死亡保険金は一時金と年金、どちらで受け取るのが得?かかる税金や手続きの違いを解説

保険全般

生命保険のなかには、死亡保険金の受け取り方を一時金と年金の2種類から選べる商品があります。しかし、どちらで受け取るのが得なのか、悩む人も多いのではないでしょうか。特に税金面の仕組みは複雑で、わかりにくいと感じる人もいるでしょう。

そこで本記事では、それぞれの受け取り方を比較して紹介します。

死亡保険金は一時金・年金どちらで受け取るのが得?

死亡保険金の受取方法は「一時金受取」と「年金受取」の2つがあります。しかし、どちらが得かは一概にいえません。一時金受取と年金受取では、受取金額や手続き方法、課税方法に大きな違いがあり、さらに個々の状況によっても有利な方法は異なります。

また、一時金と年金を組み合わせて受け取ることが可能な場合もあります。例えば、必要なまとまったお金を一時金で受け取り、残りを年金形式で毎月分割して受け取ることも可能です。

そのため、必要に応じてシミュレーションを行い、自分にとってどの方法が有利になるかを判断する必要があります。

死亡保険金の受取金額

死亡保険金は、受取方法によって受取金額や活用方法に違いがあります。ここからは、それぞれの特徴についてみていきましょう。

一時金受取の場合

一時金受取は、一度にまとまったお金を受け取れる方法です。例えば、被保険者が死亡するタイミングが子どもの進学時期と重なった場合など、まとまった資金が必要なケースでは便利といえます。

一方で、大きな金額が一度に手に入るので、無計画に使うと将来必要な生活資金が不足してしまうリスクがあります。

年金受取の場合

年金受取は、死亡保険金を定期的に分割して受け取る方法です。年金受取の場合、基本的に一時金受取よりも、受取総額が多くなります。これは年金受取の場合、保険金の支払期間中に保険会社が運用して増える分も考慮して、支払い金額が決まるからです。

また、分割して受け取るため、日々の生活費や毎月の支出に充てやすく、計画的に利用できるメリットがあります。

死亡保険金の受取手続き

死亡保険金の受取手続きは、一時金で受け取る場合と年金形式で受け取る場合で異なります。それぞれにかかる税金や手続きの流れを理解し、期限内に適切に対応することが重要です。

一時金受取の場合

一時金受取の場合には保険金を一括で受け取るため、手続きがシンプルです。

死亡保険金の受取事由発生後、まずは保険会社に連絡します。その後、保険会社から送付される死亡保険金請求書を記入し、被保険者の住民票や死亡診断書、受取人の戸籍抄本・印鑑証明などを添付して、保険会社に送付します。

特に不備がなければ、必要書類が保険会社に到着した日の翌日から5営業日以内に保険金が支払われるケースが一般的です。

一時金で受け取った場合、所得税・住民税や相続税、贈与税が課せられる可能性があります。

所得税・住民税 2月16日~3月15日までに確定申告を行う必要がある
相続税 被相続人が死亡したことを知った日(被相続人の死亡日)の翌日~10ヶ月以内に申告する必要がある
贈与税 贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日までに申告する必要がある

しかし、一時金の受け取りは1回で完了するため、申告手続きも原則1回のみです。

年金受取の場合

年金受取の場合も、保険会社への請求手続きは一時金で受け取る場合とほとんど変わりません。保険会社に死亡保険金請求書や必要書類を送付後、指定した口座に年金が支払われます。両方の受取方法を選択できる場合は、死亡保険金請求書で一時金受取または年金受取を指定するケースが一般的です。

年金で受け取る場合、死亡時には相続税や贈与税、毎年の年金受取時には所得税・住民税がかかります。申告期限は先述した通りですが、年金形式で保険金を受け取る場合、所得税は源泉徴収されるため、基本的に確定申告は不要です。

死亡保険金を受け取った場合の課税関係

受け取った死亡保険金にかかる税金は、契約者・被保険者・保険金受取人の関係性や、一時金と年金のどちらで受け取るかによって異なります。

契約者 被保険者 受取人 一時金受取 年金受取
死亡時 毎年の年金受取時
A A B 相続税 相続税 所得税(雑所得)・住民税
A B A 所得税(一時所得)・住民税 所得税(雑所得)・住民税
A B C 贈与税 贈与税 所得税(雑所得)・住民税

契約者・被保険者が同一の場合

夫が自分を被保険者として契約し、保険金の受取人を妻に設定しているようなケースでは、一時金で受け取ると相続税が課されます。また、年金形式の場合は死亡時に「相続税」、その後年金を受給する際に所得税(雑所得)・住民税が課税されます。

一時金受取の場合

死亡保険金を一時金で受け取る場合は、原則として支払事由の発生した年度に相続税が課税され、課税関係は終了します。

受取人が相続人である場合、相続税がかかる部分については「500万円×法定相続人の数」の非課税枠の適用を受けることが可能です。

例えば、法定相続人が2人いる状態で、1,000万円の死亡保険金を受け取った場合、500万円×2=1,000万円が非課税になるため、相続税は発生しません。

年金受取の場合

死亡保険金を年金形式で受け取る場合は、まず相続発生時に年金受給権を評価して相続税が課税されます。

以下3つのうち、いずれか多い額が年金受給権の評価額です。

  • 解約返戻金の金額
  • 一時金の給付を受けられる場合は一時金の金額
  • 予定利率等をもとに算出した金額

次に、毎年年金を受け取る際に、その年金を非課税部分(年金受給権に相当する部分)と課税部分に振り分けたうえで、所得税(雑所得)・住民税が課税されます。つまり、相続税や贈与税の課税対象になった部分は、重複して課税されないということです。

年金給付初年度は非課税ですが、2年目以降は課税部分が段階的に増加していきます。

具体的な計算方法については、国税庁のHP(No.1620 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係)を参考にするか、最寄りの税務署に相談してみてください。

契約者・受取人が同一の場合

夫が契約者で受取人も夫に設定されているようなケースでは、所得税や住民税が課税されます。

ただし、一時金受取の場合は「一時所得」、年金受取の場合は「雑所得」として取り扱うため、計算方法が異なります。

一時金受取の場合

契約者・受取人が同一のケースで、死亡保険金を一時金で受け取った場合は「一時所得」の対象です。

一時所得は以下のように計算します。

一時所得=受け取った死亡保険金額―支払った保険料の総額―特別控除額(50万円)

「一時所得×1/2」の金額を、給与所得や不動産所得など他の所得と合計して、納税額を計算します。

年金受取の場合

契約者・受取人が同一のケースで、死亡保険金を年金で受け取った場合は「公的年金等以外の雑所得」として扱います。

雑所得の計算方法は以下の通りです。

雑所得=その年に受け取る年金額―その年に受け取る年金額に対応する払込保険料(※)

※その年の年金受け取り額×(払込保険料の総額/年金総支給見込み額)

契約者・被保険者・受取人がすべて異なる場合

夫が契約者で、妻が被保険者、子が受取人になっているようなケースでは、一時金で受け取ると贈与税が課されます。

また、年金形式の場合は、死亡時に「贈与税」、その後年金を受給する際に所得税(雑所得)および住民税が課税されます。

一時金受取の場合

死亡保険金を一時金で受け取る場合は、原則として支払事由の発生した年度に贈与税が課税され、課税関係は終了します。

贈与税には110万円の基礎控除があるため、1,000万円の死亡保険金を受け取った場合は、1,000万円-110万円=890万円が課税対象です。

年金受取の場合

死亡保険金を年金形式で受け取る場合は、年金受給権を評価して贈与税が課税されます。

以下3つのうち、いずれか多い額が年金受給権の評価額になります。

  • 解約返戻金の額
  • 一時金の給付を受けられる場合は一時金の金額
  • 予定利率等をもとに算出した金額

次に、毎年年金を受け取る際に、その年金を非課税部分(年金受給権に相当する部分)と課税部分に振り分けたうえで、所得税(雑所得)・住民税が課税されます。

まとめ

死亡保険金の受取方法には、一時金と年金の2種類があり、それぞれ受取金額や手続き方法、課税方法に大きな違いがあります。また、受取人のライフプランや家計の状況によっても、どちらの方法が適しているかは異なります。

特に課税関係は、契約者・被保険者・受取人の関係性や受取形式によって複雑になる場合があります。自分に最適な受け取り方法を知りたい場合は、税理士に相談してみましょう。

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オカネノホンネ編集部

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