ただし、変額保険とは、契約者が支払った保険料を保険会社が運用し、その実績によって満期保険金や解約返戻金、死亡保険金が増減する保険のことです。自身に万が一のことがあったときのことを考え、加入を検討している方もいるでしょう。
ただし、変額保険にはさまざまなメリットがありますが、注意しなければならない点もあります。変額保険へ加入する前に、保険の特徴をしっかり把握する必要があるでしょう。
本記事では、変額保険のメリットやデメリット、変額保険以外の資金形成の方法について解説します。将来のために資金形成を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
変額保険における4つのメリット
変額保険に加入した場合、以下のようなメリットがあります。
- インフレ対策になる
- 運用実績によっては受取金額が増える
- 保険金に最低保証がある
- 生命保険料控除が適用される
ここでは、それぞれのメリットを詳しく解説します。変額保険への加入を検討する方は、目を通してみてください。
1.インフレ対策になる
変額保険は、インフレ対策になる金融商品だとされています。インフレにより物価が上昇すると、企業の利益が出やすくなり、運用実績が上がる傾向にあります。そのため、インフレが起こると、受け取れる満期保険金や解約返戻金、死亡保険金の受け取り額が増加しやすくなるのです。
一方、一般的な定額保険商品の場合、受け取れる保険金の金額は契約時に決まっています。インフレが起こると保険商品の資産価値が下がってしまい、相対的に見ると受け取れる保険金が減るかもしれません。
「将来インフレになる可能性が高い」「インフレのリスクに備えたい」と考えているのであれば、変額保険で資産形成をするのも一つの手段でしょう。
2.運用実績によっては受取金額が増える
変額保険は、契約者が支払った保険料を保険会社が特別勘定で運用する、投資性のある保険商品です。保険会社の運用次第で解約返戻金や保険金の金額が変動する仕組みとなっており、運用実績が良好な場合は受け取り金額が増加します。
また、変額保険は、保険会社が長期運用することを前提とした商品です。2、3年程度の短期間では値動きが大きくなりがちですが、長期運用することで収益率が安定し、成果に期待できるようになります。
さらに、変額保険は、価格が変動する金融商品を定期的に同じ金額で購入し続ける「ドル・コスト平均法」という投資手法で行われます。購入単価を一定にできるため、高値掴みなどのリスクを回避できるというメリットもあります。
3.保険金に最低保証がある
変額保険は保険会社の運用実績によって受け取り金額が増減するのが特徴ですが、死亡保険金には最低保証があります。変額保険の契約者が死亡した場合、基本保険金と変動保険金を受け取ることとなっています。
この基本保険金の金額は、企業の運用実績にかかわらず保証される仕組みになっており、変動保険金がマイナスになった場合でも受け取ることが可能です。つまり、支払った保険料よりも保険金額が少なくなることはありません。
もちろん運用実績が良好だった場合は保険金がプラスになり、受け取れる金額が大きくなります。
ただし、変動保険を解約した際に発生する解約返戻金には、最低保証がないため注意が必要です。また、有期型の変動保険の場合、満期になると「満期保険金」が発生しますが、こちらにも最低保証はありません。
したがって、解約返戻金と満期保険金は、支払った保険料に対して受取金額がプラスになる場合もあれば、マイナスになる場合もあります。
4.生命保険料控除が適用される
変額保険で支払った保険料は、生命保険料控除の対象となります。年末調整や確定申告時に申告をすれば、支払った保険料に応じて一定金額が所得から控除され、税金が安くなる仕組みとなっています。控除額は所得税で最大4万円、住民税で最大2万8千円です。
ただし、保険料を一時払いした場合、生命保険料控除の対象となるのは保険料を支払った年度のみです。翌年度以降は控除手続きができなくなるため注意が必要です。
所得税・住民税それぞれの生命保険料控除額の計算式は、以下の通りです。
【所得税の場合】
年間の払込保険料 | 所得税の控除額 |
20,000円以下 | 払込保険料全額 |
20,000円超~40,000円以下 | 払込保険料×1/2+10,000円 |
40,000円超~80,000円以下 | 払込保険料×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
【住民税の場合】
年間の払込保険料 | 住民税の控除額 |
12,000円以下 | 払込保険料全額 |
12,000円超~32,000円以下 | 払込保険料×1/2+6,000円 |
32,000円超~56,000円以下 | 払込保険料×1/4+14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
変額保険における4つのデメリット
先述の通りさまざまなメリットがある変額保険ですが、一方で以下のようなデメリットも存在します。
- 手数料がかかる
- 早期解約すると払込保険料を下回る
- 元本割れのリスクがある
- デフレに弱い
ここからは、変額保険におけるデメリットを解説します。どのようなデメリットがあるのかを把握した上で、変額保険への加入を検討してみてください。
1.手数料がかかる
運用実績に応じて給付額が変動する変額保険は、「特別勘定」という方法で運用・管理が行われます。この特別勘定は運用を保険会社に任せる代わりに、特別勘定ごとに一定の手数料がかかります。ただし、特別勘定をその他の特別勘定に変更した場合の「スイッチング手数料」は控除されるケースもあります。
また、変額保険では、以下のような手数料も発生します。
手数料 | 詳細 |
資産運用関連費用 | 信託報酬、信託事務関連の費用など |
契約関連費用 | 契約時の初期費用、契約維持・管理のための費用など |
解約控除 | 契約日から一定期間の解約の際に差し引かれる手数料 |
これらの手数料は、積み立てた金額や保険料から控除されます。定額保険商品などに比べるとコストがかかる上、利回りにも影響することが変額保険のデメリットといえるでしょう。
2.早期解約すると払込保険料を下回る
他の生命保険商品と同様に、変額保険を早期解約すると解約返戻金が払込保険料を下回るケースがあります。加えて、新しく保険を契約した場合、事務手続きの費用や審査のコストなど、さまざまな初期費用も発生しています。
これらのコストは契約者が支払う月々の保険料から回収されていますが、契約者が保険を早期に解約した場合は初期費用が回収できなくなってしまいます。
そのため、保険が早期解約された場合は、積み立てた保険料から未回収の費用を控除した金額を「解約返戻金」として契約者に返還する仕組みになっています。よって、変額保険契約後すぐに解約した場合は、解約返戻金が少なかったり、払込保険料を下回ったりするリスクがあるのです。
変額保険の解約を検討している場合は、解約返戻率や解約返戻金の金額を確認するとよいでしょう。
3.元本割れのリスクがある
変額保険のデメリットの一つとして、保険金額が元本割れしてしまうリスクが挙げられます。元本割れとは、金融商品の価格が当初投じた購入金額を下回ることを指します。先述したように、変額保険の保険金は、保険会社の運用実績によって変動します。
また、死亡保険金には最低保証がありますが、満期保険金と解約返戻金には最低保証が一切ありません。もし運用が失敗し、マイナスのタイミングで満期もしくは解約を迎えた場合、払込保険料よりも満期保険金や解約返戻金の金額が低くなる恐れがあるのです。
また、変動保険を短期間で解約すると、元本割れを起こす可能性が高まるとされています。変額保険は長期運用を前提とした商品であるため、契約前に保険料を支払い続けられるか確認する必要があるでしょう。
4.デフレに弱い
変額保険のデメリットの一つとして、保険金額が元本割れしてしまうリスクが挙げられます。元本割れとは、金融商品の価格が当初投じた購入金額を下回ることを指します。先述したように、変額保険の保険金額は保険会社の運用実績によって大きく変動します。
また、死亡保険金には最低保証がありますが、満期保険金と解約返戻金には最低保証が一切ありません。もし運用が失敗し、マイナスのタイミングで満期もしくは解約を迎えた場合、払込保険料よりも満期保険金や解約返戻金の金額が低くなる恐れがあるのです。
また、変動保険を短期間で解約すると元本割れを起こす可能性が高まるとされています。変額保険は長期運用を前提とした商品であるため、契約前に保険料を支払い続けられるか確認する必要があるでしょう。
変額保険以外で備える資産形成の方法
資産形成には、変額保険以外にもいくつかの方法があります。
- 少額投資非課税制度(NISA)
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)
- 財産形成貯蓄制度
- 通常の貯蓄
それぞれの方法について詳して見ていきましょう。
方法1:少額投資非課税制度(NISA)
少額投資非課税制度(NISA)とは、NISA口座(非課税口座)内で一定金額の範囲内で金融商品を購入した場合、商品から得られる運用益に税金がかからなくなる制度です。通常、投資信託や株式などの金融商品から利益を得た場合、配当に対して約20%の税金がかかります。
しかし、NISAでは、通常であれば税金で引かれる利益をそのまま資産にできるため、より多くの収益に期待できます。また、非課税所得となることにより確定申告の必要がないのも特徴です。ただし、NISA口座は1人1口座しか開設できず、利用できる金融機関も1つのみである点には注意が必要です。
なお、NISAには未成年が利用できる「ジュニアNISA」、成年が利用できる「一般NISA」「つみたてNISA」の3種類がありますが、ジュニアNISAについては新規の口座開設が2024年以降できないので注意しましょう。
非課税保有期間 | 年間非課税枠 | 買い付け方法 | 払出し制限 | |
一般NISA | 最大5年 | 120万円 | 通常の買付け・積立投資 | なし |
つみたてNISA | 最大20年 | 40万円 | 積立投資のみ | なし |
ジュニアNISA | 最大5年 | 80万円 | 通常の買付け・積立投資 | あり |
また、2023年時点の情報として、2024年以降から新しいNISAが導入される予定です。非課税保有期間が無期となったり、年間投資枠が拡大されたりする予定であるため、これから資産運用しようと検討している人は、選択肢の一つにしてもよいでしょう。
方法2:個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人型確定拠出年金(iDeCo)とは、加入者が選んだ金融商品で設定した金額を運用し、資産を形成する制度です。加入は20歳以上から60歳未満の人なら基本的に誰でも加入でき、60歳になるまでは掛金を引き出せません。運用成績や拠出した掛金の合計額などによって、受取金額が1人ひとり異なるのもiDeCoの特徴です。
iDeCoでは掛金全額が所得控除の対象となっているため、積立期間中は住民税と所得税が軽減されます。また、投資信託や預貯金の利息などの運用益には税金が課されますが、iDeCoを通じて得た利益には税金が全くかかりません。税金として差し引かれた分も運用資産に回せるため、有利な運用が可能になります。
iDeCoで得た資産は、一時金か年金で受け取ることができます。一時金で受け取る場合は「退職所得控除」が、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」が適用されるため、税負担が軽くなります。
方法3:財産形成貯蓄制度
財産形成貯蓄制度とは、賃金控除(給与からの天引き)によって貯蓄を行う制度です。財産形成貯蓄には「一般財形貯蓄」「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」の3種類があり、会社は天引きした給与の一部を提携している金融機関に払い込みます。
会社を通じて毎月一定額を金融機関に積み立てられるため、確実に貯蓄ができるのが特徴です。
方法4:通常の貯蓄
通常の貯蓄でも死亡・高度障害に備えることは可能です。ただし、通常の貯蓄の場合、いつ・どのくらいの金額を貯蓄する、貯蓄の引き出しが自由に行えてしまいます。
お金が強制的に貯蓄に回り、簡単にお金を引き出せないといった強制力がないため、人によってはなかなか貯蓄がうまくいかないこともあるでしょう。確実に資産形成を行うには、強制力のある貯蓄制度を活用する方がよいかもしれません。
まとめ
変額保険は、保険会社の運用実績によって受取金額が増減する投資性の保険商品です。運用実績が悪化した場合に解約返戻金や満期保険金が元本割れしてしまったり、デフレや株式の急落などに弱かったりといったリスクはあります。
一方で、死亡保険金には最低保証が定められており、インフレに強く運用実績によっては受取金額が増えるというメリットもあります。
このように変額保険にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、両方をきちんと理解した上で契約を検討することが重要です。また、変額保険以外にも資産形成の方法はいくつかあるため、他の方法も検討するとよいでしょう。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP