満期保険金を確定申告しないとどうなる?確定申告が必要なケースや手続き方法を解説

保険全般

生命保険のなかには、生存中に満期保険金や解約返戻金などのまとまったお金を受け取れる商品があります。これらを受け取った場合、どのくらいの税金がかかるのか、あるいは、確定申告が必要なのか気になっている方も多いでしょう。

本記事では、満期保険金を受け取った際の確定申告の必要性や、税金のシミュレーションなどを詳しく解説します。

満期保険金を受け取ったら確定申告は必要?

満期保険金を受け取った場合、契約者と満期保険金の受取人が同じであれば所得税の課税対象です。具体的にどのようなケースで確定申告が必要になるのか、以下で解説します。

確定申告が必要なケース

満期保険金を受け取った場合は、原則として「一時所得」として確定申告が必要です。一時所得とは、臨時的に得られる所得で、満期保険金や懸賞金などが該当します。

一時所得は「(収入金額-支払保険料-50万円)×1/2」で計算可能です。例えば、満期保険金が300万円で支払保険料が200万円の場合、一時所得は(300万円-200万円-50万円)×1/2=25万円です。

一時所得は総合課税となり、他の所得と合算して税額が計算されます。そのため、多くの満期保険金を受け取ると、所得税の負担が増加する可能性があります。

なお、保険金を据え置く場合は、満期日時点で一旦保険金を受け取ったものとして所得税の課税対象となる点に注意が必要です。据え置きによって発生した利息については、利息が発生した年の雑所得になります。

確定申告が不要なケース

満期保険金を受け取った場合でも、以下の条件に該当する場合は確定申告が不要となります。

  • 金融類似商品に該当する場合
  • 給与所得者で一時所得が20万円以下の場合

契約者と満期保険金の受取人が同じであっても、契約商品が「金融類似商品」に該当する場合は、源泉分離課税の対象です。金融類似商品とは、保険期間や払込方法に関する一定の基準を満たした保険商品を指します。5年以内に満期になる一時払養老保険や、保険期間5年を超える一時払養老保険、一時払変額保険を契約から5年以内に解約した場合などは、金融類似商品として扱われます。

この場合、20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の税金が差し引かれたうえで、保険会社から満期保険金が振り込まれます。その時点で課税関係は終了するため、確定申告は必要ありません。

また、1カ所から給与等の支払を受けている給与所得者で、その給与等の収入金額が2,000万円以下の場合は、原則として年末調整で税額の精算が行われるため、確定申告は不要です。ただし、この場合でも「給与所得および退職所得以外の所得金額」が20万円を超える場合は、確定申告が必要になります。

満期保険金を受け取って確定申告しないとどうなる?

満期保険金を受け取って確定申告しない場合、税務署からの連絡や追徴課税などのペナルティが課せられる可能性があります。

税務署は支払調書で保険会社から誰に満期保険金が支払われたかを確認しているため、受け取った保険金を隠すことはできません。

確定申告の期限を過ぎると、税務署から申告するように督促があります。なお、納付が遅れた場合には、延滞税や加算税などの追加税金が課せられる可能性があります。

延滞税は、法定納期限の翌日から実際に納付する日までの日数に応じて、発生します。延滞税の税率は納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは7.3%、2ヶ月を経過した日以後は14.6%です。

加算税は、期限内に確定申告をしなかった際にペナルティとして課せられます。無申告加算税の税率は50万円までの部分は15%、50万円を超え300万円までの部分は20%、300万円を超える部分は30%です(※)。
※令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものにかかる税率

確定申告が必要なのか判断に迷う場合は、国税庁の「税についての相談窓口」や最寄りの税務署に確認しましょう。正確に税金の計算ができるか不安な場合は、税理士に相談してみるのも一つの方法です。

満期保険金には贈与税がかかるケースもある

満期保険金にかかる税金は、契約者と受取人の関係性によって次のように異なります。

  • 契約者と受取人が同じ場合:一時所得として所得税の課税対象
  • 契約者と受取人が異なる場合:贈与税の対象

例えば、学資保険は「契約者を親、受取人を子」にできるため、贈与税がかかるケースがあります。

贈与は、贈与者と贈与を受ける人の関係性によって「特例贈与」と「一般贈与」とに分かれます。特例贈与とは、父母や祖父のなどの直系尊属から20歳以上(贈与を受けた年の1月1日時点)の子供や孫などの直系卑属に贈与することです。特例贈与以外の贈与は基本的に一般贈与になります。特例贈与が認められた場合は、一般贈与よりも低い税率が適用されます。

贈与税の最大税率は55%です。ただし、贈与税には基礎控除があるため、受け取る満期保険金が110万円以下であれば申告は不要になります。

贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までが申告期限になるので注意しましょう。

満期保険金を受け取った際の税金シミュレーション

満期保険金を受け取った際に、いくら税金がかかるのかシミュレーションをしてみましょう。シミュレーションの前提条件は次の通りです。

  • 満期保険金500万円、払込保険料合計額400万円
  • 額面給与:700万円
  • 給与からの源泉徴収税額:15万円
  • 支払った社会保険料:120万円
  • 生命保険料控除額:12万円
  • 扶養家族なし

1.総所得金額を計算する
まず、給与所得と一時所得を合算して総所得金額を計算します。

給与所得控除額は「700万円×10%+110万円」で、180万円です。
したがって給与所得は、700万円-180万円=520万円になります。

一時所得は「(満期保険金500万円-払込保険料400万円-特別控除50万円)×1/2=25万円」です。

総所得金額は、給与所得520万円+一時所得25万円=545万円になります。

2.課税所得額を計算する
次に、総所得金額から各種控除を差し引いて課税所得額を求めます。

基礎控除:48万円
生命保険料控除:12万円
社会保険料控除:120万円

合計控除額=48万円+12万円+120万円=180万円

課税所得額は545万円-180万円=365万円です。

3.課税額を出す
課税所得に応じた税率で税額を計算します。

365万円×20%-427,500円=30万2,500円

4.源泉徴収額を引く
最後に、算出された税額から源泉徴収された税額を差し引きます。

30万2,500円-15万円=15万2,500円

上記が確定申告で納付すべき所得税額です。

満期保険金を確定申告する方法

確定申告の方法は、以下の3通りがあります。

  • e-Tax:インターネットを通じて申告する方法
  • 郵送:必要書類を税務署に郵送する方法
  • 窓口持参:税務署の窓口に直接確定申告書類を持参する方法

このなかでも、特におすすめなのはe-Taxです。自宅にいながら都合のいい時間に手続きが可能で、自営業者などは65万円の青色申告特別控除を受けられます。

手続きに不安がある場合や控除額が多い場合、複数の所得がある場合などは、税理士に依頼することも可能です。ただし、依頼には10~15万円程度の費用がかかることを覚えておきましょう。

保険会社から送付される、満期保険金の振り込み内容についてのお知らせ書類を見ながら、確定申告書の記入を進めましょう。

まとめ

生命保険の満期保険金は一時所得として、基本的に確定申告の対象です。しかし、年末調整を受けている会社員や金融類似商品に該当する保険など、条件次第では確定申告が不要になる場合もあります。

一時所得には50万円の特別控除があり、税額が低くなる計算方法が採用されているため、満期保険金に税金がかかるケースはそれほど多くないかもしれません。

しかし、確定申告が必要な場合に申告を怠ると、延滞税や加算税といったペナルティが課せられる可能性があります。税額の計算が複雑な場合や不明点がある場合は、税理士に相談することも検討してください。

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オカネノホンネ編集部

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