生命保険の必要性について疑問を抱き、加入を迷っている人もいるのではないでしょうか。生命保険に加入していれば、自身に万が一のことがあった場合に保険金や給付金を受け取れます。
また、自身の万が一に備えておくことは、大切な家族の生活を守るためにも重要です。たとえば、予期せぬ病気や事故で入院または死亡した場合、まとまったお金がなければ遺された家族の生活は困窮するでしょう。
そこで本記事では、生命保険に入らないことで生じる具体的なリスクやメリットを詳しく解説します。将来の不安を解消するために、ぜひ参考にしてください。
目次
生命保険の加入者実態
どのくらいの人が生命保険に加入しているのか、気になる人も多いのではないでしょうか。
まずは、生命保険文化センターの「2022年度生活保障に関する調査」をもとに、加入者の実態についてみていきましょう。
生命保険に入っている人の割合
同調査によると、生命保険の加入率は全体で79.8%ほどです。
また、年代・性別ごとの生命保険加入率は以下の通りです。
男性 | 女性 | |
20代 | 46.4% | 57.1% |
30代 | 81.5% | 82.8% |
40代 | 86.1% | 86.3% |
50代 | 86.9% | 87.8% |
60代 | 85.8% | 86.5% |
70代 | 72.5% | 78.8% |
※2022年度の調査結果
20代の加入率は低い水準にあるものの、年代とともに加入率が高くなる傾向があり、男女とも50代でピークを迎えることがわかります。
生命保険に入らない理由
生命保険に加入していない人の非加入理由は、以下の通りです。
非加入理由 | 割合 |
経済的余裕がないから | 37.6% |
生命保険の必要性をあまり感じていないので | 23.7% |
保険料が高いから | 16.7% |
生命保険についてよくわからないから | 12.9% |
健康上の理由や年齢制限のため加入できないので | 10.9% |
貯蓄などの他の金融商品のほうが有利だと思うので | 8.6% |
加入を勧められたことがないので | 7.3% |
公的年金や公的医療保険、公的介護保険など国の社会保障があるので | 7.1% |
自分に合った生命保険商品がないので | 4.9% |
生命保険が嫌いなので | 4.0% |
退職金や企業年金など会社の保障(福利厚生)があるので | 2.6% |
配当金が少ないから | 1.6% |
その他・特に理由はない・わからない | 27.6% |
※複数回答
「経済的余裕がないから」「保険料が高いから」といった保険料の支払いを懸念して加入していない人が一定数いることがわかります。
また、生命保険の仕組みや必要性に対する理解不足が原因で、加入しないという結論に至っている人も多いようです。
生命保険に入らないと後悔する理由
生命保険は、予期せぬ事態に対する備えとして大きな効果を発揮します。生命保険に加入することによって、さまざまな経済的リスクから、自身だけでなく家族を守れるでしょう。
以下では、生命保険に入らないと後悔する具体的な理由について解説します。
病気やケガによる医療費の負担が重くなる
生命保険に入らなかった場合、病気やケガによる医療費の負担が重くなり、家計が苦しくなることがあります。
日本の公的医療保険制度は充実しているため、現時点での医療費の自己負担額は1~3割ほどです。さらに、ひと月の間に医療機関の窓口で支払った医療費が、上限額(年齢や所得によって異なる)を超えた場合には「高額療養費制度」を利用することで、超えた分の払い戻しを受けられます。
しかし、公的医療保険制度を利用したとしても、一定の自己負担額が発生します。また、個室などを利用する際にかかる「差額ベッド代」や「先進医療(※)」などは公的医療保険の適用対象外です。
※厚生労働大臣が認めた高度な医療技術を用いた療養のうち、公的医療保険の対象にすべきか評価が必要な治療のこと
生命保険文化センターの「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、直近入院時の1日あたりの自己負担額の平均は20,700円と紹介されています。そのため、治療が長期化した場合は大きな負担を強いられることも覚悟しておかなければなりません。
しかし、生命保険に加入していれば、入院給付金や手術給付金、先進医療給付金などを受け取れるため、安心して治療に専念できるでしょう。
病気やケガにより収入が途絶える
生命保険に加入しないまま病気やケガで働けなくなると、収入が途絶えるリスクがあります。
会社員の場合は「傷病手当金」を受給できる場合もあるため、働けなくなったとしてもすぐに収入がゼロになるわけではありません。しかし、受給期間は最大1年6ヶ月と定められています。なお、給付金額は直近1年間の標準報酬月額の平均額の30分の1に相当する額の3分の2であるため、教育費や住宅ローンなど支出が多い世帯にとっては、傷病手当金を受け取れても生活が困窮する可能性があるでしょう。
また、自営業者やフリーランスの場合、基本的に傷病手当金は受給できません。自身の働きが収入の柱となっていることが多いため、病気やケガでこれまでと同じような働き方ができなくなれば、収入が長期間にわたって減少するリスクがあります。
しかし、生命保険のなかには、就労不能時の収入をカバーできる商品もあります(就業不能保険)。病気やケガで長期間働けなくなったとしても、給料のように毎月一定額の給付金が受け取れるため、安心して治療に専念できるでしょう。
遺された家族の生活が困窮する
生命保険に未加入のまま一家の世帯主が突然亡くなると、家族の生活が困窮してしまう可能性があります。
遺された家族が不自由なく生活するには、日常生活費や子供の教育費など、将来にわたってさまざまな費用が必要です。なお、遺族年金や死亡退職金、配偶者の収入だけではこれらの費用をカバーしきれないこともあるでしょう。
生命保険文化センターの「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、世帯主に万が一のことがあった場合に、家族に必要な生活資金の平均は以下のように公開されています。
ライフステージ | 万一の場合に必要な生活資金総額 |
夫婦のみ(40歳未満) | 7,082万円 |
夫婦のみ(40~59歳) | 6,326万円 |
末子乳児 | 8,332万円 |
末子保育園児・幼稚園児 | 7,743万円 |
末子小・中学生 | 6,863万円 |
末子高校・短大・大学生 | 6,114万円 |
末子就学終了 | 4,929万円 |
ライフステージによっても異なりますが、多くの世帯で数千万円単位の生活資金が必要と考えていると理解できるでしょう。生命保険に加入していない場合は、貯蓄でこれらの費用を賄う必要がありますが、何千万もの大金を貯蓄するのは現実的には難しいといえます。
しかし、生命保険に加入していれば、死亡保険金で遺族の生活費用をカバーすることが可能です。その結果、自身が亡くなったとしても、家族が将来の生活に困窮する心配がなくなるでしょう。
生命保険に入るメリット
生命保険に加入すると、単に必要な保障を得られるだけでなく、以下のようなメリットを得られます。
- 生命保険料控除により税負担を軽減できる
- 貯蓄型保険であれば急な出費でも安心
- 相続対策に活用できる
以下では、それぞれについて詳しく解説します。
生命保険料控除により税負担を軽減できる
生命保険に加入するメリットの一つは、生命保険料控除を受けられる点です。
生命保険料控除とは、1年間に支払った保険料に応じて、所得から一定額を差し引ける制度です。所得が減ることで、所得税や住民税の負担が軽減されます。
生命保険料控除には以下3つの控除枠があり、加入する商品によってどれが適用されるか異なります。
- 一般生命保険料控除
- 介護医療保険料控除
- 個人年金保険料控除
所得税は各控除4万円(3種類合計で最大12万円)、住民税は各控除2.8万円(3種類合計で最大7万円) の控除を受けることが可能(※)です。
※2012年1月1日以降を契約日とする新制度の場合
加入中は毎年生命保険料控除を受けられるため、長い目で見れば大きな節税効果を得られる可能性があります。
貯蓄型保険であれば急な出費でも安心
貯蓄型保険とは、万が一に備える保障だけでなく、貯蓄機能も備えている保険のことです。契約期間中に積み立てられた保険料の一部が、解約時に「解約返戻金」として戻ってくる仕組みになっているため、急な出費が発生した際には解約すればまとまった資金を得られます。
また、保険会社や保険商品によっては「契約者貸付」と呼ばれる制度を利用することも可能です。契約者貸付とは、解約返戻金のうち一定の範囲内で保険会社からお金を借りられる制度であり、契約が継続している状態のまま必要な資金を借りられます。
このように、貯蓄型保険であれば、急に医療費や生活費が必要になった場合でも安心して対応できるでしょう。
相続対策に活用できる
生命保険は、相続対策としても有効です。通常、相続が発生した場合は、遺言や相続人同士の話し合い(遺産分割協議)に基づいて、財産を公平に分けることになります。しかし、法定相続人には「遺留分」と呼ばれる最低限の取り分が決められているため、たとえ故人が強く希望していたとしても、特定の家族・親族に多く財産を残せない可能性もあるでしょう。
しかし、生命保険の死亡保険金は「受取人固有の財産」として、通常の相続財産とは区別して扱われます。つまり、他の人と話し合って取り分を決めたり、遺留分を気にしたりする必要がないため、自分が渡したい人に希望する金額を残せる可能性が高くなります。
また、生命保険の死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられています。そのため、現金をそのまま残すよりも保険料を支払って財産を減らし、死亡保険金を遺族に残したほうが相続税の負担を軽減できるでしょう。
生命保険に入るべき人の特徴
扶養家族がいる人や貯蓄が少ない人は、生命保険への加入を検討したほうがよいでしょう。以下では、その理由について詳しく解説します。
扶養家族がいる
扶養家族がいる人は、生命保険に加入することをおすすめします。これは、家族を支える立場にある場合、自分に万が一のことがあったときに家族の生活を保障する必要があるためです。
特に、子供が小さい場合や、配偶者が専業主婦である場合には、収入源がなくなることで家族の生活が一変する可能性があります。しかし、生命保険に加入していれば、保険金や給付金で家族の生活費や教育費、住宅ローンの返済など、多くの経済的負担をカバーできるため、家族も安心して生活できるでしょう。
貯蓄が少ない
貯蓄が少ない人も、生命保険に加入する必要性は高いといえます。たとえば、貯蓄が少ない状態で自身に万が一があると、遺族の生活費用や自身の治療費をカバーできず、経済的に困窮するでしょう。
また、高齢になると収入源が年金などの公的年金に限られるため、十分な貯蓄がなければ生活が苦しくなる可能性があります。
しかし、生命保険に加入しておけば、万が一のことが発生した場合の経済的な負担を軽減することが可能です。たとえば、個人年金保険や終身保険などの貯蓄型保険を活用すれば、計画的に老後資金を準備できるでしょう。
まとめ
生命保険に加入していない場合、病気・ケガに伴う治療費の負担や収入の減少に耐えられなくなる可能性があります。また自身だけではなく、家族の生活が成り立たなくなることも十分あり得るでしょう。
そのため、生活を支える家族がいる人や貯蓄が少ない人は「生命保険に加入しておけばよかった」と後悔する可能性が高いといえます。今回紹介したような万が一のリスクに対応するためにも、生命保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP