医療保険のおすすめ特約は?特約の種類やメリットをわかりやすく解説

医療保険

医療保険を検討する際、保険会社から「特約」の付帯をおすすめされ悩んでいる方も多いのではないでしょうか。特約を付帯すると、保障の幅が広がるというメリットがあります。しかし、むやみに特約を付帯するとデメリットになることもあるため注意が必要です。

今回は、特約の概要や種類、特約ごとのメリット・デメリットの解説に加え、医療保険に付帯させるのにおすすめの特約を紹介します。

医療保険の「特約」はおすすめ?概要を解説

そもそも医療保険における「特約」とは何のことでしょうか。言葉の意味を解説します。

医療保険の特約とは

特約は、保険の主契約のオプションとして、契約者の希望で独自に付加する「主契約+α」の契約のことです。例えば、病気全般やケガに加えて特にがん治療に備えたいと考えたとき、がん保険の主契約を増やすのではなく、医療保険の主契約に「がん特約」を加えるという方法をとることができます。

特約を付帯すると、主契約の保険料とは別に特約保険料がかかるのが通常です。しかし、なかには無料で付帯できる特約もあります。

特約はあくまで主契約に付帯するオプションであり、それ単体で契約することはできません。そのため主契約を解約した場合は特約も自動的に解約となります。ただし、特約だけを解約した場合、主契約は継続されます。

医療保険+特約はどんな人におすすめ?

新しく保険の主契約を増やすことと比較して、医療保険に特約を加える方法は以下のような人に向いています。

 保障内容を自身に合うようにカスタマイズしたい人
 契約する保険を1つにまとめたい人
 保険料を抑えたい人

特約を付加すると、主契約だけではカバーできない保障も必要に応じてカスタマイズできます。特に不安のあるポイントに絞って保障を手厚くできるため、保険料の節約が可能です。

さらに、特約の保障内容は主契約の保険の保障内容と比べてシンプルであることが多いため、新たな保険に加入するより保険料が割安に設定 されています。

また保険を1つにまとめることで「何度も契約しなくてよい」「保険料の支払いが毎月1回で済む」など、手続きが簡素化されやすいのもメリットです。

特約を付加することでデメリットはある?

主契約を増やさず特約を付加することのデメリットとして、以下のようなものが考えられます。

特約ごとに保険料が加算される

特約を付加する場合、基本的に特約保険料がかかります。たくさんの特約を付ければ保障は手厚くなりますが、その分の保険料が主契約に追加となるため、結果的に保険料が高くなってしまうケースもあるでしょう。

加えて、中途付加(主契約である保険の契約後、新たに特約のみ追加すること)を行う場合には、付加するタイミングの年齢で告知が必要となります。健康状態によっては特約が付加できない可能性があるほか、追加する特約についてはそのときの年齢で保険料が計算される ことに注意しましょう。

保険の見直しが複雑になるケースがある

また、医療保険の見直しが複雑になることもデメリットです。例えば、医療保険にがん特約を付加している人が、新しい治療法に対応した医療保険へ乗り換えを検討するケースで考えてみましょう。

古い医療保険を解約すると、同時にがん特約も解約となります。がんの保障も継続して受けたい場合、新たに単体のがん保険に加入するか、新しい医療保険にがん特約を付加する必要があります。

しかし、がん治療に関する保険や特約には免責期間(保険契約後、一定期間内に発覚した疾病については保険金や給付金などの保障を受けられない期間)が設けられているのが一般的 です。そのためがんの保障が受けられない空白期間が生じてしまいます。

これを防ぐためには、医療保険の乗り換えの前にがん保険を契約し、支払いを開始しておかなければなりません。主契約の解約に伴って消滅する特約の保障をどのようにカバーするか、事前に考えなければならない点はデメリットといえるでしょう。

医療保険の特約の種類

医療保険の特約といっても、その種類はさまざまです。まずは、医療保険に関する特約の全体像を見ていきましょう。

成人病に関する特約

成人病に関する特約は、「生活習慣病入院特約」とも呼ばれます。所定の生活習慣病で入院した場合、入院給付金の上乗せなどの保障が受けられる特約です。

特約の種類によって以下のように保障範囲が異なります。
 3大生活習慣病:がん・心疾患・脳血管疾患
 7大生活習慣病:がん・心疾患・脳血管疾患・糖尿病・肝疾患・腎疾患・高血圧性疾患

3大疾病に関する特約

3大疾病とは「悪性新生物(がん)・心筋梗塞・脳血管疾患」のことで、日本人の死因上位を占める病気です。これらの疾病は通常の病気と比較して入院日数が長い傾向にあるのが特徴です。

通常の医療保険では、60日型なら連続して60日、120日型なら120日までの入院しか給付金を受け取れません。しかし3大疾病特約では入院限度日数が無制限になるため、長期入院の際も入院日数だけ給付を受け取れます 。

ただし、入院しただけでは給付を受け取れないケースもあります。検討する際は各保険会社の特約の諸条件を確認しておきましょう。

女性疾病に関する特約

「女性疾病特約」は、乳がんや子宮頸がんなど女性特有の病気に対する保障が手厚くなる特約です。帝王切開をはじめとした妊娠・出産関連の治療費も手厚く保障されます。

入院給付金が上乗せで保障されるほか、手術給付金や乳房再建術の費用も対象とされることがあります。

通院・入院に関する特約

通院に関する特約は「通院特約」、入院に関する特約は「長期入院保障特約」などが該当します。

通院特約は、入院に伴う治療を受けて退院後も同じ病気のために通院した場合に、日数に応じて通院給付金が受け取れる特約です。昨今は入院が短期化して通院で治療するケースが増加している ため、入院と通院セットで治療する場合に適しています。

長期入院保障特約は、主契約の入院限度日数の上限を増やすことができる特約です。主契約でカバーできないくらいの長期入院があった場合でも、特約の保障を受けながら安心して治療に専念できます。

がんに関する特約

「がん特約」はがんに対する保障が手厚くなる特約です。がんと診断されるとすぐにまとまった一時金を受け取れる「がん給付金特約」や、がんによる入院を手厚く保障する「がん入院保障特約」などがあります。

通常の医療保険でさまざまな病気・ケガに備えつつ、特約でがんに手厚く備えるという二段構えの保障が受けられます。

先進医療に関する特約

「先進医療特約」は、先進医療の負担を軽減してくれる特約です。先進医療とは、公的医療保険の対象にするかどうかを評価する段階にある治療・手術 などのことで、厚生労働省によれば令和3年10月1日時点で83種類が該当します。

最先端の技術のため健康保険の対象外で、通常の治療と共通する診察・検査・投薬・入院などを除く特殊な治療については全額自己負担です。先進医療特約を付加することで、健康保険に対応していない先進医療の医療費負担を和らげることができます。

健康祝いに関する特約

健康祝い金特約は、一定期間保険金を請求しない健康な状態であった場合に祝い金が受け取れる特約です。これは言い換えると、保険料の一部がキャッシュバックされるということになり、掛け捨ての保険よりは保険料は割高になること が多いです。

それでも保険料を掛け捨てにするのではなく、貯蓄も一緒に進めたい人、保険加入を機に健康増進に向けた取り組みを進めたい人に向いています。

保険料の払込み免除の特約

「保険料払込免除特約」は、一定の病気や健康状態になった際に所定の保険料の払込が免除される特約です。条件は「3大疾病への罹患」や「要介護状態」など、保険会社によってさまざまなものがあります。

例えば「3大疾病保険料払込免除特約」であれば、悪性新生物(がん)・心疾患・脳血管疾患のうち所定の状態になったあとの保険料の払込が免除 されます。

医療保険加入時に検討したいおすすめの特約

ここからは、医療保険のお供として特約の付加を検討する際におすすめのものを紹介します。

入院日数が長期になりやすい「3大疾病」に備える

おすすめ特約の1つ目は、3大疾病に関する特約です。

厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」によると、病院と一般診療所の平均在院日数は29.3日であり、平成2年の44.9日から比較すると短くなっています。特に15~34歳の平均は11.1日、35~64歳は21.9日と全体平均よりさらに短くなります。

ただし、3大疾病のうち、若年者が罹患した悪性新生物と全世代の脳血管疾患に関しては長期化しやすい傾向にあります 。3大疾病の平均在院日数と傷病全体の平均在院日数の比較は以下のとおりです。

(単位:日数)

傷病全体 悪性新生物 心疾患 脳血管疾患
総数 29.3 17.1 19.3 78.2
0~14歳 7.4 21.6 11.8 12.3
15~34歳 11.1 15.9 10.0 25.6
35~64歳 21.9 13.0 9.0 45.6
65歳以上 37.6 18.6 22.2 86.7
75歳以上 43.6 21.8 28.8 98.9

悪性新生物(がん)は0~34歳の若い世代も平均より長い傾向があります。また、特に入院が長期化するのは脳血管疾患で、平均でも78.2日、65歳以上では80~90日以上の入院が必要になるケースもあることがわかります。

通常の医療保険の保障では入院期間全体をカバーできなくなる可能性を考慮し、3大疾病に関する特約で補てんすることを検討するのも1つの方法です。3大疾病特約のなかには3大疾病に罹患した場合に入院限度日数が無制限になる商品があります 。仮に長期化しやすい脳血管疾患に罹患したとしても、入院日数を気にすることなく治療に専念できるでしょう。
特約の内容次第では一時金や3大疾病給付金を受け取ることもできるため、入院費用が高額になった際も出費をカバーできます。

「女性疾病」に安心を付加する

女性特有の病気に備える女性疾病特約も選択肢の1つとしておすすめできます。

女性特有の病気や手術には乳がん・帝王切開・子宮がん・子宮筋腫・卵巣のう腫などさまざまなものがあり、年代によって備えるべきリスクが異なります。

また、どのような出費が必要になるのかも人によって変わるでしょう。例えば、女性疾患の治療では精神的に不安になることも あります。人目を気にして、入院時は個室を希望するかもしれません。女性疾病特約があれば、給付金をベッド代の差額に宛てられます。

さらに、妊娠を希望している女性にとっては、出産時に帝王切開になった場合の保障を受けられるという強みもあります。厚生労働省「平成29年(2017)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」 によると、平成29年の一般病院と一般診療所を合わせた分娩数は7万6,953件です。そのうち帝王切開は1万5,687件となっているため、全体の約20%(つまり5人に1人)が帝王切開で出産していることがわかります。

こうした女性特有の疾患や手術、またデリケートな精神状態にも、女性疾病特約があれば手厚く備えられるため安心でしょう。

「先進医療」は健康保険の対象外

医療保険のお供として、先進医療特約も検討候補に挙がります。

先進医療は最先端の技術ゆえに健康保険の対象ではなく、技術料をはじめ治療費の全額が自己負担となります。技術料は治療法によって異なりますが、特にがんに関する先進医療は高額になりがちです。

厚生労働省の「令和2年6月30日時点における先進医療Aに係る費用」という資料によると、陽子線治療と重粒子線治療ではいずれも約300万円の先進医療費が必要です。

一方で先進医療特約の特約保険料は高くありません。多くの保険会社では通常の保険料にプラス100円程度で特約を付帯させられます 。月額100円で万が一の数百万円の出費を保障できると考えれば、高額な医療費負担に備えたい人も安心でしょう 。

医療保険+がん特約とがん保険はどちらを選ぶべき?

がん保障を手厚くしたいと考えるなら、特約よりもがん保険を単体で契約するほうが向いています。がん保険は保障内容や金額を柔軟に決められるため、ニーズに合わせて保障を組み合わせることが可能です。

ただし、すべての人ががん保険に向いているとは限りません。ここでは「医療保険のがん特約が向いている人」「がん保険が向いている人」の特徴をそれぞれ解説します。

医療保険のがん特約とがん保険の保障内容比較

まずはがん特約とがん保険の保障内容を比較してみましょう。

多くのがん特約では、がんと診断確定された場合に一定額の「がん診断給付金」を受け取れます。受け取った給付金の用途は定められていないため、入院や手術、通院、私生活などさまざまな費用の補てんとして利用可能です。

また、医療保険にがん特約を付帯する場合、主契約は医療保険であるためがん以外の病気やケガも保障や特約の対象となります。しかしがん保険では、基本的にがんに対する保障しか受けられません。例えば医療保険とがん保険の「先進医療特約」を比較すると、医療保険ではあらゆる先進医療が対象になるのに対し、がん保険ではがんに関する先進医療しか保証の対象にならないのです。

ただし、がん特約はがん保険と比較して保障内容を柔軟に選びにくいというデメリットがあります。欲しかった保障は対象外となっていたり、各種給付金の金額を自由に設定できなかったりしても、がんに関する特約がそれしかなければ保障内容を変えることはできません。

また、加入している医療保険で入院給付金を受け取れる日数に上限がある場合、がんで入院が長期化すると限度日数に達してしまう可能性があります。がん保険であれば、がんによる入院の際の入院給付金は多くの場合日数無制限で給付されます。

医療保険のがん特約、がん保険の特徴をまとめると以下のとおりです。

医療保険+がん特約 がん保険
保障内容 病気・ケガ+がんに備える がんに特化して備える
がん診断給付金 まとまった一時金が出るが、金額が少ないことがある まとまった一時金が出る
入院給付金 あらゆる病気やケガに対応するが限度日数がある がんによる入院に限り限度日数がない
先進医療特約 あらゆる先進医療に対応 がんに関する先進医療のみ対応

 

医療保険+がん特約がおすすめの人

がんに限らずあらゆる病気やケガに備えたい人には、医療保険+がん特約がおすすめです。

がんはさまざまな要因によって発症しますが、生活習慣が悪性新生物の発生の一因になっていることもあります。例えば、喫煙が肺がんの原因になること は有名です。また過度な飲酒 や偏った食生活 も同様にがんのリスクを高めるとされています。

こうした生活習慣に気を付けている人は、がん保険でがんに限定して備えることは優先しなくてよいかもしれません。健康意識の高い人も何らかの病気やケガで入院することはあるため、医療保険を主契約として幅広くリスクに備えながら、特約でがんに備えるという方法を検討してもよいでしょう。

がん保険がおすすめの人

喫煙や過度な飲酒など、生活習慣が気になる人や、身内にがんの罹患者がいる人はがん保険で手厚く備えるのがおすすめです。

がんに罹患した人のうち、男性では30%、女性では5%はたばこが原因で発症したというデータもあります(厚生労働省「喫煙と健康」喫煙の健康影響に関する検討会報告書(2016年)) 。 たばこを吸わない人よりも発症リスクが大きいため、特約よりも柔軟に保障内容を設定しやすいがん保険が向いています。

また、身内でがんの罹患者がいる場合も注意したほうがよいとされています。生まれながらにがんに関係する遺伝子に変異がある場合、次の世代にその変異が受け継がれる(遺伝する)ことがあります。 がんになりやすい可能性があることを考えれば、がん保険で手厚く備えることも視野に入れておくのが得策です。

医療保険の特約に関するQ&A

医療保険の特約を考えている方が疑問に感じやすい点をQ&A形式で紹介します。

特約を付加しないと十分な保障を受けられない?

特約をおすすめされると、「主契約だけでは保障が不十分なの?」と感じる人もいるかもしれませんが、必要のない特約までやみくもに付ける必要はありません。

特約はあくまでも主契約の保障の幅を広げるために付加するものです。「よくわからないので一応付けておこう」といった考えで特約を増やすと、保険料が不必要に高額になる可能性もあります。家計の負担を考えて、必要な特約のみ付加するようにしましょう。

また、多くの場合特約よりも、その疾病に特化した保険のほうが保障内容は充実しています。特定の疾病について手厚い保障を受ける必要があると感じるなら、はじめから特化した保険に加入するほうがよいこともあるでしょう。その際、現在加入している医療保険が次の更新のタイミングになるまでは特約で様子を見て、契約終了時に改めて疾病に特化したタイプの保険に加入するのも1つの方法です。

このように、保険や特約は希望する保障内容に合わせて加入・付加を検討するものです。そのため自身に必要な保障を洗い出し、特約を付加すべきかどうかを検討しましょう。

医療保険の特約は途中で追加・解約できる?

医療保険の加入時に特約をおすすめされて付加したものの、「やはりこの特約は不要だった」と思い直すこともあるでしょう。特約を解約したい場合、保険会社の営業担当者やコールセンターに電話するだけで簡単に手続きできます。

ただし、追加に関しては難しい場合もある点に注意が必要です。健康状態や年齢によっては特約が付帯できないこともあります。例えばすでに悪性新生物(がん)の罹患歴がある場合、がん特約を付帯させられない可能性が高いといえます。

まとめ

今回は、医療保険に付帯させるのにおすすめの特約と、特約のメリット・デメリットを解説しました。

特約には「契約を1社で済ませられる」「新たに保険を契約するより割安」というメリットがあります。しかし、「人によって保障内容が不十分に感じる場合がある」「主契約を解約すると自動的に解約になる」などのデメリットがある点に注意が必要です。

メリット・デメリットを把握したうえで、保険料が負担にならない範囲で特約を検討し、自身の備えるべきリスクにぴったりの充実した保障内容をカスタマイズしてみましょう。






オカネノホンネ編集部

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難しいお金の話を、ファイナンシャルプランナー技能士や保険・金融商品の専門家が忖度なし「ホンネ」でわかりやすく伝えます。

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