収入保障保険に加入している人は年末調整で節税できる!保険料控除の申請方法も解説

保険全般

自身に万が一のことが起きた場合、残される家族の経済的リスクに備えられる「収入保障保険」。収入保障保険は、年末調整の生命保険料控除の対象であることを知っている人も多くないのではないでしょうか。

この記事では、収入保障保険を年末調整で申請する方法について解説します。年末調整や生命保険料控除についても詳しく解説しているため、年末調整について知りたい方もぜひ参考にしてください。

そもそも収入保障保険とは

収入保障保険とは、被保険者が高度障害や死亡した際に毎月定額を受け取れる生命保険です。保険期間の満了日まで受け取れるため、家族の生活費として役立ちます。解約返戻金はありませんが、その分保険料の安さが特徴です。

収入保障保険は毎月保険会社に払い込みますが、1月1日から12月31日まで払った保険料を申告すると「生命保険控除」が受けられます。生命保険控除には、一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除の3種類がありますが、収入保障保険は「一般生命保険料」に該当します。

毎年10月頃に保険会社から送られてくる生命保険料控除証明書を年末調整や確定申告の際に添付すると控除が受けられます。

収入保障保険については、以下の記事で詳しく解説しています。

【収入保障保険】年末調整で生命保険料控除が適用

収入保障保険が年末調整や確定申告で生命保険料控除が適用されると、支払額に応じて所得税や住民税が軽減されます。

以下では、収入保障保険を生命保険料控除に適用させるために、年末調整や生命保」料控除について基礎から解説します。収入保障保険の加入を検討している人だけでなく、年末調整や生命保険料控除の概要をよく知らない人は、加入前に確認しておきましょう。

年末調整とは

年末調整とは、毎月給与から引かれる所得税の合計額と年税額を一致させる手続きのことです。主に会社員の人は給与から所得税が引かれていますが、その額は概算で算出されているため、正しい税額ではありません。

そこでその年の所得税が確定したのち、1年間払い続けた所得税と年税額が一致しているかを確認します。徴収しすぎた金額は還付し、反対に足らない場合は追加徴収が必要です。

正しい年税額を計算するには、代わりに確定申告を行ってくれる勤務先に「給与所得者の保険料控除申告書」や「基礎控除申告書」の提出が必要です。収入保障保険の「生命保険料控除証明書」を提出する必要があります。

生命保険料控除とは

生命保険料控除には冒頭で説明したように3種類あり、その中でも収入保障保険は「一般生命保険料」に該当します。一般生命保険料とは、被保険者に万一が起こった場合に、生死に基因して一定の保険金や給付金を支払う保険の保険料のことです。

生命保険料控除は一般生命保険料を含む3種類の合計から控除額を計算し、所得税や住民税を軽減します。要するに、生命保険料控除は毎月差し引かれている所得税や住民税が控除されることにより経済的負担が減るのです。税金対策としてやるべき行動の1つといえるでしょう。

なお、控除限度額は、「新契約」や「旧契約」といった保険契約日によって異なるため確認することが大切です。

保険料控除申告書の書き方

ここでは、保険料控除申告書の書き方の手順を解説します。

  • 生命保険料控除証明書を用意
  • 会社から配られる申請書に必要事項を記入
  • 記入し終えたら書類を会社に提出

10月頃に加入している保険会社から届く生命保険料控除証明書をもとに、会社から配布される保険料控除申請書を記入をします。収入保障保険の場合は、申請書右側の「生命保険料控除」に記入することを間違えないようにしましょう。

先ほども説明したように収入保障保険は「一般の生命保険料」になるため、生命保険料控除欄の一番上に記入します。より詳しい書き方は、以下で解説するため確認してください。

生命保険料控除の項目と記入例

生命保険料控除の項目と記入例は、以下の通りです。

一般の生命保険料 保険会社等の名称 保険等の種類 保険期間又は年金支払期間 保険等の契約者の氏名 保険金の受取人 新・旧の区分 あなたが本年中に支払った保険料等の金額(a) 給与の支払い者の確認印
氏名 あなたとの続柄
〇〇生命 無配当収入保障保険 10年 保険 太郎 保険太郎 本人 (a)
36,000
△△生命 無配当収入保障保険 10年 保険花子 同上 本人 (a)
36,000
(a)のうち新保険料等の金額の合計額 A

36,000

Aの金額を下の計算式I(新保険料等用)にあてはめて計算した額

28,000

計(①+②) ③(最高40,000)

40,000

(a)のうち旧保険料等の金額の合計額 B

36,000

Bの金額をしたの計算式Ⅱ(旧保険料等用)に当てはめて計算した金額

30,500

②と③のいずれか大きい金額 40,000

生命保険控除申請書の左側に「一般の生命保険」の欄があり、収入保障保険はその欄に記入します。記入例は表のとおりで、保険会社の名称や受取人、支払った保険料の金額を記入してください。

加入している保険が新保険か旧保険かを確認し、A・Bに記入します。さらに、A・Bの金額を指定の計算式に当てはめて計算した上で、①・②に記入し、③に合計額を記入しましょう。③は控除額のため、最高40,000円が限度です。最後に②と③を比較した上で大きい金額のほうを記入し、一般の生命保険は終了です。

新契約と旧契約について

収入保障保険などの生命保険には、新契約と旧契約という区分があります。この区分は、平成22年度税制改正によって生命保険料控除制度が改正されたことにより作られたものです。

新契約は、2012年1月1日以降に契約した生命保険が対象です。改正前の2011年12月31日に契約した生命保険は旧契約となるため、保険会社から送られる生命保険料控除証明書を確認しましょう。

新契約と旧契約は控除額が異なり、新契約の方が控除額が大きくなります。新契約は一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の控除額合計が120,000円が限度、旧契約は70,000円が限度です。しかし、新契約と旧契約の両方がある場合は、合計して新契約の120,000円が適用されます。

生命保険料控除額の計算方法

新契約と旧契約の違いが把握できたら、生命保険料控除額の計算方法を知っておきましょう。生命保険控除申請書は自分で全て記入する必要があるため、計算方法を知っておくと毎年の記入がスムーズになるでしょう。

さらに、正しく申告できるだけでなく、保険料の見直しにもつながります。生命保険で安心を得るだけでなく税金対策として考えるなら、生命保険料控除額の計算方法は覚えておきましょう。

以下では、新契約と旧契約それぞれの計算方法を解説します。

新契約の計算方法

新契約の生命保険に対する所得税の計算方法は、以下の通りです。

年間の払込保険料など 控除額(計算方法)
20,000円以下 払込保険料の全額
20,001円から40,000円まで 払込保険料×1/2+10,000円
40,001円から80,000円まで 払込保険料×1/4+20,000円
80,001円以上 一律に40,000円

払込保険料が20,000円以下の場合は、全額控除になります。それ以上は計算によって額が異なりますが、80,001円以上はいくらであっても一律40,000円となるため注意が必要でしょう。

新契約の生命保険に対する住民税の計算方法は、以下の通りです。

年間の払込保険料など 控除額(計算方法)
12,000円以下 払込保険料の全額
12,001円から32,000円まで 払込保険料×1/2+6,000円
32,001円から56,000円まで 払込保険料×1/4+14,000円
56,001円以上 一律28,000円

住民税の計算方法は、所得税と比べて払込保険料の額から異なります。計算式は大方同じですが、金額が違うため間違いやすいでしょう。また、所得税同様に住民税も56,001円以上は一律28,000円です。

新契約にあたる一般・年金・介護医療は、全て上記の計算方法で控除額を計算し、合計の控除額は120,000円が限度になります。正しい計算式を使い、控除額で損をしないようにしましょう。

旧契約の計算方法

旧契約の生命保険に対する所得税の計算方法は、以下の通りです。

年間の払込保険料など 控除額(計算方法)
25,000円以下 払込保険料の全額
25,001円から50,000円まで 払込保険料×1/2+12,500円
50,001円から100,000円まで 払込保険料×1/4+25,000円
100,001円以上 一律50,000円

新契約を比較すると、年間の払込保険料から金額が異なることがわかります。最高払込額を超えると一律50,000円など、旧契約の控除額の方が大きいように感じるでしょう。しかし、旧契約は一般・年金が対象の生命保険で、合計の控除額が100,000円と新契約より低いという特徴があります。

旧契約の生命保険に対する住民税の計算方法は、以下の通りです。

年間の払込保険料など 控除額(計算方法)
15,000円以下 振込保険料の全額
15,001円から40,000円まで 払込保険料×1/2+7,500円
40,001円から70,000円まで 払込保険料×1/4+17,500円
70,001円以上 一律35,000円

住民税は新契約と比べて計算方法は異なりますが、一般と年金の合計控除額は70,000円と新契約と変わりありません。限度額は同様ですが、対象となる種類や計算方法は違うため、保険の区分を確認し正しい計算で限度額を出しましょう。

収入保障保険の保険料控除に関するよくある質問

収入保障保険の保険料控除に関するよくある質問を紹介します。解約や紛失についても紹介しているため、疑問点がある方は参考にしてみてください。

収入保障保険の保険料控除に関するよくある質問

収入保障保険を途中で解約しても、保険料控除申請書に記入できます。控除対象はその年の払込金額が対象のため、途中で解約しても保険会社から生命保険料控除証明書が届きます。

ただし、途中で解約すると年間の払込金額が少なくなり、控除額も下がってしまいます。途中解約を検討している方は、解約前に先ほど解説した計算方法を参考に途中契約した場合の控除額を計算してください。控除額に大きな差がなく損をしない場合は、途中契約しても問題ないでしょう。

Q.保険料控除を申請できるのは契約者のみ?

保険料控除を申請できるのは契約者だけだと思われがちですが、実は契約者ではなく「保険料を払っている人」が対象です。例えば妻や子の保険料を夫が払っている場合、夫の年末調整や確定申告で申告できます。

多くの人が契約者のみと勘違いし、控除対象のはずの保険料を申告していません。保険料は新契約の場合最高120,000円が限度 であるため、自分が支払っている保険はしっかり申告しましょう。

なお、申告には生命保険料控除証明書の添付が必要なため、自分以外の家族分も紛失しないようにしてください。紛失してしまうと申告できなくなります。

Q.生命保険料控除証明書を紛失してしまった場合は?

万が一、生命保険料控除証明書を紛失してしまった場合は、焦らず保険会社に再発行を依頼しましょう。再発行に手数料などはかかりませんが、発行から届くまで時間がかかる可能性があるため、紛失した場合は早めに保険会社に連絡してください。

再発行の依頼は保険会社によって異なりますが、主に電話かインターネットです。インターネットで申し込むと、郵送ではなく電子データが送られる場合もあり、自分でダウンロードするとすぐに入手できます。提出まで期限がなく急いでいる場合は、電子データでの送信が可能かを確認してみてください。

Q.年末調整で保険料控除をしなかった場合は?

生命保険料控除証明書を紛失したなどの理由で、年末調整で保険料控除をしなかった場合は、確定申告で申告しましょう。確定申告をする場合は、勤務先から源泉徴収票をもらうと必須項目が記入できます。

年末調整で申告できず放置すると、本来受け取れるはずの還付金が減る・または追加徴収になる可能性があります。さまざまな理由により年末調整で申告できなかった場合は、年末調整で申告してください。

ただし、確定申告の期限を過ぎてしまうと、前年度の生命保険料の控除は受けられません。二度手間をなくすためにも、できるだけ年末調整で申告しましょう。

まとめ

万が一に備えて加入する収入保障保険は、「生命保険料控除」に該当するため、年末調整で申告可能です。申告すると生命保険料控除が受けられ、所得税や住民税を抑えられるメリットがあります。

また、自分以外の妻や子の保険でも自分が支払っていると合算して申告できます。合算して申告するには、それぞれの生命保険料控除証明書が必要です。もし紛失した場合は、年末調整まで間に合うように再発行を依頼しましょう。

収入保障保険は万が一の場合に備えられる保険ですが、家計を圧迫しては意味がありません。家計に意外に響く税金を抑えるためにも、収入保障保険に加入した際は必ず申告し控除を受けるようにしましょう。





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オカネノホンネ編集部

オカネノホンネ編集部

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