「家族の生活を守れるお金を遺したい」「葬儀費用の負担をかけたくない」という理由から、死亡保険を検討しているシニア世代の人もいるでしょう。なかには、シニア世代になると死亡保険に加入できないと思っている人も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、シニア世代でも死亡保険への加入は可能です。しかし、保険会社によって加入年齢や健康状態などの加入条件が異なるため、事前に確認が必要です。とはいえ、多くの保険会社のなかから自身に合った会社を探すのは一苦労でしょう。
そこで本記事では、シニア世代の死亡保険の必要性や選ぶポイント、おすすめの死亡保険を解説します。
目次
シニア世代の死亡保険はなぜ必要?
シニア世代が死亡保険に加入する主な理由として、「自身の葬儀費用を工面するため」「家族に資産を遺すため」の2つがあげられます。
以下では、それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
自身の葬儀費用を工面するため
シニア世代が死亡保険に加入する主な理由の1つは、自身の葬儀費用を確保することです。
葬儀は、亡くなった後にすぐに行われるケースが一般的です。そのため、遺族が費用を一時的に負担する可能性が高いでしょう。仮に、銀行口座に葬儀費用を用意していたとしても、預貯金の相続人が確定していなければ、預貯金を自由に引き出せません。
死亡保険に加入しておけば、受取人に対して保険金がすぐに支払われるため、葬儀費用の負担を大幅に軽減できるでしょう。また、葬儀に参列するための交通費や宿泊費にも充てられるため、遠方に住んでいる遺族にとっては費用負担の軽減につながります。
家族に資産を遺すため
死亡保険は、相続対策としても活用できます。具体的には下記の3つです。
- 死亡保険金は受取人固有の財産になる
- 死亡保険金の非課税枠を活用できる
- 相続税の納税資金を確保できる
死亡生命保険の保険金は、相続財産に含まれません。そのため、遺産分割でよくある対立によるトラブルを回避できます。また、遺留分侵害請求の対象にもならないため、被相続人が望む相続を実現できるでしょう。
死亡保険金には、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。非課税枠を活用することで、現金よりも多くの保険金を相続人に遺せるでしょう。
なお、相続税は被相続人の死亡日の翌日から、10ヶ月以内に現金で納付しなければなりません。もし、相続財産が不動産や株式などの現金化が難しい財産であれば、相続人が納税に困ってしまうでしょう。しかし、死亡保険に加入しておけば、相続人は受け取った保険金を納税資金に充てられるため、期限に間に合わない事態を避けられます。
シニア世代に待ち構える健康リスクとは
シニア世代は、若い世代と比べて病気やケガによる入院リスクが高くなります。厚生労働省「性・年齢階級別にみた受療率」によると、30~40代の入院受療率は0.2~0.3%程度であるのに対して、70~80代の受療率は1~4%と約10倍以上に跳ね上がります。
また、高齢になると入院日数が長くなる傾向にあります。厚生労働省「年齢階級別にみた退院患者の平均在院日数の年次推移」のデータから、65歳未満の世代と65歳以上の世代を比較すると、平均入院日数に大きな差が見られました。
年代 | 平均入院日数 |
0~14歳 | 8.9日 |
15~34歳 | 12.2日 |
35~64歳 | 24.4日 |
65歳以上 | 40.3日 |
入院日数が長くなるほど、医療費の負担が大きくなるため、年金だけでは生活が難しくなります。そのため、十分な貯蓄がない場合は、医療保険やがん保険に加入し、万が一の事態に備えておく必要があるでしょう。
シニア世代でも死亡保険に加入できる?
近年では、70歳以上でも加入できる死亡保険が増えており、なかには85歳まで加入可能な保険もあります。
ただし、必ずしも加入できるわけではありません。加入時に保険会社へ告知する(過去の傷病歴や現在の健康状態などを知らせる)義務があり、持病や既往症がある場合は、保険会社の審査に落ちてしまう可能性があります。
70歳以上の高齢者の場合は、生命保険協会が定める「高齢者向けの生命保険サービスに関するガイドライン」に基づいて、家族からの同意が必要となる場合があります。家族からの同意を得られない、または保障内容に対する理解が不十分だと判断された場合は、加入できません。
シニア世代が死亡保険を選ぶ際のポイント
シニア世代が死亡保険を選ぶ前には、「誰のために」「何のために」「いくら」保険が必要なのかを明確にしておくことが大切です。これから紹介するポイントを参考に考えてみてください。
自身にとって必要な保障額を把握する
死亡保険に加入する際は、必要な保障額を事前に把握しておきましょう。過剰な保障額に設定すれば、生活を圧迫することになります。そうなれば、月々の保険料の支払いが困難となり、家族に経済的な負担がかかってしまうでしょう。
こうした事態を避けるために、加入目的に応じて適切な保障額を算出することが大切です。たとえば、葬儀費用をカバーするのが目的であれば、自身の預貯金や年金、家族の収入状況を勘案し、不足分のみを保険で補うようにしましょう。
このように、目的を明確にしたうえで、必要な保険金額の商品に加入することで、家計とのバランスが取れるようになります。
自身に適した保険を選ぶ
シニア世代が死亡保険を検討する際は、「誰のために」「何のために」加入するのかを明確にしておきましょう。
たとえば、家族に迷惑をかけないように葬儀代に備えたい場合は、満期や更新がなく確実に保険金を遺せる「終身保険」をおすすめします。
一方で、熟年結婚で扶養している子どもがいる場合は、子どもが独立するまでの生活保障を確保できるように、「定期保険」に加入したほうがよいでしょう。
シニア世代におすすめの死亡保険
シニア世代が死亡保険の加入を検討する際は、加入目的や保障が必要な期間、支払える保険料などを考慮して選びましょう。
定期保険
定期保険は、一定期間のみ保障する保険です。子どもが独立するまでの生活保障として利用したい場合に向いています。また、終身保険に比べて保険料が割安なため、手ごろな保険料で手厚い保障を確保したい人にも向いています。
定期保険には、「全期型」と「更新型」の2種類があります。全期型は、契約時に設定した一定期間(例:30年間や80歳まで)が満了すると、保障が終了するタイプです。一方で、更新型は10年や20年ごとに更新を繰り返し、保障期間を延長できるタイプとなっています。
なお、シニア世代が更新型の保険に加入した場合は、一度満期を迎えると更新できない可能性が高くなります。仮に更新できたとしても、再計算によって保険料が高くなるため、シニア世代にとってはデメリットのほうが大きくなってしまうでしょう。
終身保険
終身保険は、一生涯にわたって保障が続く保険です。途中で解約しない限り、遺族へ確実に保険金を遺せます。そのため、葬儀費用を確保したい場合におすすめの保険といえるでしょう。保険料は契約時の金額に固定されるため、長期的な家計の見通しを立てやすいメリットがあります。
また、職業告知のみで加入できる商品が多く、高齢者でも加入しやすいメリットもあります。
収入や貯蓄に余裕のある人は、一時払い(一括払い)を選択することで、保険料の総額を安くできるでしょう。ただし、加入期間が短い状況で途中解約をすると、元本割れのリスクがあるので注意が必要です。
加入できるか不安な人におすすめの死亡保険
年齢を重ねるほどに、健康上の問題も増えてくるでしょう。健康状態に問題があり、通院歴や入院歴がある人は、通常の死亡保険に加入できない場合があります。
そのため、持病や既往症がある人は引受基準緩和型保険や無選択型保険など、告知項目が少ない商品を検討するようにしましょう。
引受基準緩和型保険
引受基準緩和型保険は、通常の死亡保険よりも告知項目の数が少ない保険です。3つ程度の告知項目に該当しなければ、持病や既往症がある場合でも申し込みできます。
ただし、通常の死亡保険よりも保険料が割高な点がデメリットです。また、加入から一定期間は、支払われる保険金が削減される商品もあります。
無選択型保険
無選択型保険は、契約時の告知や診査不要で加入できる保険です。そのため、持病や既往症がある場合でも、職業の告知や契約可能年齢などに問題がなければ、加入しやすくなっています。
ただし、契約から3年以内の死亡した場合は、払込保険料相当額のみ支払われるケースが多いため注意が必要です。また、引受基準緩和型保険よりも保険料が割高な傾向があるため、支払いの負担が大きくなるでしょう。
まとめ
死亡保険は、シニア世代にとって葬儀費用や相続の備えとして有効な保険です。保険会社を選ぶ際は、必要な保険金額や加入目的を明確にしたうえで検討しましょう。
シニア世代でも、申し込みが可能な死亡保険は多く存在しますが、健康上の理由で加入できない場合もあります。その際は、引受基準緩和型保険や無選択型保険など、健康状態に不安がある場合でも加入しやすい保険への加入を検討することをおすすめします。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP