マイホームを購入する際、多くの方が住宅ローンを利用することになるでしょう。住宅ローンを選ぶ場合、返済比率をいくらにするか決める必要があります。返済比率とは、ローンの年間返済額の年収に占める割合のことです。
返済比率は住宅ローンを検討する際の重要な指標になりますが、無理のない返済比率はどの程度か、毎月どのくらい返済していけばよいのかわからないという方もいるでしょう。
そこで本記事では、住宅ローンの無理のない返済比率の目安や、年収別の返済比率についてご紹介します。
目次
一般的には年収 の20%程度が目安
住宅ローンの返済比率とは、年収に対して住宅ローン返済額の負担がどの程度あるか示す数字のことです。返済比率の数字が低いほど返済額が少なくなり、返済計画に余裕が出ることを意味しています。
一般的には、年収の20%ほどが返済比率の目安です。返済比率を年収の20%にすることで、住宅ローンの負担額を手取りの3分の1ほどに抑えられます。 この返済比率であれば生活にも余裕ができ、無理なくローンを返済していけるでしょう。
返済比率の計算式
返済比率は、「年間返済額÷年収」で算出することが可能です。例えば、年収600万円の方が月々10万円の返済をする場合、「120万円(年間の返済額)÷年収600万円」で計算でき、返済比率は20%となります。
また、この計算式では手取りではなく、額面年収の金額で算出します。額面年収は基本給や社会保険料、税金などを全て含んでいる金額であり、手取りは額面年収から税金や社会保険料を差し引いた金額です。
ただし、返済比率を算出する際は、返済額にクレジットカードの支払いや車のローンなども含めて計算するよう注意してください。住宅ローン以外の金額も返済に影響してくるため、必ず他の借入を含めた金額で検討しましょう。
【年収別】返済比率ごとの想定返済額・借入限度額
返済比率ごとの想定返済額や借入限度額は、年収によって差が生じます。また、返済比率が5%異なるだけでも、借入限度額には数百万円の違いが出てきます。
自身の年収や想定している返済比率を参照し、想定返済額や借入限度額を確認してみてください。
なお、以下の返済額は、返済期間「35年」、返済方法「元利均等」、金利「1.310%(全期間固定金利)」、ボーナス払い「なし」、他借入「なし」で記載しております。
年収300万円の場合
返済比率 | 年間の想定返済額 | 月々の想定返済額 | 借入限度額 |
20% | 60万円 | 5万円 | 1,683万円 |
25% | 75万円 | 6.3万円 | 2,104万円 |
30% | 90万円 | 7.5万円 | 2,525万円 |
35% | 105万円 | 8.8万円 | 2,946万円 |
40% | 120万円 | 10万円 | 3,367万円 |
年収400万円の場合
返済比率 | 年間の想定返済額 | 月々の想定返済額 | 借入限度額 |
20% | 64.1万円 | 5.3万円 | 2,245万円 |
25% | 80.2万円 | 6.7万円 | 2,806万円 |
30% | 96.2万円 | 8万円 | 3,367万円 |
35% | 112.2万円 | 9.4万円 | 3,928万円 |
40% | 128.6万円 | 10.7万円 | 4,500万円 |
年収500万円の場合
返済比率 | 年間の想定返済額 | 月々の想定返済額 | 借入限度額 |
20% | 100万円 | 8.3万円 | 2,806万円 |
25% | 125万円 | 10.4万円 | 3,507万円 |
30% | 150万円 | 12.5万円 | 4,209万円 |
35% | 175万円 | 14.6万円 | 4,910万円 |
40% | 200万円 | 16.7万円 | 5,612万円 |
年収600万円の場合
返済比率 | 年間の想定返済額 | 月々の想定返済額 | 借入限度額 |
20% | 96.2万円 | 8万円 | 3,368万円 |
25% | 120.3万円 | 10万円 | 4,209万円 |
30% | 144.3万円 | 12万円 | 5,051万円 |
35% | 168.3万円 | 14万円 | 5,892万円 |
40% | 192.4万円 | 16.7万円 | 6,735万円 |
年収700万円の場合
返済比率 | 年間の想定返済額 | 月々の想定返済額 | 借入限度額 |
20% | 140万円 | 11.7万円 | 3,928万円 |
25% | 175万円 | 14.6万円 | 4,910万円 |
30% | 210万円 | 17.5万円 | 5,892万円 |
35% | 245万円 | 20.4万円 | 6,875万円 |
40% | 280万円 | 23.3万円 | 7,857万円 |
年収800万円の場合
返済比率 | 年間の想定返済額 | 月々の想定返済額 | 借入限度額 |
20% | 128.3万円 | 10.7万円 | 4,490万円 |
25% | 160.3万円 | 13.4万円 | 5,612万円 |
30% | 192.4万円 | 16万円 | 6,735万円 |
35% | 224.5万円 | 18.7万円 | 7,857万円 |
40% | 256.6万円 | 21.4万円 | 8,980万円 |
理想と金融機関の返済比率には差がある
返済比率を検討する上で注意したいのが、理想の返済比率と金融機関の返済比率には差があることです。
返済比率の上限は金融機関によって異なりますが、基本的に返済比率の上限は30~35%ほどになっています。可能な限り金融機関は融資枠を広げたいと考えているため、「契約者が無理なく支払いができるか」ではなく「いくらまでなら融資できるか」を考えて上限を定めています。
そのため、金融機関の返済比率を参考にした場合、他の支出が増えたり年収が下がったりした場合に家計が圧迫される可能性が高いです。
金融機関の返済比率ではなく、理想の返済比率を参考にして住宅ローンを組んだ方が、無理なく支払えるプランになるでしょう。
住宅ローンの返済比率が高くなった場合の対処法
他の借入状況や年収によっては、住宅ローンの返済比率が高くなってしまうこともあるでしょう。ここからは、返済比率が高くなった際の対処法を紹介します。
頭金を十分に用意する
住宅ローンの返済比率が高くなってしまった場合は、頭金を十分に用意することをおすすめします。頭金とは、住宅の価格からローン借入金額を差し引いた金額のことです。例えば、5,000万円の住宅を購入する場合に頭金として700万円を支払うと、残った4,300万円を住宅ローンで支払うことになります。
頭金を増やして借入金額を少なくすれば、返済比率を抑えられる上に適用金利を引き下げられるメリットもあります。
ただし、住宅を購入する際には家具購入費や引越し代など、住宅ローン以外にもさまざまな費用がかかります。また、土地を購入する場合や注文住宅を建設する場合は、手付金なども発生する可能性があります。頭金を用意する際は、自己資金の金額全てを使い切らないよう注意してください。
マイカーローンなど借入しているローンを完済する
どうしても返済比率が高くなってしまう場合、借入しているローンを完済しておくことが大切です。住宅ローンの返済比率は、車のローンやクレジットカードの支払いなども影響してきます。他の借入があると返済比率が上がってしまう上、住宅ローンの審査において不利になる可能性が高いです。
審査の印象を考慮するという意味でも、他の借入ローンを完済した上で住宅ローンを検討することをおすすめします。
全てのローンを完済するのが難しい場合は、クレジットカードのリボ払いや消費者金融からの借入など、金利が高いものから支払っていくようにしましょう。
返済期間を長めに設定する
返済比率が高くなってしまう場合、返済期間を長めにして対処することもおすすめです。返済期間を長めに設定することで年間の返済額が下がり、返済比率を抑えることが可能です。20代や30代など借入時の年齢が若い方は、返済期間を長めにすることも考えてみてください。
ただし、返済期間が長くなるとその分の金利が発生するため、総返済額が増えてしまう点に注意が必要です。また、借入時の年齢が40代の方は、老後まで住宅ローンの返済が残ってしまう可能性があり、生活の負担が大きくなるおそれがあります。返済期間を長くするリスクも考えつつ、対処法を検討しましょう。
住宅ローンの借入金額を検討する際の注意点
住宅ローンの借入金額を検討する場合、どのような点に注意したらよいのでしょうか。
ライフスタイルやライフプランを十分に考慮する
額面年収から算出する返済比率の数字は、あくまでも参考程度に留めておきましょう。適切な返済金額は、年収だけでなくライフスタイルやライフプランによって異なります。住宅ローンは数年で完済できるものではなく、20年、30年と続いていくものです。現在は子どもがいなくても、子どもが産まれた場合は学校などで出費がかさむ可能性があります。
また、将来転職をして年収が変動したり、怪我や病気などで収入が減少したりすることも考えられます。無理のある借入をした場合、今後の生活が崩れてしまうおそれもあるでしょう。長期的なライフスタイルやライフプランをしっかりと考慮した上で、返済額を検討しましょう。
メンテナンスにかかる費用も考慮する
住宅を購入した場合、メンテナンスに費用がかかることも覚えておきましょう。住宅を建てて数年ほどは修繕費がほとんど発生しません。しかし、戸建ての場合、年数が経つと屋根や外壁の修繕、大型設備の入れ替えなどが必要になり、まとまった費用を準備することになります。
マンションの場合は、外壁やエレベーター、ロビーなど共有部分の修繕に費用がかかります。さらに、火災保険や固定資産税といった維持費も継続的に必要になるでしょう。
必要なときにきちんと費用を準備できるよう、長期的なシミュレーションを行って無理なく返済できる金額を検討してください。
無理なく返せる金額を考慮する
返済金額を決めるときには、その金額が無理なく返せるかどうかを考慮しましょう。上限いっぱいまで借入をしてしまうと年収に対して返済金額が占める割合が大きくなり、収入が下がったり、ライフスタイルが変わったりしたときに返済が滞るおそれがあります。
先ほど説明したように、金融機関から借入できる金額と無理なく返済できる金額には差があるため、その点を念頭に置きましょう。
まとめ
住宅ローンは数年で完済できるものではなく、10年・20年・30年と時間をかけて返していくものです。住宅購入時の考えや状況だけを考えるのではなく、将来のライフスタイルやライフプランも考慮して返済比率を決めることが大切です。
また、返済比率は、年収の20%ほどに納めるのが目安とされています。もし返済比率が高くなってしまう場合は、頭金の金額を増やしたり借入しているローンを返済したりして対処しましょう。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP