資産運用の手段として「外貨預金」に注目している人は多いでしょう。外貨預金は外国の通貨を預金する金融商品で、円預金にはない魅力があります。
外貨預金ならではのリスク・デメリットがあるため、始める際は仕組みを正しく理解しておくことが大切です。
本記事では、外貨預金の基礎知識についてわかりやすく解説します。
目次
外貨預金とは?
外貨預金は米ドルやユーロなど、日本円以外の外国通貨でお金を預ける金融商品です。
円預金は、日本円を預け入れて日本円で払い戻しを受けられます。一方で、外貨預金は日本円を外国通貨に両替して預け入れ、外国通貨を日本円に両替して払い戻されるという違いがあります。
とはいえ、「銀行に預金をする」という仕組み自体は円預金と変わらないため、資産運用の初心者でも取り組みやすいでしょう。
外貨預金には、普通預金や定期預金などの種類があります。普通預金は自由にお金を引き出せますが、定期預金は原則として満期までは引き出せません。その代わりに、金利が高めに設定されています。
外貨預金の3つのメリット
外貨預金には、円預金では得られない以下のような魅力があります。
- 海外の高い金利で運用できる
- 為替差益を狙える
- 分散投資の効果を得られる
それぞれ詳しくみていきましょう。
海外の高い金利で運用できる
外貨預金の大きな魅力は、高い金利での運用が可能な点です。日本円の定期預金金利は年率0.1~0.3%前後が一般的で、低水準の状況が続いています。日本円の定期預金(年利0.1%)に100万円を預けても年間の利息は1,000円程度です。
しかし、外国通貨の定期預金金利は日本円よりも高いケースが多く、特に米ドルや豪ドルといった通貨は年3~4%前後に金利が設定されていることもあります。米ドルの外貨定期預金(年利3%)であれば、年間約30,000円の利息を得られます。
為替差益を狙える
為替レートの変動によって利益を得られる可能性がある点も、外貨預金のメリットです。例えば、1ドル=100円のときに100万円を預けると、1万ドルを預けることになります。その後、1ドル=110円になったときに1万ドルの預金を引き出すと、110万円を得られるため、10万円の利益が出ます。
金利だけではなく、為替差益による収益も得られるのが外貨預金の大きな特徴といえるでしょう。特に預け入れ時よりも円安が進んでいるタイミングで引き出すと、為替差益を得られる可能性が高くなります。反対に、円高が進むと損失が出るリスクもあるので注意しましょう。
分散投資の効果を得られる
円預金だけではなく外貨預金も活用することで、分散投資の効果を得られます。分散投資とは、投資先を分散させることでリスクの低減を狙う投資手法です。
例えば、円預金だけをしている場合、円の価値が下落(円安)した際に保有する資産全体が大きく減少する可能性があります。しかし、米ドルや豪ドルなど複数の通貨に分散して預けておけば、一部の通貨が値下がりしても他の通貨が値上がりして損失を補える可能性があります。
外貨預金の4つのデメリット
外貨預金は多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 為替差損が発生する可能性がある
- 為替手数料がかかる
- ペイオフの対象にならない
- 利益が出たら確定申告が必要になる
それぞれ詳しくみていきましょう。
為替差損が発生する可能性がある
外貨預金の大きなリスクの1つに、為替相場の変動による「為替差損」があります。為替レートは常に変動しており、円高が進行すると外貨を円に換算したときの金額が目減りする可能性があるでしょう。
例えば、1ドル=100円のときに100万円を預けると、1万ドルが元本になります。しかし、引き出し時に1ドル=90円まで円高が進んでいると、円換算額は90万円となり、10万円の損失が発生してしまうのです。このように、預け入れ時よりも引き出し時のお金が減ってしまう「元本割れ」が発生してしまいます。
特に新興国の通貨を預金する場合は、為替差損に注意が必要です。トルコリラや南アフリカランドのような新興国通貨では、年10%以上の金利が期待できる場合もあります。
ただし、新興国は政治や社会情勢が不安定になりやすく、通貨が暴落し、為替差損が得られる利息を上回る可能性もあることを理解しておきましょう。
初心者の場合、為替の動きを完全に予測するのは難しいため、値動きが比較的落ち着いているドルやユーロなどの先進国通貨で預金を始めるのが得策です。
為替手数料がかかる
外貨預金を利用する際、預け入れや引き出しごとに「為替手数料」が発生します。この手数料は金融機関や通貨によって異なりますが、一般的に1通貨あたり1~2円(往復)程度かかります。
例えば、1ドルあたり1円の手数料がかかる場合、1万ドルの外貨預金をするには、預け入れ時と引き出し時に合計2万円の手数料が必要です。為替差益や利息収入を得たとしても、手数料が利益を圧迫する可能性があります。
利益を得るには、為替コストが低い傾向にあるネット銀行や、為替手数料が無料になるキャンペーンなどを利用するとよいでしょう。
ペイオフの対象にならない
外貨預金は、円預金とは異なり「預金保険制度(ペイオフ)」の対象外です。ペイオフとは、金融機関が破綻した場合に、1金融機関につき預金者1人あたり元本1,000万円と破綻日までの利息を保護する仕組みです。
万が一預けている金融機関が経営破綻した場合、預けた資金が全額失われる可能性があります。そのため、外貨預金をする場合は健全性や信用格付けを確認し、安全性の高い銀行を利用しましょう。
為替差益が出たら確定申告が必要になる
外貨預金で為替差益が発生した場合、一定額を超えると確定申告が必要です。具体的には、年間の為替差益が20万円以上になった場合は「雑所得」として、所得税や住民税の対象となります。給与所得者の場合でも、このルールは適用されます。
確定申告を怠ると、延滞税や加算税が発生する可能性があるため、利益が出た際には忘れずに手続きを行いましょう。
なお、外貨預金の利息については「利子所得」として課税対象になります。ただし、20.315%(所得税と住民税、復興支援特別税の合計)が源泉徴収されるため、為替差益が発生していない場合などは、確定申告が不要です。
外貨預金の始め方
外貨預金を始める際の一般的な手順は以下の通りです。
- 必要書類を準備する
- 金融機関で外貨預金専用口座を開設する
- 預け入れ金額を決定し、運用を開始する
外貨預金を始めるには、普通預金口座に加えて外貨預金専用口座を開設する必要があります。インターネットまたは銀行の窓口などで手続き可能です。
口座開設の際には、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類、マイナンバーが確認できる書類が必要です。窓口で手続きする場合は、印鑑や円預金口座のキャッシュカードなども用意しましょう。
口座開設後は、預け入れ金額を決めて外貨を購入します。外貨普通預金の場合、1通貨単位から始められる銀行もあり、少額でもスタートしやすい点が魅力です。
なお、取扱通貨や為替手数料、金利は金融機関によって異なります。これらの違いは収益に直結する可能性があるので、運用開始前に必ず確認しておきましょう。
外貨預金をうまく運用するコツ
外貨預金をうまく運用するためには、リスクを抑えながら収益を高めるための工夫が必要です。ここでは、初心者でも取り入れやすい3つのコツを詳しく解説します。
余裕資金で始める
外貨預金は為替変動の影響を受けるため、当面使う予定のない余裕資金を利用することが大切です。生活費や緊急時の備えは円預金で確保し、それ以外の資金を外貨預金に充てれば、万が一運用に失敗しても生活に大きな影響を及ぼさずに済むでしょう。
さらに、余裕資金を使うことで精神的な余裕も生まれます。為替レートが急変しても、焦りや不安から不利なタイミングで通貨を売却してしまうリスクを軽減できるでしょう。
通貨を分散する
外貨預金では、米ドルや豪ドルなど複数の通貨に分散して預け入れることで、為替リスクを軽減できます。例えば、米ドルの価値が低下したとしても、ユーロや豪ドルの価値が高くなれば、全体の資産が大きく目減りするリスクを防げるでしょう。このように、1つの通貨に集中せず複数の通貨に分散することで、経済情勢の変化に柔軟に対応できます。
購入タイミングをずらす
外貨預金を始める際には、一度に大きな金額を預け入れるのではなく、タイミングを分散するのが効果的です。「ドルコスト平均法」を用いると、価格変動リスクを軽減できる可能性があります。
ドルコスト平均法は、価格変動のある金融商品を定期的に一定額ずつ購入する方法です。為替レートが高いときには少なく、低いときには多く買うことになるため、購入単価を平準化する効果があります。
例えば、毎月1万円ずつ外貨預金をすることで、為替レートの変動によるリスクを抑えられる可能性があります。
まとめ
外貨預金は、円預金と比較して高い金利や為替差益を狙える点が魅力の資産運用方法です。特に、低金利の日本において、外貨預金は資産を効率的に増やす手段として注目されています。
一方で、為替レートの変動による為替差損が発生するリスクや、ペイオフ制度の対象外であることなどのデメリットもあります。
デメリットをできる限り解消するためにも、以下のポイントを押さえたうえで運用を行いましょう。
- 少額からスタートする
- 余裕資金で運用する
- 複数の通貨に分散する
実際に運用を始める際は、外貨預金の専用口座が必要です。銀行によって取扱通貨や為替手数料、金利が異なるため、事前に比較検討したうえで、自分に最適な金融機関で口座を開設してください。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP