安定した収入はあるものの、万が一の事故や死亡に備えたいと考える方もいるでしょう。収入保障保険は万が一のことでやむを得ず収入が減少する場合に備えられる保険ですが、なかには「加入をやめたほうがいい」という意見も見受けられます。
この記事では、収入保障保険はやめたほうがいいといわれる理由を紹介した上で、必要性の高い人の特徴や収入保障保険の選ぶポイントを解説します。収入保障保険の加入を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
なお、収入保障保険の詳しい概要については、以下を参考にしてください。
目次
「収入保障保険はやめたほうがいい」といわれる理由
収入保障保険は、被保険者は死亡または高度障害になった場合、毎月一定額を保険期間終了まで支払われる保険です。毎月年金や給料のように受け取れるため、被保険者に万が一のことが起きても家計へのダメージを抑えられます。
しかし、万が一に備えられる保険ではあるものの、「加入をやめたほうがいい」という意見を持つ人もいるようです。ここでは、収入保証保険はやめたほうがいいといわれる理由について紹介します。
理由1.貯蓄性がない
多くの場合、収入保障保険は掛け捨てタイプとなります。貯蓄型の保険は、毎月の支払額の一部が積み立てられ、解約すると解約返戻金として受け取れます。しかし、収入保障保険は積み立てではないため、解約してもお金が戻ってきません。
保険期間中健康かつ安全な生活を送れた場合、戻ることがないため、損をしたデメリットがあります。保険を貯蓄として考えるなら、収入保障保険のように「年金形式」で受け取れる保険を検討してみましょう。
理由2.保険終了期間が近いと受取総額が少なくなる
収入保障保険は、被保険者が死亡または高度障害になってから保険終了期間まで支払われる保険です。そのため、保険終了期間近くに死亡や高度障害になると、受取総額が少なくなります。反対に、保険終了期間まで長期間ある場合は受取総額が高くなるという仕組みです。
そのため、死亡保険として加入し、まとまったお金を必要とする場合は不向きといえるでしょう。しかし、死亡や高度障害から保険終了期間まで1年といった場合に対して5年間受け取りできるという「最低支払保証期間」 を設けている保険会社もあります。
理由3.まとまった費用の準備には向かない
収入保障保険は一般的に年金形式で受け取るため、まとまった費用の準備には向いていません。理由2でも解説したように、保険終了期間近くに死亡や高度障害になっても、受取総額が少ないため、葬儀代や相続対策として活用するのは難しいでしょう。
収入保障保険への加入には3つの利点がある
ここでは、収入保障保険に加入する3つの利点について解説します。利点を知ったうえで、収入保障保険に加入するべきかを判断するとよいでしょう。
1.死亡リスクや高度障害リスクに対して合理的に備えられる
収入保障保険は、被保険者が死亡するリスクや高度障害リスクに対して合理的に備えられる保険です。
収入保障保険は保険期間が満了に近づくにつれ、受け取れる保険金の総額が減っていきます。一見デメリットのように見えますが、教育費や住宅ローン残高なども経過年数とともに減っていくため、保険料が比較的割安な収入保障保険は合理的に備えが得られるといえるでしょう。
2.月々の保険料が安い傾向にある
収入保障保険は、一般的な定期保険や終身保険を比較しても月々の保険料が安い傾向にあります。安い理由は、掛け捨てであることや支払保証期間が近づくにつれ受取総額が低くなるためです。月々の保険料を抑えながら、被保険者の死亡や高度障害に備えられる点が収入保障保険の利点でしょう。
4.自分に合った受け取り方法を選べる
収入保障保険は、毎月定額を受け取る「年金形式」と支払保証期間までの総額を受け取る「一括受取」の2つの受け取り方法を選べます。一般的には年金形式が多く、生活費の一部として活用している方が多くいます。
一方で、一般的な定期保険や死亡保険は、受取方法を選ぶことができない場合もあります。そのため、保険金の利用方法が限られることが欠点といえるでしょう。
生活費の一部として利用したい、時期に合わせて一括で受け取りたいなど、自分に合った受け取り方法を選べることが収入保障保険の利点といえます。
収入保障保険の必要性が高い人
ここでは、収入保障保険の必要性が高い人について解説します。収入保障保険の加入を検討している方は、以下の必要性の高い人に当てはまるかを確認してください。
小さい子どもがいる世帯の人
小さい子どもがいる世帯の人は、収入保障保険の必要性が高いといえます。小さい子どもがいる場合は、子どもの教育費や居住費など必要になる保障の金額が大きいです。さらに被保険者が主な生活費を稼いでいた場合、毎月定額が受け取れる収入保障保険は安心できるでしょう。
収入保障保険は比較的安く加入できることが利点です。小さい子どもがいる世帯の人は、万が一に備えて安く大きな保障が持てる収入保障保険を検討してみるとよいでしょう。
フリーランスや個人事業主など自営業の人
フリーランスや個人事業主など自営業の人は、収入保障保険の必要性が高いといえます。会社員や公務員など厚生年金に加入している人は、万が一のことが起きた場合に「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」が受け取れますが、自営業の人は国民年金だけのため「遺族基礎年金」のみの受け取りのため、遺族基礎年金以外に保障を持っておく必要があります。
フリーランスや個人事業主など自営業の人は、万が一に備えて収入保障保険の加入を検討してみてください。
収入保障保険の必要性が低い人
次に、収入保障保険の必要性が低い人を解説します。収入保障保険は比較的安いといえど、毎月支払うもののため、年間に計算すると高額です。
加入を検討している方は、自分が必要性の低い人かに当てはまるか確認してみてください。
独身の人・子どもがいない共働き世帯の人
独身の人や子どもがいない共働き世帯の人は、収入保障保険の必要性が低いといえます。収入保障保険は、被保険者の残された家族への保障です。そのため、独身の人だけではなく、お互いに安定した収入のある共働き世帯の人には必要ないでしょう。
しかし、共働き世帯でも、どちらかが扶養内に入っている場合は必要な場合もあります。収入保障保険の加入に悩んでいるなら、収入のバランスを見ながら必要かを検討してみてください。
年金をもらえるまでの期間が短い人
年金をもえらえるまでの期間が短い人も、収入保障保険の必要性が低いといえます。収入保障保険は、万が一給与がもらえなくなった際に、生活に負担がないように保障として持つものです。
しかし、年金をもらえるまでの期間が短いと、いずれ国民年金や厚生年金が受け取れるほか、高齢になると保険料の支払いが割高になる可能性があります。さらに、収入保障保険は支払保証期間が決められているため、受取総額が少なくなります。
これから年金をもらえるまでの期間を計算し、受取総額が一括で受け取っても損がないかを確認してください。
万が一の備えができている人
十分な貯蓄がある、別の保険に加入しているなど、すでに万が一の備えができている人は、収入保障保険の必要性は低いといえます。必要以上に加入にしてしまうと、保険料の支払いによる負担が増えてしまい、家計に影響を及ぼす可能性もそのため、備えがある人がさらに加入する必要性はないでしょう。
備えの準備をしているが足らないのではと心配な方は、備えが十分になるまで加入しておく方法もあります。しかし、収入保障保険は解約返戻金がないため、損をしないように考えてから加入するとよいでしょう。
収入保障保険を検討する4つのポイント
ここでは、収入保障保険を検討する4つのポイントを解説します。収入保障保険はさまざまな保険会社で取り扱っているため、どの保険会社しようか検討している人は、紹介する4つのポイントを参考にしてください。
1.保険料割引の活用
一般的な定期保険や終身保険を比較して安い傾向にある収入保障保険ですが、割引を活用することでさらに安くなる場合があります。以下では、主な保険料割引の一例を紹介します。
割引 | 条件 |
非喫煙者の基準 | ・過去数年間喫煙していないこと |
優良体の基準 | ・血圧値が優良体の基準の範囲内であること ・BMIの値が優良体の基準の範囲内であること |
一般的な非喫煙者の基準は過去数年間喫煙していないことが条件で、喫煙には紙タバコ・葉巻・電子タバコだけでなく、ニコチンガムやニコチンパッチも含まれます。
また、一般的に優良体の基準は血圧値やBMI値が基準の範囲内であることが条件ですが、保険会社によって基準値は異なるため予め確認することが大切です。BMI値は、「BMI値=体重(Kg)÷{身長(m)}²」の計算で出た値が基準値の範囲内であることが求められます。
2.最低支払保証期間
収入保障保険は、最低支払保証期間が設けられている場合があります。最低支払保証期間とは、仮に保険終了期間残り1年で死亡や高度障害となった場合、最低5年間受け取りできるという制度です。
最低保証期間は保険会社によって異なりますが、1年~5年とそれぞれあります。この期間は個人で決められるため、加入する理由や現状を把握したうえで決めましょう。
収入保障保険は保険終了期間を設けることができ、一般的に60歳~70歳が満了 です。現在日本では、原則65歳から年金をもらえます。 そのため、60歳を保険終了期間として5年間の最低保証期間を設けるのもよいでしょう。もちろん最低保証期間が1年でも問題ないため、ライフプランや保険料などを総合的に判断した上で決めることが大切です。
3.保険料払込免除特約の付加
収入保障保険の保険料払込免除特約によって、保険会社が定めた所定の障害状態になると保険料の払い込みが免除されます。保険会社によって免除される所定の傷害状態は異なりますが、一般的に被保険者が三大疾患になった場合が条件です。
ただし、三大疾患といっても保険会社によっては「心疾患」か「心筋梗塞のみ」など細かな条件が異なります。内容をしっかり確認しておかなければ、万が一の状態になっても保険料が免除されないため注意しましょう。ネットで加入する場合は、内容を確認した上でコールセンターに再度問い合わせることをおすすめします。
4.就業不能特約の付加
収入保障保険には、就業不能特約が付加しているものもあります。この特約は所定の就業不能状態が一定期間継続した際に、保険終了期間まで保険料の払い込みが免除されるものです。
就業不能状態とは、規定の病気またはケガによる入院または在宅療養となり、働けなくなった場合のことを指します。保険内容によっては、保険料の払い込み免除ではなく、一定期間毎月特約給付金月額が払われます。
就業不能状態の一定期間や免除になる期間は保険会社によって異なるため、加入前に確認しておきましょう。
まとめ
収入保障保険は、家庭の状況やライフプランによって加入する必要性があるかどうか異なるため、一概に「やめたほうがいい」といわれるような保険ではありません。
特に小さい子どもがいる世帯の人やフリーランスや個人事業主など自営業の人は、収入に対して備えが必要になる可能性があるため、収入保障保険を備えの一つの選択肢として検討してみてもよいでしょう。
ただし、収入保障保険への加入を検討する際は保険会社によって保険料割引や特約の条件が異なるため、いくつかの保険会社の内容を比較して、自分に合った内容の収入保障保険を選びましょう。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP