生命保険の契約で実際にあったトラブルの事例を紹介!未然に防ぐ方法とは?

保険全般

生命保険は、自身や家族の万が一に備えることを目的に加入しますが、契約や請求の過程でトラブルになってしまう可能性もあるでしょう。たとえば、生命保険に関するトラブルには、保険金の未払い、契約内容の誤解などが挙げられます。

そこで本記事では、実際にあったトラブルの事例をもとに、その原因や対処法を詳しく紹介します。この記事を読むことで、生命保険に関するトラブルを未然に防ぎ、安心して加入するためのヒントを得られるでしょう。

生命保険関連のトラブル相談の推移

以下のように、近年における生命保険関連のトラブル相談件数は高い水準で推移しています。

年度 相談件数
2020年 6,084件
2021年 5,298件
2022年 5,649件
2023年 468件

※2023年のみ5月31日時点での数値

引用:独立行政法人国民生活センター|「生命保険関連」

2020年前後に特に大きな問題となっていたのが「外貨建て保険」に関する苦情です。外貨建て保険では、一般的な生命保険とは異なり、手数料の負担や為替差益が発生します。

しかし、これらの仕組みをよく理解しないまま契約に至ったり、老後資金の確保や元本保証などのニーズと異なる勧誘をされたりするケースが、高齢者を中心に多く見られました。

生命保険で実際にあったトラブルの事例3選

生命保険に関するトラブルは、多くの契約者にとって避けたいところでしょう。以下では、生命保険契約における代表的なトラブル事例を3つ紹介し、それぞれのケースで何が問題となったのかを解説します。

事例1:想定していた契約内容と違った

生命保険の契約に関するトラブルの一つに、「契約内容が思っていたものと違う」といった事例があります。たとえば、契約者が特定の疾病に対する保障を期待していたにもかかわらず、約款にはその疾病が保障対象外と記載されていたというケースが該当します。

このような場合に、保険会社に契約の取消などを求める際は、実際の契約内容と顧客の理解に齟齬が生じている理由について、保険会社側に非があることを証明する必要があります。

具体的には、生命保険会社から説明を受けた内容・時期、説明の際に使用した資料、担当者から契約内容を誤認させるような発言があったかを整理したうえで、保険会社側に問い合わせてみましょう。

事例2:保険金を請求時に支払われないといわれた

保険金の請求時に、「約款の免責事由に該当するため支払われない」といわれるケースもよくあるトラブルの一つです。たとえば、死亡保険金には以下のような免責事由があり、該当すると保険金が支払われないことになっています。

  • 保障開始から1~3年以内の自殺
  • 契約者または死亡保険金の受取人の故意による場合

免責事由は、保険会社や保険商品によっても大きく異なりますが、契約時に免責事由に関する説明を受けていないと主張する契約者も多く存在します。

生命保険会社は、約款などに基づいて保険金や給付金の支払い可否を判断しています。そのため、保険金や給付金が支払われない場合には、その理由を必ず確認しましょう。その理由が事実と異なる場合は、改めて事情を保険会社に説明すべきです。

保険会社と話し合いを重ねたうえで、解決に至らない場合には、生命保険協会の「生命保険相談所」や「裁定審査会」などの相談窓口を利用することをおすすめします。

事例3:一方的に保険契約を解除された

「保険会社から一方的に保険契約を解除された」として、トラブルに発展するケースも存在します。過去には、契約者が給付金を請求した際に告知義務違反が発覚し、保険会社が契約解除を通知したことで、解約の有効性について争われた事例もありました。

生命保険を契約する際は、過去の傷病歴や現在の健康状態、職業などを保険会社にありのまま告知する必要があります。しかし、故意または重大な過失で、事実を告知しなかった、事実と異なる告知をした、といった場合は「告知義務違反」となり、基本的に保険金や給付金は受け取れません。また、約款上では、責任開始日(復活の場合は復活日)から2年以内であれば、契約自体を解除できるとしています。

告知義務違反が理由で契約解除を通知された場合、給付金の支払いや払込保険料の返還を求めるのは難しいと考えたほうがよいでしょう。ただし、契約時の状況を考慮して、保険会社から和解金が支払われたケースもあります。

そのため、契約解除の通知を受けた場合は、速やかに保険会社や生命保険協会、国民生活センターなどの各種相談窓口に連絡し、解決策を協議しましょう。

実際にトラブルに陥った際の相談先

実際に生命保険に関するトラブルが生じた場合は、以下で紹介する専門機関に相談してみましょう。

生命保険相談所

生命保険相談所は、一般社団法人「生命保険協会」が運営する相談機関です。生命保険会社との間に生じたトラブルの解決や、生命保険の商品内容についての説明など、幅広い悩みに対して中立・公正な専門家が解決を図ります。

なお、電話での相談だけでなく、全国50ヶ所にある相談所に訪ねて相談をすることも可能です。

裁定審査会

裁定審査会は、一般社団法人「生命保険協会」が法令に基づいて設置しているADR機関です。ADRとは、公正・中立な第三者が間に入り、裁判ではなく話し合いを通じてトラブルの解決を図る手続きを指します。裁定審査会は、弁護士や消費生活相談員など、個別の生命保険会社と特別な利害関係を有していない第三者で構成されているため、中立な立場で親身に話を聞いてくれるでしょう。

当機関を利用するには、まず生命保険相談所に苦情を申し出なければなりません。生命保険相談所は、利用者に対してアドバイスをしながら生命保険会社に連絡し、解決を依頼します。その後、原則1ヶ月を経過しても問題解決に至らない場合は、保険契約者が裁定審査会に申立てをすることが可能です。

手続きは、主に書面や事情聴取に基づいて行われるため、全国どこからでも手続きができ、費用もかかりません。ただし、事情聴取の際にかかる交通費や通信費などは自身で負担する必要があります。

国民生活センター

独立行政法人である「国民生活センター」で、生命保険に関して相談することが可能です。有資格者である「消費生活相談員」から、生命保険のトラブル解決策に関するアドバイスを受けられます。

基本的に相談方法は電話のみで、消費者ホットライン「188」に連絡すると、都道府県などが運営する最寄りの消費生活センターに電話がつながります。なお、土日祝日などの消費生活センターが閉所している場合は、国民生活センターの休日相談窓口で相談可能です。

トラブルに陥らないための防止策

生命保険に関するトラブルについて、実際に発生してから対処することも可能です。しかし、トラブル解決までに手間と時間がかかるため、できれば発生させないのが理想といえるでしょう。

以下では、トラブルに陥らないための防止策を3つ紹介します。

保障内容や範囲などを理解したうえで契約する

生命保険に加入する際は、契約前に約款や重要事項説明書、パンフレットを熟読し、不明点があれば担当者に確認しましょう。また、口頭による説明に頼るだけでなく、書面による確認を徹底すれば、誤解が生じることを防げます。

特に、支払事由や免責事由など、保険金の支払いに関わる部分については、理解を深めておきましょう。これにより、「想定していた契約内容と違った」「請求したのに支払われない」といったトラブルを避けられるはずです。

契約時に正確な内容を告知する

生命保険の契約時には、健康状態や既往症などを正確に告知しましょう。告知義務違反をした場合、給付金や保険金が支払われないばかりか、契約を解除されることもあるため、大きな不利益を被ってしまいます。

なお、健康状態を告知する際は、生命保険会社所定の告知書に記入することが一般的です。正確に告知するために、健康診断の結果表やお薬手帳、医療費の領収書・明細書などを手元に用意したうえで手続きを行いましょう。なお、理解が曖昧な部分がある場合は、適当に記入せず、医療機関に確認をすることが大切です。

記入方法に迷った場合は、保険会社や保険代理店の担当者に随時確認しましょう。ただし、営業担当者に口頭で健康状態を伝えても、告知したことにはならないため注意が必要です。

クーリング・オフ制度が適用できるか確認する

保障内容が希望に合わない場合は「クーリング・オフ制度」を利用することで、一定期間内であれば申し込みを撤回できます。

具体的な期間は、「クーリング・オフに関する書面を受け取った日」または「申込日」のいずれか遅い日から、その日を含めて8日以内です。この期間内に手続きをすれば、クーリング・オフが適用され、保険料の払戻を受けられる可能性があります。

しかし、契約時に医師の診査を受けた場合や保険期間が1年以内の契約に関しては、クーリング・オフの対象外となるケースが一般的です。また、保険会社や商品、払込方法などによってクーリング・オフの取扱いは異なるため、契約前に必ず確認しておきましょう。

まとめ

生命保険契約では、契約内容の誤解や保険金・給付金の不払い、告知義務違反による契約解除などに関するトラブルが多発しています。

自身がトラブルに遭った際は、専門機関へ相談するもしくは、ADR、クーリング・オフ制度などを利用すれば解決できますが、余計な手間が発生してしまいます。面倒事を避けるためにも、保険契約時には保障内容や約款を詳細に確認したうえで、健康状態を正確に告知するようにしましょう。

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オカネノホンネ編集部

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