貯蓄型保険の保険料を一括払いするメリット・デメリットとは?

保険全般

貯蓄型保険とは、万が一の保障に加えて、満期や解約時にまとまったお金を受け取れる保険です。掛け捨て型保険とは異なる魅力がある一方で、保険料の高さを懸念し、加入を躊躇している人もいるかもしれません。

しかし、一括払いにすれば割安な保険料で加入できます。

そこで本記事では、貯蓄型保険を一括払いするメリット・デメリットを詳しく解説します。また、保険料の払込方法に関する基礎知識も紹介するため、保険に加入する前に理解しておきましょう。

貯蓄型保険における保険料の支払い方法

保険料の支払い方法は、主に以下の3つに分けられます。

  • 月払い
  • 年払い
  • 一括払い

保険会社や商品などによっては、支払い方法を途中で変更できない場合もあります。そのため、家計の状況に合った適切な支払い方法を選択しましょう。

月払い

月払いは、毎月一定額の保険料を支払う方法です。

1回あたりの支払いを少額に抑えられるため、安定した収入さえあれば、毎月無理のない範囲で保険料を支払えます。また、毎月の支出額が一定であるため、家計管理がしやすい点もメリットです。

年払い

年払いは、1年に1回、まとめて保険料を支払う方法です。半年ごとに保険料を支払う「半年払い」もあります。

月払いに比べて割引が適用されることが多く、年間の支払い総額が少なくなりやすい点がメリットです。これは、月払いよりも支払い回数が少ないため、保険会社の事務手続きの負担やコストが低くなることが関係しているといわれています。

なお、月払いよりも年払いのほうが、保険料の支払い総額を2~3%程度抑えられるケースが一般的です。

年払いでは、支払いのタイミングでまとまった資金が必要になるため、一定の貯蓄がある場合や、収入に余裕がある場合に適しています。

一括払い

一括払いは、契約時に全期間分の保険料を一度に支払う方法です。

資産形成を主な目的として貯蓄型保険を選ぶ場合は、返戻率の高さが重要になります。返戻率は、払い込んだ保険料の総額に対して、どのくらいの満期保険金や解約返戻金を受け取れるかを表しています。

一括払いは、月払いや年払いよりも割引率が高くなることが多く、払い込む保険料の総額を抑えられます。そのため、返戻率も高くなりやすいといえるでしょう。

ただし、保険の契約をするタイミングによって、年払いよりもさらに多くの資金が必要になります。最低保険料(契約時に最低限払い込まなければならない保険料)が100万円以上に設定されている商品もあるため、一時払いを選択する際は、家計や貯蓄に余裕があることが前提になるでしょう。

なお、保険料の一括払いには「全期前納払い」と「一時払い」の2種類があります。双方の違いについて、以下の事項で詳しくみていきましょう。

全期前納払いと一時払いの違い

全期前納払いは保険会社に保険料を「預ける」、一時払いは保険料を「支払う」という点が主な違いです。

全期前納払いでは、保険会社が契約者から一時的に預かった保険料を運用しつつ、毎月・毎年など払込期日がくるたびに保険料に充当します。一方で、一時払いでは保険期間中の保険料をまとめて払い込みます。

貯蓄型保険の保険料を全期前納払い(一括払い)するメリット

貯蓄型保険の保険料を全期前納払いすることで、さまざまなメリットを得られます。以下では、実際に得られるメリットについて、詳しくみていきましょう。

被保険者が死亡または契約を解約した場合に保険料が返還される

全期前納払いは保険を解約した場合に、保険料に充当されていない「未経過分」の保険料が返還され ます。さらに、契約期間や払込保険料に応じた解約返戻金も併せて受け取れる可能性もあります。そのため、支払った保険料が無駄になりにくい点がメリットです。

また、被保険者が死亡した場合も同様で、死亡保険金が受け取れるだけではなく、未経過分保険料も返還されます。一方で、一時払いの場合は一度支払った保険料は払い戻しを受けられません。

払込期間中は生命保険料控除の対象となる

全期前納払いを選択すると、払込期間中は生命保険料控除を毎年受けられます。

生命保険料控除は、1年間に支払った保険料の総額に応じて、所得から控除を受けられる制度です。この制度を活用すれば、所得税や住民税を計算する際のベースとなる所得が減るため、税負担の軽減につながります。

たとえば、払込期間が20年ある場合は、20年間に生命保険料控除を毎年受けられるため、長い目でみれば所得税や住民税の負担を大きく軽減できるでしょう。

一方で、一時払いを選択した場合、生命保険料控除を受けられるのは保険料を払い込んだ年のみです。

貯蓄型保険の保険料を全期前納払い(一括払い)するデメリット

貯蓄型保険の全期前納払いには、以下で紹介するデメリットもあることを理解しておきましょう。

一時払いよりも保険料の割引率が低い

全期前納払いは、月払いや年払いよりも保険料は安くなる傾向にあるものの、一時払いと比較すると保険料の割引率が低くなることが一般的です。一時払いでは、契約時に全額を一括で支払うため、保険会社から大きな割引を受けられる可能性があります。一方で、全期前納払いでは、契約期間内の保険料を前払いするものの、形式上は毎月支払っていることと同様になるため、一時払いほどの割引はそれほど期待できないでしょう。

預けた保険料は自由に引き出せない

全期前納払いで支払った保険料は、原則として契約期間中は引き出せません。

保険会社に一時的に保険料を預ける形になっているとはいえ、銀行預金ではなく、生命保険であることには変わりません。そのため、急な出費や資金が必要になった場合でも自由に保険料を引き出せず、解約するまでは手元に戻ってこないことを理解しておきましょう。

全期前納払いと一時払いはどっちがおすすめ?

全期前納払いは、「生命保険料控除」を積極的に活用したい人に向いています。

先述した通り、全期前納払いは一時払いとは異なり、生命保険料控除を毎年受けることが可能です。保険契約が長期間になるほど、所得税や住民税を大きく軽減できます。とくに、所得税率が高くなりやすい高所得者にとっては、税負担を軽減できるでしょう。

また、途中で生命保険の見直しや解約をする可能性が高い人も、全期前納払いを選択することをおすすめします。全期前納払いであれば、解約時に未経過分の保険料が戻ってくるため、一時払いよりも解約のハードルは低くなるでしょう。

一方で、保険料の払込総額にこだわりたい人は、一時払いを選択することをおすすめします。払込保険料の総額を少しでも抑えられれば、割安な保険料で保障を得られる、返戻率が高くなることで効率よく資産形成ができる、といったメリットを得られるでしょう。

全期前納払い(一括払い)が可能な貯蓄型保険3選

次に、全期前納払いに対応している3種類の貯蓄型保険を紹介します。自身にとってどの保険が適しているか、以下の内容を参考に加入を検討してみてください。

貯蓄性が高い死亡保険である「終身保険」

終身保険は、一生涯にわたって保障が続く死亡保険です。万が一のことが起きた場合に死亡保険金が受け取れるだけでなく、保険期間中に解約した場合は解約返戻金を受け取れます。そのため、資産形成の手段としても有効な保険といえるでしょう。

なお、全期前納払いを利用すれば、払込保険料の総額を抑えられるため、効率的に貯蓄できる可能性があります。

満期になると年金を受け取れる「個人年金保険」

個人年金保険は、一定期間保険料を払い込んだ後、契約者が設定した年齢に達すると年金を受け取れる保険です。全期前納払いを選択すれば、払込保険料の総額を抑えられるため、返戻率が向上し、より効率的に老後資金を準備できるでしょう。

子供の将来の教育資金に備える「学資保険」

学資保険は、子供の教育資金を計画的に貯蓄するための保険です。子供が契約時に決めた一定年齢に達すると、満期保険金や祝金などが受け取れます。全期前納払いを選択すれば、返戻率が高くなるため、効率的に教育資金を貯蓄できるでしょう。

また、一般的な学資保険には、契約期間中に契約者が死亡または、高度障害になった場合に保険料の払い込みが免除される「保険料払込免除特約」が付加されています。

しかし、一時払いではこの特約が適用されません。そのため、この特約を適用したい場合は全期前納払いを選択することをおすすめします。

まとめ

なるべく割安な保険料で貯蓄型保険に加入したい場合は、一括払いを選択するようにしましょう。

一括払いには、全期前納払いと一時払いの2種類があります。全期前納払いは一時払いより割引率が低いものの、未経過分の保険料返還や生命保険料控除を受けられるメリットがあります。

どちらを選んだ場合も、契約時に支払った保険料を自由に引き出せないため、家計の状況を考慮したうえで、払込方法を検討してはいかがでしょうか。

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オカネノホンネ編集部

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