生命保険の不要論は信じてもいい?自分にも当てはまる?必要性を見極めて賢い選択を!

保険全般

近年では、さまざまなメディアや書籍で生命保険の不要論が提唱されています。その影響で、生命保険への加入を躊躇したり、すでに加入している保険の解約を検討したりしている人も多いのではないでしょうか。

本記事では、生命保険の不要論が生まれた背景や自分にとって生命保険の必要性を見極めるポイントなどについて詳しく解説します。この機会に、将来の不安から自分や家族を守る方法を考えてみましょう。

生命保険不要論は鵜呑みにしない方がいい

近年、FPなどの専門家やインフルエンサーなどによる「生命保険不要論」が話題になっています。しかし、その主張を鵜呑みにするのは危険です。その理由として、保険の必要性は、個々人の状況によって異なるためです。

たとえば、数千万円の貯蓄がある人であれば、病気やケガをした際にその都度治療費を支払えばいいという考え方は合理的な選択肢となります。しかし、貯蓄がほとんどない人の場合、保険に加入していなければ、治療費を支払えずに経済的に困窮する可能性があるでしょう。

つまり、生命保険が必要かどうかは、個人の貯蓄額をはじめ、家族構成や収入状況、健康状態など、さまざまな要素を考慮する必要があるということです。生命保険は、決して必要か不要かを単純に判断できるものではありません。他人の意見に振り回されず、自身の状況を冷静に分析し、必要に応じて適切な保険を選ぶことが大切です。

生命保険不要論における4つの根拠

生命保険は、以下のような理由から不要といわれることがあります。

  • 公的保障が充実している
  • 保険金や給付金を受け取る頻度が低い
  • 万が一のことがあったときは貯金で賄える
  • 保険料を投資に回した方が効率よくお金を貯められる

これらは事実なのか、本当に生命保険は不要なのかについて以下で詳しく見ていきましょう。

1.公的保障が充実している

生命保険は、公的保障が充実している日本において不要といわれる場合があります。確かに、高額療養費制度や傷病手当金制度など、医療費の負担や収入減少をカバーする公的制度が存在します。しかし、これらの制度にはいくつか注意点があり、必ずしもすべての医療費をカバーできるわけではありません。

高額療養費制度は、ひと月の医療費が一定額を超えた場合にその超えた分について払い戻しを受けられる制度ですが、差額ベッド代や先進医療にかかる費用など、対象外の費用も存在します。ひと月ごとに最低限の自己負担費用を支払わなければならないため、治療が長期化すれば、自己負担額が大きくなる可能性もあるでしょう。

また、傷病手当金制度は会社員や公務員が利用できる制度で、病気やケガで働けなくなったときに、毎月の給与のおよそ3分の2が給付されます。収入減少をある程度カバーすることが可能ですが、給付を受けられるのは最大で1年6ヶ月です。

常時て家計が苦しい場合は、少しでも収入が減ると生活が成り立たなくなってしまうこともあるでしょう。そもそも自営業者の場合は、傷病手当金は利用できません。加えて、世帯主に万が一のことがあった場合は、遺族年金が支払われます。しかし、子どもが小さい家庭や、専業主婦(主夫)がいる家庭では、遺族年金だけで十分な生活ができるとは限りません。

このように、公的保障制度は充実していますが、医療費や生活費の負担を完全にカバーするには不十分です。自身の収入や貯蓄状況、家族構成などを考慮して、医療保険や死亡保険の必要性を検討しましょう。

2.保険金や給付金を受け取る頻度が低い

保険金や給付金を受け取る頻度が低いことも、生命保険が不要といわれる理由の一つです。以下は、厚生労働省の「令和4年簡易生命表」をもとに、30歳〜70歳の死亡率をまとめたものです。

年齢 死亡率
30歳 0.05%
40歳 0.09%
50歳 0.24%
60歳 0.64%
70歳 1.74%

また、厚生労働省の「令和2年患者調査」によると、人口10万人あたりの入院者数は960人、つまり0.96%に過ぎません。生命保険は、死亡や入院、手術など、もしものことがない限り保険金が支払われないため、「入っていても無駄ではないか」と感じることも無理はないでしょう。

しかし、保険はそもそも発生頻度は低いものの、いざ発生すると損失額が大きいリスクに備えるためのものです。特に世帯主が亡くなった場合、世帯の収入が減り、遺族の生活が苦しくなることが予想されます。そのような場合に備えて、遺族が経済的に困らないよう事前に生命保険に加入しておくことが重要です。

また、入院する確率は年齢を重ねると高くなる傾向があり、特に70歳以降になると、入院率は30~40代の数倍にものぼります。加えて、ひとりの人が生まれてから亡くなるまでにかかる医療費(生涯医療費)は約2,800万円であり、その約半分は70歳以降に発生するというデータもあります。

これらの点を考慮すると、生命保険は決して無駄ではありません。自身の状況や家族構成などを考慮し、適切な保険を選ぶことが重要です。

3.万が一のことがあったときは貯金で賄える

死亡時や入院時に現金があれば、保険に加入する必要はないという意見もあります。たしかに、いざというときに備えて貯蓄しておくことも一つの方法です。

しかし、万が一のことはいつ起こるか予測できません。貯蓄をしている途中に万が一のことが起きた場合、その時点で必要なお金を確保できていない可能性があります。また、貯蓄中に収入が途絶えて、計画通り貯蓄できなくなるリスクもあるでしょう。一方、保険に加入していれば、契約直後に万が一のことがあっても、必要な額をカバーできます。

現時点で十分な貯蓄があれば問題ありませんが、統計によると、十分な貯蓄がある人ばかりではありません。

年代 金融資産保有額の平均値 金融資産保有額の中央値
20代 151 10
30代 599 130
40代 811 180
50代 1,212 200
60代 1,862 530
70代 1,683 650

※金融広報中央委員会「令和5年(2023年)家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]」
統計表4. 金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)を参照

特に若い人は数十万円程度しか貯蓄がない場合も多く、保険を活用するメリットは大きいといえるでしょう。

4. 保険料を投資に回した方が効率よくお金を貯められる

貯蓄型保険は、満期保険金や解約返戻金を受け取れるため、資産形成の手段として活用できます。しかし、生命保険は一般的な金融商品に比べてリターンが低いため、投資の方が効率よくお金を貯められると考える人もいるでしょう。

確かに、生命保険は国内外の債券を中心に運用されるため、株式や投資信託に比べて最終的に受け取れる金額は少なくなりやすい傾向があります。一般的な金融商品への投資ほどの高い利回りを期待することは難しいでしょう。しかし、生命保険で運用するメリットは、投資信託などと異なり、専門知識がなくても始めやすい点にあります。自分で銘柄を選んだり、売買のタイミングを計ったりする必要がなく、手軽に資産形成を始められるでしょう。

さらに、投資信託のように大きく価値が下落するリスクが少ないというメリットもあります。長期的な視点で安定した運用を目指す方にとって、生命保険は魅力的な選択肢といえるでしょう。

また、保障と貯蓄を両立できるという点は、保険にしかない機能です。たとえば、学資保険で教育資金を積み立てた場合、途中で親が亡くなったとしても、子どもに学資金が支払われる仕組みになっています。もし保障が不要でお金を増やすことだけが目的の場合、投資信託や株式の方が適しているかもしれません。貯蓄型保険への加入と一般的な金融商品への投資にはそれぞれメリットとデメリットがあり、何を求めるかによって使い分けることが重要です。

生命保険不要論に該当する可能性がある人

以下の特徴があてはまる人は、死亡保険や医療保険などの生命保険に加入する必要性が低いかもしれません。

  • 貯蓄や資産が十分にある人
  • 扶養家族がいない人

貯蓄や資産が十分にある人

貯蓄や資産が十分にある人は、生命保険が不要といえるかもしれません。万が一亡くなったり、働けなくなったりしても、預貯金や家賃収入などで家族の生活費を賄える可能性があるためです。

しかし、子どもがいる場合や配偶者の収入が十分でない場合、残された家族が生活するために必要な費用は決して少なくありません。生命保険文化センターの「2021年度生命保険に関する全国実態調査」によると、世帯主に万一のことがあった場合に残された家族のために必要と考える生活資金総額は、平均5,691万円 にもなります。

余程大きな資産がない限り、死亡保険に加入しておくことは、家族の将来を守るために有効な手段といえるでしょう。

扶養家族がいない人

扶養家族がいない場合、死亡保険への加入は必須ではありません。万が一に備えて葬式代程度の準備があれば、周囲に迷惑をかける可能性は低くなるでしょう。

ただし、医療保険やがん保険など、生存中に給付を受けられる保険については加入を検討することをおすすめします。加入していない場合、病気やケガによる治療費や収入減少で家計が圧迫され、生活が厳しくなる可能性があるためです。

また、生命保険は加入時期が早ければ早いほど、毎月支払う保険料は安く済むことが多くなっています。独身でも将来的に結婚や家族を持つことを考えている人は、早めに加入しておくのもよいでしょう。

生命保険不要論に該当しない可能性がある人

以下の特徴があてはまる人は、生命保険の必要性が高い人です。安易に不要論を信じるのではなく、自分にとって必要な保障を準備しておきましょう。

  • 扶養家族がいる人
  • 貯蓄が少ない・使いたくない人
  • 自営業やフリーランスとして働いている人
  • 相続税対策をしたい人
  • 保障を受けながら貯蓄をしたい人
  • 目標に向けて計画的に貯蓄をしたい人

扶養家族がいる人

扶養家族がいる人は、生命保険に加入しておく必要性が高いといえます。家計の中心となる人が亡くなると、収入の減少に伴い、生活費や教育費、住宅ローンなどの支払いが困難になるケースも考えられるため、万が一に備えて、死亡保険は最低限必要です。

また、病気やケガで長期間働けなくなる事態に備えて、就業不能保険や医療保険に入っておくのもよいでしょう。

貯蓄が少ない・使いたくない人

貯蓄が少ない人にとって、病気やケガによる治療費は負担になります。生命保険に加入しておけば、給付金の中から治療費を賄えるようになるため、経済的な不安が減り、安心して治療に専念できるようになるでしょう。

すでに貯蓄がある人でも、教育費用や住宅購入費用など、病気やケガへの備え以外の目的で使いたいと考えているケースも多いはずです。保険で治療費を賄えれば、貯蓄を切り崩さずに済むでしょう。

自営業やフリーランスとして働いている人

公的保障が手薄になりがちな自営業やフリーランスは、生命保険に加入しておいた方がよいでしょう。公的医療保険制度や高額療養費制度については、会社員や公務員と同じように利用できます。しかし、自営業者などが加入する国民健康保険では、傷病手当金は支給されないケースがほとんどです。

また、会社員や公務員は国民年金に加えて、厚生年金や共済年金に加入できますが、自営業者などは国民年金しか加入できません。そのため、自営業やフリーランスには、以下のようなリスクがあります。

  • 働けなくなった時に収入が不足する
  • 万が一亡くなったときに遺族が受け取る金額が少なくなる
  • 老後の生活資金が不足する

これらのリスクを補うためには、就業不能保険、死亡保険、個人年金保険などに加入しておくとよいでしょう。

相続税対策をしたい人

生命保険は、家族への保障だけでなく、相続税対策にも有効な手段です。生命保険を相続税対策に活用する大きなメリットとして「非課税枠を活用できること」が挙げられます。生命保険の死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」 の非課税枠が適用されます。たとえば、法定相続人が2人いる場合、1,000万円までは相続税がかかりません。

つまり、現金でそのまま財産を残すのではなく、前もって保険に加入し遺族が保険金を受け取れるようにしておけば、非課税枠がある分、相続税の負担を減らせる可能性があるのです。相続税対策で生命保険に加入する場合は、いつ亡くなっても遺族に保険金が支払われる終身保険に加入するとよいでしょう。

保障を受けながら貯蓄をしたい人

一定の保障を受けながら貯蓄をしたい人にとって、生命保険は最適な選択肢の一つになるでしょう。数ある金融商品の中でも、保障と貯蓄を両立できるのは基本的に保険だけです。貯蓄のみでは、途中で病気やケガなどをした場合、貯蓄が中断するリスクがあります。

生命保険であれば、万が一のことがあった際には契約時に決めた保険金額が受け取れる一方で、満期や任意のタイミングで解約し貯まったお金を受け取ることも可能です。保障と貯蓄を両立したい人は、終身保険や養老保険などを検討してみましょう。

目標に向けて計画的に貯蓄をしたい人

生命保険は株や投資信託と異なり、最終的に受け取れる満期保険金額や解約返戻金額が、契約した時点である程度決まっているのが特徴です(定額保険の場合)。

大きくお金を増やすことは期待できないかもしれませんが、お金が必要になる時期・金額が決まっており、確実にお金を貯めたいと思っている人には向いています。貯蓄目的で生命保険を検討している人には、貯蓄性の高い学資保険や個人年金保険などがおすすめです。

生命保険の必要性を見極める際の注意点

生命保険は単に必要か不要かを考えるのではなく、将来のライフプランや自身の収入、家族構成などを踏まえて、「いくら必要なのか」「いつまで必要なのか」を慎重に検討することが重要です。

「とりあえず入っておけば安心」という安易な考え方は避けましょう。万が一のことがあったときに保障金額が足りなくなったり、必要な時期に保険金を受け取れなくなったりすることで、家族の生活が苦しくなる可能性があります。

保険金額は、残された家族が必要になる生活費や教育費、家族が受け取れる遺族年金などを考慮して、適切な金額を設定しましょう。保険期間は、子どもが独立するまで、配偶者が年金を受け取るまでなど、それぞれの目的に合わせて選ぶことが大切です。

まとめ

生命保険不要論は、すべての人にあてはまるわけではありません。公的保障だけではカバーしきれない費用が多いことや、それらの費用を貯蓄だけで賄えない場合もあるためです。

生活費が多くかかりやすい扶養家族がいる場合や、公的保障が手薄な自営業やフリーランスの人は特に生命保険の必要性は高いといえるでしょう。

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オカネノホンネ編集部

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