うつ病に罹患したら住宅ローンの返済は免除される?返済できない場合の対処法についても紹介!

ローン

住宅ローンの融資を受ける際は、金融機関と契約してから完済するまでに10年~35年と長期になることが一般的です。場合によっては、40年以上の住宅ローンを契約することもあるでしょう。

その間に、病気で働けなくなり、返済が難しい時期も出てくるかもしれません。団信に加入している人の中には、「団体信用生命保険(以下、団信)の保険金で死亡や病気時に支払いが免除されるから大丈夫」と考える人もいるでしょう。

しかし、保障対象外の病気に罹患した場合、団信に加入していても保険金が下りないケースがあります。

この記事では、精神疾患の一つである「うつ病」に罹患した場合に住宅ローンの支払いが免除されるか、もし免除されない場合はどのように支払いを続けていけばよいかについて解説します。

うつ病に罹患した場合でも住宅ローン返済は免除されない

結論として、うつ病に罹患した場合は住宅ローンが免除されません。

大半の金融機関は、住宅ローン契約時に死亡・高度障害時に保険金で住宅ローン残債が支払われる「団信」への加入が条件の一つとなっています。また、団信に特約を付加すれば、がんや三大疾病、八大疾病などに罹患した場合でも保険金が支払われるケースも少なくありません。

ただし、基本的に「うつ病」といった精神疾患は、保険金の支払い対象にならない場合が多いです。うつ病に罹患し、収入が減少、もしくは途絶えたとしても、基本的に住宅ローンの返済は続けなければならないでしょう。

うつ病で住宅ローン返済ができないときの対処法

うつ病で返済ができず滞納状態が継続すると、最悪の場合、自宅が競売にかけられたり、ブラックリスト入りとなったりするため、返済を放っておくことだけは避けなければなりません。

では、どうしても返済ができなくなった場合はどうすればよいのでしょうか。ここでは、次の3つの対応方法について紹介します。

  • 保険の活用
  • 金融機関に相談
  • 任意売却

うつ病で保険金が下りる保険を活用する

うつ病に罹患した場合、団信からは保険料は下りないため、生命保険などでカバーするという方法を考えましょう。

ただし、生命保険は団信のように住宅ローン返済が免除になるわけではなく、現金で給付金・手当金を受け取れるタイプのものです。住宅ローンの返済がそのまま続く点は留意しましょう。

また、生命保険によっては、うつ病などの精神疾患に罹患した場合保険金が下りないケースもあります。うつ病になった場合の備えとして生命保険に加入する場合は、必ず保障内容を確認した上で、検討するようにしましょう。

※うつ病に罹患した場合に活用できる保険については後述しています。

金融機関に相談をする

保険を使っても住宅ローンの返済が難しいというときは金融機関に相談してみましょう。金融機関に相談した場合、次のような対応を提案される可能性があります。

  • リスケ(リスケジュール)
  • 一定期間減額の減額
  • 任意売却

ただし、これらの対応は、必ず実現するというわけではありませんので気を付けてください。では、対応方法について詳しく見ていきましょう。

リスケの相談をする

住宅ローンのリスケ(リスケジュール)では、返済計画の見直しを行います。見直し方法の例を見てみましょう。

見直し方法 特徴
ボーナス返済の見直し ボーナス返済をやめ、月々の返済のみとする方法
ボーナスのみが打ち切られた場合や、減額がある場合に有効
一定期間の減額 返済額を一定期間減額する方法
一時的に収入が減る場合に有効
元金返済の据置 一定期間元金部分の返済を据置し、利息のみを返済する方法
一時的に収入が減る場合に有効
借入期間の延長 毎月の返済額を減額し、借入期間を延長する方法
毎月の収入が減った場合に有効

リスケの相談時には、なぜ返済が厳しくなったのかのヒヤリングや、家計の状況確認も行われます。また、「一定期間の減額」「元金返済の据置」の場合は、リスケ期間が終了すると返済金額は増額します(返済期間延長で対応する金融機関もあります)。

再度減額を希望する場合は、改めてリスケの相談をしなければならないため、注意しましょう。

一定期間減額して欲しいことを相談する

うつ病などで住宅ローン返済が厳しくなった場合、一定期間、返済金額を減額し、経済的な負担を抑えるという方法があります。減額の期間は、金融機関との相談次第です。必ずしも希望通りになるわけではない点を理解しておきましょう。

一定期間の減額を行うメリット・デメリットを紹介します。

メリット ・一定期間は返済額が減るため、家計の負担を軽減できる
デメリット ・減額期間終了後、毎月の返済額が減額前よりも増える
・元本の減りが遅くなるため、利息が増え総返済額も増える

一定期間の減額は、一時的に収入が減るケースに向いた方法です。うつ病の療養がいつ終わるかわからない、収入が戻るかわからないという場合は、減額終了後に返済を続けられるかをよく考える必要があるでしょう。

任意売却を行う

リスケや一定期間の減額で対応できない場合、「任意売却」で家を手放すことも考えなければなりません。任意売却とは、金融機関(債権者)の許可を得て、家を売却するというものです。

任意売却の売却金額で住宅ローンを完済できればよいですが、売却金額が残債よりも少ない場合は、自己資金で足りない分を補う必要があります。確実に返済ができないと金融機関が判断した場合は、任意売却を認められない可能性もあるでしょう。

任意売却の手順については、後ほど紹介します。

うつ病で住宅ローン返済できない場合に活用できる保険

うつ病で住宅ローンを返済できない場合、団信の保障を活用することはできません。以下のような保険を活用して対応しましょう。

  • 住宅ローン返済支援保険
  • 労災保険
  • 傷病手当金
  • 医療保険
  • 就業不能保険

ここでは、それぞれの保険について詳しく見ていきましょう。

住宅ローン返済支援保険

住宅ローン返済支援保険は、病気やケガで収入が減少し、住宅ローンの返済が難しくなったときのサポートのための保険です。一般的に、住宅ローンを契約した金融機関を通じて加入します。

住宅ローン返済支援保険の主な特徴を確認しておきましょう。

保障内容 病気やケガで30日を超える入院の場合に保険金が支払われる
※医師の指示での自宅療養を含む
保険金額 毎月の返済額とほぼ同額(ボーナス返済分含む)
保険金が支払われる期間 1回の入院に対し、最長3年程度

金利に含まれるケースが多い団信の保険料とは異なり、住宅ローン返済支援保険の保険料は契約者が負担します。

また、住宅ローン返済支援保険は、入院したときのための保険です。一般的に、30日を超える入院をした場合に返済支援が受けられます。ただし、病気になれば必ず保険金が支払われるというものでなく、短期間の入院や入院をせずに療養する場合は支払い対象外となるケースが多いため注意しましょう。

労災保険

労災保険(労働災害補償保険)は、業務や通勤が原因でケガや病気で働けなくなったとき、もしくは死亡したときに補償される保険です。労災保険の補償対象者は労働者ですが、保険加入者は会社であるため、保険料を支払うのは会社となります。

労働保険の給付は、次のような形式となります。

  • 療養の給付:労災病院などで治癒するまで無料で療養を受けられ
  • 療養の費用の給付:労災病院など以外で治療した場合にかかった費用を受け取れる

上記以外にも「休業補償」があります。業務や通勤が原因で療養が必要になった場合、賃金を受け取らない日の4日目から給付基礎日額の8割が給付されるというものです。

なお、労災保険は、業務や通勤が原因で療養するとき以外には給付がありません。つまり業務でうつ病になったことを証明できなければ、給付が受けられない可能性があるのです。

傷病手当金

労災保険の給付条件に入らない場合に受給できるのが「傷病手当金」です。健康保険の保障の一部となるため、保険料の支払いは会社と労働者で折半します。主な受給要件は、次の通りです。

  • 仕事ができない状態であること
  • 休業中に給与の支払いがないこと
  • 連続する3日間の休業を含み、4日以上仕事ができない状態であること

傷病手当金が支給される期間は、支給開始日から1年6ヵ月 を限度に支払われます。協会けんぽの場合、1日あたりに支給される金額は「支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×3分の2」 で算出します。

傷病手当金は、病気やケガで休業し、給与等が全く入らなくなった場合に受給可能です。給与を受け取っている場合は、給与の日額と傷病手当金の日額を比較し、傷病手当金が上回った場合に限りその差額が支給されます。給与の方が多いときは支払われません。

住宅ローン返済にも利用できますが、その際は生活費を別途確保しておくようにしましょう。

医療保険

医療保険には、全ての国民に加入が義務付けられている「公的医療保険」と民間保険会社が販売する「医療保険」があります。ここでは、民間保険会社の医療保険について紹介します。

医療保険に加入していると、病気やケガで入院、手術を行った場合に給付金が支払われます。保障内容の例を見てみましょう。

保障対象
  • 入院(日帰り入院が対象になる商品もあり)
  • 手術
給付金
  • 疾病入院給付金
  • 災害入院給付金
  • 手術給付金 など
保障期間 終身(「10年間」「60歳まで」などの定期型もあり)
その他 先進医療給付金特約、がん一時金特約、通院給付金特約などが付加できる商品もある

入院給付金は「入院1日に付き〇円」という形式で給付され、手術給付金は手術の種類によって給付金額が定められていることが一般的です。

医療保険は病気になったときのために加入を検討しておきたい保険ですが、あくまで入院や手術にかかるお金に備えることが目的の保険です。うつ病で入院をしなかった場合は、給付対象にならない可能性があるので注意してください。

また、医療保険の給付金は、病気・ケガの治療のために使うことを想定して設計されています。そのため、住宅ローン返済にまでは資金を回せない可能性もあるでしょう。万が一のために住宅ローン返済金は、貯蓄や資産運用といった方法で準備しておいた方がよいといえるでしょう。

就業不能保険

病気やケガで働けなくなった場合、収入が減少、または途絶えることが不安という人は多いでしょう。その不安を解消するのが就業不能保険です。就業不能保険に加入していれば、病気やケガの療養で一定期間以上働けなくなった場合、毎月給付金が受け取れます。(一時金で支払う場合もあります。)

ただし、商品によってはうつ病の療養では給付されないものもあるため、申込時には保障内容をよく確認してください。

また、就業不能保険は収入が減少、または途絶えたときのための保険であることから、まずは生活費の足しにしたいという場合は、住宅ローンの返済にまで充当できない可能性があることを念頭に置いておきましょう。

うつ病に罹患した際に住宅ローン返済を緩和させたい場合の注意点

うつ病の罹患で住宅ローン返済が難しくなった場合、「団信」や「住宅ローン疾病保障保険」で備えることを思い浮かべる人もいるでしょう。ただし、これらには注意点があります。

ここでは、住宅ローン返済を緩和させたい場合の注意点について見ていきましょう。

通常の団信の活用はできない

一般的な住宅ローンの団信は「住宅ローン契約者の死亡・高度障害時」に保険金で残債が支払われます。そのため、うつ病で療養する場合は保障対象外です。

基本的に通常の団信では、うつ病での収入減少リスクに備えることはできないと考えておきましょう。

がん団信や三大疾病団信なども活用できない

住宅ローン返済中の病気に備えられるものには、通常の団信以外にがん団信や三大疾病団信があります。がんや三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)など所定の疾病に罹患した場合、住宅ローンの残債が保険金から支払われるという商品です。

商品によっては、残債の支払いとは別に「先進医療特約」等から治療にかかった費用と同額が支払われるものもあります。

しかし、一般的にがん団信や三大疾病団信も、うつ病を保障対象としたものはありません。うつ病に罹患した際の住宅ローン返済のサポートにはならないことを知っておきましょう。

うつ病で住宅ローン返済ができない場合の任意売却方法

うつ病に罹患し、住宅ローンが返済できなくなった場合、住宅の任意売却も視野に入れなければなりません。任意売却とは、住宅ローン返済が難しくなったときに不動産を売ることです。 任意売却の際は、債権者である金融機関の承諾を得る必要があります。

また、売却価格が返済総額よりも低い場合、売却後に残った残債をどうやって返済するかも考えなければなりません。任意売却の流れは、次のようになっています。

1. 不動産会社などに相談する
2. 物件の価格を査定してもらう
3. 債権者と交渉する
4. 販売活動をする
5. 契約を締結する
6. 売却金を清算する

任意売却の流れについては、以下で詳しく解説します。

1.不動産会社などに相談する

任意売却は、金融機関の承諾を得て手続きを行います。契約者、金融機関、不動産会社で連携しながら手続きを進めなければならないため、任意売却の実績が多い不動産会社に依頼するとよいでしょう。

ただし、任意売却は自分のペースで進められる売却とは異なるため、不明点があれば金融機関や不動産会社に相談し、納得した上で進めることが大切です。

2.物件の価格を査定してもらう

不動産会社に相談した後、自宅をどの程度の価格で売却できるかを査定してもらいます。その際に売却価格だけでなく、必要経費も算出してもらいましょう。必要経費には、以下のようなものがあります。

  • 不動産会社に支払う仲介手数料
  • 抵当権抹消費用

その他、以下のような費用もかかります。

  • 引っ越し費用
  • 新居手配に関する費用(家賃・敷金・礼金など)
  • 固定資産税・都市計画税

引っ越し費用については売却代金から捻出できる可能性もあるため、金融機関に確認してください。

3.債権者と交渉する

査定で売却価格や売却時期がある程度確認できたら、金融機関に任意売却の承諾を得てください。承諾を得る必要がある理由としては、住宅ローンで購入した不動産には「抵当権」が設定されており、その債権者は金融機関となっているためです。

また、住宅ローンに残債がある場合は、今後どのように返済していくかも話し合いましょう。

4.販売活動をする

金融機関の承諾を得た後、不動産会社と媒介契約を結び、販売活動を行います。販売活動を行っている間も住宅ローン返済義務は残っています。返済の滞納が続けばブラックリスト入りの恐れもあるため、急いで売却できるよう不動産会社と協力して進めてください。

5.契約を締結する

売却が成立したら売買契約を締結します。ただし、売却先についても金融機関に承諾を得る必要があるため、売却活動中からこまめに連絡をとるようにしましょう。また、引っ越し日についても、買主・金融機関と相談しながら決定してください。

6.売却金を清算する

引っ越しが完了したら、売却金の精算を行います。精算時に抵当権抹消手続きと所有権の移転登記も行います。

なお、売却金で残債を返済できない場合は、事前の協議に従って残った金額の返済をしてください。一般的には「一括返済」「分割返済」のいずれかとなります。

まとめ

うつ病に罹患し、働けなくなったことで収入が減少しても、住宅ローン返済は免除されません。また、住宅ローン契約時に加入する団信も死亡・高度障害時の保障となるため、うつ病の場合は保障がありません。特約も「がん」「三大疾病」といった罹患時に備えるものであることから、団信ではうつ病に対して備えられないと考えておきましょう。

また、うつ病の場合は、労災保険や医療保険、就業不能保険などの保険だけで住宅ローン返済までカバーすることも難しい可能性もあるでしょう

一時的に返済負担を軽くすることで対応できるのであれば、後ほど返済金額が上がるというリスクもありますが、住宅ローンの一時的な減額、元金返済の据置などで対応することを検討しましょう。






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オカネノホンネ編集部

オカネノホンネ編集部

難しいお金の話を、ファイナンシャルプランナー・ファイナンシャルプランニング技能士や保険や金融商品の専門家が忖度なし「ホンネ」でわかりやすく伝えます。

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