資産運用や投資に興味を持ち始めた人のなかには「投資ファンド」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。この言葉について具体的に理解していない方や「投資信託とはどう違うの」と悩んでいる方もいるでしょう。
この記事では、投資ファンドの仕組みや投資信託との違いなど、基本的な知識をわかりやすく解説します。投資を始める前に、ぜひ参考にしてください。
目次
投資ファンドとは?
投資ファンドとは、機関投資家や一般投資家から資金を集めて事業や有価証券に投資を行い、収益を出資比率に応じて還元する仕組みのことです。投資ファンドに集まった資金は、ファンドマネージャーと呼ばれるプロの担当者が運用します。
投資信託と投資ファンドの違いは?
投資信託は、投資家から集めた資金をひとまとめにして、株式や債券など複数の金融商品で運用する商品です。投資信託は投資ファンドの一種であり、投資信託のことを「ファンド」と呼ぶことも多くなっています。
投資信託は「投資信託及び投資法人に関する法律」によって定義やルールが定められている金融商品です。
投資ファンドの種類
投資ファンドは、募集方法によって公募型ファンドと私募型ファンドの2種類に分かれます。以下では、それぞれの定義や具体的なファンドの種類などを解説します。
公募型ファンド
公募型ファンドとは、不特定多数(一般的に50人以上)の投資家に対して募集をかけ、資金を集めるファンドのことです。証券会社のホームページや銀行・郵便局などの窓口を通じて多くの人が購入できます。
公募型ファンドでは、金融商品取引法に基づいて目論見書の交付などが義務付けられています。目論見書とは、投資信託の特徴や実績など、投資判断をするために必要な重要事項が記載されている書面のことです。
投資信託は公募型ファンドの代表例です。ただし、私募型ファンドに分類される投資信託も多く存在します。一般社団法人投資信託協会の「投資信託の全体像」によれば、2024年6月末時点で公募投資信託は5,936本、私募投資信託8,412本あります。
私募型ファンド
私募型ファンドとは、限られた少数の投資家(一般的に50人未満)や適格投資家などに対して募集をかけ、資金を集めるファンドのことです。適格投資家とは、金融商品取引法で規定されている、投資に関して専門的知識や経験を持った人のことで、証券会社や保険会社、銀行など、いわゆるプロの投資家が該当します。
私募型ファンドを購入するためには、金融資産や年収など、各ファンドが定める購入基準を満たす必要があります。また、販売単価も大きくなる傾向があるため、公募型ファンドのように誰でも購入できるわけではありません。
その反面、公募型ファンドのような厳しい運用の規制を受けにくく、自由な投資戦略に基づいて、高いリターンを狙えるファンドも多くなっています。
私募型ファンドには相場の上げ下げに関係なく、積極的に利益を追求する「ヘッジファンド」や業績不振の上場企業などに投資し、企業価値を高めた上で株式の売却益などを狙う「バイアウトファンド」などの種類があります。
投資信託(ファンド)の種類
投資信託には、さまざまな種類があります。それぞれの特徴を理解しておけば、自分の投資目標に適したファンドを選びやすくなるでしょう。
投資対象による分類
投資信託は、以下のように投資対象によって分類できます。
ファンドの種類 | 投資対象 |
株式型ファンド | 国内外の株式 |
債券型ファンド | 国内外の国債や社債 |
REIT(不動産投資信託) | 国内外の不動産 |
コモディティファンド | 金や穀物、原油など |
バランス型ファンド | 上記の複数の資産にバランスよく投資する |
ファンドによってリスク・リターンは異なります。株式型ファンドやREITは積極的にリターンを追求できる反面、リスクも高くなりやすい側面があります。一方、一般的に債券型ファンドはローリスク・ローリターンです。
また、コモディティファンドは、株式などとは異なる値動きを示す傾向があります。
投資地域による分類
投資信託は、投資地域によって以下の3種類に分類できます。
- 国内型
- 先進国型
- 新興国型
国内型は日本国内の株式や債券などに投資するファンドで、国内の金利や景気の影響を受けて基準価額が変動する傾向があります。
先進国型は北米やEU諸国、新興国型はブラジルや中国、インドなどの株式や債券などに投資するファンドです。これらは投資先の株式や債券の値動きだけでなく、為替レートの影響を受けて基準価額が変動することがあります。
なお、世界中の企業の株式や債券を投資対象とする投資信託も存在します。
