変額保険はトラブルが多い保険?トラブルになりやすいといわれる背景も解説

保険全般

運用次第で受け取れる保険金や解約返戻金額を増やせる点が変額保険の魅力です。一方で、一般的な生命保険とは異なる特徴を持つがゆえに、さまざまなトラブルが生じるリスクもあります。

この記事では、変額保険にまつわるトラブルの事例やトラブルが発生する背景などを詳しく解説します。トラブルを避けるためのポイントも紹介しますので、加入する前に変額保険に対する理解を深めておきましょう。

変額保険はトラブルが多い保険?

変額保険に「トラブルが多い」というイメージを持っている人もいるかもしれません。確かに変額保険は過去に運用がうまくいかなかった事例があり、訴訟問題に発展したことがあります。しかし、現在は法整備が進み、変額保険に加入すること自体がトラブルにつながるとは限りません。

変額保険は投資性の強い商品であり、保険業法に基づき「特定保険契約」として金融商品取引法の一部が適用されています。たとえば、変額保険の勧誘に際しては、「適合性の原則」に従って行わなければなりません。これは金融商品を販売する際に、顧客の知識・経験・財産の状況や契約締結の目的を考慮し、不適切な勧誘をしないようにするルールです。違反した場合、行政処分や損害賠償請求の対象となるため、保険会社や代理店はこのルールを厳守しています。

また、高齢者への勧誘に際しては、金融庁の指針に基づき、親族の同席や複数の募集人による説明、複数回の勧誘が業界のルールとして推奨されています。このように、法規制が進んでいるため、適切な勧誘が行われれば変額保険に加入してもトラブルは起きにくいといえます。

ただし、一般的な生命保険と異なるリスクがあり、元本保証がないため、仕組みを理解せずに加入するとトラブルに発展する可能性はあるでしょう。変額保険の仕組みやリスク、手数料などについては、加入前に十分な理解を深めることが重要です。

変額保険に関するトラブル事例

変額保険の加入にあたって、どのようなトラブルが発生しているのか、独立行政法人国民生活センターに寄せられた実際の相談事例をもとに見ていきましょう。

トラブル1.リスクについて詳しい説明がなかった

変額保険に加入する際、リスクについての詳細な説明が不足していることを理由にがトラブルに発展したケースが報告されています。特に元本割れのリスクについて十分な説明がされてないケースが多いようです。変額保険は運用の成果によって解約返戻金や満期保険金が変動する保険であるため、元本割れする可能性があります。しかし、実際には「元本割れのリスクはない」「これまで損をした人はいない」といった誤解を招く説明を受け、契約してしまうことがあります。

また、変額保険を生命保険ではなく、元本保証のある定期預金と誤解して契約するケースも少なくありません。保険金を受け取るタイミングで誤解していたことに気づくことも多いようですが、その時点で契約を元に戻すことは困難です。そのため、加入前に自分自身で保険や投資に関する基礎知識を身に付けた上で、保険の内容について説明を受けるようにしましょう。

変額保険のリスクについては以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

トラブル2.契約者の意向と異なる契約した

生命保険の募集人は、保険業法に基づき顧客の意向を正しく把握し、最適な商品を提案する義務があります。この意向把握義務は、顧客のニーズを理解し、それに合った商品を提案するための重要なルールです。しかし、契約者の意向を十分に確認せずに契約を進めることで、トラブルが発生するケースがしばしば報告されています。

たとえば、定期預金を希望していた顧客に対して、外貨建て変額年金を勧めるなど、契約者の意向とは異なる商品を勧めることがあるようです。また、「保険は必要ない」「今後お金を使う予定がある」といった顧客の意向に反して契約をさせられた事例も存在します。

変額保険は保障を維持するための手数料がかかる分、一般的な金融商品よりも投資効率が悪い可能性があるため、投資だけを目的に加入するのはおすすめできません。また、解約控除があ場合合もあるため、すぐに保険を解約してお金を使う予定がある人は加入を避けるべきです。

強引に加入を勧められることがあるかもしれませんが、意向と合わない商品を勧められた場合は後悔する可能性が高いため、トラブルを避けるためにもはっきりと断るようにしましょう。

トラブル3.理解できないまま高齢者が契約した

認知能力が低下している高齢者が保障内容を十分に理解しないまま変額保険の契約をしてしまう事例も報告されています。例として、認知能力が低下していることを逆手に取り、営業担当者の口車に乗せられて複数の書類にサインをしてしまう高齢者がいるようです。

もし祖父母が意図しない契約をしていた場合や「契約内容がおかしい」などと疑問を持った場合は、クーリングオフ制度を利用できるか確認してみましょう。クーリングオフ制度とは、一定期間内であれば無条件で申し込みを撤回したり契約を解除したりできる制度です。生命保険の場合「クーリングオフに関する書面(注意喚起情報、ご契約のしおりなど)を受け取った日」または「申込日」のいずれか遅い日から8日以内に手続きをすれば、申し込みを撤回できます。

手続きの期限や手続き方法、書面に記載する内容などは保険会社によって異なる場合があるため、保険会社のホームページや「ご契約のしおり」などを確認しましょう。

変額保険がトラブルにつながりやすいワケ

変額保険は、以下のように一般的な生命保険と異なる特徴を持った商品です。そのため、変額保険のリスクや仕組みを理解しないまま加入すると、トラブルに発展する可能性があります。

ここでは、変額保険がトラブルにつながりやすい理由について解説します。

1.為替リスクや元本割れリスクがある

変額保険は、契約者から預かった保険料を株や債券などの特別勘定で運用し、その運用成果を保険金や解約返戻金に反映させる商品です。運用が不調なタイミングで保険金や解約返戻金受け取ると、払い込んだ保険料を下回る金額しか受け取れないケースもあります。このように元本割れのリスクがある点は、変額保険がトラブルになりやすい原因の一つとして考えられるでしょう。

また、外貨建ての変額保険品の場合、為替リスクも存在します。為替リスクとは、為替レートの変動によって資産価値が変動する可能性のことです。外貨建ての商品は、外貨で保険料を払い込み、外貨で保険金を受け取るため、円高が進むと円建ての保険金額が減少し、損失を招くことがあります。

保険商品に対して「安定した運用が期待できる」といったイメージを持っている人は少なくないはずです。実際に円建ての個人年金保険などでは、返戻率が100%を超える商品も多く存在します。しかし、変額保険で受け取る保険金は運用成果に左右されるため、損が出ることも珍しくありません。契約者が期待していた商品と異なると感じることで、トラブルに発展するケースもあると考えられます。

2.仕組みが複雑である

変額保険がトラブルになりやすい理由の一つとして、仕組みが複雑であることも挙げられます。

変額保険は保険と資産運用の両方の機能を兼ね備えた保険です。一般的な生命保険と比べると投資性が高い商品であるため、投資に関する知識がない場合はわかりにくく感じられることもあるでしょう。特に解約控除や保険関係費用などの手数料が多くかかる点や、複数の特別勘定を自分で選択して運用先を決めなければならない点など、投資初心者がつまずきやすいポイントがいくつかあります。

商品の仕組みを理解することが困難になり、結果として誤解や不満につながるケースがあると考えられます。

バブル直後は変額保険トラブルが多発していた

1990年台前半のバブル直後の時期には、変額保険に関するトラブルが多発していました。運用リスクに関する説明が十分になされていなかったことにより、大手生命保険会社や銀行に対して、保険料の返還や損害賠償を求める訴訟が600件以上起こされています。契約者の中には変額保険契約を理由に自ら命を絶つ人もいたという事態にまで発展し、大きな社会問題となりました。

ここでは、過去に発生した変額保険に関するトラブルの背景や現在の変額保険に関する法規制について解説します。

変額保険トラブルが発生していた背景

過去に変額保険に関するトラブルが発生していた背景には、保険会社や銀行が「相続対策」や「投資」の名目で変額保険を大量に販売していたことが挙げられます。1980年代後半のバブル経済期には、不動産価格の高騰により多くの人々が相続税の支払いに悩まされていました 。この問題に対処するために生命保険会社と銀行が販売を開始したのが「銀行ローン付き一時払い終身型変額保険」です。

この保険は、土地を担保に銀行ローンを組み、その資金で変額保険の一時払い保険料を支払う仕組みになっていました。そして土地所有者が亡くなった際には、運用によって増加した保険金でローンを返済すると同時に相続税の支払いにも対応できる 、つまり「全く元手がなくても相続税対策が可能である」ということを売り文句に高齢者をターゲットにして販売が進められてきました 。

しかし、バブルが崩壊し運用状況が悪化すると、解約返戻金が当初の一時払い保険料を大きく割り込むことになりました。その結果、相続税の支払いどころか借金の返済もままならない人が続出し、大きな訴訟問題に発展したのです。この過去に起きた大きなトラブルは、運用利益の大きさのみを強調し、リスクの説明が十分になされていなかったことによってもたらされた結果といえます。

バブル後の変額保険の見直し

バブル期の訴訟トラブルを受けて、2007年には保険業法が改正されました。変額保険のように投資性の強い保険商品に対して、金融商品取引法と同等の販売・勧誘ルールが適用されることになったのです。

具体的には、その人に合った商品を販売・勧誘すること(適合性の原則)や商品の仕組み、リスク、コストがわかるように記載した書面を交付すること(書面交付義務)などの規制が設けられました。そのため、現在は変額保険に加入する際のトラブルは、起きにくくなっているといえるでしょう。

変額保険が他の保険よりも優れているポイント

これまでの説明から「変額保険はトラブルにつながりやすい保険」というイメージを持った人もいるかもしれませんが、仕組みやリスクを理解すれば、変額保険は生活に役立つ保険です。ここでは、変額保険のほかの生命保険にはない利点について解説します。

運用次第で受け取れる金額が増える

変額保険は、特別勘定の運用成績がよければ受け取れる保険金が増える可能性があります。より多くの遺産を遺したいと考えている場合や、保障の確保とともに資産形成の手段として活用したい人に適した商品といえるでしょう。

インフレに強い

インフレとは、物価が上がることです。定額保険の場合、物価が上がっても受け取る保険金は増えないため、インフレが進んでいくと受取額は目減りしていきます。一方、変額保険は、物価の上昇に伴い企業の業績が向上すると、運用成績がよくなり、保険金が増える可能性があります。そのため、ほかの生命保険と比べるとインフレに強い側面があるといえるでしょう。

まとめ

変額保険には為替リスクや元本割れなどのリスクがあるため、支払った保険料以上の保険金や解約返戻金が受け取れる保証はありません。一般的な生命保険と比べると仕組みがやや複雑に感じられる側面もあるため、特徴をよく理解しないまま加入するとトラブルに発展する可能性があります。

しかし変額保険は、運用次第で受け取れる金額が増える点やインフレに強い点など魅力がある商品です。上手く活用するためにも、加入する際は商品の特徴やリスクについて、納得がいくまで保険会社や保険代理店の担当者に確認することをおすすめします。

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オカネノホンネ編集部

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難しいお金の話を、ファイナンシャルプランナー・ファイナンシャルプランニング技能士や保険や金融商品の専門家が忖度なし「ホンネ」でわかりやすく伝えます。

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