利率変動型積立終身保険は、貯蓄と保障を両立したい人や保障内容を自由に選択したい人に選ばれている保険です。国内の大手生命保険会社を中心に取り扱っている商品であるため、名称を一度でも聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
本記事では、利率変動型積立終身保険のメリットとデメリットをわかりやすく解説します。商品の特徴について詳しく知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
利率変動型積立終身保険とは?
利率変動型積立終身保険とは、主契約の「積立部分」と特約の「保障部分(死亡保障、医療保障など)」で構成される保険です。別称で「アカウント型保険」と呼ばれることもあります。この保険は、積立金を利用して保障内容の柔軟な変更や保険料の調整を行える点が特徴です。
保険料のなかで、どれだけを積立部分に回して保障部分に充当するかは、契約者が一定の範囲内で自由に設定できます。
積立金は原則として出し入れが自由で、保険料の払込期間中に被保険者が死亡した場合は、積立金相当額が死亡保険金として支払われます。積立金に適用される予定利率は、一定期間ごとに見直されます。保険料の払込期間が満了した後は、積立金を活用して終身保険や年金保険に移行することも可能です。
さらに、保障部分の保険料を積立部分から充当できるため、契約後でも保障内容の見直しがしやすく、保険設計の自由度が高い商品といえるでしょう。
積立利率変動型終身保険との違い
名称は似ていますが、利率変動型積立終身保険と積立利率変動型終身保険は全く異なる商品です。
積立利率変動型終身保険では、主契約が死亡保障となっており、積立部分と保障部分が分かれているわけではありません。そのため、途中で積立金を自由に引き出すことはできず、資金が必要な場合は解約して解約返戻金を受け取るか、契約者貸付制度(解約返戻金の一定範囲内で、保険会社から借入ができる制度)を利用する必要があります。したがって、積立利率変動型終身保険は、死亡保障を主目的とする場合に適した保険商品といえるでしょう。
なお、積立利率変動型終身保険では、積立利率に最低保証があり、実際の利率がそれを上回れば解約返戻金や死亡保険金が増加する仕組みになっています。また、積立利率は以下のような期間で見直されるのが一般的です。
- 一時払い:10年、15年、20年ごと
- 月払いや年払い:毎月
定期付終身保険との違い
定期付終身保険は、終身保険を主契約とし、定期保険などの特約を上乗せで付加するタイプの保険です。主契約に多くの特約が付く点では似ていますが、利率変動型積立終身保険とは異なる点がいくつかあります。
まず、定期付終身保険にはアカウント部分がないため、積立金を自由に引き出すことができません。資金が必要な場合は、解約や契約者貸付制度の利用が必要です。
また、定期付終身保険では特約部分の保険料を主契約の積立金から充当することができないため、利率変動型積立終身保険ほど柔軟な変更はできません。保険期間中に大きく保障内容を見直したい場合は、転換(現在の保険を活用して新しい保険を契約する方法)や解約返戻金を活用して新しい保険に再加入する必要があります。
なお、予定利率にも違いがあります。定期付終身保険では契約時の予定利率が固定されているため、保険料と払込期間を設定すれば保険金額が決まります。一方で、利率変動型積立終身保険では予定利率が変動するため、保険金額が契約時点では確定しないという特徴があります。
定期付終身保険について、以下の記事でも紹介しています。詳しく知りたい人はぜひ確認してみてください。
利率変動型積立終身保険のメリット
ここからは、利率変動型積立終身保険に加入するメリットについて紹介します。
保障内容や保険料を柔軟に見直せる
利率変動型積立終身保険であれば、ライフステージや家計の状況に合わせて柔軟に保障内容を見直すことが可能です。
例えば、積立部分と保障部分の配分を変えれば、毎月の保険料は変えずに保障を増やしたり、積立金を保障部分の保険料に充当すれば、保障内容はそのままに保険料だけを減らしたりできます。
さらに、この保険商品は死亡保障や医療保障、がん保険、介護保障といった多彩な特約を付加できるため、ライフイベントに合わせた見直しがしやすい点もメリットです。ただし、保障範囲や金額を増やす場合には新たな診査や告知が必要になり、保険料もそのときの年齢や保険料率に基づいて再計算されることを覚えておきましょう。
ライフイベントに備えられる
利率変動型積立終身保険は、保障を確保しながら貯蓄もできるため、出産や子どもの進学、住宅購入などのライフイベントに必要な資金を準備できます。
積立部分は自由に引き出せるため、ライフイベントの時期が多少前後しても対応しやすいでしょう。また、余裕資金ができた場合には、積立部分に追加で資金を投入することも可能なので、効率よく資産形成できる可能性があります。
ただし、積立金を引き出す際に手数料がかかる場合もあるため、事前に条件を確認しておくことが大切です。
利率変動型積立終身保険のデメリット
次に、利率変動型積立終身保険に加入するデメリットについて紹介します。
仕組みがわかりにくい
この保険は、一般的な保険と仕組みが大きく異なるため、わかりにくいと感じることがあります。例えば、特約を複数付けた場合、それぞれの保障内容や保険期間が異なるため、全体像を把握しづらくなることもあるでしょう。
また、掛け捨ての保険とは異なり、どの保障にどれだけの保険料が充てられているかが見えにくい点もデメリットです。例えば、貯蓄目的で利率変動型積立終身保険に加入し、毎月高額な保険料を支払っていたのに、実際には保障部分に多くの保険料が使われ、積立金がほとんど貯まっていないというケースも考えられます。
保障内容を理解しないまま加入すると、デメリットを被る可能性があることを理解しておきましょう。
終身保険として機能しにくい場合がある
利率変動型積立終身保険では、払込期間満了後に積立金を活用して終身保険に移行できる仕組みがあります。
しかし、この保険の特約部分は一定期間ごとに更新があり、そのたびに保険料が高くなる仕組みとなっていることがほとんどです。負担を抑えるために、特約の保険料を積立金から充当した場合、更新のたびに積立金が大きく減少する可能性があります。
積立金が不足すると、払込期間終了後に希望する金額の死亡保障を確保できなくなる可能性があるため、定期的に積立金の状況や保険料の支払い内訳を確認しておくことが大切です。
利率変動型積立終身保険はどんな人に向いている?
利率変動型積立終身保険は、契約後も保障内容を柔軟に変更できるため、ライフステージの変化に合わせて保障を調整したい人に向いています。例えば、子どもが生まれたら死亡保障を手厚くし、子どもが独立した後は保障を減らして積立部分を増やすといった対応も可能です。
また、この保険は保障と貯蓄を両立したい人にも向いています。毎月保険料を支払うことで自然と貯蓄ができるため、貯金が苦手な人でも続けやすいでしょう。預金のように必要なときにお金を引き出せるので、ライフイベントや急な出費にも対応しやすいのが特徴です。
ただし、保険料が少額の場合、積立に回す金額が限られてしまうこともあります。そのため、ある程度高額な保険料を支払える経済的な余裕がある人のほうが、この保険のメリットを活かしやすいでしょう。
まとめ
利率変動型積立終身保険は、貯蓄部分と保障部分が明確に分かれており、ライフステージや家計の状況に応じて保障内容や保険料を柔軟に見直せる点が魅力の保険です。
ただし、保障部分や積立部分の運用、特約の内容などを正確に理解しないと、自分の期待とは異なる結果になる場合もあります。そのため、事前に保険の仕組みやリスクについて十分な説明を受け、自分のニーズや家計に本当に合った商品かを確認することが重要です。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP