投資をするとき現金はいくら残しておけばよい?基本的な考え方や平均的な投資割合を紹介

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投資をするうえで、現金をどれくらい手元に残しておくべきか悩む人は多いでしょう。投資のチャンスを逃したくないという思いから、すべての資産を投資に回したくなるかもしれません。しかし、手持ちの資金を全額投資に使うと、失敗したときに大きなリスクを負うことになります。

生活費や緊急の出費に対応できなくなる可能性があるため、現金もある程度確保しておくことが重要です。

本記事では、投資初心者でも実践できる投資と貯蓄のバランスの取り方や、一般的な目安を解説します。

投資するとき現金はいくら残すべき?

投資には値動きのリスクがあるため、手持ちのお金すべてを投資に回すのではなく、「いざというときに使うお金」や「これから使う予定のお金」を残しておき、余裕資金で投資するのが基本です。こうすることで、万が一の事態にも備えつつ、安心して投資に取り組めるでしょう。

最低でも生活費の3~6ヶ月分程度は残しておく

投資を始める前に、まずは生活費の3~6ヶ月分を「生活防衛資金」として確保することが大切です。このお金は、急な失業や病気、予期せぬ大きな出費など、緊急時に備えるためのお金です。手元に全く現金がない場合、損が出るタイミングであっても、投資資金を引き出さざるを得なくなってしまうかもしれません。

自営業の方や収入が不安定な方は、1年分の生活費を残しておくと、より安心できるでしょう。生活防衛資金を投資に回すのは避け、まずは日々の安心を優先してから、余ったお金で投資を始めることをおすすめします。

以下では、総務省より実施された「2023年家計調査」の内容を基に「単身世帯」「2人以上世帯」において、どのくらいの生活防衛資金を確保しておけばよいのか解説します。

引用:総務省|「2023年家計調査」

単身世帯の目安

総務省の「2023年家計調査」によると、単身世帯の消費支出は1ヶ月あたり平均で167,620円です。そのため、生活防衛資金は最低でも約50万円、余裕があれば約101万円用意しておくとよいでしょう。

2人以上世帯の目安

総務省の「2023年家計調査」によると、2人以上世帯の消費支出は1ヶ月あたり平均で293,997円です。そのため、生活防衛資金は最低でも約88万円、余裕があれば約176万円用意しておくとよいでしょう。

ライフイベントに備える費用も確保しておくのが理想

結婚、子供の教育費、住宅購入、老後の生活資金など、人生の節目にはまとまったお金が必要になります。これらの費用は投資とは別に、確実に準備しておくことで、計画通りのライフプランを実現しやすくなるでしょう。

投資には元本が減るリスクがあるため、必要な時期が決まっているお金の運用には適しません。例えば、子供の大学進学費用として10年後に200万円が必要な場合、たとえ毎月コツコツ投資に回しても、10年後に予定通り200万円以上が手元に残る保証はなく、運用成績次第では目標額に届かない可能性もあります。

その結果、必要な費用を用意できず、ライフプランの見直しを迫られたり、計画していたイベントを延期・中止したりすることになるかもしれません。

ライフイベントの費用は安全に貯蓄で準備し、残った余裕資金を投資に回すことで、無理なく資産運用を続けることが可能です。

結婚・出産費用の目安

挙式、披露宴・ウエディングパーティーにかかる費用の平均額は、327.1万円です。カップルの自己負担額の平均は153.7万円なので、家族からの援助やご祝儀などにもある程度期待はできるものの、一定の自己資金は用意しておいたほうがよいでしょう。

引用:リクルートブライダル総研|「ゼクシィ 結婚トレンド調査2023調べ」

また、厚生労働省の「出産費用の見える化等について」によれば、出産費用(※)の平均は50.3万円です。公的医療保険から出産育児一時金が50万円支払われるものの、個室に入院したり、正常分娩以外の出産方法を選択したりした場合は、自己負担が大きくなる可能性があります。
※専用請求書から算出した全施設の出産費用(正常分娩)の推移

教育資金の目安

子供の教育資金は進路によっても大きく異なります。すべて公立に進学した場合と、すべて私立に進学した場合、それぞれでかかる教育費用の目安は以下の通りです。

すべて公立 すべて私立
幼稚園 495,378円 926,727円
小学校 2,115,396円 10,001,694円
中学校 1,616,397円 4,309,059円
高校 1,538,913円 3,163,332円
大学 2,536,757円 3,969,723円
合計 8,302,841円 22,370,535円

出典:文部科学省「令和3年度 子供の学習費調査」「国公私立大学の授業料等の推移」

国や地方自治体の支援などもあり、授業料の負担はそれほど大きくならないこともあるでしょう。しかし、教科書代や習い事など、授業料以外の費用も考慮すると、自己負担は大きくなることもあります。

また、自宅外から大学に通うことになった場合や理系の学部に進学する場合は、教育費用の負担は大きくなると考えておいたほうがよいでしょう。

住宅購入費用の目安

住宅購入資金の平均額は以下の通りです。

建物種別 購入資金 自己資金
注文住宅(土地の購入含む) 5,811万円 1,685万円
新築分譲戸建住宅 4,290万円 1,305万円
新築分譲集合住宅 4,716万円 2,279万円
中古戸建住宅 2,983万円 1,410万円
中古集合住宅 2,793万円 1,338万円

出典:国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査報告書」

多くの場合は住宅ローンを利用することになりますが、その場合も購入資金の2~3割の自己資金をあらかじめ用意しておく必要があります。

平均的な投資と貯金のバランスは?

各種統計データを参考にしながら、投資と貯金のバランスについて考えてみましょう。

世界の平均

この表からわかるように、日本は圧倒的に「現金・預金」で金融資産を持っていることが読み取れます。一方で、アメリカやユーロエリアは「投資信託」「株式」などの、資産運用に対して積極的なことがわかります。

以下は、家計の金融資産構成を国別に比較したものです。

現金・預金 債務証券 投資信託 株式等 保険・年金・定型保証 その他
日本 50.9% 1.3% 5.4% 14.2% 24.6% 3.6%
米国 11.7% 4.6% 12.8% 40.5% 27.7% 2.7%
ユーロエリア 34.1% 3.1% 10.6% 21.5% 28.7% 2.0%

出典:日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」

日本は現預金の比率が半数以上を占めています。一方、アメリカやユーロエリアでは、投資信託や株式などの保有率が高くなっており、資産運用に対して積極的に取り組んでいることが読み取れます。

国内の平均

以下は、年代別・年収別に家計の金融資産構成をまとめたものです。

【年代別】※単位:万円

金融資産保有額 預貯金 金銭信託 生命保険 損害保険 個人年金保険 債券 株式 投資信託 財形貯蓄 その他金融商品
20代 151 75 2 14 8 5 2 20 23 2 1
30代 599 287 9 44 5 21 10 140 64 9 10
40代 811 340 14 98 24 46 16 151 86 23 11
50代 1,212 482 13 140 17 89 30 265 103 53 19
60代 1,862 812 12 173 27 137 92 376 185 20 30
70代 1,683 742 20 194 26 66 106 350 157 3 19

【年収別】※単位:万円

金融資産保有額 預貯金 金銭信託 生命保険 損害保険 個人年金保険 債券 株式 投資信託 財形貯蓄 その他金融商品
300万円未満 645 323 3 67 10 35 31 95 68 3 10
300~500万円未満 1,041 443 8 115 16 55 47 215 120 6 16
500~750万円未満 1,293 558 11 140 18 75 57 279 116 26 14
750~1,000万円未満 1,795 753 31 226 33 115 69 328 172 46 22
1,000~1,200万円未満 2,324 931 32 243 39 153 86 481 223 95 43
1,200万円以上 4,344 1,666 92 381 106 263 151 1,175 332 107 70

出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]令和5年調査結果」

金融資産を預貯金、保険(生命保険・損害保険・個人年金保険)、投資(債券・株式・投資信託)の3つに大きく分けた場合、年代・年収を問わず最も多くの割合を占めているのは預貯金です。保険は2割前後、投資は3割前後となっています。

ただし、年齢が上がる・年収が高くなるほど、預貯金の割合は減り、投資の割合が増える傾向も読み取れます。

投資に回すお金がないときの対処法

生活防衛資金や生活費の支出があると、なかなか投資にお金を回す余裕がないと感じるかもしれません。しかし、日常のちょっとした工夫で、投資資金を確保することは可能です。以下の方法に取り組んで、少しずつでも投資を始めてみましょう。

支出を削減して投資に回す

支出を削減することで投資資金を確保する方法があります。支出を削減する際は、まず固定費の見直しから取り組んでみましょう。固定費とは、家賃、通信費、保険料など、毎月一定額かかる費用のことです。例えば、加入している保険を見直す、格安スマホに乗り換える、電力会社を変更するなどの取り組みをすることで、長期的に大きな節約が可能です。これらの見直しによって浮いたお金を投資に回せば、無理のない範囲で資産形成が進められます。

積立投資を始める

積立投資は、毎月決まった金額を投資に回す方法で、投資初心者にも適した手段です。少額から始められるため、家計への負担を抑えながら資産を積み上げていくことができます。

また、定期的に投資を行うことで、購入時期を分散させることができ、リスクを軽減できる点も積立投資のメリットです。価格の高低に限らず一定額を購入するため、平均購入価格を平準化できます。積立投資であれば、リスクを抑えつつ、長期的に資産を増やせる可能性があります。

なお、投資信託などの積立投資を始めるには、証券会社や銀行など、金融機関の口座が必要です。おすすめの証券会社については以下の記事も参考にしてください。

ポイント投資に取り組む

ポイント投資であれば、現金を使わずに投資できるため、資金に余裕がない人でも取り組みやすいでしょう。ポイント投資は、貯めたポイントを金融商品の購入費用に充てるタイプと、貯まったポイントを直接運用するタイプの2種類があります。

前者は、例えば楽天ポイントを使って投資信託を購入するなど、ポイントを現金の代わりに使用するものです。後者は、Pontaポイントやdポイントなどをそのまま使って株式や投資信託を運用し、ポイント自体が増減する仕組みです。

いずれの方法でも、日々の買い物の延長として資産運用を始められるため、気軽に取り組めるでしょう。

まとめ

投資は、手元の資金から生活防衛資金やライフイベントに備える費用を除いた「余裕資金」で取り組むことが重要です。

投資資金が確保できない場合は、支出の見直しや積立投資、ポイント投資などの方法を活用し、無理のない範囲で少しずつ投資を始めてみましょう。

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オカネノホンネ編集部

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