死亡保険の平均加入金額は?保険金額の適切な決め方やシミュレーションを紹介

保険全般

自身の万一に備えて死亡保険への加入を検討している人のなかには、どのくらいの保険料をかければよいのか、わからない人も多いのではないでしょうか。保険料の妥当な金額は、「平均加入金額」を把握しておくことで、どれくらいか判断できるようになります。

本記事では、死亡保険の平均額を紹介しながら、適切な保険金額の決め方を解説します。

死亡保険金の平均加入金額は?

まずは、生命保険文化センターの調査データを基に、死亡保険金の平均加入金額についてみていきましょう。

引用:生命保険文化センター「2021年度生命保険に関する全国実態調査」

引用:生命保険文化センター「2022年度生活保障に関する調査」

【世帯主・配偶者別】死亡保険の加入金額の平均

以下は、世帯主と配偶者の普通死亡保険金額の平均をまとめた表です。

世帯主 1,386
配偶者 692
世帯全体 2,027

配偶者の加入金額は、世帯主の半分程度となっています。これは、世帯主に万一があった場合、家計に与える影響が大きいと考えている世帯が多いことが理由として考えられます。

また、以下の表からもわかるように、世帯全体の死亡保険金額は減少傾向にあります。

年度 普通死亡保険金額
2009年 2,978万円
2012年 2,763万円
2015年 2,423万円
2018年 2,255万円
2021年 2,027万円

死亡保険金額が比較的高い30~40代の割合が減っていることや、世帯の人数が減少傾向にあることなどが要因として考えられるでしょう。

【性別・年齢別】死亡保険の加入金額の平均

以下は、性別や年齢別に死亡保険の加入金額の平均をまとめた表です。

男性 女性
20代 1,001万円 751万円
30代 2,065万円 768万円
40代 1,883万円 807万円
50代 1,629万円 737万円
60代 1,071万円 507万円
70代 582万円 395万円

男性のほうが女性よりも死亡保険の加入金額が高い傾向にあります。一般的に男性が世帯主になるケースが多いことが関係していると考えられます。

また、男女ともに30・40代の加入金額が多く、年齢を重ねると加入金額は少なくなる傾向が読み取れます。

【年収別】死亡保険の加入金額の平均

以下は、世帯年収別に死亡保険の加入金額の平均をまとめた表です。

世帯年収 普通死亡保険金額
200万円未満 952万円
200~300万円未満 990万円
300~400万円未満 1,280万円
400~500万円未満 1,575万円
500~600万円未満 1,977万円
600~700万円未満 2,253万円
700~1,000万円未満 2,493万円
1,000万円以上 3,731万円

世帯年収が高くなるほど、死亡保険の加入金額も高い傾向にあります。これは、年収が高いほうが支払える保険料も多くなることや、万一のことが起きた場合に、それまでと同じ生活水準を維持するために必要な費用が多くなりやすいことが関係していると考えられるでしょう。

【ライフステージ別】死亡保険の加入金額の平均

以下は、ライフステージ別に死亡保険の加入金額の平均をまとめた表です。

ライフステージ 普通死亡保険金額(世帯主) 普通死亡保険金額(配偶者)
夫婦のみ(40歳未満) 1,282万円 701万円
夫婦のみ(40~59歳) 1,326万円 645万円
末子乳児 1,945万円 944万円
末子保育園児・幼稚園児 1,961万円 885万円
末子小・中学生 2,093万円 904万円
末子高校・短大・大学生 1,709万円 639万円
末子就学終了 1,112万円 621万円
高齢夫婦有職(60歳以上) 873万円 619万円
高齢夫婦無職(60歳以上) 577万円 384万円

夫婦のみの世帯よりも、子供がいる世帯のほうが死亡保険の加入金額が高い傾向にあります。また、小中学生未満の子供がいる世帯は、世帯主に万一があった場合に生活費や将来の教育費の負担が大きくなりやすいため、大きな保障を受けられる保険に加入する傾向があるようです。

死亡保険金額は必要保障額を参考にして決めよう

生命保険に加入する際、どれくらいの金額を設定すべきか迷う人は多いでしょう。そのような場合には「必要保障額」を基に検討することをおすすめします。

必要保障額とは、残された家族が生活していくために必要なお金から、貯蓄や収入でまかなえる分を差し引いた金額を指します。具体的にいうと、生活費や教育費、住宅ローンの残債など、将来の支出に対して今後得られる収入が足りない部分を死亡保険で補うという考え方です。この考え方を実践することで、無駄な保険料の支払いを防げます。

必要保障額の計算手順

必要保障額は、以下の手順で算出することが可能です。

    1. STEP1:遺族の生活費を計算する
    2. STEP2:ライフイベントに必要なお金を計算する
    3. STEP3:見込み収入を計算する
    4. STEP4:必要資金から見込み収入を差し引く

それぞれの計算方法について、詳しくみていきましょう。

STEP1:遺族の生活費を計算する

まずは、遺族の生活費を計算します。遺族の生活費は「末子独立までの遺族の生活費」と「末子独立後の配偶者の生活費」に分けられます。一般的には、以下の計算式で求めることが可能です。

【末子独立までの遺族の生活費】
現在の年間生活費×70%×(末子の独立時年齢-末子の現在年齢)

亡くなった人の生活費を差し引いて計算します。

【末子独立後の配偶者の生活費】
現在の年間生活費×50%×末子独立時の配偶者の平均余命

亡くなった人の生活費だけではなく子供の生活費も差し引いて計算します。

STEP2:ライフイベントに必要なお金を計算する

次に、教育費用や住宅費用などのライフイベントにかかる費用を計算します。

平均的な教育費用の必要額は以下の通りです。

すべて公立 すべて私立
幼稚園 495,378円 926,727円
小学校 2,115,396円 10,001,694円
中学校 1,616,397円 4,309,059円
高校 1,538,913円 3,163,332円
大学 2,536,757円 3,969,723円
合計 8,302,841円 22,370,535円

引用:文部科学省|「子供の学習費調査(令和3年度)」

引用:文部科学省|「国公私立大学の授業料等の推移」

住宅費用については、持ち家で住宅ローンの返済中であれば、団体信用生命保険から保険金が支払われるケースがほとんどです。その場合、残債がなくなるため、住宅費用の負担はそれほど気にしなくてよいでしょう。しかし、賃貸の場合は毎月の家賃の支払いを考慮する必要があります。

STEP3:見込み収入を計算する

次に、どのくらいの収入が見込めるのかを計算してみましょう。

一般的に遺族が見込める収入には以下のようなものがあります。

  • 遺族年金
  • 死亡退職金・弔慰金
  • 預貯金・有価証券・不動産
  • 配偶者の勤労収入

このなかでも、特に大きな割合を占める可能性が高いのが「遺族年金」です。国民年金加入者の遺族が受け取れるのは遺族基礎年金のみです。一方で、厚生年金加入者の遺族は、遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取れます。

遺族基礎年金の年金額(令和6年4月分以降)は、以下の通りです。

  • 昭和31年4月2日以後生まれの方:816,000円+子の加算額
  • 昭和31年4月1日以前生まれの方:813,700円+子の加算額

子供が受け取る場合
1人目および2人目:234,800円
3人目以降:78,300円

遺族厚生年金の金額は、亡くなった人の老齢厚生年金の「報酬比例部分の4分の3」であるため、生前の収入によって変わります。老齢厚生年金の報酬比例部分については「ねんきん定期便」で確認してみましょう。

STEP4:必要資金から見込み収入を差し引く

最後に、STEP1・2で計算した「今後の生活で必要になる資金」から、STEP3で求めた「見込み収入」を基に、必要保障額を算出します。

具体的な計算式は以下の通りです。

末子独立までの遺族の生活費+末子独立後の配偶者の生活費+ライフイベントにかかるお金-見込み収入

必要保障額のシミュレーション

ここからは、死亡保険の加入金額をどのくらいに設定すればよいか判断するためにも、前述の計算式を用いて紹介します。

以下の前提条件に基づいて、世帯主が亡くなった際に必要な保障額を算出してみましょう。

【前提条件】
・世帯主:個人事業主
・世帯構成:配偶者と子供2人(5歳と3歳)
・年間生活費:600万円
・配偶者の年齢:35歳
・配偶者の平均余命:53年
・子供が独立する年齢:22歳
・現在の貯蓄:500万円
・住宅:持ち家で住宅ローン返済中(団体信用生命保険加入済み)
・見込み収入:遺族年金、配偶者の勤労収入

STEP1:遺族の生活費を計算する

【末子独立までの遺族の生活費】
末子(3歳)が独立するまでの期間は19年です。家族全体の年間生活費は600万円であるため、亡くなった人の生活費を差し引き、70%に相当する420万円が年間の遺族の生活費となります。
計算式:420万円×19年=7,980万円

【末子独立後の配偶者の生活費】
末子独立後は配偶者1人の生活費が必要となります。独立後の生活費は現在の生活費の50%、すなわち年間300万円で、末子独立後の配偶者の余命34年を基に計算します。
計算式:300万円×34年=1億200万円

STEP2:ライフイベントに必要なお金を計算する

【教育費用】
子供2人をすべて公立に進学させる場合の教育費を計算します。
計算式:7,807,463円(1人あたりの教育費)×2人=1,561万4,926円

【葬儀費用】
一般的な葬儀代と墓石代として、それぞれ200万円、合計400万円を見込んでいます。

【住宅費用】
持ち家で団体信用生命保険に加入しているため、住宅ローンの残債は0円となり、追加の住宅費用は考慮しません。

STEP3:見込み収入を計算する

【遺族年金】
遺族基礎年金は、年額105万800円で、末子(3歳)が18歳になるまでの15年間受け取れると仮定します。
計算式:128万5,600円×13年+105万800円×2年=1,881万4,400円

【配偶者の勤労収入】
配偶者が年間300万円の収入を得て、末子独立までの19年間は勤労収入が続くと仮定します。
計算式:300万円×19年=5,700万円

STEP4:必要資金から見込み収入を差し引く

【必要資金】
STEP1、STEP2で求めた金額を合算します。
計算式:末子独立までの遺族の生活費(7,980万円)+末子独立後の配偶者の生活費(1億200万円)+ライフイベントにかかる費用(1,561万4,926円+400万円)=2億141万4,926円

【見込み収入】
STEP3で求めた金額を合算します。
計算式:遺族年金(1,881万4,400円)+配偶者の勤労収入(5,700万円)=7,581万4,400円

【必要保障額】
必要資金(2億141万4,926円)から見込み収入(7,581万4,400円)を差し引きます。
計算式:2億141万4,926円-7,581万4,400円=1億2,560万526円

このシミュレーションにより、約1億3,878万2,526円の死亡保険金が必要であることがわかります。

まとめ

死亡保険の加入金額は、家族構成やライフステージによって大きく異なります。特に世帯主や子供がいる家庭では、万が一の際の経済的なリスクが高いため、死亡保険の加入金額は高くなる傾向があります。

しかし、実際に保険に加入する際は平均額にこだわりすぎると、生活費を圧迫してしまい、生活水準が低下する可能性があります。生活水準を低下せずに、万が一に備えられるように、必要保障額を算出したうえで、自身や家族の将来を見据えて適切な金額を設定することが大切です。必要保障額を算出する際は、保障の過不足が生じないように、今回紹介したシミュレーションも活用してみてください。

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オカネノホンネ編集部

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