投資の魅力として、投資方法や投資する商品によって得られるリターンやリスクが変わることが挙げられます。投資に興味を持ち、情報収集している人のなかには「オフショア投資」について気になっている方もいるでしょう。
オフショア投資は海外の金融商品に投資する方法の一つであり、日本国内の商品に投資する場合とは異なるメリットやリスクが存在します。
本記事では、初心者の方に向けてオフショア投資の基本から、そのメリット・デメリット、リスクなどを詳しく解説します。
目次
オフショア投資とは
オフショア投資とは、海外の金融機関を通して、海外の金融商品に投資することです。香港やシンガポールなどのタックス・ヘイブン(税制の優遇措置が設けられている地域)で設定された投資信託や貯蓄型生命保険、不動産などの金融商品に投資します。日本国内の商品よりも、高い利回りの商品が多い傾向にあることから、一部の投資家から注目を集めています。
オフショア投資をする際は、IFAと呼ばれる資産運用の専門家を通じて、金融機関の紹介を受けたり、金融商品を購入したりするケースが一般的です。
オフショア投資のメリット
オフショア投資の大きな魅力は、高い利回りが期待できる点です。元本を確保しながら、数年後に数10%を超えるリターンを狙えるような商品もあります。居住国の政府による金融規制を受けないことや、運用会社がタックス・ヘイブンの恩恵によって運用コスト(税金)を減らせることなどが、このような高い利回りを実現する要因として考えられているようです。
また、コモディティや不動産、プライベートエクイティ(未公開株)など、日本では取引するのが難しい多様な商品に投資できる点も魅力です。
オフショア投資のデメリット
オフショア投資にはメリットだけではなく、さまざまなデメリットが存在します。以下で詳しくみていきましょう。
情報収集が難しい
オフショア投資は、日本国内で一般的に広まっているとはいえないため、情報を入手しにくい面があります。また、現地の投資商品や金融機関に関する情報・資料は、英語などの外国語で提供されることが多く、詳細な内容を理解するには語学力や専門的な知識が必要です。
さらに、日本とは異なるルールや規制が適用されるケースもあり、リスクの正確な把握が難しいこともあります。信頼できる情報源を見つけられなければ、誤った投資判断をしてしまう可能性があるでしょう。
大きな損失を出す可能性もある
オフショア投資は、投資先の選択肢が豊富である反面、ハイリスク・ハイリターンの商品に投資すると、大きな損失を出す可能性があります。
また、オフショア投資にはカントリーリスクもあります。カントリーリスクとは、投資対象の国や地域の政治・経済や社会情勢などの変化によって、価格が大きく変動するリスクのことです。
オフショア投資の主な投資先である新興国では、経済や政情が不安定なことも多く、債務不履行(デフォルト)やテロ・戦争などが発生する可能性も少なくありません。カントリーリスクの影響により、大きな損失を出すこともあります。
日本在住なら確定申告が必要
オフショア投資では、タックス・ヘイブンの金融商品を主な投資対象としているため、利益が出ても、納税の必要はないと考える人もいるかもしれません。しかし、日本に居住している限り、オフショア投資で得た利益についても所得税や住民税の納税義務があります。
ここでの居住者とは「日本国内に住所を有している方又は現在まで引き続いて1年以上居所を有している方」のことです。確定申告を忘れてしまうと、延滞税や無申告加算税などのペナルティが発生するので注意しましょう。
オフショア投資で理解すべきリスク
オフショア投資には、日本国内の金融機関で投資をする場合とは異なるリスクがあることを理解しておきましょう。
為替リスクがある
オフショア投資では、資金の送金や出金が外国の通貨(米ドルやユーロなど)で行われるため、為替リスクが発生します。
例えば、米ドル建ての投資商品に資金を入れた場合、円安になると投資の利益が増えますが、逆に円高になると、利益が目減りする可能性があります。具体的には、1万ドルの利益が出た場合、1ドル=150円のときに円に戻すと150万円の利益です。しかし、円高で1ドル=130円になっていると、同じ1万ドルの利益でも130万円にしかなりません。
このように、為替相場の変動によって、実際に手に入るお金の額が大きく変わってしまうのが為替リスクです。利回りがよく、利益が出ていたとしても、実際に換金した場合は想定外の損失を被る可能性もあるので注意しましょう。
詐欺に遭うリスクがある
オフショア投資には、詐欺のリスクも存在します。本来、日本の居住者を対象に金融商品を提供するIFAなどの業者は、日本の法律に基づいて登録を受けなければなりません。しかし、実際には無登録の違法業者も多く活動しています。こうした業者を利用すると、資金の出金ができなくなったり、大きな損失を被ったりするトラブルに巻き込まれることがあります。
無登録業者は日本の法律で取り締まることが難しく、トラブルが発生しても日本国内で法的に保護されないケースがほとんどです。「絶対に儲かる」などのうたい文句で勧誘してくる業者には特に注意しましょう。投資先の業者が登録済みかどうかは、金融庁のホームページで確認できるため、必ずチェックしてください。
金融機関が破綻するリスクがある
オフショア投資のもう一つの大きなリスクは、投資先の金融機関が破綻する可能性です。
日本国内の銀行や証券会社には、分別管理が義務付けられています。分別管理とは、顧客の資産と自社の資産を分けて管理することです。万が一、運用会社が破綻しても、顧客の資産は投資家に変換される仕組みになっています。しかし、オフショアの金融機関では分別管理が行われていないケースも少なくありません。
また、日本の生命保険契約者保護機構のような保護制度がないため、保険商品に投資している場合、保険会社が破綻するとお金を取り戻せなくなるリスクもあります。生命保険契約者保護機構とは、生命保険会社が破綻した場合に一定の契約者保護を図るための機関です。国内における、すべての生命保険会社が加入しています。
このようなリスクを回避するためには、信頼性の高い金融機関を選ぶことが重要です。しかし、オフショア投資に関しては国内の一般的な投資方法と比べて情報が少ないため、初心者には見極めが難しい可能性が高いでしょう。
海外に投資するなら投資信託を活用しよう
オフショア投資には高いリターンを狙える魅力がある一方で、為替リスクや詐欺のリスク、金融機関の破綻リスクなどさまざまなリスクが伴います。そのため、初心者が安心して投資するのは難しいかもしれません。海外資産への投資に興味がある場合は、オフショア投資にこだわらず、リスクを抑えた投資方法として投資信託を活用するのがおすすめです。
投資信託とは、多くの投資家から集めた資金をひとまとめにし、資産運用のプロが運用する商品です。株式や債券、不動産などさまざまな商品に投資をして、得られた収益を投資家に分配します。投資信託を利用すれば、日本国内にいながら手軽に海外の株式や債券に投資できるのが大きな魅力です。さらに、投資信託は1本で幅広い銘柄に投資できるため、分散投資によるリスク軽減も期待できます。
まとめ
オフショア投資は、高い利回りが期待できる一方で、情報収集が難しく、大きな損失を出す可能性も少なくありません。また、為替リスクや詐欺のリスク、金融機関の破綻リスクなど、さまざまなリスクが伴います。
初心者が安全に海外資産に投資したい場合は、分散投資でリスクを抑えられる投資信託を活用するとよいでしょう。投資で得た利益が非課税になる「NISA」も利用できるため、効率のよい運用も期待できます。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP