犬や猫などのペットが病気・ケガをした際の治療費をカバーできる「ペット保険」。ペットを迎え入れる際に、加入を勧められたことがある人もいるでしょう。
しかし、人間の生命保険と比べると比較的新しい商品のため「補償内容がわからない」「そもそも必要なのか」と感じることもあるのではないでしょうか。
この記事では、ペット保険の必要性や補償内容を、ペットの医療事情などを含めて解説します。
目次
ペット保険とは?
ペット保険とは、大切なペットが病気やケガをしたときにかかる治療費のうち、一定額を補償する保険のことです。支払い条件に該当した場合、通院費・入院費・手術費などが支払われます。ペット保険の基本的な仕組みは、人間が加入する医療保険と大差ありません。
ただし、動物には人間のような公的医療保険制度はないため、万が一の治療費は全額自己負担です。治療が長引いたり、高額な治療を受けたりする場合には、負担が重くなることもあります。万が一の場合に費用負担を抑える役割を果たすのがペット保険なのです。
ペット保険の必要性
ペット保険は毎月保険料を支払う必要があるため、メリットがなければわざわざ保険に加入する必要はないのでは、と考える人も多いでしょう。実際に欧米と比べると、日本でのペット保険加入率は低い水準となっています。
しかし、前述した通り、動物には公的医療保険制度がないため、治療費は全額自己負担です。ペットの高齢化が進み、治療費が高額になっていることを踏まえるとペット保険に加入する必要性は高いといえるでしょう。
アニコム損害保険株式会社「家庭どうぶつ白書2019」によると、犬の場合は年齢を重ねるにつれて年間診療費が高くなる傾向にあり、12歳の犬では平均で149,757円の診療費がかかるようです。がんや循環器系の病気になった場合は、100万円を超える治療費がかかることもあります。
十分な貯蓄があれば問題ありませんが、日々の生活に余裕がない場合は高額な出費によって家計に影響を及ぼす可能性もあります。一方、ペット保険に加入していれば、自己負担の割合は少なくなるため、家計に与えるインパクトも少なく済むのです。高額な支払いに不安を感じる人は、ペット保険に加入しておいた方がよいでしょう。
ペット保険に加入するメリット
費用面をさほど気にせずに病院に通えるようになるのが、ペット保険に加入するメリットです。
以下のように、ペットの治療には1回あたり数万円かかるケースもあります。治療費は全額自己負担になるため、「少し様子を見てから連れて行こう」と病院に行くのを躊躇してしまうこともあるかもしれません。
小型犬 | 中型犬 | 大型犬 | |
1回あたりの平均的な通院費(手術なし) | 10,636円 | 12,020円 | 13,588円 |
1回あたりの平均的な入院費(手術なし) | 77,642円 | 80,257円 | 114,090円 |
1回あたりの平均的な手術費 | 173,637円 | 175,995円 | 202,052円 |
ペット保険に加入しておけば治療費の負担が軽くなるため、病院に行くハードルは低くなります。体調が変化したタイミングでこまめに病院に通うことで、病気の早期発見につながるでしょう。実際にペット保険に加入した人のうち、60%近くが1年以内に保険金を請求しているデータもあります。
また、近年では獣医療の発達により、治療方法の選択肢も増えてきています。しかし、受けさせたい治療があっても、費用面で折り合いがつかなければ諦めざるを得ません。ペット保険に加入しておくことで、治療の選択肢が広がり、より効果的な治療を受けられる可能性があるのです。
ペット保険の基本的な補償内容
ペット保険の一般的な補償内容は、以下の通りです。
通院費 | 入院や手術を伴わない病気・ケガの処置や薬の処方、検査などをした場合にかかる診療費を補償 |
入院費 | 病気やケガによる入院でかかる宿泊費や診察費、治療費、投薬費などを補償 |
手術費 | 手術にかかった費用を補償 |
また、特約で以下のような補償をつけられるケースも多くなっています。
葬祭費 | 万が一の死亡時にかかる葬儀費用に備える補償 |
損害賠償費用 | ペットが他人のものを壊したり、他人や他のペットに怪我をさせたりした場合に発生する損害賠償金や訴訟費用、弁護士費用などを補償 |
補償内容は各社で異なり、手術だけを補償する商品もあれば、通院・入院・手術の全てをカバーできる商品もあります。ただし、基本的にどの商品でも補償割合や補償限度額が定められているため、治療費全額が補償されるとは限りません。
治療費の補償割合
補償割合とは、治療費のうち何%補償されるかを表したものです。50%補償であれば、治療費の半額にあたる保険金が支払われます。
ペット保険は、あくまでかかった実費の範囲内で補償を受けられるのが特徴です。この点は、万が一のことが起きた場合に契約したときの保険金が支払われる生命保険や、入院や通院の日数に応じて「1日あたり○○円」といった形で定額の給付金が支払われる医療保険とは異なる点といえるでしょう。
支払限度額
ペット保険では1日あたり、または1年間での支払限度額が決められていることがほとんどです。
たとえば、1日あたりの支払限度額が1万円、補償割合50%の商品に加入したとしましょう。このケースで3万円の治療費がかかった場合、3万円の50%にあたる15,000円が支払われるわけではありません。保険金として支払われるのは支払限度額である1万円となるのです。
免責金額
免責金額とは、保険加入者が自己負担しなければならない金額のことです。たとえば、免責金額が1万円に設定されている保険に加入した場合、通院で治療費が5,000円しかかからなかった場合は、保険金が支払われません。
補償対象外となるケース
補償割合や支払い限度額が大きい商品に加入していたとしても、そもそも約款で「補償の対象外」とされているものについては、保険金が一切支払われません。
一般的に以下のようなケースは補償対象外となっているため、注意しましょう。
- 保険期間が始まる前から被っていた傷病
- ワクチン接種費用
- フィラリア・ノミ・ダニなどの予防に関する費用
- 妊娠・出産・去勢・避妊などに関わる費用
- 健康診断の費用
- 地震・噴火・津波などの自然災害によって被った病気・ケガ
ペット保険で主に補償されるペットの種類
ペット保険で補償を受けられるペットの種類は、保険商品によって異なります。その理由として、動物の種類によって寿命やかかりやすい病気・ケガには違いがあるためです。
犬や猫を対象にしているケースがほとんどですが、ウサギ・ハムスター・フェレット・ハリネズミなどの小動物が加入できる商品もあります。インコやオウムなどの鳥類や爬虫類も加入できる商品もありますが、犬や猫と比べて加入対象となる年齢が短くなっていることが多いので注意しましょう。
ペット保険適用時における費用負担例
ここでは、ペット保険が適用された場合の費用負担についてケース別に紹介します。ただし、ここで紹介する費用などは動物病院などによって異なるため、あくまで目安であることを念頭に置いておきましょう。
【ケース①】
品種:トイプードル
保険に加入していない場合の負担額:「308,700円」 ※参考:アイペット損害保険株式会社 |
【ケース②】
品種:柴犬
保険に加入していない場合の負担額:「480,000円」 ※参考:ペットメディカルサポート株式会社 |
【ケース③】
品種:猫(雑種)
保険に加入していない場合の負担額:「7,000円」 |
ペット保険における保険料の決まり方と保険期間について
一般的にペット保険は「損害保険」に分類されます。生命保険会社が販売している医療保険とは、保険期間や保険料の決まり方が異なることを覚えておきましょう。
保険料の決まり方
ペット保険の保険料は、主に以下の3つの要素で決まります。
- ペットの種類
- ペットの年齢
- 補償内容
犬・猫・小動物・鳥類・爬虫類など、ペットによって病気やケガのリスクは異なるため、契約者間の公平性を保つためにそれぞれ違った保険料が設定されています。特に犬の場合は、品種や大きさ(小型犬・中型犬・大型犬)によって保険料が変わるのが一般的です。
人間と同じように、年齢を重ねると病気やケガのリスクが高くなるため、保険料も高くなります。継続して加入する場合、保険料はずっと一定ではなく途中で高くなっていきます。
補償内容が手厚くなるほど保険料は高くなる傾向です。たとえば、補償割合は50〜100%の間で設定されますが、100%に近いほど保険料は高くなります。保険料の安い保険は、免責金額が大きかったり、支払上限額が低かったりする可能性もあるため、注意しましょう。
保険期間
ペット保険の場合、保険期間は1年となるケースがほとんどです。そのため、継続して加入する場合、更新手続きが必要となります。
更新時点での年齢や保険金の請求状況によっては、保険料が高くなったり、更新できなかったりする可能性もあることは覚えておきましょう。
ペット保険に加入する前に確認するべき4つのポイント
ペット保険に加入する前に加入するための条件や保険金の請求方法、申し込み方法などを確認しておきましょう。
1.ペットのかかりやすい病気
自分が飼っているペットのかかりやすい病気やケガを把握しておくと、その症状をカバーできる最適な保険に加入できる可能性が高くなるでしょう。
犬・猫といった同じ分類の動物の中でも、品種や体格、年齢などによってかかりやすい病気やケガは異なります。自身が飼っているペットのかかりやすい病気を把握するためには、かかりつけの動物病院で相談する、ペット保険を提供している保険会社のホームページを確認するなど常に情報収集を怠らないようにしましょう。
2.ペットの年齢や既往歴
ペットの年齢や既往歴を十分確認した上で、ペット保険への加入を検討しましょう。理由として、加入時の健康状態や年齢によっては、加入できない商品もあるためです。
一定の年齢に達すると更新できない保険もあるため、せっかく加入してもすぐに無保険状態になってしまう場合もゼロではありません。さらに年齢に応じて保険料は変わるため、将来的に保険料が家計の負担になってしまうことも考えられます。
健康状態を正しく告知せずに加入してしまうと、最悪の場合保険金が支払われないこともあるため、注意しましょう。
3.保険金の請求方法
ペット保険の保険金請求方法は、大きく以下の2つに分けられます。
- 動物病院の窓口で一旦治療費全額を支払い、後日保険会社に請求する
- 動物病院の窓口でペット保険の加入証を提示し、その場で治療費を保険金で精算する
後日保険会社に請求する場合は、保険会社所定の保険金請求書を記入し、診療明細書などの必要書類を同封した上で郵送しなければなりません。
一方窓口で精算する場合は、その場で支払うのは自己負担分の金額のみで、手続きの手間も省けます。ただし、対応している商品はさほど多くありません。
4.ペット保険の申込方法
ペット保険の申込方法は、以下の3通りがあります。
- ペット保険を取り扱う保険会社のホームページから直接申し込む
- 保険代理店経由で申し込む
- ペットショップで動物購入と同時に申し込む
さまざまな商品の中から比較・検討したい場合には保険代理店経由で申し込みましょう。
ある程度加入したい内容が決まっており、自分の都合の良いタイミングで手続きしたい人はインターネット経由で申し込むのがおすすめです。
ペットショップで加入すると、動物購入と同時に補償がスタートするため安心感を得られるでしょう。ただし、商品の選択肢が少なく、最適な保険に加入できるとは限らないので、基本的には他の方法で申し込む方が無難です。
まとめ
ペットは人間と違って公的補償がない分、治療費が高額になることも少なくありません。犬や猫と長く安心した暮らしを送るために、ペット保険に加入する必要性は高いといえるでしょう。
ただし、経済的な余力がある方など、人によってはペット保険が必要でないケースもあるため、家計やペットの健康状態、年齢などを総合的に考慮して加入を検討する必要があります。
ペット保険は費用を気にせず気兼ねなく病院に連れて行けるほか、治療の選択肢も増やせるメリットがあります。ペット保険を選定する際は保険料だけではなく、商品の補償割合や支払い限度額、自身の現在の貯蓄額などを加味しながら検討しましょう。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP