子どもの出産においては出産費用平均の約50万円に対して以下などの手厚い金銭的なサポートがあります。
- 妊婦検診費用助成
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 育児休業給付金
そのため、出産そのものに伴う金銭的な負担は多くの場合あまり気にしなくてもいいでしょう。
一方で、出産後、将来かかる子どもの教育費はある程度用意しておく必要があります。この記事では教育費がどの程度かかるかとその教育費を用意する方法について紹介します。
目次
平均的な教育費
文科省や日本学生支援機構の調査によると子どもの各年齢における平均的な教育費は以下となります。
幼稚園 | 小学校 | 中学 | 高校 | 大学 | |
公立 | 64万円 | 193万円 | 147万円 | 137万円 | 573万円 |
私立 | 158万円 | 959万円 | 422万円 | 291万円 | 802万円 |
※幼稚園から高校までは文科省「平成30年度 子どもの学習費調査」、学校教育費のほか学習塾などの教育費も含む。大学の教育資金は日本学生支援機構「平成28年度 学生生活調査」から1年分の学生生活費を4倍にて試算、学費と生活費を含む。
公立か私立か、大学にいくかどうかによって費用は変動します。
上記をもとに、計算すると以下のように進学状況にあわせて必要な教育資金の概算がわかります。
高校まで全て公立であれば約541万円
大学まで全て公立で約1114万円
高校まで公立で大学で私立にいった場合は約1343万円
大学まで全て私立であった場合は約2632万円
なお上記データは2019年からは3~5歳の保育料の無償化を反映する前のデータのため、現時点では幼稚園段階での教育費はもう少しおさえられるでしょう。
公的な子育て支援制度
必要な教育費・養育費はすべて自己責任で用意しなければいけないわけではありません。公的な子育て支援制度について紹介します。
児童手当
児童手当は3歳未満は1万5000円、3歳から小学校終了前までは1万円(第三子以降は1万5000円)、中学生は1万円が支給されます(世帯主の年収が960万円より少ない場合)。これらを満額貯めれば約200万円になると言われています。また2022年10月からは所得制限で年収1200万円を超える人は児童手当がもらえなくなります。
児童の医療費費助成
医療費助成制度は自治体によって内容が異なります。最近では多くの自治体で中学生までの医療費が無料であったり、高校生まで無料枠が拡充されていたりします。
対象となる子どもの年齢や保護者の所得制限の有無などが自治体によって異なるので、詳細はお住まいの自治体に問い合わせてみてください。
保育料の無償化
2019年10月から3〜5歳児の保育料が無償化となりました。幼稚園、認可保育所、認定こども園等(他に地域型保育)の場合、3〜5歳児クラスのすべての子どもの利用料(保育料)が無償となります。
無償となる「利用料」には原則、通園送迎費、給食費、行事費、延長費等は含まれていませんので注意しましょう。認可外保育施設等では月額3.7万円までの利用料が無料になります。
なお0〜2歳児クラスの子どもについては、住民税非課税世帯のみが無償の対象です(認可外保育施設は月額4.2万円)。それ以外の世帯では所得に応じて保険料が自治体によって上限が定められています。
教育費の貯め方・備え方
これまで説明したように、子ども1人あたりを育てるのに必要な教育資金の幅は「大学までいくかどうか」や「進学先が公立か私立か」で大きく変わり、以下が目安となります。
高校まで全て公立であれば約541万円
大学まで全て公立で約1114万円
高校まで公立で大学で私立にいった場合は約1343万円
大学まで全て私立であった場合は約2632万円
それでは、これらの金額をどのように貯めればいいでしょうか。
貯め方としては
- 節約
- 貯蓄
- 学資保険
- 投資運用
などがあります。
節約して教育費をためる
節約を考える上ではまずは固定費、その次に変動費の見直しをしていくのがいいでしょう。固定費とは住宅費、保険料、通信費、光熱費、車両費など毎月一定額がかかるものです。変動費とは食費や旅行代などです。固定費の中でも支出に占める割合が大きいものを節約できれば。その効果は長期的に見ると大きなものになります。節約について詳細を知りたい人は以下の記事を参照ください。
貯蓄によって教育費をためる
貯蓄によって教育費をためることも有効です。特に毎月一定金額を貯蓄していくことをおすすめします。貯金が苦手な方は財形貯蓄によって給料から天引きで貯金することも有効でしょう。
学資保険の特徴、学資保険で教育費を貯める
学資保険とは以下の3つの機能をもつ保険商品です。
- 貯蓄機能(返戻金)。子どもの教育資金の準備
- 死亡保障。保護者が亡くなった際の教育資金の確保
- 子どもが病気・ケガをした場合の医療保障
学資金の受け取りのタイミングは、幼稚園・保育園、小学校、中学校、高校、大学などのそれぞれの入園・入学タイミングで受け取れる商品や、一番お金がかかると見込まれる大学進学時に一括して受け取るという商品もあります。
学資保険は保険会社としても利益率が高い商品ではなく、顧客との関係性をつくる「ドアノック的な商品」として位置付けられる事が多いです。学資保険自体で加入して大きく損をすることはありませんが、他の保険商品の勧誘が伴うケースが多くあるので、その際には本当に自分が必要な商品かを見極めることが必要でしょう。
学資保険は以下の特徴があります。
・死亡保障や医療保障をつけると貯蓄性は減る
・生命保険料控除の対象で若干の税制メリットがある(掛け金によるが所得税分で最大4万円の所得控除、住民税分で最大2万8,000円の所得控除)
・利回りが他の投資商品などと比べると高くはない
・多くの商品はその時々の金利によっても返戻率は変わらない。つまりインフレリスクには未対応。
なお、学資保険は払い込んだ保険料よりも多くの学資金を受け取ることができるケースが多いです。そのため返戻率、利回りは貯金よりは高いといえます。
投資・資産運用で教育費をためる
貯金よりは運用効率がいいとはいえ、学資保険の返戻率は投資運用した際と比べると高いとはいえない水準ですので「教育資金を貯める」という観点では、自ら長期・積み立て投資に回すほうが効率的となるケースも多いでしょう。もちろん、投資である以上、元本割れするリスクはあります。「安全に貯めていきたい」という場合は、貯金や学資保険に入るのも一つの方法でしょう。ご自身の家計状況、余裕資金の有無で判断するようにしましょう。
また資産運用をする場合は、NISAやジュニアNISAといった税制優遇制度も活用しながら長期・積み立て投資を、リスクや手数料の低い商品を中心に運用するのがいいでしょう(ジュニアNISAは2023年廃止)。投資初心者で資産運用を検討される方は以下の記事を参照ください。
教育資金が足りない時は
節約・貯蓄・学資保険・投資運用をしても、必要なタイミングで教育資金が足りないケースもあるでしょう。
そのような際には不足分を補うためには以下の手段があります。
・奨学金
・国の教育ローン
・民間の教育ローン
・祖父母や親族からの支援
奨学金には貸与型と給付型があります。日本学生支援機構の奨学金や各大学や自治体、企業による奨学金制度があります。日本学生支援機構の奨学金は大学生の約半数の人が受給しています。国の教育ローンとしては、日本政策金融公庫の教育ローンは金利が安く、限度額は350万円です。民間の教育ローンは金利が比較的高く、限度額は100万円程度となります。
借入をする際には金利が極力安く返済の負担が少ないところを選びましょう。また奨学金も含めた借入をする際には、返済を子どもが行うケースと親が行うケースがあります。家庭の状況、進路の希望などを話し合った上で借入をする事が重要です。
また祖父母からの支援を得る方法もあります。資金援助を得られれば家計にとっては大きな助けになります。資金援助は贈与ですから大きな金額になる場合は、贈与税の対象となる可能性があり注意が必要です。教育費に関連する贈与には「暦年贈与」「都度贈与」「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」などを活用する事で非課税にすることができます。詳細を確認したい人は以下の記事を参照ください。
また世帯年収が一定条件(年収380万円以下)で進学先で学ぶ意欲がある学生に対しては「給付奨学金・授業料等減免制度」が開始されました(詳細は文科省HPを参照ください)。
その他にも「高等学校等就学支援金制度」「高校生等奨学給付金」「その他の就学支援制度(家計急変への支援、学び直しへの支援、高等学校等の専攻科の生徒への支援、在外教育施設の高等部の生徒への支援、高等学校等奨学金)」などがあります。詳しくは文科省のHPをご確認ください。
まとめ
「教育費はお金がかかる」そんなイメージを漠然ともっている方は多いのではないでしょうか。教育資金がどの程度必要になる可能性があるのかをまずは把握しましょう。その上で、節約・貯蓄・学資保険・投資といった方法で教育費に備えるようにしましょう。それでも教育資金が足りなりときは奨学金や国・民間のローン、国の支援制度が活用できないか活用してみましょう。
難しいお金の話を、ファイナンシャルプランナー技能士や保険・金融商品の専門家が忖度なし「ホンネ」でわかりやすく伝えます。