2024年7月時点で、日本には40社以上の生命保険会社が存在しており、各社でさまざまな商品を取り扱っています。
生命保険の加入を検討している人のなかには「複数の生命保険に加入できるのか」と疑問を感じている人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、生命保険に複数加入するメリットやデメリット・注意点を解説します。複数の生命保険への加入を検討している人は、参考にしてください。
目次
生命保険の複数加入は可能?
結論からいうと、生命保険に複数加入することは可能です。たとえば、以下のようなケースでも契約できます。
- 異なる保険会社で別種の生命保険に加入する
- 異なる保険会社で同種の保険に加入する(A社とB社それぞれで死亡保険に加入するようなケース)
- 1つの保険会社で別種の保険に加入する(A社で死亡保険とがん保険に加入するようなケース)
生命保険文化センターの「2021年度生命保険に関する全国実態調査」 によると、世帯主の生命保険加入件数の平均は1.8件と発表されており、生命保険に複数加入している人は存在することが窺えます。
ただし、モラルリスク(生命保険制度を悪用して、不当に利益を得るために保険金や給付金を取得しようとすること)を防ぐ観点から、他社通算・自社通算の引受上限額を決めている保険会社もあります。
そのため、生命保険会社は契約審査の際に、一般社団法人生命保険協会が提供する「契約内容登録制度・契約内容照会制度」 や「医療保障保険契約内容登録制度 」などを通じて、申込者の生命保険契約状況を確認することが一般的です。
もし、契約額が不当に大きいと判断された場合は、希望通りの保障金額を契約できないケースもあります。
生命保険に複数加入するメリット
生命保険に複数加入することは、契約者にとってさまざまなメリットを得られます。具体的なメリットについて、以下で詳しくみていきましょう。
各保険商品の強みを組み合わせられる
特徴の異なる生命保険を組み合わせることによって、自身や家族のライフプランに合った最適な保障を設計できます。
たとえば、終身保険は一生涯にわたり保障が続く一方で、定期保険は一定期間内であれば手頃な保険料で大きな保障を得られます。これらを組み合わせれば、終身保険で葬儀代を確保しながら、定期保険で特定のライフステージにおけるリスクを補うことが可能です。
また、同種の生命保険であっても、細かい保障内容や特徴に違いがあります。たとえば、2つの医療保険を比較したときに、カバーできる疾病や保障金額が異なっているケースもあるでしょう。両方の保険に加入しておけば、より幅広いリスクに備えられるため、安心して日常生活を過ごせます。
このように、生命保険を組み合わせることによって、自身や家族のライフプランに合わせた最適な保障を設計可能です。
多くの保険金・給付金を受け取れる
複数の生命保険に加入することで、受け取れる保険金や給付金が増える可能性があります。
生命保険では、支払事由に該当した場合、契約時に決定した給付金が支払われる「定額払い」 が一般的です。たとえば、1,000万円の死亡保険が支払われる商品Aと、2,000万円の死亡保険が支払われる商品Bの両方に加入しており、支払事由に該当した場合は、2社合計で3,000万円の保険金が支払われる可能性があります。
保険金や給付金を多く受け取れば、遺族の生活費や治療費、休業中の収入保障など、経済的なリスクに備えられるでしょう。
なお、損害保険や一部の医療保険などについては、実際の損害額に応じた保険金・給付金が支払われる「実損払い」になる商品もあります。
担当者から多くの情報を得られる
複数の担当者から多くの情報を得られることも、生命保険に複数加入するメリットです。異なる保険会社の担当者と関わるため、それぞれの専門知識や経験を活かしたアドバイスを受けられるでしょう。
たとえば、ある担当者は特定の病気やリスクに対する保険商品に詳しく、他の担当者はFP(ファイナンシャルプランナー)の資格を活かし、ライフプラン全体に対する長期的な視点を持っているかもしれません。双方のアドバイスを有効活用すれば、自身のニーズに最も適した保険商品をみつけられるでしょう。
また、保険加入後に見直しを行う際にも、複数の意見や情報を確認することは自身にとって万全な保障を得るために重要です。異なる担当者からの情報を比較検討すれば、最新の保険商品や市場動向を把握し、現在の保障内容が自分のライフステージやリスク状況に適しているかを再評価できます。
これにより、必要に応じて適切な保険の見直しや追加が可能となり、より安心して日常生活を過ごせるようになるでしょう。
生命保険に複数加入するデメリット
生命保険に複数加入することは、各保険の強みを活かせるというメリットがありますが、デメリットも存在します。
以下では、具体的なデメリットについてみていきましょう。
月々の保険料の負担が大きくなる
複数の生命保険に加入すると、それぞれの保険料を毎月支払う必要があります。家計に余裕がない場合には、保険料によって生活が圧迫されてしまうかもしれません。
万が一の際に、手厚い保障を受けられるに越したことはありませんが、今現在の生活が成り立たなくなってしまっては意味がありません。そのため、複数の保険に加入する前には、総額の保険料を正確に計算したうえで、慎重に検討しましょう。
特に、保険料払込期間が長期間にわたる商品に加入する場合は、定年後も継続して保険料を支払っていけるか、十分検討を重ねる必要があります。
契約内容の管理が煩雑になる
複数の生命保険に加入すると、それぞれの契約内容や保障範囲を管理することが難しくなります。異なる保険会社からの契約書類や通知を整理し、各保険の更新時期や支払い方法を把握しておくのは、忙しい人にとって大きな手間となるでしょう。
そういった場合は、複数の保険契約・保険証券を一元管理できるツールやサービスを利用することをおすすめします。また、複数の保険会社の商品を取り扱う保険代理店で、まとめて生命保険に加入するといった方法も有効です。
請求手続きが面倒になる
複数の保険に加入していると、保険会社ごとに異なる書類を用意し、提出しなければなりません。そのため、保険金を請求する際に手続きが複雑になる可能性があります。
たとえば、病気で入院し、複数の保険会社に請求をする際は、請求書だけではなく診断書も必要になることが一般的です。基本的に診断書の発行には数千円かかるため、給付金が少額の場合は請求すること自体が面倒に感じるでしょう。
近年では、オンラインでの請求が可能になるなど、手続きも簡略化されている傾向にあります。しかし、オンラインで手続きできないケースもあるため、あらかじめ「請求のしやすさ」を軸に保険会社を選択するのもよいでしょう。
生命保険に複数加入する際の注意点
生命保険に複数加入する際は、以下で紹介する注意点を考慮しておく必要があります。どのようなことに注意すればよいのか、以下で詳しくみていきましょう。
本当に必要かを考える
生命保険に複数加入する前に、自身に複数の保険が必要かを慎重に考えることが重要です。
生命保険に加入すると、一般的に数年~数十年は保険料を支払わなければなりません。もし不要な保険に加入してしまうと、しばらくの間は家計の負担が大きくなってしまうことも考えられます。
加入したあとに後悔しないためにも、「少し高い保険料を支払ってでも備えておく必要性が高い」と思えない場合は、加入を見合わせたほうがよいでしょう。
保障内容を正確に理解する
複数の生命保険に加入する際には、それぞれの保障内容を正確に理解することが必要です。
どんなに多くの生命保険に加入していたとしても、支払事由に該当しなければ保険金や給付金は支払われません。契約内容の確認を疎かにしていると「毎月高い保険料を支払っていても、万が一の際に全く支払われない」といった事態に陥る可能性もあります。
このような事態を防ぐためにも、約款やパンフレット、重要事項説明書を読み込むようにしましょう。また、契約内容について不明点がある場合は、保険会社の担当者に詳細を確認しながら、理解を深めることが大切です。
定期的な見直しを行う
保険の見直しは、定期的に行いましょう。
ライフステージの変化や家族構成の変化に伴い、必要な保障内容も変わります。たとえば、子どもが成長して教育費の負担が減れば、死亡保障の必要性は低くなるでしょう。
一方で、老後にかかる医療費に備えるための医療保障に関心を持ち始めるかもしれません。
また、医療保険やがん保険などは数年おきに新しい商品が発売されます。加入時期が古い商品の場合、最新の医療実態に即しておらず、給付金をほとんど受け取れない可能性もあるでしょう。
必要な時期に必要な保障が手に入らないリスクを避けるためにも、見直しは定期的に行うべきです。
まとめ
生命保険に複数加入することで、各保険商品の強みを組み合わせ、多くの保険金や給付金を受け取れる可能性があります。しかし、月々の保険料負担が大きくなり、契約内容の管理や請求手続きが複雑になるかもしれません。
こういった事態に陥らないためにも、まずは自身にとって複数の生命保険が必要か検討したうえで加入することをおすすめします。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP