治療に必要な医療費と医療費の相談窓口

医療保険

医療費は疾病の種類、病気の進行度、治療法によって変わってきます。この記事では必要な治療費についての考え方と、医療費についてわからなかったり支払に困った事があった際にどこに相談をしたらいいのかについて説明します。

医療費を決める要因

医療費は病気の種類だけでなくその進行状況によっても変わります。

例えばがんの医療費を決める要因は

  1. がんの種類
  2. 進行度(ステージ)
  3. 医療や治療法に対する考え方

の3点で変わっていきます。

最近の医療(検査や手術など)は体への悪影響を少なくした患者のQOLに配慮したものへと変化しています。

手術も従来は体への負担が高い治療法でした。しかし、内視鏡外科手術や腔鏡手術が普及することで、その負担は減り、入院期間は短縮しています。手術後の障害も明らかに減っています。

それでも進行した病気の治療にはお金や時間、体の負担がどうしても大きいものになってしまいます。また働く年齢のうちであれば、働けない期間の遺失収入、家計への負担も大きなものになります。

健康診断はしっかりと受診したり、不調を感じたら受診するなど早期発見が重要となります。

また自覚症状がある際には放置せずに適切な治療を早期に勧めましょう。発症後、徐々に進行し回復に時間もかかり完治しにくい病気のことを慢性疾患と言います。高血圧症、糖尿病、脂質性異常慢性腎臓病などが慢性疾患にあたります。これらは放置しておくと脳卒中や心筋梗塞などの重大な病気に発展するリスクがありますので注意しましょう。

また慢性疾患の医療費は単発では決して高くはありませんが、継続的に発生するため中長期的には高額なものになりえます。例えば、糖尿病ネットワークの発表によると、糖尿病の治療は3割負担の時に飲み薬による治療は月額約5500円、インスリン注射と飲み薬と血糖値の自己測定では月額約9600円かかるとされています。これが毎月何十年と続くとなると数百万円単位の出費になります。

患者数が多い病気と入院の際の留意点

医療の進歩により「入院日数」は減少傾向ですが、「病気にかかり治療をする人」の数は減っていません。入院・外来ともに65歳以上の人の3人に2人は何らかの病気で通院していると言われています。

厚生労働省「平成29年患者調査」によると患者数が100万人を超える病気としては以下などがあります。

高血圧症 994万人
歯肉炎と歯周病 398万人
糖尿病 329万人
脂質異常症 221万人
がん 178万人
心疾患(高血圧以外) 173万人
脳血管疾患 112万人

すぐに命に影響はないが他の病気を誘発する可能性がある慢性的な疾患にかかっている人が多いことがわかります。また日本人の死因の上位であるがん・心疾患・脳血管疾患なども罹患者数が100万人を超えて多いでことがわかります。

多くの人にとって、病気にかかった際のお金や生活の影響は気がかりなものでしょう。主治医であったり医療ソーシャワーカーなどに気になった点は遠慮せずに聞くようにしましょう。医療費や入院などにかかる差額ベッド代なども含めて聞いておくことは重要です。

具体的には以下などを質問してみるといいでしょう。

  • 病気とその病状
  • 検査内容
  • 治療の詳細とその治療方法を推奨する理由
  • 入院や手術の期間や費用の目安
  • 退院後の治療費
  • 退院後や通院時の仕事や生活への影響
  • 利用可能な公的制度や各種制度の内容とその手続き方法

医療費の計算

入院に伴う医療費

それでは実際に入院に伴う費用はどれくらいかかるのでしょうか。公益財団法人生活保険文化センターによる、令和元年度「生活保障に関する調査」を見てみましょう。

直近の入院時の自己負担額は

  • 5万円未満 7.6%
  • 5〜10万円未満 25.7%
  • 10〜20万円未満 30.6%
  • 20〜30万円未満 13.3%
  • 30〜50万円未満 11.7%
  • 50〜100万円未満 8.4%
  • 100万円以上 2.7%

となっており、1回の入院につき費用は平均20万8,000円でした。

これは、治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品などを含んでいます。統計は、高額療養費制度を利用した人も含まれており、利用した場合は利用後の金額となっています。

この20万8,000円は1つの目安になるといえるでしょう。

もう少し細かくみていきましょう。入院した際には差額ベット代、テレビカード、日々の雑費なども意外にかかることがあることは事前に心得ておきましょう。

個室などの少人数の部屋を特別療養室といいます。厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」によると、大部屋以外の特別療養室を利用した場合の差額ベッド代は次のとおりです。

1日あたり平均徴収額(推計)
1人室 7,837円
2人室 3,119円
3人室 2,798円
4人室 2,440円

特別療養室を利用した場合の差額ベット代は「本人が希望した場合」かつ「費用を請求するには本人が同意書類でサインが必要」となります。病院都合で「多床室があくまで特別療養室入院している」といったケースは支払う必要がありません。

入院中の病院食、食事療養費の自己負担分は1食あたり460円と定められています。ただし一定の基準を下回る収入の人や90日を超えている人は金額が減免されます。

入院が決まると病院からの入院案内が渡され持参すべきものや注意点が書かれています。パジャマなどは病院からのレンタルの着用を指示される場合もあるので事前に確認し、入院にかかる費用を把握するようにしましょう。

入院以外にかかる医療費

入院以外にも手術や通院などにも医療費はかかります。

昨今の医療技術の進歩で通院日数は短期化傾向です。厚生労働省の「令和元年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によると平均在院日数は2010年の18.2日が2019年には16.0日となっています。

一方で退院後の通院する患者数は、2008年には99.8万人だったのが2017年には116.9万人と増加傾向にあります(厚生労働省「患者調査」より)。

3大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)や7大疾病の医療費や入院日数・通院日数に関して詳細を知りたい方は以下の記事をご覧ください。

 

医療費が高額になる際は

医療費は自己負担分を窓口で払います。高額な医療費に対しては高額療養費制度があり、自己負担限度額が設定されており、申請によって超過支払分が2~3か月後に払い戻されます。

なお保険の対象となる医療費はその月の1日から末日までの1ヵ月単位で計算します。月をまたぐ入院をした際には、それぞれの月で計算されるため、自己負担限度額に達しないこともありますので注意しましょう。

また医療費の補助を受けたり、節約をしたい方は以下の記事をご覧ください。

医療費について困ったら窓口で専門家に相談

治療内容だけでなく生活やお金に困ったことがあれば、自分だけで抱え込まずに通院している病院の相談窓口でソーシャルワーカーやメディカルソーシャルワーカーに相談するようにしましょう。

多くの病院では「相談支援室」等の名称で相談窓口を設けています。病院内での相談窓口がわからなければ看護師や受付、主治医に聞いてみましょう。医療費の支払については病院の医事課が担当になります。

なお地域の拠点病院であれば他の病院の患者も相談ができます。

医療費はもちろんそれ以外も含めた医療全般の相談や苦情を受けつける「医療安全支援センター」も全国で380箇所以上に設置されています。中立的な立場からのアドバイスや、相談者の意向を希望があれば医療機関に伝える事なども行います。

本当に医療費が支払えない場合は

もし万一、いろいろな公的制度などを使っても医療費を払えない場合は、生活保護の医療扶助を受給という手段があります。

生活保護が何らかの理由で受けられない場合は無料低額診療事業があります。地方自治体が設置する福祉事務所に相談して減免が認められると医療費の全額もしくは一部が免除される診察券が発行され指定の医療機関で医療サービスを受けることができます。

生活者困窮自立支援制度に基づく相談窓口が全国に設置されています。医療費に限らず就職、住まい、家計などについても相談できます。お住まいの地域の窓口の自立支援事業所に相談してみてください。なお事業所の一覧はコチラからご覧いただけます。

詳細は以下の記事を確認ください。

高額療養費制度の手続き及び相談窓口

高額療養費制度や限度額適用認定証発行などの公的医療制度の手続きは、医療保険の加入先に確認します。保険証の表面に「保険者名」「保険者名称」の記載があります。

自営業やフリーランスの人は自治体の国民健康保険課、大きな企業の会社員の場合はその会社の健康保険組合、中小企業であれば全国健康保険協会、公務員であれば共済組合になります。最近はホームページを充実させているので申請書類のダウンロードなどもできます。

まとめ

医療費は疾病の種類、病気の進行度、治療法によって変わってきます。特に早期発見が重要になってきます。また医療費に対する疑問や不安は病院にいる専門家等に遠慮せずに聞くようにしましょう。

オカネノホンネ編集部

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難しいお金の話を、ファイナンシャルプランナー技能士や保険・金融商品の専門家が忖度なし「ホンネ」でわかりやすく伝えます。

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