被保険者に万が一のことがあった場合に保険金を受け取れる死亡保険は、定期保険と終身保険の2種類に分けられます。「定期保険」の加入を検討しているものの、具体的にどのような特徴がある保険なのか、理解していない人もいるでしょう。
本記事では、定期保険のメリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。終身保険とどちらに加入すべきか迷っている人は参考にしてください。
目次
定期保険とは
定期保険とは、一定の保険期間中に被保険者が死亡・高度障害状態になった場合に、保険金を受け取れる保険です。満期保険金はなく、解約返戻金もほとんどないため、一般的に掛け捨て型の保険に分類されます。保険料払込期間と保険期間は同一となっているケースが一般的です。
定期保険の保険期間
定期保険の保険期間は「全期型」と「更新型」の2種類に分けられます。
全期型とは、保険期間満了まで保険金額や保険料が一定で変わらない保険です。全期型の定期保険には「10年」「20年」のように一定年数を保障する「年満期」と、「60歳」「70歳」のように一定年齢までを保障する「歳満期」の2種類があります。
一方で更新型は、5年や10年など年数を区切って契約し、更新を繰り返す保険です。保険金額を変更しない場合、更新をするたびにその時の年齢や保険料率で保険料が再計算されるため、基本的に保険料は徐々に高くなっていきます。健康状態に関係なく、所定の年齢までは更新が可能です。
更新を続けると更新型の方が払込保険料の総額は高くなる傾向にあります。
定期保険と終身保険の違い
定期保険と終身保険は、以下のように違いがあります。
定期保険 | 終身保険 | |
保険期間 | 一定期間のみ | 一生涯 |
保険料 | 終身保険よりも割安 | 定期保険よりも割高 |
解約返戻金の有無 | ほとんどない | あり |
定期保険は終身保険よりも貯蓄性が低く、保険期間も短いことがほとんどです。しかし、その分、割安な保険料で手厚い保障を備えられます。
定期保険の種類
定期保険には、以下の3種類があります。
- 定期保険(平準型)
- 収入保障保険
- 逓減定期保険
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
定期保険(平準型)
定期保険(平準型)は、保険期間中に受け取れる保険金額が一定で変わらない保険です。たとえば、30歳の人が60歳満期で保険金額1,000万円の定期保険(平準型)に加入すると、40歳と60歳のどちらで万が一のことがあった場合でも受け取れる保険金は1,000万円です。
収入保障保険
収入保障保険は、被保険者に万が一のことがあった際に、保険金を年金形式で受け取れる保険です。保険期間満了までの残り期間に応じて、保険金を受け取れる回数は変化します。受け取る保険金の総額は、契約から時間が経つほど徐々に少なくなっていくということです。
保険金額が一定の定期保険(平準型)と比べて割安な保険料で準備できるため、子どもの成長に伴い必要な保障額が減っていく子育て世帯などに適した保険といえるでしょう。
なお、2年や5年などの「最低保証期間」が設けられている商品もあります。満期直前で保険金の支払いが発生した場合でも、最低保証期間が終了するまでは、保険金を受け取ることが可能です。
また、年金ではなく一時金で保険金を受け取れる商品もありますが、年金で受け取るよりも保険金の総額は少なくなります。
逓減定期保険
逓減定期保険は、保険期間の経過とともに保険金額が減少していく保険です。保険金額が徐々に減っていく点や、必要保障額の変化に合わせて合理的に備えられるという点は収入保障保険とほとんど変わりません。ただし、逓減定期保険の場合は年金形式ではなく一時金で保険金を受け取るケースが一般的です。
定期保険の4つのメリット
定期保険には、以下のようなメリットがあります。
- 保険料を抑えた上で手厚い保障が受けられる
- 保険の内容を見直しやすい
- 生命保険料控除を受けられる
- 特定期間の保障を手厚くできる
1.保険料を抑えた上で手厚い保障が受けられる
定期保険は、手ごろな保険料で手厚い保障を準備できるのが特徴です。契約年齢や保険金額が同じだとすれば、終身保険と比べて割安な保険料で加入できることが多くなっています。これは、終身保険よりも保険期間が限定的で貯蓄性もほとんどないことが関係しているといえるでしょう。
一般的な定期保険では、保険金額が同じであっても、保険期間が短いほど保険料は安くなる傾向があります。保障が必要な期間に絞って定期保険に加入すれば、家計への負担を減らしつつ万が一のリスクに備えられるでしょう。
なお、定期保険には、保険会社の定める健康状態の基準を満たすと、割安な保険料率(健康体料率)が適用される商品があります。同様に、非喫煙者であれば、割安な保険料率(非喫煙者料率)が適用される商品もあ り、これらの条件に合致する場合は保険料の負担をさらに抑えられる可能性があります。
2.保険の内容を見直しやすい
定期保険には、保険の見直しがしやすいというメリットがあります。
ライフステージが変化するにつれて、必要な保障額は変わることが一般的です。また、経済的な理由 で一時的に保険料を抑えたいと考える場合もあるでしょう。
定期保険であれば、満期や更新が定期的に訪れるため、保険の継続や保険金額の増減をその都度決定できます。これにより、状況に応じて保障内容を柔軟に見直すことが可能です。
3.生命保険料控除を受けられる
定期保険に加入すると、生命保険料控除を受けられるため、所得税や住民税の負担を軽減できます。
生命保険料控除とは、1年間に支払った保険料に応じて所得から一定額の控除を受けられる制度です。2012年1月1日以降に締結した契約を対象とする「新制度」と、2011年12月31日以前に締結した契約を対象とする「旧制度」があり、それぞれ控除区分が異なります。
新制度 | 旧制度 |
|
|
定期保険は新旧どちらの制度であっても「一般生命保険料控除」に区分されるケースが一般的です。控除限度額には、制度によって以下のような違いがあります。
【新制度】
所得税 | 住民税 | ||
年間払込保険料 | 控除額 | 年間払込保険料 | 控除額 |
20,000円以下 | 払込保険料全額 | 12,000円以下 | 払込保険料全額 |
20,000円超40,000円以下 | (払込保険料×1/2)+10,000円 | 12,000円超32,000円以下 | (払込保険料×1/2)+6,000円 |
40,000円超80,000円以下 | (払込保険料×1/4)+20,000円 | 32,000円超56,000円以下 | (払込保険料×1/4)+14,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 | 56,000円超 | 一律28,000円 |
【旧制度】
所得税 | 住民税 | ||
年間払込保険料 | 控除額 | 年間払込保険料 | 控除額 |
25,000円以下 | 払込保険料全額 | 15,000円以下 | 払込保険料全額 |
25,000円超50,000円以下 | (払込保険料×1/2)+12,500円 | 15,000円超40,000円以下 | (払込保険料×1/2)+7,500円 |
50,000円超100,000円以下 | (払込保険料×1/4)+25,000円 | 40,000円超70,000円以下 | (払込保険料×1/4)+17,500円 |
100,000円超 | 一律50,000円 | 70,000円超 | 一律35,000円 |
たとえば、年間払込保険料が60,000円の定期保険に加入し、新制度で一般生命保険料控除の適用を受けた場合、所得税は(60,000円×1/4)+20,000円=35,000円、住民税は28,000円の控除を受けられます。所得税と住民税の税率がともに10%であれば、(35,000円+28,000円)×10%=6,300円の節税につながります。
4.特定期間の保障を手厚くできる
多くの定期保険では、保険期間を1年、5年、10年単位や5歳ごとなど、任意で選べます。たとえば、子どもが大学に進学するまでや、一定額が貯まるまでなど、特定の期間に焦点を当てて保障を手厚くすることが可能です。
定期保険の3つのデメリット
定期保険にはメリットだけではなく、以下のようなデメリットもあることを理解しておきましょう。
- 更新すると保険料が上がる(更新型の場合)
- 全期型の場合は更新できない
- 更新に限度がある
1.更新すると保険料が上がる(更新型の場合)
更新型の定期保険は、保険期間が満了になると自動更新されるのが一般的です。しかし、更新すると年齢に応じた保険料に変更されるため、保険金額は変わらなくても保険料の負担は大きくなります。
2.全期型の場合は更新できない
全期型の場合は、更新型のように、途中で保険料が高くなることはありません。しかし、契約時に定めた満期を迎えると、その時点で保障が終了します。途中で保険金額を減額しない限りは、契約時の保障内容のまま継続しなければならないため、ライフステージの変化に対応しにくいデメリットがあります。
3.更新に限度がある
更新型の定期保険は、更新しながら保障を継続できますが、更新年齢には限度があるため、一定年齢を迎えると契約自体が終了します。80歳や90歳を超えると更新できなくなることが多いため、長生きをした場合には一切保障が受けられないこともあるでしょう。
定期保険と終身保険はどっちがいい?
定期保険と終身保険のどちらが適しているかは、保険加入の目的や家計の状況によって異なります。
定期保険は終身保険よりも割安な保険料で加入できるケースがほとんどです。そのため、教育費や生活費の負担が大きくなりやすい幼い子どもがいる家庭などは、割安な保険料で一定期間だけ手厚い保障を備えられる定期保険への加入が有力な選択肢になるでしょう。
一方で終身保険には、一生涯にわたって保障が続く、貯蓄性があるといった利点があります。最終的にいつかは必要になる葬儀代を準備しておきたい場合や、保障を確保しながら将来に向けた資産形成をしたい場合などに向いているでしょう。
まとめ
定期保険は、一定の保険期間中に被保険者が死亡・高度障害状態になった場合に保険金を受け取れる保険です。全期型と更新型の2種類があり、全期型の方が更新型よりも払込保険料の総額は安くなる傾向があります。
定期保険の主なメリットは、手ごろな保険料で手厚い保障が得られることや、保障内容を柔軟に見直せることです。一方で、更新時に保険料が上がったり、高齢になると更新ができなくなったりするデメリットがあります。
定期保険と終身保険を比べると、一般的に定期保険の方が保険料は割安です。しかし、終身保険の方が貯蓄性は高く、一生涯にわたって保障が続くという特徴があるため、加入目的に応じて、どちらの保険が適しているかを判断しましょう。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP