終身保険は死亡保障が一生涯続くだけではなく、貯蓄性も兼ね備えているため、さまざまな目的で活用できる保険です。しかし、その必要性については賛否両論あるため、加入を迷っている人もいるでしょう。
本記事では、終身保険のメリット・デメリットなどを紹介しながら、必要性について詳しく解説します。
終身保険はいらない?終身保険の必要性が高い人とは
終身保険の大きなメリットは、一生涯の保障が得られる点です。いつ万が一のことがあっても、葬儀費用や相続税の納税資金などを確実に残せるため、家族の経済的負担の軽減につながります。死後のお金の不安を減らしたい人は終身保険への加入を検討しましょう。
また、終身保険には解約返戻金があり、貯蓄目的での活用も可能です。毎月保険料を支払うことで、保険料の一部が解約返戻金として徐々に積み立てられます。基本的に保険料の払込を終える前に解約すると、解約返戻金が払込保険料を下回るため、貯蓄の強制力が働きます。そのため、計画的に貯蓄をしていきたい人は終身保険に加入する必要性が高いでしょう。
一方、定期保険と比べると保険料は割高になる傾向があります。特定の期間だけ高額の死亡保障が必要な場合は、終身保険に加入する必要性が低いといえます。
さらに、終身保険では支払った保険料がすべて貯蓄に回されるわけではなく、利回りも投資信託などの金融商品と比べて低い傾向があります。貯蓄だけを目的とする場合は、他の金融商品の方が効率よくお金を貯められる可能性があり、終身保険は不要かもしれません。
終身保険とは?
終身保険とは、被保険者が死亡または高度障害状態になった場合に、保険金が支払われる生命保険です。満期はなく保障が一生涯続くのが特徴で、解約時には契約期間に応じた解約返戻金が受け取れます。
終身保険の保険料払込期間
終身保険の保険料払込期間は、終身払い・有期払い・一時払いの3種類があります。
- 終身払い:一生涯、保険料を支払い続ける方法
- 有期払い:一定の年齢(60歳や70歳など)・一定の年数(10年や20年など)で保険料を支払い終える方法
- 一時払い:契約時に保険料を一括で支払う方法
多くの場合、保険料を早く支払い終えた方が、1回あたりに支払う保険料は多くなるものの、払い込む保険料の総額は少なく済みます。払い込む保険料の総額は一時払いが最も少なく、長生きするにつれ、終身払いの支払い総額は多くなっていきます。
当面の保険料の負担を抑えたい場合は終身払い、長期的にみて支払う保険料を減らしたい場合や、老後の保険料の支払いが心配な場合などは有期払いや一時払いなどを選択するとよいでしょう。
終身保険と定期保険の違い
定期保険は、終身保険と同様に、被保険者が死亡・高度障害状態になった際に保険金が支払われる保険です。ただし、保険期間や解約返戻金の有無などについては、以下のような違いがあります。
終身保険 | 定期保険 | |
保険期間 | 一生涯 | 一定年数または一定年齢まで |
保険料払込期間 | 終身払い・有期払い・一時払いなどから選択可 | 基本的に保険期間と同一 |
解約返戻金 | 有り | 無し(あってもごくわずか) |
契約年齢や性別、保険金額などの条件が同じであったとした場合は、解約返戻金がある分、終身保険の方が定期保険よりも保険料が高くなる傾向にあります。
終身保険に加入する4つのメリット
終身保険に加入すると、以下のようなメリットが得られます。
- 加入時の保険料で一生涯保障を得られる
- 貯蓄と保障を両立できる
- 相続対策になる
- 生命保険料控除を受けられる
万が一の事態に備えるだけでなく、貯蓄や相続対策など、幅広い目的に活用できる点が終身保険の魅力です。
1.加入時の保険料で一生涯保障を得られる
終身保険は保障が一生涯続くため、何歳で亡くなっても保険金が支払われるメリットがあります。
定期保険の場合は、保険期間を過ぎてから亡くなると、保険金は支払われません。終身保険であれば、基本的に、途中解約しない限りは保険金が支払われるため、誰しもがいつかは必要になる葬儀代や死後の整理費用などに備える目的で活用しやすくなっています。
また、保険期間中の保険料は一定で、更新型の定期保険のように途中で保険料が高くなることはありません。早い時期に加入しておけば、健康上のリスクが高まる中高年以降になっても、加入時の保険料のまま、一定の保障を確保できます。
2.貯蓄と保障を両立できる
終身保険は解約返戻金があるため、貯蓄目的で活用することもできます。万が一に備えつつ、保障が不要になった場合や急にお金が必要になった場合は、解約して現金を手に入れることが可能です。
終身保険の中には、保険料の払込が終了すると、解約返戻金が支払った保険料を上回る(解約返戻率が100%を超える)商品もあります。
3.相続対策になる
終身保険は、相続対策の面でも大きなメリットがあります。
有価証券や不動産など、現金以外を相続した場合であっても、相続税は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に現金で支払わなければなりません 。相続した財産をすぐに売却できない場合、相続人は相続税の支払いが困難になる可能性もあります。
終身保険に加入し、相続人を保険金受取人に指定しておくことで、保険金を納税資金として活用することも可能です。また、死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があ ります。たとえば、法定相続人が2人いる場合、1,000万円までは非課税で死亡保険金を受け取れるのです。現金をそのまま残すよりも、死亡保険で財産を残す方が相続税の負担を軽減できる可能性があります。
4.生命保険料控除を受けられる
終身保険に加入すると、生命保険料控除によって所得税や住民税の負担を軽減できる場合があります。生命保険料控除は、1年間に支払った保険料に応じて、所得から一定額を控除できる制度です。課税対象となる所得が減れば、その分、所得税や住民税の負担を減らせます。
生命保険料控除には、「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3つの控除区分があり(2012年1月1日以降に締結した保険契約の場合)、終身保険は一般生命保険料控除に該当します。所得税については最大4万円、住民税については最大2.8万円の控除を受けることが可能です。
終身保険に加入する3つのデメリット
終身保険には、以下のようなデメリットがあることも理解しておきましょう。
- 定期保険よりも保険料が割高である
- 元本割れのリスクがある
- インフレに弱い
終身保険が合わないと感じたときは、他の生命保険への加入を検討してみるのも一つの方法です。
1.定期保険よりも保険料が割高である
終身保険は、解約返戻金がある分、掛け捨ての定期保険と比べると、保険料が高くなりがちです。高額な保障を用意しようとすると、保険料の負担が大きくなり、家計を圧迫するリスクがあります。遺族の生活保障に備えたい場合や、保険以外で貯蓄をしており、解約返戻金が不要な場合などは、定期保険の方が適しているかもしれません。
2.元本割れのリスクがある
終身保険は、保険料の払い込みが終わる前に解約すると、支払った保険料を下回る金額しか受け取れないケースも少なくありません。加入してからの経過年数に応じて解約返戻金は増えていくため、とくに契約してから間もない段階で解約すると、大きく元本割れする可能性もあります。
やむをえず早期で解約することがないよう、ライフプランや家計の状況を確認した上で加入しましょう。貯蓄を主な目的として加入する場合は、契約期間に応じた返戻率を確認した上で、保険料の払込期間を決めることも大切です。
3.インフレに弱い
一般的な終身保険では、契約時に決定した死亡保険金や解約返戻金を受け取ることになります。しかし、契約時よりもインフレが進んでいる状態で死亡したり解約したりすると、物価が上昇している分、受け取る死亡保険金や解約返戻金が実質的に目減りしてしまうのです。
円建ての終身保険はインフレに弱いという側面があるため、外貨建て保険や変額保険を検討するのもよいでしょう。インフレによって日本円の価値が下がっていたとしても、外貨建て保険に加入しておけば保険金や解約返戻金を外貨で受け取ることになるため、資産のリスクを分散できます。
また、変額保険は運用実績に応じて保険金や解約返戻金が変動するのが特徴です。インフレが進み、運用実績が良くなった場合には、受け取る金額が増える可能性があります。
終身保険の種類
終身保険は、大きく以下の5種類に分けられます。
- 終身保険(円建て)
- 低解約返戻金型終身保険
- 変額保険(終身型)
- 外貨建て終身保険
- 積立利率変動型終身保険
それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。
終身保険(円建て)
死亡保険金や解約返戻金を日本円で受け取る終身保険です。もっとも一般的な終身保険といえるでしょう。
低解約返戻金型終身保険
低解約返戻金型終身保険は、保険料払い込み期間中の解約返戻率の水準を低く抑えた終身保険です。途中で解約した場合には一般的な終身保険よりも受け取れる解約返戻金は少なくなるものの、保険料は割安になる傾向があります。
変額保険(終身型)
変額保険(終身型)は、運用実績によって保険金や解約返戻金が変動する保険です。支払った保険料は特別勘定によって運用され、運用が好調であれば基本保険金に上乗せして変動保険金が受け取れる可能性があります。一方で運用が不調の場合、変動保険金は受け取れませんが、基本保険金額は最低保証されます。ただし、解約返戻金には最低保証がないケースが 一般的です。
外貨建て終身保険
外貨建て終身保険は、支払った保険料を米ドルや豪ドルなどの外貨で運用する商品です。解約返戻金や保険金は外貨または日本円で受け取れます。ただし、日本円で受け取る場合は為替の影響を受けるため、円高傾向にある場合は受け取る金額が減少、円安傾向にある場合は増加する可能性があります。
積立利率変動型終身保険
積立利率変動型終身保険は、市場金利の変動に合わせて、一定期間ごとに積立利率が見直される保険 です。金利が上昇すると、保険金が増える可能性があります。一方で積立利率には最低保障が設けられているケースが多いため、契約時に定めた保険金額や解約返戻金額を下回ることは基本的にありません。
まとめ
終身保険は貯蓄性のある死亡保険で、その必要性については意見が分かれています。終身保険は一生涯にわたって保障が得られる点や、相続対策に活用できる点が大きなメリットです。
しかし、定期保険と比べると保険料が高くなる傾向があり、元本割れのリスクも存在します。これらのメリットとデメリットを理解した上で、自分にとっての必要性を検討してみることをおすすめします。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP