30代は結婚や出産など、ライフステージの変化が多い年代です。万が一に備えて生命保険への加入を検討しているものの、保険選びに頭を悩ませている人も多いでしょう。
本記事では30代におすすめの生命保険や、生命保険の選び方などを詳しく解説します。30代が保険に加入するメリット・デメリットも解説しますので、自分に合った保険選びをしたい人は参考にしてください。
目次
30代におすすめの生命保険
30代におすすめの生命保険は、以下の通りです。
- 医療保険
- 定期保険
- 就業不能保険
- 学資保険
- がん保険
以下ではそれぞれの保険の特徴や、必要性を解説します。
医療保険
医療保険は、病気やケガで入院・手術などをした際の治療費に備える保険です。
30代は若く、40代や50代と比べれば大病をするリスクは低いといえます。しかし、生命保険文化センターの「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によれば、30代のうち、直近5年間で入院を経験したい人の割合は8.9%です。つまり、入院する可能性が全くないわけではありません。
また、入院すると、個室などを利用する際にかかる差額ベッド代や、入院中の雑費・食事代など、公的医療保険だけではカバーしきれない費用も発生します。30代の貯蓄額の中央値は130万円であり、十分な貯蓄がないケースも珍しくないため、医療保険には加入していた方がよいでしょう。
定期保険
定期保険は、のこされた家族の生活資金や教育資金、自身の葬儀費用などをカバーする保険です。30代は子どもが幼い場合も多く、遺族が安心して過ごすために必要な金額も大きくなりがちです。
定期保険は、被保険者が死亡・高度障害状態になった場合に、保険金が受け取れる保険で、解約返戻金はほとんどありません。割安な保険料で加入できるため、高額の死亡保障を準備したい場合には向いています。
就業不能保険
就業不能保険は、病気やケガで一定期間働けない状態になった場合の収入減少に備える保険です。
会社員の場合は、病気やケガで働けなくなると、傷病手当金を受給できます。しかし、給付期間は最長でも1年6ヶ月であるため、長期間働けなくなった場合には、収入が大きく減り、生活が苦しくなる可能性があります。また、自営業の場合、基本的に傷病手当金は利用できません。
就業不能保険に加入しておけば、ケガや病気で就業不能となったときに、給料のように給付金を毎月受け取れます。一度支払事由に該当すると、保険期間満了まで給付金を受け取れる商品もあるため、長期間働けず収入が減少しても 、経済的な面での不安を軽減できるでしょう。
学資保険
学資保険は、子どもの教育費用を備えるための保険です。毎月一定の保険料を払い込めば、子どもの進学のタイミングに合わせて祝金や満期保険金を受け取れる仕組みになっているため、計画的に教育資金を準備できます。
契約者や子どもの年齢が若いうちに入っておいたほうが、返戻率も高くなるケースが一般的であるため、なるべく早めに加入した方がよいでしょう。
がん保険
がん保険は、がんの保障に特化した保険です。
厚生労働省の「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)」によると、30代の死因のうち、自殺を除いて最も多いのががん(悪性新生物)となっており、若くてもがんになる可能性はあります。
がんは症状が落ち着くまでに長期間の治療を要し、治療費が高額になるケースもあるため、優先的に加入を検討した方がよいでしょう。
【家族構成別】30代におすすめの生命保険の選び方
扶養家族の有無や人数などによって、カバーすべきリスクや必要な生命保険の種類は異なります。ここでは、家族構成別に生命保険の選び方を見ていきましょう。
独身世帯の場合
独身世帯の場合は、死亡保障よりも生存中の保障を優先的に備えておくとよいでしょう。養う家族がいなければ、遺族の生活保障を考える必要がないため、高額な死亡保障に加入する必要性は低いといえます。
独身の場合、病気やケガで入院をした時には、基本的に自分の収入や貯蓄から治療費を捻出しなければなりません。貯蓄が少なく、治療費を支払うと生活が圧迫されてしまう場合は医療保険やがん保険などに加入しておいた方がよいでしょう。
ただし、家族や親族に経済的な負担をかけないよう、最低限の葬儀費用やお墓の費用、遺品整理の費用などを賄えるような保険には加入していた方がよいかもしれません。その際は、一生涯保障が続く「終身保険」に加入しておくことをおすすめします。
既婚者・子どもがいる世帯の場合
子どもがいる世帯の場合は、両親に万が一のことがあった場合のリスクに備えつつ、教育資金の準備を進めていくことが大切です。
両親のどちらかが死亡したり、働けなくなったりすると、家族が生活できなくなってしまう可能性があります。遺族年金や傷病手当金、障害年金なども受給可能ですが、それだけで将来の支出に備えられるとは限りません。子どもの教育費もカバーできるよう、死亡保険や就業不能保険については手厚く準備しておきましょう。
また、子どもの教育費用に備えて、学資保険に加入しておくことも大切です。学資保険は預金のように自由に引き出せないため、途中で解約さえしなければ、教育費用を着実に準備できます。親に万が一のことがあった場合でも、保障はそのまま継続され、進学に必要なお金を子どもが受け取れる仕組みになっている点も安心できる要素です。
既婚者・子どもがいない世帯の場合
子どもがいない夫婦のみの世帯は、夫婦の働き方によって、加入する保険を検討してみるとよいでしょう。
共働きの場合はどちらかに万が一のことがあっても、急に家計が傾いたり、生活が困難になったりするケースは少ないため、基本的には高額な死亡保障や手厚い医療保険に加入する必要性は低いといえます。
しかし、夫婦の収入に差がある場合や、夫婦二人に十分な収入があることを前提にして家計が成り立っている場合などは、万が一の際にお互いの収入を補えるだけの生命保険に加入しておいた方がよいでしょう。
片働きの場合、家計を担っている人に万が一のことがあると、収入が大きく減少、もしくは途絶えてしまうこともありえます。家族が経済的に困窮しないように、家計を担っている人は医療保険や就業不能保険、死亡保険に手厚く加入しておくことをおすすめします。
30代における生命保険加入の実態
ここでは、30代における生命保険の加入状況について解説します。どのくらいの保険に加入すべきか、検討する際の参考にしてください。なお、以下で示すデータは、生命保険文化センターの「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」を参照しています。
30代の生命保険加入率
30代の生命保険加入率は、男性で81.5%、女性で82.8%です。20代の加入率は男性46.4%、女性57.1%であるため、加入率が大きく上昇していることがわかります。
30代に入ると結婚や出産、マイホームの購入など、ライフステージの変化に伴い、自分だけではなく家族のために生命保険を検討する人が増えることが、加入率上昇の理由として考えられるでしょう。実際に、直近加入契約の加入のきっかけとして「結婚」を挙げている人は、30代男性の場合は32.1%、女性は22.9%にのぼります。
30代の生命保険における保障額
30代が加入している普通死亡保険金額の平均は、全年代を通じて最も高くなっています。以下の表で見ると、30代男性の保険金額は2,065万円、女性は768万円で、男性は女性と比較して約2〜3倍の保障を備えていることがわかるでしょう。
男性 | 女性 | |
20代 | 1,001万円 | 751万円 |
30代 | 2,065万円 | 768万円 |
40代 | 1,883万円 | 807万円 |
50代 | 1,629万円 | 737万円 |
60代 | 1,071万円 | 507万円 |
70代 | 582万円 | 395万円 |
幼い子どもがいる家庭では、世帯主が亡くなった場合、遺族が直面する経済的負担は通常よりも大きくなります。30代の男性が備える死亡保険金額が高いのは、幼い子どもがいる世帯が多いほか、男性が世帯主になることが多いからだと考えられるでしょう。
30代の生命保険における保険料
30代の年間払込保険料の平均は、男性19.9万円、女性14.0万円です。月額に直すと、男性は約1.7万円、女性は約1.2万円の保険料を支払っていることになります。
30代で生命保険に加入するメリット
30代で生命保険に加入するメリットは、以下の通りです。
- 加入できる保険の選択肢が多い
- 払込保険料が安く済む
30代のうちに生命保険に加入しておけば、手ごろな保険料で自分の希望にあった保険に加入しやすくなるかもしれません。
加入できる保険の選択肢が多い
生命保険に加入する際は、自身の健康状態や既往歴などを保険会社に伝える「告知」が必要です。保険会社や商品によっても異なりますが、以下のような情報を告知するケースが多くなっています。
- 3ヶ月以内の医師の診察・検査・治療・投薬を受けたことがあるか
- 過去5年以内に病気やケガで入院や手術を受けたことがあるか
- 過去2年以内に、健康診断・人間ドックを受けて、異常を指摘されたことがあるか
- 現在、身体の障害があるか
- 今までにがんにかかったことがあるか
一度でも入院を経験したり、持病を発症したりすると、告知項目に該当し、保険への加入が難しくなることもあります。その点、30代は比較的健康状態が良好なことも多く、複数の保険商品から希望する保険を選びやすい状況にあるといえるでしょう。
払込保険料が安く済む
生命保険の種類や契約の条件によりますが、一般的には若いうちに加入する方が毎月の保険料が安いため、払込保険料の総額も安くなる傾向があります。これは、生命保険の保険料が病気になるリスクや死亡するリスクなどを年齢別に算出した上で決まるためです。
30代のうちに生命保険に加入しておけば、毎月少ない負担で手厚い保障を得られる可能性があります。
30代で生命保険に加入するデメリット
30代のうちに生命保険に加入すると、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。
- 払い込んだ保険料が無駄に感じることもある
- 将来的に見直しが必要になる可能性がある
メリットとデメリットを比較しながら、加入を検討してみましょう。
払い込んだ保険料が無駄に感じることもある
30代は高齢者と比較して、死亡のリスクや、病気・ケガのリスクは低い傾向にあります。そのため、せっかく保険に加入していても、保険金や給付金を受け取る機会がほとんどなく、無駄な出費に感じるかもしれません。とくに掛け捨て型の保険の場合は、解約返戻金もほとんどないため、損していると感じる場合もあるでしょう。
しかし、そもそも生命保険は、予期しない出来事が発生した時に、経済的な負担を軽減するための商品です。加入する際は損得を基準にするのではなく、万が一の時の経済的な負担や精神的な不安の軽減につながるかどうかで判断しましょう。
将来的に見直しが必要になる可能性がある
30代で生命保険に加入すると、将来的に見直しが必要になる可能性があります。なぜなら、生命保険はライフステージや家計の状況などによって、必要な保険の種類や保険金額などが変わるからです。
たとえば30代で結婚や出産を機に生命保険に加入したとしましょう。子どもが成長するにつれて、必要保障額は少なくなる傾向があるため、加入時のまま保険を継続していると、保険金額が過剰になる可能性があります。一方で、病気やケガのリスクは増えていくため、医療保障やがん保障の追加が必要になるかもしれません。
30代で生命保険に加入した場合は、年齢やライフイベントなどを区切りとして、定期的に保障内容を見直すことが大切です。
まとめ
30代は結婚や出産などライフステージの変化が多く、生命保険への関心も高まる時期です。比較的健康なことが多く、手ごろな保険料で加入できる場合もあるため、加入の選択肢は多い状況といえます。家族構成や貯蓄などを考慮した上で、必要な保険に加入しましょう。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP