【検証】ドルコスト平均法は本当に安全な投資方法なのか

投資

投資について勉強しはじめた人はドルコスト平均法という積み立て投資の方法を目にすることも多いでしょう。投資経験者や証券会社の担当者からおすすめされたり、書籍で目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

ドルコスト平均法とは、積立投資の方法の1つで、価格が変動する金融商品を一定の期間で定期的に同じ額購入していく方法です。

時間を分散させることで、投資のリスクをおさえて安定的な収益を得られるという考え方です。投資の王道、初心者に向いている投資方法ともいわれますが、本当にそうなのか。ドルコスト平均法のメリットだけでなく、デメリットやリスクを専門家の意見も交えてひも解いて解説していきます。

ドルコスト平均法とは

ドルコスト平均法は毎月などの一定期間に同じ金額で金融商品を買い付ける手法となります。

日々の値動きの中で基準価額が高いときには少ない口数を、低い時には多くの口数を購入することになるため、平均買い付け価格を下げ、高値掴みのリスクを軽減させる効果があり、初心者にもおすすめの投資法とされています。

投資のセオリーとして「分散投資」という考え方があります。「卵を1つのカゴに盛るな」という投資の格言がありますが、卵を複数のカゴに入れておくことで1つのカゴを落としても全部の卵が割れる事はないというものです。

定期的に購入するドルコスト平均法は時間の分散によるリスクヘッジをしていると考えられます。

そのほかも含めてまとめるとドルコスト平均法のメリットとしては

  • 平均買い付け価格を下げる
  • 高値掴みのリスクを軽減させる
  • 強制的な蓄財機能
  • 考え・判断するまでの時間や労力といったコストを最小化

といった点もあげられます。

ドルコスト平均法のデメリットとリスク

一方で、ドルコスト平均法に懐疑的な識者もいます。

一般的にドルコスト平均法のデメリットについては

  • 短期のキャピタルゲインの獲得には適さない
  • 安値の時に大量に購入することができない
  • 大きく儲けることができない

などと言われています。

しかし、デメリット以上にその「リスク」に対して警鐘を鳴らしている識者もいます。

大きなリスクのひとつが「長期化する価額の下降トレンドに対応できない」ということです。

経済評論家、ジャーナリストの佐藤治彦氏は自著『安心・安全・確実な投資の教科書』の中で

ドルコスト平均法は金融関係、特に証券会社の側にたった投資方法である

下降トレンドだどわかっている時には、買えば買っただけ値下がりして損をしていくわけだから買わないほうがいいに決まっています

株価がよかろうが、わるかろうが、今後が上昇トレンドであろうが下降トレンドであろうが、定期的に購入してくれる顧客は、手数料を頂く証券会社にとってはとても都合のいい存在でしょう。

と言及し、「投資をはじめるタイミングの見極めの重要性」を指摘しています。

同書の中でも触れられていますが、継続的な下降トレンドの中でドルコスト平均法で購入した場合は損をすることになります(少なくともその期間は)。

実際に、日本の株価は1989年年末には3万9000円、それが2003年には8000円台を下回りました。もし1989年から2003年までの株価の下降トレンドの中でドルコスト平均法で運用してきた人にとっては大きな損をしたことになります。

例えば上記のような下降トレンドの期間で、働きながらドルコスト平均法で資産運用をし、価額が低いタイミングで定年し資産を取り崩して生活する人にとっては、一定金額を預金したほうが結果、保有資産は大きかったでしょう。

価額の上昇トレンドでは優れた投資方法ですが、長期化する下降トレンドの局面には適さない投資手法です。

「長期的に見て値上がりをする商品か、市場環境か」といった観点で商品選びをするのが重要です

またコロナ禍を踏まえて2022年以降の長期の市場トレンドについて、長期投資のパイオニアであり、さわかみ投信の創設者である澤上篤人氏は著書『インフレ不可避の世界』の中で

「この40年が「異常に幸せ」だった」として、この40年あまり米国を中心として長期金利の下降トレンドが続いたことにともなう債券投資・株式投資は恵まれており、多くの人が利益を出しやすい環境であった。

と分析し、今後は「40年続いた、半ば膨張ともいえる株式や債券の上昇トレンドが大きく変わり、株式や債券の値崩れが起こる可能性」を示唆しています。木だけでなく森を見る視点、個々の金融商品だけでなく社会全体の大きな流れに対しても注視した上で投資方法を選んでいくことも大切かもしれません。

ドルコスト平均法のもうひとつのリスクとして「歳をとるにつれて投資リスクが大きくなる」ことがあります

元野村投信で金融・経済・資産運用評論家の近藤俊介氏は著書『202X金融資産消滅 年金制作ミスによる長期株価低迷に備えよ』の中で、ドルコスト平均法の内包する「本質的なリスク」について以下のように指摘しています

(ドルコスト平均法は)「買い付けコストを平準化する」ことを目的とした投資手法であって、「目標金額を貯める」ことを目的とした投資手法ではない」

「「ドルコスト平均法」が持つ本質的リスクとは、ゴール(例えば60歳とか65歳とか)に近づけば近づくほど積み立て資産は価格変動リスクの影響を強く受けるようになっていくということ」

「「ドルコスト平均法」による積み立て投資は、何もしなければ「歳を取るにつれて投資リスクが大きくなる」という投資手法である」

ドルコスト平均法では時間の経過とともに累計投資額が増えていきます。株式で資産運用していた場合、5割の価格下落なども起こりえます。累計投資額が膨らんでいる分、定年などで資産の現金化をすすめ取り崩しが必要になったタイミングで価格下落の際のインパクトは、投資初期の資産額が少ない頃に比べると大きなものになります。

「価額が値下がりするのであれば数年間保有し続ければいい」「長い期間で世界単位でみれば経済成長は確実で株価も下がってはまた戻ってくるはず」と考える人もいるかもしれません。それだけの金銭的な余裕がある人はいいかもしれませんが、定年後に収入がなくなり金融資産を現金化して生活費を捻出しなければいけない人もいるでしょう。また、さらに価格下落するかもしれないリスクを感じながら金融商品を保有し続けるのも容易ではないないかもしれません。

近藤氏は、この積立投資の弱点を知った上で工夫をする必要があり、具体的には「加齢とともに資産全体の価格変動リスクを下げていくために分散投資をしていくこと」を推奨しています。

まとめ

「投資初心者にはドルコスト平均法で積立投資を」という主張はいたるところで聞かれます。そのメリットもありますが、デメリットやリスクがないわけではありません。継続する下降トレンドには不向きであったり、加齢とともに値下がりの影響が大きくなるというリスクがあります。

無批判に受け入れるのではなく、ドルコスト平均法のもつメリットだけでなくデメリットやリスクも正しく理解した上で、自分の投資方針やリスクヘッジの方法を考えてみるのがいいでしょう。

オカネノホンネ編集部

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難しいお金の話を、ファイナンシャルプランナー技能士や保険・金融商品の専門家が忖度なし「ホンネ」でわかりやすく伝えます。

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