運用手法による分類
投資信託は、運用手法の違いによって「インデックスファンド」と「アクティブファンド」の2種類に分けられます。
インデックスファンドは、TOPIXやNYダウといった特定の株価指数などに連動する運用成果を目指す投資信託です。
アクティブファンドは、投資する銘柄や投資割合などを市場調査や企業分析などに基づいて独自に決定し、積極的なリターンを狙う投資信託です。インデックスファンドよりも大きな収益に期待ができるものの、大きな損失を出す可能性もあります。
投資形態による分類
投資信託の投資形態には、「ファンド・オブ・ファンズ方式」と「ファミリーファンド方式」があります。
ファンド・オブ・ファンズ方式は、複数の投資信託に投資する形を取る運用方式です。1つの投資信託を購入するだけで広範な分散投資を実現でき、運用の安定性が高まるというメリットがあります。
一方、ファミリーファンド方式は、親ファンド(マザーファンド)と子ファンド(ベビーファンド)から成り立つ運用方式です。
ベビーファンドが個別の投資家から資金を集め、その資金をマザーファンドに投資することで運用が行われます。複数のベビーファンドで集めた資金を1つのマザーファンドで運用することによって、売買や銘柄選定にかかるコストを削減できるため、効率的な運用を目指せる点がメリットです。
投資信託(ファンド)のメリット
投資信託で資産運用をするメリットは、以下の通りです。
- 専門家に運用を任せられる
- 分散投資ができる
- 少額から購入できる
- NISAを活用できる
投資信託は株式や債券など複数の金融商品で運用を行いますが、個別の銘柄の選定や売買はすべて運用のプロ(ファンドマネージャー)が行います。そのため、投資の経験が浅い方や日々の市場動向を追う時間がない方でも、安心して投資を始めることが可能です。
また、1つの投資信託で国内外の株式や債券、不動産などさまざまな資産に分散投資できるため、特定の銘柄や市場の変動に対するリスクの軽減に期待できます。
少額から購入できる点も投資信託のメリットの1つです。株式投資や不動産投資をする場合、数十万円~数百万円の資金が必要になることもありますが、投資信託はネット証券であれば100円程度から購入できる商品もあり、大きな資金がなくても気軽に投資を始められます。
さらにNISAを活用することで、効率的な資産形成を目指せる点も投資信託のメリットです。NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度です。通常、投資信託で得た譲渡益(売却して得た利益)や分配金には20.315%の税金がかかりますが、NISA口座で取引をした場合、一定枠内の投資であれば税金はかかりません。非課税で保有できる期間は無期限となっているため、長期的な資産形成をする際には大いに役立つでしょう。
おすすめの投資信託や、投資信託の選び方について詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
投資信託(ファンド)のデメリット
投資信託には、以下のようなデメリットも存在します。
- 元本保証がない
- リアルタイムで売買ができない
- 自分に合った銘柄を選ぶのが難しい
投資信託はあくまでも投資商品であるため、預貯金のような元本保証はありません。そのため、市場の変動やファンドの運用成績によっては、元本割れする可能性があります。
また、投資信託は株式と違い、リアルタイムで売買することができません。投資信託の基準価額は1日1回しか公表されておらず、また投資家は当日の基準価額がわからない状態で取引を行う(ブラインド方式)ため、短期的な利益を狙うのは難しいでしょう。
また、投資信託には数多くの種類が存在します。銘柄によってリスクやリターン、運用方針などが異なるため、自分に合った銘柄を選定するには、ある程度の知識と情報収集が必要です。闇雲に投資すると、損失を被る可能性があります。
まとめ
投資ファンドは、投資家から集めた資金を専門家が運用する仕組みのことで、公募型ファンドと私募型ファンドの2種類があります。
投資信託は投資ファンドの一種で、少額から始められるほか、1つのファンドを購入するだけで手軽に分散投資ができるため、多くの人に利用されています。
ただし、投資信託には元本保証がないため、損失を出す可能性があることは理解しておきましょう。また、投資対象や運用方針によってリターンやリスクが異なるため、自分に合ったファンドを選ぶことが重要です。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP