生命保険料控除とは?うまく活用して税負担を減らそう

保険全般

年末調整や確定申告の際に、生命保険料控除を利用すれば、所得税や住民税の負担を軽減できます。実際にどのくらいの節税効果があるのか、気になる人も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、生命保険料控除の仕組みや具体的な控除額、計算方法について詳しく解説します。また、生命保険料控除の申請方法も紹介するため、すでに生命保険に加入している人はぜひ参考にしてください。

生命保険料控除とは

生命保険料控除とは、1年間(1月1日~12月31日)に支払った保険料に応じて、一定の金額を所得から控除できる制度です。

所得税や住民税は、収入から経費を差し引いて残った「所得」に対して、一定の税率をかけて算出します。生命保険料控除を適用して課税所得を抑えれば、税負担を軽くすることが可能です。

たとえば、所得税と住民税の税率がそれぞれ10%で、生命保険料控除によって10万円の所得控除を受けられたとしましょう。この場合、所得税と住民税のそれぞれで10万円×10%=1万円分の税負担を減らせます。

なお、所得税に関しては、所得が増えるほど高い税率が適用される「累進課税制度」が採用されています。そのため、生命保険料控除を活用すれば、税率の高い高所得者ほど税負担の軽減効果は大きくなるでしょう。

生命保険料控除は、国民一人ひとりの自助努力を促進する目的として設けられた制度であり、令和7年度(2025年)以降も控除額の見直しが検討されています。今後変更される可能性があるため、最新情報を追うようにしましょう。

参考:金融庁|令和6(2024)年度税制改正について

生命保険料控除における新制度と旧制度の違い

生命保険料控除の旧制度は、「平成23年(2011年)12月31日以前に締結した契約」に対して適用される制度です。

一方で、新制度は「平成24年(2012年)1月1日以後に更新・転換・特約の中途付加をした保険契約や、新たに締結した保険契約」に対して適用される制度を指します。

旧制度では「一般生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」の2つの控除枠がありましたが、新制度への変更に伴い「介護医療保険料控除」が新設されました。

詳しくは後述しますが、新制度と旧制度では、最大控除額や控除の計算式が異なります。

加入している契約が新制度と旧制度のどちらに該当するのかは、毎年10月頃に保険会社から送付される「生命保険料控除証明書」で確認可能です。

生命保険料控除の種類

新制度の生命保険料控除は、3種類に分けられます。

特徴 対象となる保険
一般生命保険料控除 生存または死亡に起因して一定額の保険金が支払われる ・終身保険
・定期保険
・学資保険 など
介護医療保険料控除 疾病や身体の障害などによって給付金や保険金が支払われる ・医療保険
・がん保険
・介護保険
・就業不能保険 など
個人年金保険料控除 個人年金保険料税制適格特約が付加された個人年金保険契約に関わる保険料が支払われる ・個人年金保険 など

保険料がどの控除に分類されるかは、保障内容によって異なります。保険商品や特約などの名称だけでは判断できない場合もあるため、実際に申請する際は生命保険料控除証明書を確認しましょう。

生命保険料控除の計算方法について

ここでは、生命保険料控除の計算方法や、実際にどのくらい所得税・住民税の負担を軽減できるのかをケース別に解説します。

自身がどのケースに該当するのか、以下を確認してみてください。

旧契約の場合の控除額

旧契約の控除額の計算方法は、以下の通りです。

【旧契約の場合】

所得税 住民税
年間払込保険料 控除額 年間払込保険料 控除額
25,000円以下 払込保険料全額 15,000円以下 払込保険料全額
25,000円超
50,000円以下
(払込保険料×1/2)+12,500円 15,000円超
40,000円以下
(払込保険料×1/2)+7,500円
50,000円超
100,000円以下
(払込保険料×1/4)+25,000円 40,000円超
70,000円以下
(払込保険料×1/4)+17,500円
100,000円超 一律50,000円 70,000円超 一律35,000円

計算方法は、「一般生命保険料控除」「個人年金保険料控除」ともに共通です。2種類を合計した最大控除額は、所得税で10万円、住民税で7万円となります。

下記を例として、所得税と住民税の控除額を見てみましょう。

  • 一般生命保険料控除の対象となる年間払込保険料:6万円
  • 個人年金保険料控除の対象になる年間払込保険料:10万円
所得税 住民税
一般生命保険料控除 40,000円 32,500円
個人年金保険料控除 50,000円 35,000円
控除額合計 90,000円 67,500円

新契約の場合の控除額

新契約の控除額の計算方法は、以下の通りです。

【新契約の場合】

所得税 住民税
年間払込保険料 控除額 年間払込保険料 控除額
20,000円以下 払込保険料全額 12,000円以下 払込保険料全額
20,000円超
40,000円以下
(払込保険料×1/2)+10,000円 12,000円超
32,000円以下
(払込保険料×1/2)+6,000円
40,000円超
80,000円以下
(払込保険料×1/4)+20,000円 32,000円超
56,000円以下
(払込保険料×1/4)+14,000円
80,000円超 一律40,000円 56,000円超 一律28,000円

計算方法は、「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」すべてで共通です。3種類合計の最大控除額は、所得税で12万円、住民税で7万円となります。

下記を例として、所得税と住民税の控除額を見てみましょう。

  • 一般生命保険料控除の対象になる年間払込保険料:8万円
  • 介護医療保険料控除の対象になる年間払込保険料:6万円
  • 個人年金保険料控除の対象になる年間払込保険料:10万円
所得税 住民税
一般生命保険料控除 40,000円 28,000円
介護医療保険料控除 35,000円 28,000円
個人年金保険料控除 40,000円 28,000円
控除額合計 115,000円 70,000円

両方に契約している場合の控除額

新制度と旧制度の両方に加入している場合は、新制度と旧制度それぞれで控除額を計算して合計します。もし、旧制度の適用で「所得税の控除額が4万円を超えている」「住民税の控除額が2.8万円を超えている」という場合は、引き続き旧制度で控除を受けられます。新・旧あわせた適用限度額は、所得税で12万円、住民税7万円です。

下記を例として、所得税の控除額を見てみましょう。

  • (旧制度)一般生命保険料控除:45,000円
  • (旧制度)個人年金保険料控除:45,000円
  • (新制度)介護医療保険料控除:40,000円

このケースでは、一般生命保険料控除と個人年金保険料控除の控除額は、以前と変わらずそれぞれ45,000円、介護医療保険料控除については40,000円の控除を受けられます。控除の合計額は13万円ですが、実際に控除を受けられるのは適用限度額である12万円です。

生命保険料控除の申請方法

生命保険料控除の申請方法は、会社員と個人事業主で異なります。保険料控除を受けられるように、手続き方法を正しく理解しましょう。

個人で行う場合

個人事業主の場合は、毎年2月中旬から3月中旬に行う確定申告の際に申請をします。

確定申告書Bの「所得から差し引かれる金額」や「保険料控除等に関する事項」の部分に控除金額を記入し、生命保険料控除証明書を添付して税務署に提出しましょう。

e-Taxを利用して提出する場合は、法定申告期限から5年間、書類を保管することを条件として、控除証明書の提出を省略することも可能です。

会社で行う場合

会社員の場合は、毎年12月に行う年末調整の際に申請をします。年末調整とは、給与所得者が毎月の給料・賞与から源泉徴収された所得税を精算する手続きです。

「給与所得者の保険料控除申告書」に保険の種類や控除金額を記入し、生命保険料控除証明書を添付して、勤務先の管轄部署に提出しましょう。

年末調整をした結果、源泉徴収の金額が本来の納税額を上回っていた場合は、所得税が還付されます。

生命保険料控除を申請する際の注意点

生命保険料控除を申請する際は、以下の点に注意しましょう。

  • 保険料の見直しを行うと控除額が変更する
  • 一部対象外となる保険が存在する
  • 申請に必要な書類は大切に保管する

それぞれ詳しく解説します。

保険の見直しを行うと控除額が変更する

保険の見直しを行うと、生命保険料控除額が変動する可能性があります。というのも、生命保険料控除の金額は、1年間に支払った保険料に応じて決まるためです。見直しによって保険料が変われば、控除額も変わる可能性があります。

年末に見直しを行った場合、保険会社によっては従来の契約内容のまま、生命保険料控除証明書が発行されることもあるでしょう。そのため、見直した内容が反映されていない場合は、正しい金額の控除証明書の発行を依頼することが重要です。

証明書の発行が年末調整のタイミングに間に合わない場合は、自分で確定申告を行う必要があります。確定申告の期間は、2月16日から3月15日なので、忘れないよう注意しましょう。

一部対象外となる保険が存在する

生命保険料控除はすべての生命保険に対して適用されるわけではありません。以下は生命保険控除の対象外となります。

  • 保険期間が5年未満の貯蓄保険
  • 国外の生命保険会社と国外で締結した保険
  • 傷害保険
  • 財形貯蓄保険
  • 団体信用生命保険

また、保険料の「負担者」が自身ではない場合も対象外となります。自身が契約者になっていても、夫や妻が保険料を支払っている場合は、生命保険料控除の対象となりません。

保険料の負担者が自身であれば、保険料の受取人を「自身の配偶者」または「親族」に設定しても、生命保険料控除の適用が可能です。ただし、離婚した妻が受取人となっている
場合は、生命保険料控除の対象外となるので注意してください。

申請に必要な書類は大切に保管する

保険会社から送付される控除証明書は、大切に保管しておきましょう。

もし、控除証明書を紛失した場合は、再発行が必要です。再発行の手続きをした後に手元に届くまで数日かかるため、確定申告の期限が間近に迫っていれば、間に合わなくなってしまう可能性があります。

確定申告や年末調整で生命保険料控除を申請できなかった場合には、会社員は還付金請求権の時効である5年以内に還付申告を行いましょう。一方で、個人事業主は法定申告期限から5年以内に確定申告のやり直しをすることで、還付を受けられる可能性があります。

まとめ

生命保険料控除は、1年間に支払った保険料に応じて所得から控除できる制度です。生命保険料控除を活用すれば、所得税や住民税の負担を軽減できます。そのため、生命保険に加入している場合は、保険会社から送付される生命保険料控除証明書を確定申告書に添付して提出しましょう。

控除額や計算方法は、旧制度と新制度で異なります。また、「保険料の負担者が自身ではない」「離婚した妻が受取人となっている」場合は、生命保険料控除の対象になりません。

本記事を参考に基礎知識を身につけたうえで、生命保険料控除を有効活用してみてはいかがでしょうか。

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オカネノホンネ編集部

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