20代で死亡保険や生命保険の加入を考えるとき、「本当に今必要なのか?」と迷うことがあるかもしれません。多くの若い世代は「まだ早い」と感じるかもしれませんが、実は20代でも死亡保険の必要性が高い人がいます。また、若いうちから死亡保険に加入することで得られるメリットも少なくありません。
今回の記事では、20代における死亡保険の必要性や実際の加入率、加入するメリットなどをわかりやすく解説します。おすすめの保険も紹介するので、この機会に自分に適した保険について検討してみましょう。
20代の死亡保険加入実態
死亡保険の必要性を考える前に、20代で死亡保険に加入している人は実際どのくらいいるのかについて確認しておきましょう。
死亡保険の加入率は?
生命保険文化センターの「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、20代の生命保険(死亡保険)加入率は男性46.4%、女性57.1%です。半数近くが生命保険に加入し、万が一に備えていることがわかります。
一方、他の年代と比べると加入率は低水準で、全体平均を大きく下回っています。
年代 | 生命保険加入率(男性) | 生命保険加入率(女性) |
20代 | 46.4% | 57.1% |
30代 | 81.5% | 82.8% |
40代 | 86.1% | 86.3% |
50代 | 86.9% | 87.8% |
60代 | 85.8% | 86.5% |
70代 | 72.5% | 78.8% |
全体 | 77.6% | 81.5% |
平均保険料や平均保険金額はいくら?
年代別の年間払込保険料の平均額は、以下の通りです。
年代 | 年間払込保険料(男性) | 年間払込保険料(女性) |
20代 | 11.9万円 | 9.6万円 |
30代 | 19.9万円 | 14.0万円 |
40代 | 22.4万円 | 18.6万円 |
50代 | 25.5万円 | 19.0万円 |
60代 | 21.2万円 | 15.9万円 |
70代 | 16.4万円 | 13.0万円 |
全体 | 21.5万円 | 16.6万円 |
20代が支払う保険料は他の年代と比べても低く、毎月1万円弱です。20代は収入も少ないことが多いため、できるだけ無理のない範囲で保険料を支払っている傾向があります。
また、「いくらの死亡保険に入っているか」を表す生命保険加入金額の年代別平均は、以下の通りです。
年代 | 生命保険加入金額(男性) | 生命保険加入金額(女性) |
20代 | 1,001万円 | 751万円 |
30代 | 2,065万円 | 768万円 |
40代 | 1,883万円 | 807万円 |
50代 | 1,629万円 | 737万円 |
60代 | 1,071万円 | 507万円 |
70代 | 582万円 | 395万円 |
全体 | 1,373万円 | 647万円 |
男性よりも女性の方が加入金額は高い傾向にあります。これは一般的に男性が世帯主になることが多く、家族の生活保障を目的として加入することが多くなっていることが関係していると考えられるでしょう。20代の加入金額は全体平均より低いものの、60代以降と比べると多い傾向にあります。
20代に死亡保険は必要ない?
20代にとって、死亡保険の必要性を感じることは少ないかもしれません。しかし、ライフステージや家族構成によって、重要性は変わってきます。
独身の人は基本的に必要性が低い
基本的に20代独身は、死亡保険の必要性が低いとされています。万が一の場合が発生しても、扶養する家族がおらず、遺された家族に経済的な負担をかけることが少ないためです。
とはいえ、突発的な病気やケガで働けなくなり、自身の生活が苦しくなるリスクはあります。また、万が一のことが起きたときには、両親や親族が葬儀代などを負担することになるでしょう。貯蓄に余裕がある場合を除いて、最低限の医療保険や死亡保険に加入しておくことをおすすめします。
既婚・子ありの人は家族の生活保障が必要
20代でも既婚で子どもがいる場合は、死亡保険が重要な役割を果たします。世帯主に万が一のことが起きた際に、残された家族が経済的に困窮しないよう、死亡保険に加入しておいた方がよいでしょう。
以下は、生命保険文化センターの「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」をもとに作成した、ライフステージ別の生命保険世帯加入率です。
ライフステージ | 世帯主の平均加入普通死亡保険金額 |
夫婦のみ(40歳未満) | 1,282万円 |
夫婦のみ(40〜59歳) | 1,326万円 |
末子乳児 | 1,945万円 |
末子保育園児・幼稚園児 | 1,961万円 |
末子小・中学生 | 2,093万円 |
末子高校・短大・大学生 | 1,709万円 |
末子就学終了 | 1,112万円 |
高齢夫婦有職(60歳以上) | 873万円 |
高齢夫婦無職(60歳以上) | 577万円 |
20代に限ったデータではありませんが、扶養中の子どもがいる場合は実際に死亡保障を手厚く備えていることがわかるでしょう。
20代が死亡保険に加入するメリット
20代が死亡保険に加入するメリットは、以下の通りです。
- 保険料を抑えやすい
- 加入できる商品の選択肢が多い
- 資産形成に活用できる
- 生命保険料控除のメリットが大きくなる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
保険料を抑えやすい
20代で死亡保険に加入するメリットの一つは、保険料を低く抑えられることです。
一般的に生命保険の保険料は、被保険者の年齢や性別に基づいて計算されるため、加入年齢が若いほど毎月の保険料や払込保険料の総額は安くなる傾向があります。
また、若く健康状態が良好であれば、身長・体重・血圧・尿検査等、保険会社所定の基準を満たした場合に、通常より安い保険料率(優良体料率)が適用される商品に加入することも可能です。家計への負担を減らしたい場合は、できるだけ早めに生命保険に加入した方がよいでしょう。
加入できる商品の選択肢が多い
加入できる保険商品の選択肢が多いことも、20代で保険に加入するメリットです。
生命保険に加入する際は、保険会社に過去の傷病歴や現在の健康状態を伝える「告知」をしなければなりません。告知の結果に基づいて保険会社は加入審査を行うため、健康状態に不安がある場合は加入を断られたり、通常よりも高い保険料が適用されたりすることがあります。その結果、自身が希望する保険に加入できないこともあるでしょう。
一方、20代は健康状態が比較的良好であることが多く、幅広い選択肢からライフプランや家計の状況に合った保険を選ぶことが可能です。
資産形成に活用できる
死亡保険の中には、資産形成にも活用できる「貯蓄型」の商品があります。
たとえば、終身保険は万が一の際に死亡保険金、解約した際に解約返戻金が受け取れるのが特徴です。解約返戻金は保険期間の経過とともに徐々に増えていくため、支払った保険料よりも戻ってくる解約返戻金の方が多くなる商品も少なくありません。
貯蓄型保険に若いときから加入しておけば、万が一に備えつつ、子どもの教育費用や老後資金など、将来のライフイベントに対して効率よく備えられます。
生命保険料控除のメリットが大きくなる
生命保険料控除とは、1年間に支払った保険料の総額に応じて所得から控除を受けられる制度です。上手に活用すれば、課税対象となる所得が減るため、所得税や住民税の負担軽減につながります。
20代で生命保険に加入すれば、長期間にわたって生命保険料控除を利用できるため、節税効果は大きくなるでしょう。
契約日が平成24年1月1日以降の契約における控除額は、以下の通りです。
所得税 | 住民税 | ||
年間払込保険料 | 控除される金額 | 年間払込保険料 | 控除される金額 |
20,000円以下 | 払込保険料全額 | 12,000円以下 | 払込保険料全額 |
20,000円超40,000円以下 | (払込保険料×1/2)+10,000円 | 12,000円超
32,000円以下 |
(払込保険料×1/2)+6,000円 |
40,000円超80,000円以下 | (払込保険料×1/4)+20,000円 | 32,000円超
56,000円以下 |
(払込保険料×1/4)+14,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 | 56,000円超 | 一律28,000円 |
たとえば、年間払込保険料が10万円の生命保険に25歳で加入したとしましょう。所得税・住民税の税率をともに10%とした場合、60歳までに得られる節税効果は以下の通りです。
- 所得税:4万円×10%×35年=14万円
- 住民税:2.8万円×10%×35年=9.8万円
- 合計:14万円+9.8万円=23.8万円
20代が死亡保険を選ぶときのコツ
死亡保険は「とりあえず入っておけば安心」というものではありません。20代が死亡保険を選ぶ際は、以下のポイントを押さえておくことが大切です。
- 目的に合わせて保険期間を選択する
- 必要保障額を確認する
- 無理のない保険料で加入する
計画的に加入することで、経済的な負担を最小限に抑えつつ、将来のリスクに備えられます。
目的に合わせて保険期間を選択する
死亡保険を選ぶ際には、まず自分の目的に合わせた保険期間を選択することが重要です。死亡保険には、一定期間のみ保障が続く「定期タイプ」と一生涯にわたって保障が続く「終身タイプ」の2種類があります。
たとえば、子どもの誕生などのライフイベントを見据えて、一定期間の保障を用意したい場合は定期タイプが適しています。定期保険は保険期間が限られている分、同じ保険金額であれば終身保険よりも割安な保険料で加入できるのが特徴です。そのため、特定の期間に集中して保障を確保したい場合に有効です。
一方、葬儀代の準備や資産形成を目的とする場合、終身タイプも選択肢になるでしょう。終身保険は途中で保障が途切れないため、高齢になってからのリスクもカバーできます。
必要保障額を確認する
死亡保険に加入しても保険金額が少なすぎると、いざというときに家族を十分に支えられなくなってしまいます。「必要保障額を死亡保険で賄う」というのは、死亡保険を選ぶ上で重要な考え方の一つです。
必要保障額とは、万が一の際に遺された家族が安心して生活を送るために必要な金額のことです。配偶者・子どもの生活費や住居費、教育費など遺族に必要となる支出から、遺族年金や配偶者の収入、貯蓄などの遺族が得られる収入を差し引くことで求められます。
必要保障額を求める際は、保険会社のシミュレーションツールを活用してみましょう。自分だけで確認するのが難しい場合は、お金のプロであるファイナンシャルプランナーに相談してみるのも一つの方法です。
無理のない保険料で加入する
20代で死亡保険に加入する際は、無理のない保険料で契約することも重要です。
保険料は毎月の固定支出となるため、長期にわたって支払い続けられるかどうかを考慮しなければなりません。特に20代は収入が安定していないことが多く、今後のライフイベントによる支出増加も見込まれるため、保険料が家計に過度な負担をかけないようにする必要があります。
まず自分の収入や支出を見直し、保険料に充てられる金額を明確にしましょう。20代であれば、将来収入が増えた際に保障内容や保険料を改めて見直すのも一つの手です。
20代におすすめの死亡保険3選
ここでは、特に20代におすすめの3つの死亡保険を紹介します。自分に合った商品を見つける際の参考にしてください。
SBI生命|クリック定期!Neo
SBI生命の「クリック定期!Neo」は、ネット申し込み限定の定期保険です。申込経路を限定し、解約返戻金をなくすことで、業界最安水準の保険料を実現しています。
保険期間は年満了(10年・15年・20年・25年・30年)と歳満了(55歳・60歳・65歳・70歳・75歳・80歳)から選択でき、保険金額も300万円~1億円と幅広い範囲の中から選択できるため、ライフプランに合わせて必要な保障を必要なだけ準備できるのが魅力です。
FAXによる手続きで請求日当日に保険金を受け取れる「保険金支払即日サービス」があることも、多くの人に選ばれている理由の一つです。
ライフネット生命|かぞくへの保険
ライフネット生命の「かぞくへの保険」は18歳~70歳までの人が加入できる定期保険です。申し込みはすべてネットで完結し、Web上で告知をするだけで申し込みができます。
ネット保険ならではの手頃な保険料だけでなく、ニーズに合わせて保険金額や保険期間を自由に設計できる点も特長です。
FWD生命|FWD収入保障
FWD生命の「FWD収入保障」は、被保険者に万が一のことがあった際に年金支払い期間満了まで遺族年金や高度障害年金を毎月受け取れる保険です。
この保険では、保険期間が進むにつれて年金を受け取れる回数は少なくなり、最終的な受取総額も少なくなります。しかし、一般的に子どもがいる世帯では、子どもの成長に伴い、必要な生活費や教育費も減少するため、ライフステージの変化に応じて合理的に保障を準備したい場合には役立つでしょう。
なお、喫煙の有無や血圧・BMIの数値など、FWD生命所定の健康状態の基準を満たした場合には、割安な保険料率が適用される場合もあります。
まとめ
20代で死亡保険に加入するべきか悩む方も多いかもしれませんが、既婚者や子どもがいる方は、残された家族が安心して生活できるよう死亡保険に加入しておいた方がよいでしょう。
また、若いうちから死亡保険に加入することで、保険料を抑えられるだけでなく、商品の選択肢が多くなる、生命保険料控除を最大限に活用できるといったメリットも得られます。
本記事で紹介した保険選びのポイントやおすすめの保険商品を参考にしながら、自分に合った保険を見つけましょう。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP