資産形成とは、将来の安定した生活を実現するために、計画的に資産を増やしていくことを指します。資産形成の知識を効率的に身につけるには、学ぶだけでなく、実践することが大切です。
この記事では、初心者の人でも無理なく取り組めるように、5つのステップに分けて勉強方法を解説します。これから資産形成を始める場合は、ぜひ参考にしてください。
目次
【5ステップ】資産形成の勉強方法
まずは、資産形成のための勉強方法を5つのステップに分けて解説します。
- 資産形成の基礎知識を身につける
- 資産形成の目標を決める
- ジャンルを絞って勉強する
- 実際に資産形成を始めてみる
- 定期的に振り返る
初心者の人でも取り組みやすい内容であるため、ぜひ参考にしてみてください。
ステップ1:資産形成の基礎知識を身につける
資産形成を始めるには、まず基礎的な知識を身につけることが大切です。ここでは、どのようにして基礎知識を学ぶか、具体的な勉強手段とそれぞれのメリット・デメリットをみてみましょう。
勉強手段 | メリット | デメリット |
書籍 | ・手軽に基礎から応用まで学べる ・自分のペースで学習できる |
・情報が古い場合がある |
オンラインセミナー | ・専門家から直接学べる ・最新の情報を得やすい |
・費用がかかる場合もある |
ブログやYouTube | ・無料で手軽に情報を得られる ・幅広いテーマに対応できる |
・信頼性の低い情報もある |
自分に合った方法を選んで勉強することで、資産形成における基礎知識を効果的に身につけられます。書籍やセミナーは、情報の信頼性が高く、体系的に学べるのが特徴です。
一方で、ブログやYouTubeは、手軽に学べる反面、内容の質や信頼性に注意する必要があります。
資産形成の必要性
資産形成は、将来の経済的な安定を確保するために重要です。特に「老後資金の確保」と「インフレ対策」の2つの視点で考えると、その重要性がさらに明確になります。
一般的に老後に必要な資金は老後を30年とすると、必要最小限の生活をするだけでも夫婦で1,800万円、介護費や医療費など予備費を含めると2,500万円といわれています。そのため、公的年金だけに頼っていては生活水準を維持するのが難しくなるでしょう。資産形成を早めに始めておけば、リタイア後も経済的に余裕のある生活を過ごせる可能性が高まります。
また、インフレが進むと、物価が上昇し、同じ金額で購入できる商品やサービスの量が減ってしまいます。預貯金をしているだけでは、物価の上昇分に追いつくほどの利子には期待できません。つまり、元本割れのリスクがない預貯金でお金を運用していたとしても、購買力が低下することによって、実質的なお金の価値が減少してしまうというリスクがあります。
対策として、株式など物価上昇率を上回る利回りに期待できる資産に投資することで、インフレに備えられます。
資産形成の重要性については、以下の記事も参考にしてください。
貯蓄と投資の2種類がある
資産形成には、主に貯蓄と投資の2つの方法があります。
貯蓄は、その名の通り現金を蓄えることで、普通預金や定期預金などが当てはまります。元本割れのリスクがなく、すぐに引き出しやすいというメリットがあるため、緊急の出費や近い将来使う予定のあるお金を備えておくのに適しています。
投資は、利益を見込んで株式や債券、不動産などの金融商品にお金を投じることです。大きなリターンを狙える可能性がある反面、損失を出す可能性もあるため、余裕資金を運用するのに向いています。
貯蓄と投資はそれぞれ異なる特徴があるため、両者のバランスを考えながら資産形成を進めるのがよいでしょう。
資産形成でかかる税金
資産形成において、税金の知識も欠かせません。株式や債券、投資信託などの運用で得た利益には、通常20.315%の税金がかかります。しかし、NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用することで、税金の負担を軽減することが可能です。
NISA(少額投資非課税制度)は、一定の投資額まで、投資で得た利益が非課税になる制度です。つみたて投資枠と成長投資枠の2つの非課税枠があり、以下のように投資限度額が決まっています。
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
年間投資限度額 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有限度額 | 1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円) |
非課税保有限度額とは、一生涯を通じてNISA口座で投資できる限度額のことです。非課税で運用できる期間に上限はありません。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金を準備するための私的年金制度です。掛金は全額所得控除の対象で、拠出できる金額は加入資格区分によって異なります。また、運用益も非課税です。ただし、60歳までは原則として引き出すことができません。
税制優遇制度をうまく使い、長期的な視点での資産形成を目指しましょう。NISAの詳細については、以下の記事も参考にしてください。
ステップ2:資産形成の目標を決める
資産形成を始めるときに大切なのは、具体的な目標を設定することです。目標が明確になると、どのような運用方法が自分に合っているのか判断しやすくなり、モチベーションも保ちやすくなります。
たとえば、「5年後に住宅の頭金として500万円を貯める」「子どもの進学費用として10年で300万円を用意する」「老後の生活資金を積み立てる」といった、ライフイベントに基づいた目標を設定するとよいでしょう。
また、毎月どれくらいの金額を資産形成に充てられるかを見積もることで、現実的なプランを立てられます。たとえば、「毎月2万円ずつ積立を行い、年利3%で運用する」といった具体的な計画を立てると、目標達成までの見通しが立ち、モチベーションも保ちやすくなります。自分の生活や未来の目標に合わせて、資産形成のゴールをしっかり決めましょう。
資産運用における利回りの目安については、以下の記事でも解説しています。
ステップ3:ジャンルを絞って勉強する
資産形成で効率よく資金を増やすには、さまざまなジャンルの知識が必要です。そのため、まずは自分に合った金融商品や運用方法に絞り込んで勉強を行いましょう。
全ての金融商品を網羅しようとすると、情報が多すぎて混乱してしまいます。自分のリスク許容度や目標に応じて必要なジャンルに絞って学習することで、効率よく知識を身につけられるでしょう。
ライフイベントに備えて着実に貯蓄したい場合<
結婚や出産、住宅購入などのライフイベントに備えて貯蓄を増やしたい場合は、預貯金のようなリスクの低い資産形成方法について学ぶとよいでしょう。
単に普通預金や定期預金を始めるだけではなく、「先取り貯蓄」を行うのも効果的です。先取り貯蓄とは、毎月の給料から生活費を支払う前に一定額を預貯金口座に移す方法で、無駄遣いを防ぎ、無理なく貯蓄を続けられるというメリットがあります。
さらに、生活費を見直して節約をすることも、貯蓄を増やすためには有効です。たとえば、スマホ代や電気代などの固定費を見直し、浮いたお金は貯蓄に充てることで、着実に資金を増やすといった方法もあります。
長期的な目線で資産を増やしていきたい場合
長期的に少しずつ資産を増やしていきたい場合には、投資信託について学んでみましょう。
投資信託は、投資家から集めた資金をプロが複数の株式や債券で運用する商品です。投資信託は基準価額が安いときに買い、高いときに売ることで利益を得られます。長期的な値上がりが期待できる銘柄も多く、複数の資産に分散投資しているためリスクを抑えた運用ができるのが特徴です。
積極的に利益を狙いたい場合
積極的に利益を狙いたい場合は、株式投資やFXなどを学んでみましょう。
株式投資は企業の成長に期待して株を購入し、株価の上昇や配当金を通じて利益を得る方法です。成長株は株価の変動率が高いため、短期間で大きなリターンが得られる可能性がありますが、大きな損失が出るリスクもあります。
また、FX(外国為替証拠金取引)は、為替相場を予測して利益を狙う投資で「レバレッジ」を活用できる点が特徴です。レバレッジによって、少額の投資資金でも大きな利益を狙えます。しかし、短期間で大きな損失を出すこともあるため、一気に資金を失うリスクもあります。
ステップ4:実際に資産形成を始めてみる
目標を設定し、どの投資方法が自分に合っているかがわかったら、実際に資産形成を始めてみましょう。最初は、少額から始めるのがおすすめです。たとえば、投資信託の積立投資であれば数百円程度から投資をスタートできます。
また、どの金融機関で資産形成を始めるか検討することも重要です。金融機関によって、取り扱う商品や手数料、サポート体制は異なります。
たとえば、対面証券とネット証券、銀行では以下のような違いがあります。
対面証券 | ネット証券 | 銀行 | |
取扱商品 | 株式や投資信託、FXなど | 株式や投資信託、FXなど | 投資信託や保険商品など |
手数料 | ネット証券よりも高い傾向 | 対面証券や銀行よりも安い傾向 | ネット証券よりも高い傾向 |
サポート体制 | 店舗や電話などでサポートを受けられる | 電話やメールなどでのサポートのみ(対面でのサポートは受けられない) | 店舗や電話などでサポートを受けられる |
自分の取引したい商品や投資経験などに適した金融機関を選びましょう。
ステップ5:定期的に振り返る
資産形成を始めたら、定期的に振り返りを行うことが重要です。運用を始めると、当初の計画と実際の結果にズレが生じることは少なくありません。最低でも半年または1年ごとに、運用状況を確認しましょう。この振り返りを行わないと、目標に到達するのが難しくなる可能性があります。
また、振り返りを行うことで、自分の投資スキルの向上にもつながります。たとえば、過去に選んだ商品や運用方法が予想通りの成果を上げられたのか、精神的な負担はどのくらい合ったのかなどを分析することで、自分に合った運用スタイルやリスク許容度が次第にわかるようになります。
【年代別】おすすめの資産形成の勉強法
資産形成は、各年代で直面するライフステージや経済的な状況に応じた勉強が必要です。ここでは、各年代に合った資産形成の勉強方法を解説します。
20代
20代は、社会に出たばかりでまだ経験が少ない時期です。まずは、経済的に自立することを目標に、家計管理や貯蓄の基本を学びましょう。家計簿アプリなどを使って収入と支出のバランスを把握し、黒字化を目指すことが資産形成の第一歩です。家計が安定したら、積立貯蓄や少額投資にチャレンジするのがよいでしょう。
20代のうちは、失敗しても挽回するチャンスが多く残されているので、株式投資のようなハイリスク・ハイリターンの投資についても興味があればしっかり学び、実践するのもおすすめです。
30代~40代
30代~40代は、結婚や子育て、住宅購入などでまとまった資金が必要になる年代です。この時期には、住宅ローンや教育費用を準備できる商品に対する知識を身につけておくとよいでしょう。
住宅ローン控除や学資保険、NISAの活用方法などを学びながら、具体的な資金計画を立ててみましょう。
50代
50代は、退職や老後を視野に入れた資金計画を立てる時期です。まず、年金の受給額や退職金の見込み額を把握し、リタイア後の生活に必要な資金を計算しましょう。そのうえで、不足する老後資金を貯める方法や、退職金や年金の受け取り方などを検討することをおすすめします。
まとめ
資産形成の勉強は、まず基礎知識を身につけることから始めましょう。次に目標を設定し、自分に合った分野に絞って学ぶことで、効率よく進められます。その後、実際に少額から運用を始め、定期的に振り返りを行うことで、資産形成についての理解をさらに深められるでしょう。
将来のお金に対する不安を解消するには、資産形成に早めに取り組むことが大切です。ゆとりのある生活を過ごすためにも、資産形成の知識を身につけ、早めに取り組むようにしましょう。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP