老後の生活や将来の不安から「資産形成」に関心を持っている人は多いでしょう。一方で、「なぜ資産形成が必要なのか」と感じる人もいるのではないでしょうか。
この記事では、資産形成の「必要性」について解説します。人生の選択肢を広げるためにも、資産形成に関する知識を身につけておきましょう。
目次
資産形成とは?
資産形成とは、将来の経済的安定や目標達成のために、現在の収入の一部を計画的に貯蓄や投資に回すことです。具体的には、預貯金、株式、債券、不動産、保険などの金融商品を運用し、長期的に資産を増やすことを指します。
資産形成の目的はそれぞれ異なり、老後の生活資金の確保、子供の教育資金の準備、マイホーム購入などが代表的です。資産形成は一朝一夕にはできないため、若いうちから始めることが望ましいとされています。
なお、資産形成と似た言葉に「資産運用」があります。双方の違いは、資産形成は資産が「0」の状態からお金を貯めるのに対し、資産運用はある程度「元手が貯まった状態」からお金を増やすことです。
資産形成と資産運用の違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
資産形成が必要な理由
一般的に資産形成が必要とされている理由として、以下が挙げられます。
- ライフイベントでまとまったお金がかかる
- 預金だけではお金が増えにくい
- インフレで資産が目減りする可能性がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ライフイベントでまとまったお金がかかる
人生において、以下のようにさまざまなライフイベントが存在します。
- 車の購入
- 結婚・出産
- 子供の進学
- 住宅の購入・リフォーム
- 定年退職
- セカンドライフ
ライフイベントによっては、数百万円以上の多額の資金が必要になることもあります。これらの費用を日々の収入だけで賄うのは難しいケースが多いため、早めに資産形成を始め、着実に資産を積み上げておくことが大切です。
以下では、上記のライフイベントのなかでも、多額の資金が必要となる項目に絞って解説します。
住宅購入資金
住宅を購入する際は、住宅ローンを利用するケースが一般的です。しかし、金融機関から借入をする場合にも、一定額の自己資金が必要になります。
以下は住宅の形態別に、購入時の自己資金がどれくらいかかるのかをまとめた表です。
住宅形態 | 自己資金額の平均 |
注文住宅 | 1,685万円 |
分譲戸建住宅 | 1,305万円 |
分譲集合住宅 | 2,279万円 |
中古戸建住宅 | 1,410万円 |
中古集合住宅 | 1,338万円 |
実際には、頭金0円でも住宅ローンを組むことはできます。しかし、借入額が多くなるため、返済の負担が大きいでしょう。住宅購入価格の10~20%程度の自己資金は、用意しておいたほうが賢明です。
教育資金
子供の教育費は、長期間にわたって発生するため、高額になる可能性があります。
例えば、幼稚園から大学まですべて公立に進学した場合にかかる教育費の平均は、8,302,841円です。すべて私立に進学した場合は平均で22,370,535円かかります。
特に、大学の進学費用は高額になりやすく、薬学部や医学部などに進学した場合は、入学金や授業料などの合計が数千万円になるケースもあります。
これらの費用を準備するためには、学資保険などで早めに教育資金の積み立てを始め、長期的な資金計画を立てることが必要です。
老後資金
平均寿命の延伸に伴い「人生100年時代」が現実のものとなりつつある昨今では、早めに資産形成に取り組み、老後資金を準備しておく必要があります。
生命保険文化センターの調査によると、夫婦2人で老後生活を過ごすうえで必要と考える最低日常生活費(月額)は平均23.2万円、ゆとりある老後生活を送るための費用(月額)は平均37.9万円です。
一方で、厚生年金受給者の平均年金月額は約14.5万円、国民年金受給者の平均年金月額は5.6万円です。
公的年金に頼るだけでは、退職後にゆとりのある生活を実現するのは難しい可能性があります。そのため、私的年金や投資を活用して、老後の生活資金を準備することが必要です。
預金だけではお金が増えにくい
2024年10月時点で、日本の金利は非常に低い水準にあり、預金だけでお金を増やすことは難しくなっています。例えば、年利0.1%の普通預金に100万円を10年間預けても、101万円にしかなりません。
この低金利の環境では、預金だけに頼るのではなく、投資信託や株式、不動産など、さまざまな金融商品を活用して資産を運用することが重要です。リスクとリターンのバランスを考えながら、自分に合った運用方法を選択し、着実にお金を増やしていくことが望ましいでしょう。
インフレで資産が目減りする可能性がある
インフレとは、物価が継続的に上昇することを指します。インフレが進行すると、お金の実質的な価値が下がり、同じ金額でも以前ほど多くのものが買えなくなってしまいます。
例えば、年率2%のインフレが続いた場合、今100万円で買えるものは10年後には122万円出さなければ買えません。つまり、手元にある現金が100万円のまま減っていなかったとしても、同じものは買えなくなってしまうのです。
株式や不動産など物価上昇率を上回るリターンが期待できる資産運用をすることで、インフレのリスクを軽減できます。
資産形成はいつから始めるべき?
資産形成は、なるべく早く始めることが重要です。その理由は、大きく3つあります。
まず、早く始めることで、「毎月の積立額が少なくて済む」というメリットがあります。例えば、老後に必要な資金を30年かけて積み立てる場合と、10年で積み立てる場合では、月々の負担額が大きく異なります。早く始めれば、長い期間をかけて少しずつ資産を積み立てられるので、無理なく計画的に資産形成が可能です。
次に、「複利効果を最大限に活用できる」点も重要です。複利効果とは、運用で得た利益を再び運用に回すことで、元本が膨れ上がっていく効果のことです。複利効果を活用すると、運用期間が長くなるほど、利益の増加率も高くなります。つまり、10年、20年と運用を続けていくうちに、資産が雪だるま式に増えていく可能性があるのです。
投資にはリスクが伴いますが、若い頃に失敗しても再チャレンジする時間があるため、失敗した経験を活かして「やり直す」ことが可能です。リスクを取りながら運用にチャレンジし、経験を積むことで、将来的により安定した資産運用ができるようになるかもしれません。
資産形成を始めるタイミングについては、以下の記事も参考にしてください。
まとめ
資産形成は、将来のライフイベントに備えて経済的な安心を得るために欠かせません。低金利の預金では十分に資産を増やすのは難しく、インフレによって資産が目減りするリスクもあるため、資産を守るという観点からも資産形成は重要です。
また、資産形成は早く始めるほど毎月の負担を抑えながら無理なく進められ、複利効果も活用しやすくなるため、できるだけ早く始めることをおすすめします。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP