「急にお金が必要になった」「保険料の支払いが厳しくなった」などの理由で、変額保険の解約を検討している人もいるでしょう。しかし、変額保険は解約するタイミングによっては損失を招く可能性があるため、慎重に判断する必要があります。
この記事では、変額保険を解約するベストなタイミングや解約の流れなどを詳しく解説します。解約以外で保険料の負担を減らす手段についても紹介しますので、今の保険を継続すべきか悩んでいる人はぜひ参考にしてください。
変額保険を解約する3つのタイミング
変額保険は、契約者が払い込んだ保険料を保険会社が特別勘定で運用する商品です。解約時には、支払った保険料や運用実績に応じた解約返戻金を受け取れます。契約期間に縛りはないため、基本的に個人の都合に合わせて自由に解約することが可能です。一般的に、以下の3つのタイミングが変額保険を解約するのに適しているとされています。
- 運用状況がよいタイミング
- まとまったお金が必要となったタイミング
- 別の生命保険に加入するタイミング
それぞれ以下で詳しく解説します。
運用状況がよいタイミング
変額保険は、運用実績に応じて、保険金や解約返戻金が変動するのが特徴です。運用状況がよいときに解約すれば、払い込んだ保険料を上回る金額を受け取れる可能性があります。
ただし、契約してから10年以内に解約した場合は「解約控除」と呼ばれる手数料が差し引かれる商品も珍しくありません。また、外貨建ての商品の場合は、為替相場によっても受け取れる金額が変動します。運用が好調であっても、契約時よりも大幅に円高が進んでいる場合は、円換算した受取額が減ってしまうこともあるでしょう。
運用益が出ているからといって焦って解約するのではなく、具体的に解約返戻金がいくら受け取れるのかを保険会社に確認してから手続きを進めましょう。
まとまったお金が必要となったタイミング
結婚費用や教育資金、住宅購入費用など、まとまったお金が必要になったときも、変額保険を解約するタイミングの一つです。変額保険を解約すると、それまでに支払った保険料と運用状況に応じた解約返戻金が受け取れるため、ある程度まとまったお金を受け取れる可能性があります。
ただし、解約返戻金を受け取れる代わりに、契約自体は消滅してしまう点には注意が必要です。健康状態や年齢などによっては再び同じ保険に加入するのは難しいケースもあるため、保障が継続的に必要な場合は慎重に検討しましょう。
別の生命保険に加入するタイミング
他の生命保険に加入した場合も、変額保険の解約を検討してもよいタイミングの一つです。基本的に生命保険は複数加入していたとしても、それぞれの支払い条件を満たせば、保険金や給付金を重複して受け取れます。そのため、新しい保険に入ったからといって、必ずしも解約しなければならないということはありません。
しかし、家計の負担を減らすために、すでに加入している保険より割安な保険料で新しい保険に加入できる場合は解約を検討した方がよいでしょう。また、ライフステージの変化に伴い、必要な保障が変わる場合も契約の見直しをおすすめします。
変額保険を解約する前に把握しておくべきポイント
変額保険を解約する際は、保障の仕組みや課税関係についても理解しておきましょう。
変額保険の最低保証は死亡保障のみである
変額保険の死亡保険金には「最低保証」があるため、運用が不調な場合でも受け取る金額が契約時に定めた基本保険金額より少なくなることはありません。
たとえば、基本保険金額300万円、払込保険料総額250万円の有期型変額保険に加入したとしましょう。もし運用状況が悪くなったタイミングで被保険者が死亡したとしても、変額保険なら最低でも300万円の保険金を家族に遺せます。しかし、運用状況が悪いときに解約したり、満期を迎えたりすると、満期保険金や解約返戻金は払込保険料総額250万円を下回るリスクがあります。特に加入してからの期間が短い場合は、解約返戻金額も少なくなりやすい点には注意しましょう。
解約返戻金には税金がかかる
変額保険の解約返戻金には、一定の税金がかかる可能性があります。たとえば、受け取った解約返戻金のうち払い込み保険料を上回った分については、一時所得として所得税や住民税の課税対象です。課税対象額は(解約返戻金額ー払込保険料総額ー特別控除50万円)×1/2で求められます。
また、契約者以外が解約返戻金を受け取る場合、贈与税が発生する可能性があります。贈与税には年間で110万円の基礎控除額があるため、110万円を超えた分について課税対象です。運用が好調で解約返戻金が増加している場合でも、十分な解約返戻金を受け取れるとは限らないことは理解しておきましょう。
変額保険を解約しないで保険料の負担を減らす4つの方法
保険料の支払いが厳しい状況であるものの、運用状況が悪く解約しにくいといったケースもあるかもしれません。変額保険では、解約以外にも以下の方法で保険料の負担を減らすことが可能です。
- 払済保険に変更する
- 延長保険に変更する
- 部分解約をする
- 契約者貸付を利用する
1.払済保険に変更する
払済保険とは、保険料の払い込みを中断して、今までの契約と保障期間が同一の新しい保険に変更できる制度のことです。変更時点での解約返戻金を一時払い保険料に充当する仕組みになっているため、多くの場合、今までの契約よりも保険金額は少なくなります。
保険料の負担を減らしながら、これまで同様の保険期間で一定の保障を継続したい場合にはおすすめできる方法です。解約をするわけではないため、払済保険への変更後も解約返戻金は増えていく可能性があります。ただし、変更と同時に特約は消滅することがほとんどです。また、変更に対応していない商品もある点には注意しましょう。
2.延長保険に変更する
延長保険とは、保険料の払い込みを中断して、今までの契約と保障金額が同一の定期保険に変更できる制度のことです。変更時点での解約返戻金をもとに保険期間が決まるため、基本的に変更前よりも保険期間は短くなります。
保険料の支払いに困っているものの、子育ての期間や定年を迎えるまでの間など、一定期間は手厚い保障を確保しておきたいと考える人におすすめできる方法です。ただし、払済保険と同様、基本的に変更に伴って特約は消滅します。また、解約返戻金が少ない場合や商品によっては延長保険への変更ができない場合もあるので注意してください。
3.部分解約をする
現在の保険を部分解約することも、保険料の負担を減らすという点では有効な方法です。部分解約は「保険金の減額」と「特約の解約」の2つに分けられます。保険金の減額をする際は、変更時点での必要保障額を計算してから手続きを進めましょう。子どもが独立している場合や住宅ローンの団体信用生命保険に加入するタイミングなどは必要保障額が低くなりやすいため、見直しのチャンスになるかもしれません。
また、特約の解約をする際は、優先順位をつけ、必要性の低いと判断した特約を解約するのがよいでしょう。ただし、部分解約する金額や内容によっては、思ったほど保険料の削減効果が得られない可能性もあります。不安な方は保険会社・保険代理店の担当者やFP(ファイナンシャルプランナー)などに相談してみましょう。
4.契約者貸付を利用する
契約者貸付とは、解約返戻金の範囲内で保険会社からお金を借りられる制度です。お金を借りている間もこれまで同様に保障が継続するため、まとまったお金を用意するために保険の解約を検討している人には適している方法といえるでしょう。
ただし、借り入れの際には一定の利息がかかるため、返済可能な範囲で利用しなければなりません。返済ができなくなった場合は、保障自体が消滅してしまう可能性があります。また、契約期間が短い場合や商品によっては利用できない場合もあるため、注意してください。
変額保険を解約する際の流れ
変額保険を解約する際は、以下の手順に従って手続きを進めましょう。
- 解約する意向を保険会社に伝える
- 解約書類を確認し同意する
- 解約書類を提出する
- 解約が成立
なお、新しい生命保険への加入に伴い解約をする場合、必ず新しい契約がスタートしたことを確認してから解約手続きを始めてください。その理由として、すでに契約している保険を先に解約してしまうと、新しい保険が有効になるまで「保障の空白期間」が生じてしまうためです。空白期間中に万が一のことが起こっても保障対象とならないため十分に注意しましょう。
1.解約する意向を保険会社に伝える
まずは保険会社に解約の意向を伝えます。保険会社の担当者やコールセンターに連絡し「解約したい」旨を伝えましょう。数日経つと解約書類が送られてきますため、必ず受け取ってください。口頭での説明だけで解約が完了するわけではないので注意しましょう。
なお、解約する際には解約理由を聞かれる場合がありますが、保険法第54条に「保険契約者はいつでも生命保険契約を解除することができる」と定められているため、無理に答えなくても問題ありません。
2.解約書類を確認し同意する
解約書類を受け取ったら、手元の保険証券と照らし合わせながら証券番号などに誤りがないかを確認し、署名・捺印をしましょう。書類には契約者の署名が必要で、代筆するのは厳禁です。
また、記入漏れや誤りがあると、不備となって手続きに時間がかかってしまいます。手続きに時間がかかると、変額保険の場合、解約返戻金の額が変動するリスクがあるため注意が必要です。
3.解約書類を提出する
一般的に生命保険の解約手続きでは、以下の書類を郵送する必要があります。
- 保険会社から郵送されてきた解約書類
- 加入している契約の保険証券
- 運転免許証やパスポートなどの本人確認書類
意図しない保険料の引き落としが行われる可能性もあるため、必要事項を記入し各書類をそろえたら、速やかに書類を提出しましょう。
4.解約が成立
解約が成立したら、保険会社から解約の通知が書面で届きます。解約返戻金は、手続き完了後1週間前後で振り込まれるケースが一般的です。
まとめ
変額保険は運用次第で解約返戻金が変動する商品であるため、運用状況を確認した上で解約すべきか検討しましょう。保険料の負担を減らす目的で解約を考えている場合は、払済保険や延長保険への変更、部分解約、契約者貸付などの方法も検討してみてください。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP