投資と聞くと、株式投資のような「ハイリスク・ハイリターン」の投資をイメージする人が多いかもしれません。しかし、実はもっとリスクを抑えた運用方法もあります。それが債券投資です。特にリスクを抑えたいけれど、預貯金よりも効率よくお金を増やしたい人に適しています。
本記事では、債券投資の基礎知識やメリット・デメリット、実際の始め方についてわかりやすく解説します。投資先の選択肢を広げたい人は、ぜひ参考にしてください。
目次
債券とは?
債券とは、国や企業などが資金を調達するために発行する、借用証書の一種です。投資家は債券を購入することで発行者にお金を貸し、その代わりに定期的な利息を受け取る権利を得ます。さらに満期になると、投資した元本の返還を受けることが可能です。
債券は、元本の返還や利息の支払いが約束されているため、株式や投資信託などに比べて、安定した収益を狙える投資商品とされています。
債券投資とは?
債券投資とは、その名の通り債券を購入して利益を得る投資方法です。債券投資で得られる利益は以下の3種類に分けられます。
- 利息:満期までの保有中に定期的に受け取れる利益
- 売却益:債券価格が高いときに売却することで得られる利益
- 償還差益:債券の購入価格より、償還時の額面金額のほうが高いときに得られる利益
債券の価格は、金利や市場の状況によって変動するため、購入時より高い価格で売却すれば利益が出ます。
主な債券の種類
債券は、発行体によって以下のような種類に分けられます。
債券の種類 | 発行体 |
個人向け国債 | 日本国 |
地方債 | 地方自治体 |
社債 | 企業 |
外国債 | 外国の政府や企業 |
社債や外国債は、国債や地方債と比べるとリスク・リターンが高くなる傾向があります。
また、新しく発行される債券は「新発債」、既に市場に流通している債券は「既発債」として区別されます。
債券投資にかかる税金
債券投資では、受け取った利息や売却益に対して税金がかかります。利息収入は「利子所得」、売却時の利益は「譲渡所得」として20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)の税率が適用されます。
どちらも申告分離課税により、株式など他の金融商品と損益通算が可能です。損益通算とは、同一年度内で発生した利益と損失を相殺することを指します。
債券投資のメリット
債券投資のメリットとしては、主に以下が挙げられます。
- 預金よりも収益性が高い
- 収益が前もってわかる
- 分散効果が期待できる
債券は、一般的に預貯金よりも収益性が高い傾向にあります。たとえば、普通預金の金利は0.1%程度が一般的です。一方で、個人向け国債の利率は0.38~0.61%となっています。
また、債券は償還日まで保有すれば、額面金額を受け取ることが可能です。発行時に償還までの利率が決まる「固定利付債」であれば、定期的に決まった利率で利息が支払われます。
株式投資における配当金のように、業績によって変動することはないため、受け取れる収益を予測しやすい点はメリットといえるでしょう。
さらに、債券は満期まで保有すれば、償還日に元本が返還されます。そのため、投資商品のなかでもリスクは比較的低いとされており、株式や不動産など他の資産と組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクを抑える効果が狙えます。
債券投資のデメリット
債券投資のデメリットとしては、主に以下が挙げられます。
- 大きなリターンは狙いにくい
- 発行体の信用リスクが存在する
- 元本割れする可能性がある
- 外国債券には為替リスクがある
債券投資は、株式投資と比較するとリターンが低く、物足りなさを感じることがあるかもしれません。また、発行体が財政難や倒産などを理由に債務不履行に陥ると、事前に決められた元本や利息が受け取れない「信用リスク」があります。
市場金利や信用力の変化などによって、債券の価格は変動します。途中売却するタイミングによっては、元本割れする可能性もあるでしょう。
さらに、円以外の通貨で発行・償還される「外貨建債券」には、為替リスクも加わります。償還時まで保有していたとしても、円安・円高によって投資結果が大きく変動することがあります。
債券投資と株式投資の違い
以下の表は、債券投資と株式投資の一般的な特徴の違いを比較したものです。
債券投資 | 株式投資 | |
安全性 | 高い | 低い |
収益性 | 低い | 高い |
流動性 | 低い | 高い |
保有中に得られる利益 | 利子 | 配当金・株主優待 |
値動き | 小さい | 大きい |
債券投資と株式投資は、リスク・リターンが大きく異なるため、投資目的やリスク許容度に応じた使い分けが重要です。
債券投資は、安定した利息収入と元本の償還に期待できる投資方法であり、リスクが低いのが特徴です。一方で、株式投資は企業の業績や経済環境に応じて配当や株価の変動があるため、高いリターンを得られる可能性がありますが、その分リスクも大きくなります。
債券投資が向いている人
債券投資は、以下のような方に適しているといえます。
- 安定した収入を得たい人
- 元本をできるだけ守りたい人
- 使う時期が決まっている資金を運用したい人
- リスクを抑えた分散投資をしたい人
債券投資は、定期的な利息収入が見込めるため、投資のリスクを抑えつつ、安定的なインカムゲインを得たい人に向いています。インカムゲインとは、資産を保有することで得られる利益です。株式のように大きな価格変動が少ないため、安心感を持って投資を続けられるのがメリットです。
また、満期まで保有すれば元本が返還されるため、投資したお金を減らさずに守りたい人にも適しています。特に、退職後に老後資金を運用する場合など、元本割れのリスクを抑えたい場合に有効です。
債券は満期が設定されており、その時期に合わせて元本が返還されるため、将来使う予定がある資金を計画的に運用するのにも適しているでしょう。たとえば、教育資金や住宅購入資金など、数年後に必要となるお金を効率よく増やしておきたい場合に利用できます。
債券は株式と異なる値動きをする傾向があるため、ポートフォリオに組み入れることで全体のリスクを低減する効果があります。特に株式市場が不安定な時期には、債券がリスクヘッジとして機能するため、資産のバランスを保ちたい投資家にも適しているでしょう。
このように、投資の目的や資金の使い道に応じて柔軟に活用できるのが債券投資の大きな魅力です。
債券投資のやり方
債券投資には、直接債券を購入する方法や、投資信託やETF(上場投資信託)を通じて投資する方法などがあります。それぞれの特徴を理解したうえで、自分に合ったやり方ではじめてみましょう。
債券を直接購入する
個人向け国債や社債、地方債などは、証券会社や銀行を通じて購入できます。
最も身近で購入しやすいのが個人向け国債です。2024年9月時点で897の金融機関で取り扱っており、最低1万円から購入可能です。
社債や地方債は、一般的な個人投資家が購入できる商品はそれほど多くありません。最低でも100万円程度の購入資金が必要になるなど、個人向け国債と比べると購入単位も大きくなる傾向があります。
投資信託を購入する
投資信託を通じて債券投資をする方法もあります。投資信託とは、投資家から集めた資金を株式や債券など複数の商品で運用し、収益を投資家に還元する商品です。債券中心の投資信託に投資すれば、1つの商品を購入するだけで複数の債券に投資するのと同じような効果が得られます。
投資信託は100円程度から購入できる商品もあるため、個人投資家が手を出しにくい債券についても少額で投資できるというメリットがあります。また、投資信託は運用会社が代わりに資産を管理・運用してくれるため、個別の債券を選ぶ手間が省ける点もメリットです。
ただし、銘柄によって投資先や運用方針は大きく異なります。それによってリスクとリターンも大きく異なるため、自分の投資目的に合った商品を選ぶことが重要です。
ETFを購入する
ETF(上場投資信託)は、証券取引所に上場している投資信託のことです。ETFのなかには、国内外の債券を投資対象としている商品もあります。
ETFは、株式と同様に市場の値動きを見ながらリアルタイムで売買することが可能です。ただし、最低投資金額は数千円~数万円と銘柄によって大きく異なります。
債券投資で銘柄を選ぶときのポイント
債券投資を成功させるためには、投資する銘柄の選定が重要です。以下のポイントを押さえて、自分に適した債券を選びましょう。
利率・利回り
債券を選ぶ際にまず確認したいのが「利率」と「利回り」です。利率は、債券の額面金額に対して支払われる利息の割合を示します。たとえば、額面金額が100万円で毎年3万円の利息を受け取れる場合、利率は3%です。
一方で、利回りは債券を購入した金額に対して得られる収益(利息や売買差益の合計)の割合を年率で表したものです。たとえば、額面100万円利率5%の債券を90万円で購入し、10年間保有した場合の利回りは、約6.67%です。
【計算方法】
・利子:100万円×5%×10年=50万円
・売買差益:100万円-90万円=10万円
・年間収益:(50万円+10万円)÷10年=6万円
・利回り:6万円÷90万円=約6.67%
既発債券のように買付金額と額面金額が異なる場合は、利率と利回りにズレが生じることがあります。少しでも運用効率の良い投資先を選ぶためには、利回りを確認することが重要です。
残存期間
残存期間とは、満期までの残りの期間を指します。債券は格付けが同じであれば、残存期間が長いほど利率は高くなるのが一般的です。しかし、残存期間が長いと金利変動の影響を受けやすく、価格の変動幅も大きくなるため、途中売却した場合に元本割れするリスクが高くなります。
自分がどのくらいの期間、資金を運用できるのかを確認し、適切な残存期間の債券を選びましょう。
発行体の信用力
発行体の信用力は、債券の安全性を判断するうえで重要です。発行者が破綻した場合、元本や利息の支払いが滞るリスクがあるため、信用力の高い発行体の債券を選ぶことでリスクを抑えられます。
信用力を測る1つの指標となるのが「格付け」です。格付けとは、格付け機関(ムーディーズ、S&P、フィッチなど)が発行体の債務支払い能力を評価したもので「AAA」や「BB」のように示されます。格付けが高いほど信用力があり、リスクが低いと判断されますが、その分利回りは低めです。格付けが低い「ジャンク債」などは、リスクが高い代わりに利回りも高くなるため、リスクとリターンのバランスを見極めて選ぶことが必要です。
まとめ
債券投資は、預金よりも高い収益性を求めつつ、株式投資よりもリスクを抑えたい人に適した運用方法です。定期的な利息を受け取れるうえ、満期まで保有すれば元本の返還にも期待できます。一方で、債券価格の変動による元本割れリスクや、発行体の信用リスクには注意が必要です。
債券投資には、個人向け国債などを直接購入する方法や、投資信託やETFを通じて投資する方法があります。それぞれの特徴を理解し、自分の投資目的や資金状況に合った方法を選びましょう。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP