります。

終身保険の解約前に検討すべき3つの内容

保険料の負担を軽くしたいと考えて、終身保険の解約を検討することは珍しくありません。しかし、解約には保障を失うリスクや経済的な損失が伴う場合もあるため、解約前に以下の方法を試したうえで検討しましょう。

  • 一部解約して保障を減らす
  • 払済保険や延長保険に変更する
  • 契約者貸付制度や自動振替貸付制度を利用する

これらの方法であれば、必要な保障を残しながら、保険料の負担を軽減できる可能性があります。

一部解約して保障を減らす

終身保険の一部を解約すれば、保険料の負担を減らせます。一部解約とは、保険金額を減らす手続きのことです。たとえば、300万円の死亡保障を100万円に減額するようなケースが該当します。この方法であれば、必要な保障をある程度残しながら、保険料を抑えることが可能です。また、解約返戻金を受け取れる場合もあります。

なお、終身保険を減額すると、特約が消滅したり減額したりすることがあるので注意しましょう。現在の保険金額が過剰だと感じる場合は、一部解約を検討してみてください。

払済保険や延長保険に変更する

保険料の支払いが負担になっている場合、払済保険や延長保険に変更する方法もあります。

払済保険とは保険料の払い込みを中止して、その時点での解約返戻金をもとに保障金額を減らした保険に切り替える方法です。この場合、保険期間は終身のままで変わりません。

一方で、延長保険は保険料の払い込みを中止して、その時点での解約返戻金をもとに、保険期間の短い定期保険に切り替える方法です。この場合、契約当初の保険金額で継続できます。

どちらの方法も、保障を残しながら支払いの負担を大きく減らすことが可能です。しかし、払済保険や延長保険も、特約が消滅するため慎重に検討してください。

契約者貸付制度や自動振替貸付を利用する

保険料の支払いが一時的に厳しい場合は、契約者貸付制度や自動振替貸付制度を活用する方法もあります。

契約者貸付制度とは解約返戻金の一定範囲内で、保険会社から貸付を受けられる制度です。一方で、自動振替貸付は保険料の入金がなかった場合に、保険会社が解約返戻金の範囲内で保険料を立て替え、契約を継続させる制度を指します。

どちらの制度も保険会社から借り入れをすることになるため、元金に加えて利息の支払いが必要です。また、元金と利息の合計が解約返戻金を上回ると、契約が失効してしまうことを理解しておきましょう。

終身保険の解約に適したタイミングとは?

終身保険は解約の時期を誤ると、必要な保障を失って後悔することがあります。

以下では、終身保険の解約に適したタイミングについてみていきましょう。

元本割れのリスクがなくなったとき

終身保険の解約返戻金は、基本的に契約期間が長くなるほど増え、払込期間が終わったあとであれば、支払った保険料を上回ることが多くなっています。

このようなタイミングで解約すれば、元本割れの心配をせずに解約返戻金を受け取ることが可能です。

必要な保障内容が変わったとき

ライフステージや家計の状況が変わり、終身保険が不要になった場合も解約を考えるタイミングとして適しています。

たとえば、遺族の生活保障を目的として終身保険に加入していたものの、子どもが独立して教育費や生活費の負担が減った場合は、解約を検討してもよいでしょう。

また、葬儀代を準備するために加入していたものの、十分な貯蓄ができていて、保障がなくても困らないと判断したケースでも、解約するタイミングとしては悪くありません。

まとまった資金が必要になったとき

マイホームを購入する、教育費を準備するなどでまとまった資金が必要になった場合、終身保険を解約して解約返戻金を活用するという選択肢があります。

解約返戻金を活用すれば、金融機関から借り入れを行う必要がありません。そうなれば利息を負担する必要がないだけでなく、まとまった資金をすぐに確保できます。

終身保険を解約する際のポイント

終身保険を解約する際に押さえておきたいポイントは、以下の通りです。

  • 解約返戻金の金額や受け取り時期を確認する
  • 解約返戻金にかかる税金を把握しておく
  • 新しい保険に加入してから解約する

解約手続きをする前に必ず確認しておきましょう。

解約返戻金の金額や受け取り時期を確認する

終身保険を解約すると、解約返戻金を受け取れますが、その金額は解約するタイミングによって大きく異なります。解約する前に、現在の解約返戻金がいくらになるのか、保険会社に問い合わせて確認しましょう。

また、解約返戻金の受け取り時期についても確認してください。解約返戻金は、銀行預金のように必要なときにすぐ受け取れるとは限りません。保険会社に解約書類が到着してから、振り込みまでには1週間程度かかるケースが一般的です。

解約返戻金にかかる税金を把握しておく

解約返戻金を受け取った場合、その金額によっては税金がかかることがあります。

契約者と解約返戻金の受取人が同一の場合は所得税や住民税、異なる場合は贈与税の支払いが必要です。

所得税の対象となる場合、課税対象となる所得(一時所得)は、以下の計算式で求められます。

課税一時所得={(解約返戻金-正味払込保険料)-特別控除額(50万円)}×1/2

たとえば、正味払込保険料が200万円、解約返戻金が300万円の場合、課税対象となる一時所得は25万円です。この金額に対して所得税と住民税が課されます。

贈与税の対象となる場合、課税対象額は以下の計算式で求めることが可能です。

課税対象額=解約返戻金-110万円(基礎控除)

たとえば、解約返戻金が500万円の場合、390万円に対して贈与税が課されます。

新しい保険に加入してから解約する

保険の乗り換えに伴い、終身保険を解約する場合は、新しい保険に加入してから解約することをおすすめします。

これは新しい保険に加入する前に解約すると、一切の保障がなくなってしまうリスクがあるためです。新しい保険の契約が成立し、保障が開始されていることを確認したうえで、古い保険を解約するようにしましょう。

まとめ

むやみに終身保険を解約すると、「保障がなくなって困った」「もっと有利なタイミングで解約すればよかった」と後悔するケースがあります。解約する際は、まず解約理由を明確にすることが大切です。

保険料の負担を抑えることが目的であれば、一部解約や払済保険、延長保険などの方法を検討してみましょう。これらの選択肢を活用すれば、保険料の支払いを軽減しつつ、必要な保障を残すことが可能です。

また、「保障が必要なくなった」「ライフステージが変わり、終身保険が合わなくなった」などの理由で解約を検討している場合は、解約返戻率が高くなるタイミングを狙って解約することをおすすめします。契約期間によって解約返戻金の額は大きく異なるため、保険会社に現在の返戻率を確認してから手続きを進めてください。

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オカネノホンネ編集部

オカネノホンネ編集部

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