日本では、タトゥーを入れている人は少数派だといわれています。タトゥーがあると、温泉やプールへの入場が制限されるだけでなく、持病や既往症がない場合でも生命保険に加入できない可能性があることをご存知でしょうか。
今回は、タトゥーのある人が生命保険に加入しにくいとされる理由や、生命保険の告知審査の仕組みなどを詳しく解説します。
目次
生命保険はタトゥー(入れ墨)ありだと加入できない可能性がある
タトゥー(入れ墨)がある場合、生命保険に加入できないことがあります。その理由として、生命保険は全員が公平に保険料を負担し、支払い事由に該当した場合に保険金や給付金を支払う「相互扶助」によって成り立っているためです。
病気やケガをするリスクや死亡リスクは、人によって異なります。リスクの高い人とリスクの低い人が同じ保険料や保障内容で加入すると、保険金の支払いに偏りが生じ、公平性を損ねることになるでしょう。保険会社は、リスクを適切に評価し、加入可否の判断や被保険者のリスクに応じた保険料の設定をするために審査を行います。
審査基準は保険会社によって異なるため、タトゥーがあるからといって必ずしも保険に加入できないわけではありません。ただし、タトゥーがあると、加入可能な保険会社や商品の選択肢が狭まる傾向にあることは覚えておきましょう。
タトゥーありの人が生命保険に加入できない2つの理由
タトゥーがあると保険会社の審査を通過しにくくなるのは、どのような理由からなのでしょうか。以下で詳しく解説します。
1.健康上のリスクがある
タトゥーや入れ墨があると、健康上のリスクが高いとみなされ、保険会社の審査を通過しづらくなることがあります。
タトゥーと入れ墨は施術方法に若干の違いはありますが、皮膚に針で傷をつけ、インクで文字や絵を描くという基本的なプロセスは共通しています。施術が不衛生な環境で行われたり、タトゥーを掘るときに使用する器具が使い回されたりすると、以下のようなウイルスや細菌に感染するリスクがあり ます。
- HIV
- B型肝炎
- C型肝炎
さらに、タトゥー用インクに含まれることがある重金属は、肝機能障害や肝硬変を引き起こす可能性が指摘されています。タトゥーが健康に及ぼす影響は、依然として不明な点が多いため、医学的リスクに対する懸念が払拭されない限り、保険会社は加入に対して慎重にならざるを得ないといえるでしょう。
2.社会的な信用が低い
近年では、タトゥーや入れ墨をファッションの一部として取り入れる人も増えています。しかし、一般的には「タトゥー・入れ墨がある=暴力団やその他の反社会的勢力と関わりがある」という印象が強く、実際にそれらの勢力との関連も懸念されています。
反社会的勢力の保険加入を認めた場合、抗争などによる保険金支払いのリスクが高まるほか、詐欺や殺人などによって保険金を不正に取得しようとする「モラルリスク」が生じる可能性があります。そのため、保険会社の審査に通過しにくくなる場合があると認識しておくことが重要です。
実際に、一般社団法人生命保険協会の「生命保険業界における反社会的勢力への対応指針」にもある通り、生命保険業界全体で反社会的勢力との関係を断絶する取り組みが徹底されています。
保険会社によってはタトゥーありでも加入できる場合も
保険会社によっては、タトゥーがあっても審査を通過できる場合があります。保険会社によって審査基準は異なるため、タトゥーがあっても健康状態に問題がないことや反社会的勢力ではないことなどの確認が取れれば、加入できる可能性もゼロではありません。
生命保険の募集人には、加入希望者との面談時に知り得た健康状態や生活状況などを保険会社に報告することが義務付けられています。そのため、ネットや郵送などの非対面で手続きをするよりも、タトゥーを入れた事情などを保険会社・代理店の担当者に細かく説明できる対面形式で申し込みをした方が、審査に通過しやすくなるかもしれません。
生命保険の告知審査でタトゥーの有無を伝える必要がある
保険会社の告知審査を受ける際には、タトゥーの有無を必ず伝えなければなりません。告知をする際に保険会社に提出する告知書には、タトゥーに関する質問項目が記載されていないこともあります。
その場合、口頭で申告しなければ保険に加入することはできるでしょう。しかし、万が一のことがあったときには「告知義務違反」となり、保険金や給付金が支払われない可能性が高いため、告知書に記入欄がない場合も担当者に確認し、ありのままを正確に申告してください。
告知とは
告知とは、申込者が申告した健康状態、職業、収入などを基に、加入が適切かどうかを生命保険会社が判断する手続きです。
保険会社所定の告知書への記入や、保険会社が指定した医師の診察を受け、過去の傷病歴や現在の健康状態を申告する「診査」 などの方法によって行われます。
告知義務違反とは
告知義務違反とは、故意または重大な過失によって事実を告知しないことや、事実と異なることを告知することを指します。タトゥーを入れていることを申告し忘れたり、審査に通過するために隠したりしていた場合は告知義務違反としてペナルティの対象です。
告知義務違反があった場合は、保険契約は解除され、これまで支払った保険料は戻ってきません。また、支払い事由に該当しても、保険金や給付金が支払われない場合もあります。
ただし、保険会社の担当者から告知しないことを勧められた場合などにおいて、保険会社は保険契約を解除できません。
生命保険加入後にタトゥーを入れたらどうなる?
生命保険に加入した後にタトゥーを入れれば、基本的に告知義務違反にならないため、問題なく給付金や保険金が受け取れると考える人もいるかもしれません。
しかし、生命保険では、故意または重大な過失があった場合は、保険金や給付金が支払われないことになっています。タトゥーを入れたことによって肝炎や感染症などの病気を発症した場合、故意によるものとみなされ、給付金や保険金が支払われない可能性は否定できません。
保険の契約後にタトゥーを入れると、保険を使うリスクが高まり、生命保険の公平性が崩れてしまうため、保険会社にとっては重大な問題です。タトゥーを入れる前に、必ず保険会社に相談しましょう。
まとめ
タトゥーがある場合、健康面でのリスクが高いとみなされたり、反社会的勢力との関連が疑われたりすることがあり、生命保険への加入が難しくなることがあります。タトゥーがある場合でも保険会社によっては加入できる可能性がありますが、選択肢は限られるでしょう。
とはいえ、タトゥーがあることを隠して保険に加入しようとすることは、告知義務違反となる可能性があるため、やめましょう。タトゥーがある状態で加入を希望する際は、保険会社・代理店の担当者に事情を説明した上で、正確に告知することが大切です。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP