世帯収入が最低生活費に満たない場合に必要な保障を受けられる「生活保護制度」は、2024年4月時点で約201万人が利用しています。生活保護を受けている場合、生命保険に加入できるのか気になる人もいるでしょう。
また、生活保護の申請を検討している人は、生命保険に契約していても申請が通るのか、不安に感じているかもしれません。
本記事では、生活保護と生命保険の関係性や、生活保護でも加入できる可能性がある生命保険の種類などを解説します。
目次
生活保護だと基本的に生命保険の新規加入はできない
生活保護を受けている場合、基本的に生命保険に新しく加入することはできません。
生活保護費は、国が4分の3、地方自治体が4分の1を負担しています。そのため、生活保護費を使って生命保険料を支払った場合は、税金を使って生命保険に加入しているのと同じになってしまいます。とくに、終身保険や養老保険など、貯蓄性のある保険に加入した場合は、税金で個人が資産形成することになるので、加入するのは難しいでしょう。
ただし、自治体の判断によって加入の可否は変わる可能性があるため、まずは最寄りの福祉事務所に相談してみましょう。
生活保護を受けると既契約の生命保険はどうなる?
生活保護を受ける際、既契約の生命保険がどのように扱われるのか、審査にどのように影響するのかが気になる人は多いでしょう。ここでは、生活保護と生命保険の関係について詳しく解説します。
原則として解約しなければならない
生活保護制度を利用する際は、資産や能力などあらゆるものを活用するのが前提となっています。それでも生活が成り立たないと判断された場合に、扶助を受けることが可能です。
解約返戻金のある生命保険は、解約によって現金を手に入れられるため、基本的に持ち家や車などと同じように「資産」としてみなされます。つまり、生命保険に入っていると「生活費を確保する手段がある」とみなされ、生活保護の申請が通らない可能性があるでしょう。それでも生活保護を受けたい場合は、原則として生命保険を解約して生活費に充てなければなりません。
黙っていればバレないと考える人もいるかもしれませんが、生活保護の申請をすると福祉事務所が訪問調査や財産調査などの審査を行います。福祉事務所には、本人の同意がなくても銀行などの金融機関に対して情報照会をする権限があるため、生命保険に加入していることは知られてしまうでしょう。
ただし、自治体の判断や加入している保険の種類によっては、そのまま継続できるケースもあります。
親や子が保険料を払う場合も基本的に解約が必要
親や子が契約者となり、生活保護申請者を被保険者とする生命保険に加入した場合、被保険者は自由に解約返戻金を受け取れるわけではありません。税金で個人が資産形成することにもつながらないので、一見契約を継続できるようにも思えます。
しかし、このようなケースでも、原則として生命保険を解約しなければなりません。これは、家族が保険料を支払えるのであれば、生活保護申請者に対して援助する余力があると判断される可能性が高いためです。よって、親族からの扶養を受けられる場合、基本的に生活保護を受けることはできません。
契約者変更をすれば継続できる可能性はある
病気や失業などで一時的に生活が苦しくなり、生活保護を受給する場合は、契約者変更を検討しましょう。同一世帯ではない祖父母などに名義変更することで契約を継続できる可能性もあります。
ただし、あくまでも受給の可否を判断するのはケースワーカーです。生活保護の申請時には、名義変更した契約についても漏れなく申告しましょう。もし生活保護の受給要件を満たさないと判断された場合は、継続できない可能性も十分あります。
生活保護でも加入できる可能性がある生命保険
以下では、生活保護を申請しても、継続して加入できる可能性がある生命保険の特徴について解説します。
毎月の保険料が安い
毎月の保険料が最低生活費の一定割合以下である生命保険については、生活保護を受けていても加入を認められるケースがあります。「保険料を支払える余力があるのであれば、生活費に回すべき」と判断されることもあるため、保険料に一律の基準があるわけではなく、あくまでもケースワーカーの判断次第です。
解約返戻金が少ない
生活保護を受けていても、一定額の貯蓄をすることは認められています。そのため、解約返戻金が少ない保険や、いわゆる「掛け捨て型」の商品であれば、解約しなくても済む可能性があります。
生活保護受給中に死亡保険金を受け取るとどうなる?
親が契約者・被保険者となっている生命保険で、生活保護受給者が保険金受取人に指定されている場合は、死亡保険金を受け取ることは可能です。
しかし、生活保護の受給中は収入の状況を毎月申告する必要があるので、受け取った保険金額についてもケースワーカーに報告しなければなりません。
死亡保険金は、一般的に数百万円~数千万円になることがあるため、生活保護費の返還が必要になったり、生活保護自体が打ち切りになったりする場合もあります。
だからといって、保険金を受け取ったことを申告しなかった場合や、生活保護を受け続けたいという理由で保険金の受け取りを拒否した場合は、不正受給とみなされる可能性があります。
その場合、不正受給した生活保護費の返還を求められるだけではなく、告訴されるリスクもあるので、絶対にやめましょう。
そもそも生活保護を受給していれば生命保険の必要性は低い
生活保護を受給すると、厚生労働大臣が定める最低生活費から収入を差し引いた差額が「生活保護費」として、毎月支給されます。生活保護費には、受給者の状況に応じて「母子加算」や「障害者加算」などが上乗せされます。さらに、医療・介護サービスを受ける際は「医療扶助」や「介護扶助」を受けられるため、自己負担は発生しません。
生命保険は、万が一の事態に備えて経済的な困窮を防ぐために加入するものです。しかし、生活保護を受けている場合、基本的な生活費は国が保障しているため、「働けなくなった」「病気やケガで治療が必要になった」といった状況に対する備えとして生命保険に加入する必要性は低いといえます。
まとめ
生活保護を受給している人は、保険料を税金で支払うことになるため、基本的に生命保険に新規加入することができません。また、すでに生命保険に加入していて生活保護を受給したい場合は、既契約の保険について解約を求められるケースがほとんどです。ただし、保険料の負担が少ない保険や、解約返戻金の少ない保険であれば、継続加入が認められる可能性もあります。
そもそも生活保護を受給している場合、国が基本的な生活費を保障するため、生命保険の必要性は低いと考えられますが、どうしても加入したい場合はケースワーカーに相談してみてください。

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP