変額保険は、保障と資産形成を両立できるのが魅力の保険商品です。しかし、仕組みがわかりにくいと感じている人や、リスクが気になってしまい加入するのを躊躇している人は多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、変額保険の仕組みやメリット・デメリットなどを詳しく解説します。加入を検討する際の参考にしてください。
目次
変額保険とは?
変額保険とは、保険会社の運用次第で死亡保険金や満期保険金、解約返戻金などが変動するタイプの保険商品のことです。契約者から預かった保険料を株式や債券、投資信託などで運用するのが特徴で、他の種類の保険とは区別・管理して運用され ます。
※変額保険は特別勘定、それ以外の保険は一般勘定で運用されます。
一般的な生命保険と比べるとハイリスク・ハイリターンな商品といえるでしょう。なお、変額保険は、保険会社や銀行だけはなく証券会社でも取り扱っています。
変額保険の仕組み
変額保険は、イメージとして生命保険と投資信託が一緒になった商品と考えるとわかりやすいでしょう。ここでは、変額保険の特徴を保険機能と投資機能に分けて解説します。
保険機能
変額保険に加入して被保険者が万が一死亡した場合には、契約時に設定した「基本保険金」に加えて、運用次第で増減する「変動保険金」を受け取れます。最低保証があるため、もし変動保険金がマイナスになったとしても、受け取れる保険金額は基本保険金を下回ることはありません。
例えば40歳で基本保険金額1,000万円の変額保険に加入し、変動保険金が+300万円になったタイミングで被保険者が死亡した場合には、1,300万円が受け取れます。一方、変動保険金が-300万円になったタイミングで受け取れるのは700万円ではなく、基本保険金額の1,000万円です。
変額保険は、あくまでも生命保険の一種です。一般的な生命保険と同様の保障機能を持っているため、万が一契約直後に被保険者が死亡した場合も保険金を満額受け取れます。保障面でのデメリットやリスクは特にないといえるでしょう。
投資機能
変額保険の投資機能とは「貯蓄」をする機能のことです。投資家から集めたお金を一つにまとめ、専門家が複数の金融商品で運用する「投資信託」に似た仕組みとなっています。
運用が順調に進み、積立金額が払込保険料の合計額を上回った場合には解約返戻金・満期保険金が増える一方で、運用に失敗し積立金額が払込保険料の合計額を下回ると、解約返戻金・満期保険金は減少します。
例えば40歳で基本保険金額1,000万円の変額保険に加入し、変動保険金が+300万円になったタイミングで満期を迎えると1,300万円が、-300万円になったタイミングで満期を迎えると700万円を満期保険金として受け取れます。
資産形成に寄与する可能性がある反面、最低保証はないため元本割れするケースもゼロではない点には注意しましょう。
変額保険と定額保険はどう違う?
契約時点で受け取れる保険金額が決まっている商品を「定額保険」と呼びます。運用次第で保険金額が変動する変額保険とは以下のような点で違いがあるため、覚えておきましょう。
変額保険 | 定額保険 | |
運用方法 | 特別勘定 | 一般勘定 |
運用対象 | 株式や債券 | 預貯金や債券 |
運用のリスク負担者 | 契約者 | 保険会社 |
運用リスクの度合い | ハイリスク | ローリスク |
死亡保険金 | 運用実績によって変動(ただし基本保険金額は最低保証される) | 契約当初に決定した金額で固定 |
解約返戻金 | 運用実績によって変動する | 払込期間や契約経過期間に応じた金額 |
満期保険金 | 運用実績によって変動する | 契約当初に決定した金額で固定 |
保険料 | 一般的に定額保険より割安 | 一般的に変額保険より割高 |
受取金額が変動するか定額であるかが異なる
変額保険は死亡保険金・解約返戻金・満期保険金が運用次第で変動するのに対して、定額保険では契約時に決められた一定額を受け取れる仕組みであるといった違いがあります。
為替相場や株式市場、景気などの外部環境が悪化している場合、変額保険は影響を受けやすいため、受け取れる金額が減る可能性もありますが、定額保険ではそのような心配はありません。
予定しているタイミングで決まった金額を着実に受け取りたい人は、定額保険を選んでおいた方がよいといえるでしょう。一方で、少しでも受け取れる金額を増やしたい人は変額保険が向いています。
リスクの度合いが異なる
定額保険では運用成果が保険会社に帰属するため、運用実績にかかわらず決まった返戻金や保険金が受け取れます。ただし、裏を返せば運用がうまくいってもうまくいかなくても、利益が出るような商品設計になっているといえるため、得られるリターンは少なめです。
変額保険は多くの場合、運用するファンドを自分で選べることから、運用成果が契約者に帰属するのが特徴となっています。選ぶファンドによっては損失を出してしまい、元本割れするリスクもあります。しかし、運用次第では資産を増やせるため、リターンにも期待できます。
あくまでもリスクとは「価格の振れ幅」のことであることから、リスクに比例してリターンも変動する点には注意しましょう。
保険料として掛けたお金で運用する対象が異なる
定額保険は、契約者にあらかじめ約束した保険金を着実に支払えるよう、預貯金や公社債などのローリスク・ローリターンで安定的な値動きをする資産を中心に運用するのが一般的です。
一方、変額保険の運用対象は主に投資信託です。投資信託自体が国内外の株式や債券、不動産など幅広い資産に対して投資するものであるため、その組み合わせ次第でリスク・リターンが変わってきます。
変額保険には3種類ある
一般的に変額保険は以下の3種類に分けられ、それぞれに特徴があります。
保険期間 | 保険料払込期間 | 死亡保険金 | 満期保険金 | 解約返戻金 | |
終身タイプ | 終身 | 一定期間 一時払い |
最低保証あり(基本保険金額) | なし | 運用次第で変動する |
有期タイプ | 一定期間 | 一定期間 一時払い |
最低保証あり(基本保険金額) | 運用次第で変動する | 運用次第で変動する |
年金タイプ | 一定期間 | 一定期間 一時払い |
運用次第で変動する ※最低保証ありのタイプも存在する |
運用次第で変動する ※年金として受け取る |
運用次第で変動する |
終身タイプ
一生涯保障が継続するタイプの変額保険です。解約しない限りは保障が続き、死亡保険金または高度障害保険金が受け取れます。満期がないため、満期保険金は受け取れません。
また、特別勘定の運用実績に応じて、死亡保険金・高度障害保険金・解約返戻金の額は変動します。一般的な終身保険では、保険料の払込期間終了後に解約返戻金が払い込んだ保険料を上回りますが、変額保険では運用次第で元本割れする可能性もあります。
ただし、最低保証があるため、死亡保険金は基本保険金額を下回ることはありません。むしろ運用実績がよければ、受け取れる死亡保険金額が増える可能性もあります。死亡保証の面だけを見れば、一般的な終身保険よりもメリットを感じやすいのが特徴です。
有期タイプ
一定期間のみ保障が継続する養老タイプの変額保険です。保険会社によって設定できる保険期間は異なります。保険期間内に被保険者が死亡した場合には死亡保険金が、満期を迎えると満期保険金が受け取れる点で「養老保険」と同じ仕組みになっているといえるでしょう。どのような形であれ保険金が受け取れるという点で、貯蓄性のある保険です。
ただし、特別勘定の運用実績に応じて、死亡保険金・高度障害保険金・満期保険金・解約返戻金の額は変動します。そのため、満期保険金を受け取る際に元本割れするリスクがある点には注意が必要です。ただし、最低保証があるため、死亡保険金は基本保険金額を下回ることはありません。
年金タイプ
毎月払い込んだ保険料を原資として運用し、受給開始年齢を迎えたときに給付金を年金形式で受け取るタイプの変額保険です。年金の受取方法には、一生涯にわたって受け取れる「終身年金」と5年や10年など一定期間にわたって受け取れる「確定年金」、夫婦のいずれかが生存している限り受け取れる「夫婦年金」の3種類があります。
運用実績に応じて受け取れる年金額は変動します。また、年金受取開始前に被保険者が死亡・高度障害状態となった場合も、運用次第で受け取れる保険金額が変動するのが特徴です。ただし、商品によっては、これらの金額に対し最低保証が設けられているケースもあります。
変額保険に加入するメリット・デメリット
変額保険に加入する際は、メリット・デメリットの両方をよく理解しておきましょう。
変額保険のメリット
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変額保険は、運用次第で受け取る金額を増やせるのがメリットです。複数の特別勘定の中から自分で運用先を選べるため、過去の実績などを確認しながら期待値の高いファンドを選べます。実際の運用自体は専門家が行うため、投資に関する知識がない人でも資産運用を始められる点も魅力です。
高金利での運用を見込んでいるため、定額保険と比べると比較的割安な保険料で保障を準備できるのもメリットの一つです。最低保証もあるので、死亡保障をメインに活用したい人にとっては選択肢の一つになるでしょう。
また、支払った保険料に応じて一定額を所得から控除できる生命保険料控除の対象となる(最大控除額4万円 )点や、一般的な投資商品と異なり、運用中の利益に対して課税されない(一般的な投資商品では20.315%が課税される )のもメリットです。
インフレが発生し物価が上昇すると、相対的にお金の価値は下がります。そのため、定額保険の場合は、受け取れる保険金や解約返戻金の価値が目減りし元本割れする可能性もあります。一方、変額保険の場合インフレによって景気や相場状況が好転することで、受け取れる保険金や解約返戻金額が増加する可能性があり、インフレによる貨幣価値下落の影響を和らげることができるのがメリットです。
変額保険のデメリット
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変額保険は運用次第で満期保険金や解約返戻金額などが変動するため、元本割れするリスクもあるのがデメリットです。支払った保険料以上のリターンが必ず得られるわけではありません。特に5年や10年といった短期間で解約した場合には損失が出やすい傾向があります。
資産運用においては一般的に運用期間が長期にわたるほどリスクが低減されるため、できるだけ長期間契約を継続することを心がけましょう。
また、運用を保険会社に任せられる分、運用コストが高くつく点も変額保険のデメリットの一つです。運用関係費や保険関係費などのコストがかかり、一般的な投資信託や株式などの商品と比べると数倍の手数料がかかるケースも珍しくありません。
変額保険はどう活用すればよい?
最後に、変額保険の具体的な活用方法を見ていきましょう。
資産形成・資産運用を目的に活用する
変額保険は老後資金の準備や教育資金の準備など、ライフイベントに合わせた資金を準備するのに向いています。
例えば年金タイプの変額保険に加入すれば、老後資金に対して備えられます。有期タイプの変額保険に加入し、まとまったお金が必要になるタイミングに合わせて保険期間を設定しておけば、満期保険金を教育資金・老後資金に充てることも可能です。
終身保険であれば、一定額の死亡保障を確保しつつ、運用実績が好調なタイミングで解約をして返戻金を受け取るといった柔軟な使い方もできるでしょう。
相続対策を目的に利用する
相続対策を目的に利用したい人は、終身タイプの変額保険に加入するとよいでしょう。
一般的な生命保険と同様に、変額保険に加入して受け取った死亡保険金には、相続税の非課税枠が適用されます。亡くなった人が保険料を負担し、相続人が保険金を受け取った場合には「500万円×法定相続人の数」分の金額までは相続税がかかりません。
つまり、現金のまま相続するよりも、保険金の形で家族にお金を残した方が税負担を軽減できるのです。
さらに、変額保険は。運用次第で死亡保険金額を増やせる可能性もあります。相続税の負担を減らしつつ、少しでも多くのお金を残したい人は変額保険への加入が向いています。
まとめ
変額保険は、一般的な生命保険と異なる仕組みを持つ保険です。保障機能と投資機能の両方を持っています。運用次第で保険金が増減するリスクはあるものの、死亡保障をメインに活用する場合は最低限、基本保険金額分の支払いが保証されているためさほど心配はありません。
しかし、資産形成を目的に活用する場合は、元本割れするリスクがあることには注意しましょう。メリット・デメリットをしっかり理解し、自身のライフプランを考慮した上で加入を検討することが大切です。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP