変額保険を払済保険にするメリット・デメリットとは?払済保険への変更を検討する2つのケース

保険全般

変額保険の中には、契約期間中に「払済保険」へ変更できる商品があります。払済保険にするとそれ以降の保険料を支払う必要がなくなるため、解約前に検討したい選択肢の一つです。しかし、一歩間違えれば、せっかく入った保険が無駄になることもあるため、手続きすべきか慎重に検討する必要があります。

この記事では、変額保険を払済保険に変更するメリットとデメリットをわかりやすく解説します。今入っている変額保険を払済保険にすべきか悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。

変額保険の払済保険とは?

変額保険は、特別勘定の運用実績によって受け取れる保険金や解約返戻金額が変動する保険です。安定した運用成果を得るために、基本的に長期の運用が前提となっています。しかし、保険料払い込み期間が20年や30年といった長期間にわたる場合、急なライフスタイルの変化などにより保険料が支払えなくなる可能性もゼロではありません。

保険料の支払いが困難になった場合に備えて、知っておきたい解決策の一つが「払済保険」への変更です。ここでは、払済保険の概要や払済保険に変更できる保険の種類などを解説します。

払済保険の概要

払済保険とは、保険料の払い込みを中断する代わりに保障金額を小さくして保障を継続する方法です。変更時点での解約返戻金を変更後の一時払い保険料に充当することで、保障期間と保険種類が同一の保険に変更する仕組みになっています。

たとえば、1,000万円の終身保険を払済保険に変更すると、保障金額が300万〜500万程度に減額される代わりに、以降の保険料の支払いが不要となります。一方、保障期間は終身のまま変わらないため、保険料の負担を減らしつつ保障の継続が可能です。

変額保険以外の払済保険が対象となる保険

払済保険の対象となるのは、解約返戻金のある生命保険です。変額保険以外であれば、終身保険や養老保険、個人年金保険など、いわゆる「貯蓄型」の保険が対象になります。一方、解約返戻金がなければ払済保険への変更はできないため、医療保険やがん保険のような「掛け捨て型」の商品は払済保険に対応していません。

ただし、貯蓄型の商品であっても、契約してすぐに解約するケースや低解約返戻金型の商品など、解約返戻金が少額の場合は払済保険にできないケースもあります。

変額保険を払済保険にするメリット

変額保険を払済保険に変更すると、以下のようなメリットが得られます。

  • 保険料の負担がなくなる
  • 特別勘定による運用が継続されることにより解約返戻金が増える

保険料の負担がなくなる

払済保険を選択することで、保険料の支払いを停止しながらも主契約の保障を継続することが可能です。

保険料の負担を軽減する方法としては、払済保険だけでなく、解約や部分解約も選択肢に挙げられます。ただし、解約をすると保障がなくなるため、万が一のことが発生した際に保障を受けられなくなるリスクがあります。さらに、年齢が上がったり健康状態が変わったりした場合、再加入が難しくなることもあるでしょう。部分解約を選べば保険料の負担は減りますが、引き続き支払いを継続する必要があります。

一方で、払済保険は、健康状態の告知や医師の診査をせずに手続きが可能であり、保険料の支払いも不要になるため、経済的な負担を大幅に削減できるでしょう。

払済保険にした後でも保険金や解約返戻金が増える可能性がある

一部の保険会社では、「定額払済保険」と「変額払済保険」の2種類から変更先を選択できます。定額払済保険を選択した場合、変更後の保険金額は一定です。一方、変額払済保険を選択した場合は特別勘定での運用が継続されるため、保険金や解約返戻金が増える可能性があります。

ただし、変額払済保険の死亡保険金には最低保証があるものの、解約返戻金には最低保証がありません。そのため、解約のタイミング次第では、解約返戻金を受け取れない可能性もあるため注意しましょう。

変額保険を払済保険にするデメリット

変額保険を払済保険に変更した場合、以下のようなデメリットが生じます。

  • 保障金額が下がる
  • 所定の期間を過ぎると元の契約に戻せなくなる
  • 特約や配当金がなくなる

万が一のことがあったときに受け取れる保険金・給付金が少なくなる可能性があることを理解した上で、払済保険への変更手続きを進めるようにしましょう。

保障金額が下がる

変額保険を払済保険に変更すると、保障金額が下がるため、万が一のことがあった場合に保障が不足する可能性があります。

また、払済保険は、変更時点での解約返戻金をベースに保険金額が決まります。運用が不調で解約返戻金が少なくなっているタイミングで払済保険に変更すると、想定よりも保障金額が減ってしまうかもしれません。

保険料の支払いは厳しいものの、目先の数年は手厚い保障を確保しておきたい場合は「延長保険」への変更を検討するものよいでしょう。延長保険とは、保険料の払い込みを中止して、その時点での解約返戻金をもとに保障金額が同一の定期保険に変更する方法です。延長保険にすれば保険期間は短くなるものの、一定期間は保障を変えずに済むため、安心して過ごせるでしょう。

特約や配当金がなくなる

変額保険の中には、保障内容をより充実させられる「特約」を付加できる商品や保険会社での運用、保険金支払いの実績、事業費の支払いなどに対して、契約者から集めた保険料が多かった場合に、契約者に「配当金」を還元する商品などがあります。払済保険にすると特約や配当金がなくなるため、保障や受け取れる金額が少なくなる点がデメリットです。

ただし、リビング・ニーズ特約や指定代理人請求特約などは、払済保険に変更しても消滅しないケースが多くなっています。

リビング・ニーズ特約とは、余命六ヶ月以内と医師に判断された場合に、保険金の一部を生存中に受け取れる特約のことです。また、指定代理人請求特約とは、被保険者が特別な事情で給付金が請求できない場合に指定した代理人が代わりに保険金を請求できる特約のことを指します。

変額保険を払済保険にする2つのケース

変額保険を払済保険に変更する主な理由は、次の2つです。

  • 保険料の支払いが難しくなったケース
  • 保障内容を見直したいケース

1.保険料の支払いが難しくなったケース

保険料の支払いが難しくなった場合は、払済保険への変更を検討してもよいでしょう。保険料の支払いは長期間に渡るケースが多く、その間にライフステージや生活環境の変化によって急に支出が増える場合も少なくありません。

しかし、支出が多いからといって保険を解約してしまうと、万が一のことがあったときに家族に迷惑がかかるかもしれません。払済保険なら、保障を継続しつつ保険料の負担を減らすことが可能です。

2.保障内容を見直したいケース

保障内容を見直したいときも、払済保険への変更を検討するのに適したタイミングです。結婚や出産、子どもの独立など、節目のタイミングで必要な保障が変わることはよくあります。

たとえば、子どもの教育費用のために変額保険に加入したものの、予想より学費が少なく済むことが分かった場合、生存中の保障を確保するためにがん保険に加入することを考えるかもしれません。このような状況では、払済保険に変更して保険料の負担を軽減しつつ新たな保険に加入することが、より合理的な選択となるでしょう。

変額保険を払済保険にする際の注意点

変額保険を払済保険にする際は、一定の手数料がかかるケースがあります。また、すべての商品が払済保険への変更に対応しているとは限らないため、注意しましょう。

解約控除がかかる場合がある

払済保険へ変更する際に解約控除がかかり、変更後の保険金額が思ったよりも少なくなる場合があるため注意しましょう。解約控除とは、契約日の経過年数に応じて解約返戻金から差し引かれる手数料のことです。一般的に、契約してから5〜10年以内の解約や払済保険へ変更する際には、解約控除が適用される可能性があります。

保険の種類や保険会社によっては払済保険にできないケースがある

保険の種類や保険会社の規定によっては、払済保険にできないケースもあります。たとえば、個人年金保険料税制適格特約を付加した個人年金保険は、契約後10年間は払済年金保険へ変更できません。保険料が支払えなくなったときのことが心配な場合は、加入前に払済保険や延長保険などに対応しているか確認しておきましょう。

所定の期間を過ぎると元の契約に戻せなくなる

保険会社によっては、払済保険への変更後、一定期間内であれば変更前の契約に戻せる「復旧期間」を設けている場合があります。復旧をする際には、保険会社の告知や診査を受けた上で、復旧部分の積立金の不足額や所定の利息などを支払わなければなりません。復旧期間をすぎた場合は、元の契約に戻せなくなるため注意しましょう。

まとめ

変額保険の保険料を支払うのが困難になった場合や、保障内容の見直しをしたい場合は、払済保険への変更を検討してみましょう。保険料の負担を減らしつつ、一定の保障を確保できるため、万が一に備えることが可能です。

ただし、保険金額が減ったり、特約や配当金がなくなったりするデメリットもあります。変更時に解約控除が適用されるケースもあるため、変更後の保障内容・保険金額を確認した上で手続きを進めるようにしましょう。

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オカネノホンネ編集部

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