医療保険と健康保険の違いとは? 必要性や選び方について解説

医療保険

日本においては公的医療保障制度が手厚く、日本人であれば何らかの公的な健康保険に加入しています。それでもさらに手厚い保障を受けるため民間の医療保険に加入する人もいます。

この記事では、民間の医療保険に興味のある方向けに、医療保険と健康保険の違い、医療保険の必要性や選び方について解説します。

健康保険とは

健康保険とは国民が加入できる公的健康保険のことで、日本では国民が何らかの公的健康保険に加入する皆保険制度を採用しています。

日本では、健康保険に加入して保険料を払えば、窓口負担が3割になるなど安心して治療を受けられる環境がととのっています。国民皆保険制度は当たり前のことではなく、世界には採用されていない国もあります。日本で国民皆保険制度が導入されたのは1961年です。

健康保険は、大きく2つに分類されます。

➀勤務先を通して加入する健康保険

労働者が勤務先を通して加入する健康保険です。組合健康保険、協会けんぽ、船員保険、共済保険などがあります。

②国民健康保険

会社員ではない自営業者やその家族の主婦や学生などが加入するのが、国民健康保険です。

健康保険の保障とは

健康保険にはさまざまな保障がありますが、健康保険の種類により保障が異なります。

勤務先を通して加入する「健康保険」の保障

会社員や公務員が加入する健康保険の保障は

  • 治療費の3割を自己負担
  • 高額療養費
  • 出産育児一時金(42万円)
  • 傷病手当金
  • 出産手当金
  • 埋葬費

などで手厚いものになります。保険料も半分は勤務先が負担することになっています。

扶養家族は保険料を加算されずに一定の保障を受けられます。

「国民健康保険」による保障

自営業者やその配偶者が加入する国民健康保険の保障は

  • 治療費の3割を自己負担
  • 高額療養費
  • 出産育児一時金(42万円)
  • 埋葬費

などです。

自営業者やその家族が加入する国民健康保険では、傷病手当金と出産手当金がありません。

なお会社との折半による支払ではなく全額が個人負担、また扶養家族が加入するには保険料を払う必要があります。

傷病手当とは

病気やケガのため連続して4日以上働けなくなったときに、公的医療保険による保障として最長で1年6ヵ月まで手当金が給与の3分の2相当給付される制度のことです。長期の入院などの際に備えられます。その意味で会社員の方よりも自営業者の方のほうが民間の医療保険の必要度が高いといえるでしょう。

高額療養費制度とは

病気やケガで入院するときは、公的な医療保険が利用でき、70歳未満だと自己負担額は3割となります。このほかに高額療養制度が利用できます。高額医療制度とは、1ヵ月の医療費(薬局も含む)で上限額を超えた場合に、超えた額を支給する制度です。上限額は、年齢や所得に応じて定められています。このとき入院時の食費負担や差額ベッド代等は含まれません。

69歳以下の上限額は

適用区分 ひと月ごとの上限額(世帯ごと)
ア)年収約1,160万円〜 252,600+(医療費-842,000)×1%
イ)年収約770〜約1,160万円 167,400+(医療費-558,000)×1%
ウ)年収約370〜約770万円 80,100+(医療費-267,000)×1%
エ)〜年収約370万円 57,600円
オ)住民税非課税者 35,400円

となります。

さらに、過去12ヵ月以内に3回以上の高額療養費が支払われていた場合、4回目以降は多数該当として、さらに医療費が安くなり以下の限度額になります。

適用区分 4回目以降の自己負担限度額
ア)年収約1,160万円〜 140,100円
イ)年収約770〜約1,160万円 93,000円
ウ)年収約370〜約770万円 44,400円
エ)〜年収約370万円 44,400円
オ)住民税非課税者 24,600円

民間の医療保険とは

民間の医療保険とは将来のケガや病気に備える民間の保険会社が取り扱っています。いろいろな種類がありますが、最適な医療保険を選ぶには正しい知識が必要です。

ここでは、民間の医療保険について解説します。

民間の医療保険は公的な医療保険制度をカバーするもの

日本は国民皆保険制度を採用しているため、病気やケガをした場合に健康保険の保障を受けられます。

健康保険の保障だけでも手厚いのですが、差額ベッド代や高額医療費など健康保険で保障されないケースがあります。また、治療や入院に付随してかかる費用、例えば通院交通費や日用品にかかる費用などは自己負担です。

このような健康保険で保障されない費用をカバーするには、医療保険に加入する必要があります。

民間の医療保険の種類

医療保険を細かく分類すると、以下の4つに分けられます。

①終身医療保険

生涯にわたって保障される医療保険です。加入しておくと老後の医療費について心配しなくてすみます。高齢になるほど保険料は上がりますが、加入したときの保険料が固定されます。若いうちに加入しておくと保険料を低く抑えることが可能です。

②定期医療保険

保障が必要な一定期間だけ加入する医療保険です。定期的な見直しをすることができ、人生設計の変更や物価変動などの経済動向などに対応できます。同じ保障を受けられる終身医療保険と比べると、保障期間が限定されているため保険料が割安です。ただし、更新する場合はその時点の年齢で加入という扱いになり、保険料は高くなります。

③女性保険

一般的な病気やケガの医療費だけでなく、女性特有の病気(乳がんや子宮筋腫、子宮がんなど)の医療費の保障を受けられる医療保険です。また、出産に関係のある手術(帝王切開や異常分娩など)も保障対象となる商品があります。

④引受基準緩和型保険

加入者に持病があっても加入しやすい医療保険です。引受基準緩和型保険は持病を理由に医療保険をあきらめていた人のために加入条件を緩和しています

⑤その他

医療保険が入院や手術に対して給付金が支払われるのに対して、就業不能保険は、病気やケガで長期間働けない状態の収入補填の意味合いで保険金が支払われます。医療保険ではないですが、治療が長期化する病気やケガのリスクに備えた商品ではあります。

就業不能保険について詳細は知りたい方は以下を確認ください。

なお医療保険の種類全般について知りたい方は以下の記事をご確認ください。

民間の医療保険の保障とは

医療保険には、基本保障と特約による保障があります。

基本保障

医療保険には、2つの基本保障があります。

➀入院給付金

入院したときに支給される金額を1日あたり5,000~10,000円というように契約時に決めることができます。ただし、入院給付金の日数のカウント方法は商品により異なり、「初日から」「2日目から」「一定期間経過後から」などさまざまです。最近では入院初日から給付される商品が多いです。

②手術給付金

手術した場合に1回あたりいくらという形で支払われる給付金です。金額の決定方法は商品ごとに異なり、一律に1回いくらというケースもあれば、給付倍率が手術の種類により異なるケースもあります。

特約による保障

医療保険には、以下のような特約があります。

①通院特約

入院して治療が終わっても退院後に治療のため通院する必要がある場合、通院給付金が支給されます。

②先進医療特約

一般の治療水準を超えた技術による治療(先進医療)を受けた場合にかかる医療費のうち、健康保険でカバーできない先進医療技術料の自己負担額を保障する特約です。医療保険の基本保障に付加しておくと、自己負担を軽減できます。

ただし、先進医療であるかどうかは厚生労働省により認定されます。

③女性疾病入院特約

女性特有の病気(乳がんや子宮筋腫など)は健康保険で保障されますが、入院給付金や入院日数には上限があります。上限を超過した場合に、上乗せして保障してくれるのが女性疾病入院特約です。

④生活習慣病特約

契約で定められた生活習慣病(糖尿病、高血圧、脳卒中など)で入院した場合、健康保険で入院給付金は支払われます。ただし、入院給付金や保障される入院限度日数には上限があるため、生活習慣病特約を付加しておくと上乗せ分の保障を受けられます。

⑤三大疾病特約

悪性新生物、急性心筋梗塞、脳卒中などの三大疾病のいずれかの診断を受けた場合に給付金を受け取れる特約です。受け取れる給付金には、診断給付金や入院給付金、入院一時金などがあります。

特約についてもっと知りたい方は以下の記事を参照ください。

ケガや病気で入院するとどんな費用がかかる?

医療保険について検討する場合、ケガや病気で入院するとどんな費用がかかるかを知っておくことは大切です。ケガや病気で入院した場合にかかる費用は、以下の4つに分類されます。

入院するとかかる費用

入院すると、以下の費用がかかります。

・入院治療費

診療費、入院料、投薬料、注射料、処置・手術料、検査料などがかかりますが、健康保険で保障される入院治療費なら自己負担は3割です。

・食事療養費

入院中の食事にかかる費用で、1食あたり上限460円の自己負担です。

 

状況や希望によって追加でかかる費用

入院すると状況によっては以下の費用がさらに追加でかかります。

・差額ベッド代

入院する場合でも、大部屋ではなく個室や少人数の部屋で治療に専念したい場合もあるでしょう。そのような場合には差額ベッド代を払えば利用できますが、全額自己負担です。

厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」によると、大部屋以外の個室や少人数の病室の差額ベッド代は次のとおりです。

1日あたり平均徴収額(推計)
1人室 7,837円
2人室 3,119円
3人室 2,798円
4人室 2,440円
(平成29年7月1日現在)

・先進医療技術料や交通費

通常の治療とは異なる先進医療を受けるには先進医療技術料を支払いますが、全額自己負担になります。先進医療を受けられる病院は数が少なく、自宅から遠い病院へ通う場合は通院交通費がかかります。

・自由診療費

健康保険の保障対象外の治療は自由診療扱いになり、全額自己負担です。例えば、日本国内で承認されていない薬剤を使用した治療は、自由診療の対象になります。

入院すると付随してかかる費用

入院するとかかる費用以外に、以下のような費用が付随してかかります。

・日用品の購入費用

入院中に生活するための費用や娯楽費用がかかります。例えば、雑誌、新聞、テレビカード代、シーツ交換にかかる費用などです。

・家庭をサポートするための費用

子供が小さかったり、介護が必要な家族がいたりする場合、サポートしてくれる民間サービスを利用する費用がかかります。

・家族が付き添うのにかかる費用

入院期間が長期になると、家族が付き添うため自宅から通院する交通費も金額が大きくなります。

・収入減少への備え

入院期間中は仕事ができないので収入がなくなったり、減少したりします。備えのお金を準備しておく必要があります。

退院後に通院する場合にかかる費用

入院中だけでなく退院後も通院して治療する場合、以下のような費用がかかります。

  • 通院治療費や薬代
  • 通院交通費
  • 通院のため家族のサポートにかかる費用

医療技術の進歩による入院期間の短縮や通院治療の一般化にあわせて、通院にかかる費用を補填するために、最近の医療保険では、主契約や特約で通院を保障する保険が増えています。

医療保険と健康保険の違い

ここでは、民間の医療保険と健康保険の違いを「加入資格」「保険料」「給付」の面から解説します。

(1)加入資格

日本は国民皆保険を採用しているため、日本国民は健康保険に加入する義務があります。

これに対して、民間の医療保険は加入するのは任意であり、加入したい人だけ申し込めます。ただし、審査があるので、加入条件を満たしていなければ加入できない可能性があります。例えば、何らかの持病があるケースです。

(2)保険料

健康保険の保険料は前年度の所得で決まりますが、医療保険の保険料は所得とは関係なく保険会社の定める条件で決まります。保険料を決定する条件は、年齢や性別、健康状態、保障内容などです。

(3)給付

健康保険は病院で治療を受けた場合、請求された費用の3割を自己負担します。

これに対して、医療保険はかかった医療費のうち契約に定められた内容に従って給付金を受け取れます。ただし、給付金を受け取るには所定の請求手続きをしなくてはなりません。

公的な健康保険と民間の医療保険には違いがあり、それぞれの役割があります。健康保険で保障されないリスクに対して、自分が必要性を感じるのであれば、民間の医療保険でカバーするという選択肢もあります。

医療保険の選び方のポイント

公的な健康保険と民間の医療保険には違いがあり、健康保険だけでは足りない部分をカバーするため医療保険を選ぶことが大切です。ただし、医療保険にはさまざまな種類・商品・特約があり、どのように選べばいいか迷ってしまいます。

ここでは、初心者のために医療保険の選び方のポイントを解説します。

検討するタイミングと自分の状況・環境の把握

医療保険の必要性やどういった保障が必要となるかは、万人に共通する正解があるわけではありません。その人が置かれている環境によって異なります。

具体的には

  • 年齢
  • 家族構成(独身か既婚か)
  • 職業(会社員・公務員か自営業かどうか。自営業者は公的医療保険制度による保証がうすいため)
  • 貯金の有無
  • 保険などでの保障を重要と考えるかどうか

などです。

「結婚・出産したとき」「住宅ローンを組んだとき」「起業や転職など働き方が変わったとき」「子どもが独立して扶養家族が減ったとき」など、ライフステージ別で必要な保険やその内容も変わります。

公的医療保険制度を知り、医療費のリスクは貯金で備える方法も検討する

高額療養費制度もあるため、年収約370〜約770万円であれば月々の保険料の上限は85,000円程度になります(先進医療などは除く)。仮に1年間治療が続いたとすると約100万円となります。会社員・公務員であれば傷病手当金によってそれまでの収入の3分の2を通算1年6ヶ月までは需給できます。

リスクとなる金額の規模を考えると貯金や資産形成によって備える方法もありますし、そのほうが合理的という考え方もあります。

保険に入る場合は手厚い保障は保険料も高額であると心得る

手厚い保険を選ぶと状況によっては、保険料が日々の家計を圧迫することも考えられるでしょう。保険料で生活苦にならないよう、保険料が安く必要最低限の保障を備えた保険を選択したいものです。

保険コンサルタントの後田亨氏は、保険料の目安は家計への影響を最小限にするという意味でも「手取り収入の1% 」程度を推奨しています 。基本給と残業代込みで手取りが20万円の人なら、月あたりの保険料は2,000円程度にするというのが目安です。一方で、保険をセールスをする立場の人は保険料を年収の5%程度と推奨することも多いようです。

自分なりの考えをもち納得して契約有無を決めましょう。

 

まとめ

公的医療保険制度である健康保険と民間の医療保険には違いがあります。まずは公的な医療保険による保障内容を理解した上で、自分や家族にとっての必要性を考えましょう。病気やケガで入院した場合に健康保険で基本的な保障を受けられますが、カバーできない部分を補完するのが医療保険の役割です。自分の貯蓄と必要な保障のバランスを考えて、最適な医療保険を選択するのをおすすめします。

オカネノホンネ編集部

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