終身保険と養老保険はどちらも万が一に備えられる保険であるため、似ていると感じるかもしれません。しかし、実際は保障内容や保険期間などに違いがあるため、ライフプランに合わせて選択することが重要です。
この記事では、終身保険と養老保険の違いを複数の項目で比較しながら、わかりやすく解説します。保険選びに不安を感じている方はぜひ参考にしてください。
目次
終身保険と養老保険の違いは?6つの項目で徹底比較
終身保険と養老保険の違いは以下の通りです。
終身保険 | 養老保険 | |
保障内容 | 死亡・所定の高度障害状態になった場合に保険金が受け取れる | 死亡・所定の高度障害状態になった場合や満期を迎えた場合に保険金が受け取れる |
保険料 | 掛け捨て型の保険(定期保険など)より高くなりやすいが、養老保険より低め | 掛け捨て型の保険(定期保険など)や終身保険より高め |
保険料の払込方法 | 有期払いまたは終身払い | 有期払いのみ |
保険期間 | 一生涯 | 一定期間 |
満期保険金 | なし | あり |
解約返戻金 | あり | あり(解約返戻率が高い期間は終身保険より長い傾向) |
万が一に備えられる点や貯蓄性がある点など、共通する部分は多いものの、細かく見ると両者には違いがあります。以下で詳しく見ていきましょう。
保障内容
終身保険は、被保険者(保障の対象となる人)が亡くなったときに死亡保険金が、保険会社所定の高度障害状態になったときに高度障害保険金が支払われます。
一方、養老保険も死亡保険金や高度障害保険金を受け取れる点は同じですが、養老保険は満期を迎えると死亡保険金と同額の満期保険金を受け取れます。
つまり、終身保険は万が一の場合に保険金を受け取り、養老保険は万が一のことが起こらなくても保険金を受け取れるということです。
このような違いがあるため、終身保険は「死亡保険」と呼ばれ、養老保険は「生死混合保険」と呼ばれます。
保険料
一般的に保険金額が同じであれば、終身保険よりも養老保険の方が保険料は高くなります。たとえば「保険金額1,000万円」の終身保険と養老保険の保険料を比較した場合、養老保険の方が保険料の払込総額は多くなる傾向にあります。
これは、養老保険が解約返戻金を高めに設定していることや、満期保険金があることなどが影響しています。養老保険では解約返戻金や満期保険金の支払いに備えて、保険会社が保険料を高めに設定することが多いのです。
なお、終身保険と養老保険は、どちらも保険金額が高額になるほど、また契約年齢があがるほど保険料が高くなります。ちなみに、掛け捨て型の定期保険と比較すると、いずれも保険料は割高になることが一般的です。
保険期間
終身保険の保険期間は一生涯であるのに対し、養老保険の保険期間は満期までの一定期間に限られるという違いがあります。
終身保険は解約しない限り保障が続くため、遺族は確実に保険金を受け取れます。一方、養老保険では保険期間中に死亡保険金や高度障害保険金の支払事由が発生しなければ、保険金を受け取ることはできません。満期保険金を受け取ると、その時点で保障は終了します。
養老保険の保険期間は、10年や20年など一定年数を保障する「年満期」と、60歳や70歳など一定年齢までを保障する「歳満期」の2種類があります。
保険料の払込期間
生命保険の保険料払込期間は、一定年齢(60歳や65歳など)または一定年数(10年や20年など)まで保険料を払い込む「有期払い」と、一生涯保険料を払い込む「終身払い」の2種類に分けられます。
養老保険は満期があるため、有期払いのみになります。一方、終身保険は終身払いを選択するが可能です。所定の年齢までに払い込みを終えたい場合には有期払い、毎月の保険料の負担を減らしたい場合には終身払いと、家計の状況に合わせて払込期間を選べます。
満期保険金
満期保険金とは、万が一のことが起こらず保険期間の終了を迎えた場合に受け取れる保険金です。
終身保険にはそもそも「満期=保険期間の終了」がないため、満期保険金はありません。一方、養老保険では死亡保険金と同額を満期保険金として受け取れます。
保険商品によっては、満期保険金よりも大きな死亡保障を備えられる場合もあります。たとえば、かんぽ生命の「養老保険 新フリープラン(5倍保障型)」は、満期保険金の5倍の死亡保険金が支払われる 仕組みになっています。
ただし、満期保険金は払込保険料を上回るとは限りません。予定利率(契約者に約束する運用利回り)の低い保険では、支払った保険料を下回る満期保険金しか受け取れない場合もあります。
解約返戻金
終身保険と養老保険は、どちらも解約時に解約返戻金を受け取れる保険です。解約返戻金は、保険期間が経過するにつれて少しずつ増加するのが一般的です。
ただし、養老保険の方が解約返戻率(支払った保険料に対する解約返戻金の割合)の高い期間が長い傾向にあります。
なお、終身保険も養老保険も保険料の払い込み期間中に解約すると、元本割れするリスクがあるため、注意しましょう。特に保険料払込期間中の解約返戻金を低く抑えた「低解約返戻金型終身保険」の場合、途中解約することで解約返戻金が払込保険料を下回ることがあります。
養老保険と終身保険はどちらがおすすめ?
養老保険と終身保険は、それぞれ異なる目的に応じた保険商品です。特徴をよく理解したうえで、どちらの商品が自分に合っているのか考えてみましょう。
貯蓄を主な目的としている人は「養老保険」
養老保険は、満期まで継続すれば、払込保険料に近い金額の満期保険金を受け取ることができます。また、万が一の際には死亡保険金を受け取ることも可能です。そのため、将来のライフイベント(教育資金や住宅購入資金、老後資金など)に必要なお金を貯蓄しつつ、もしものときに備えたい人に向いている保険商品といえるでしょう。
養老保険では、ライフステージに合わせて保険期間を設定することが可能です。たとえば、子どもの教育費用を貯蓄する目的で加入する場合、大学入学のタイミングに満期を合わせることで、必要な時期にまとまったお金を受け取れることができます。さらに、貯蓄中に何かあった場合の家族の生活費や、自身の葬儀代なども確保することが可能です。
ただし、養老保険は保険料が比較的高くなるため、安定した収入があり、継続的な支払いが可能な人向けの商品といえます。
万が一と急な出費に備えたい人は「終身保険」
終身保険の最大のメリットは、一生涯にわたって保障が継続することです。また、解約した際にまとまった解約返戻金を受け取れる点も魅力です。
これらの特徴を踏まえると、終身保険はいつか必要になる葬儀費用を準備しておきたい人に向いているでしょう。死亡保険金には「法定相続人の数×500万円」の非課税枠がある ため、相続税対策を考えている人にも適しています。
また、万が一に備えつつ、何かあったときにすぐ引き出せるお金を確保しておきたい人にも、終身保険は役立ちます。たとえば、老後の生活費用が不足した場合や、急に医療費や介護費用が必要になった場合に、解約返戻金を受け取ることでカバーできるためです。
このように、終身保険も養老保険と同様に貯蓄の手段として活用できますが、払込保険料が全額返ってくるとは限りません。そのため、養老保険の貯蓄機能は副次的なものと考えておくべきでしょう。
まとめ
終身保険と養老保険は、万が一の際に死亡保険金や高度障害保険金を受け取れる点や解約返戻金を受け取れる点で共通しています。しかし、保障内容や保険期間、保険料、満期保険金の有無など、さまざまな面で違いがあります。
終身保険は一生涯の保障が特徴で、満期保険金はないものの、養老保険よりも保険料が低めに設定されている傾向にあります。一方、養老保険は満期までの一定期間を保障するのが特徴で、満期時には死亡保険金と同額の満期保険金が受け取れるかわりに、保険料は終身保険よりも高くなる傾向があります。
つまり、将来に向けた貯蓄と万が一の保障を同時に検討している場合は貯蓄性の高い養老保険が向いており、葬儀費用や遺族の生活資金などを重点的に備えておきたい場合は一生涯保障が続く終身保険が向いているでしょう。
それぞれの特徴をよく理解し、自分のライフプランに合った保険を選択することが重要です。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP