ドル建て保険は円安の今、解約すべき?注意点や解約のベストタイミングを解説

保険全般

ドル建て保険とは、米ドルで保険料を支払い、解約返戻金や死亡保険金なども米ドルで受け取る保険商品です。解約時の為替レートによって返戻金の額が大きく変わるため、特に円安が進んでいる現在、解約のタイミングに頭を悩ませている人も多いのではないでしょうか。

この記事では、円安のタイミングでドル建て保険を解約することのメリットやデメリット、解約のベストなタイミングについて紹介します。為替リスクを理解し、最適な解約時期を見極める際の参考にしてください。

ドル建て保険を解約するなら円安のタイミングがよい?

ドル建て保険の解約タイミングは、「円安」だけ判断しないほうが賢明です。ドル建て保険の仕組みを理解したうえで、慎重に判断する必要があります。

円安とは、円の価値がドルに対して低くなる状態です。たとえば、1ドル=140円だった為替レートが1ドル=150円になったとしましょう。これは今まで140円で1ドルと交換できたものが、150円出さなければ1ドルと交換できなくなったということを表しています。つまり、それだけ円の価値が下がり、ドルの価値が上がったことになります。一方で、円の価値がドルに対して高くなる状態が「円高」です。

多くの人が円安時に解約を検討する理由は、解約返戻金が円高時に比べて増える可能性が高いからです。

しかし、解約返戻金が多くなるからといってすぐに解約を決めると後悔する可能性があります。たとえば、ドル建て保険を解約すると当然保障もなくなるので、万が一の際に経済的なリスクが生じるかもしれません。

解約した場合にどのようなメリット・デメリットが生じるのかを確認したうえで、本当に解約すべきか判断しましょう。

円安時にドル建て保険を解約するメリット

円安時にドル建て保険を解約する大きなメリットは、解約返戻金が増える可能性があることです。ドル建て保険は、保険料を米ドルで支払って運用します。解約返戻金もドル建てなので、実際に日本円で受け取る場合には為替レートの影響を大きく受けます。

たとえば、同じ1万ドルの解約返戻金を受け取る場合、1ドル=140円のときには140万円ですが、1ドル=160円になると160万円になります。円安が進めば進むほど、同じドルを持っていても日本円での受け取り額が増えるのです。

貯蓄を主な目的としてドル建て保険に加入している場合、円安のタイミングで解約を検討するのは当然といえるでしょう。

円安時にドル建て保険を解約するデメリット

円安時に解約することにはメリットがありますが、デメリットも存在します。解約返戻金が増えるからといって無条件に解約しないようにしましょう。

契約期間によっては元本割れする

一般的に、ドル建て保険では「10年以内」など、契約してから短期間で解約すると解約控除が差し引かれます。解約控除とは、解約時に差し引かれる手数料のようなものです。契約期間が短いほど解約控除の額は大きくなっていきます。

ドル建て保険に限らず、貯蓄型の生命保険は、保険料の払い込みを終えるまで解約返戻率(払い込んだ保険料に対して受け取る解約返戻金の割合)が100%を下回る商品が多く存在します。短期で解約するとさらに解約控除が差し引かれることで、解約返戻金がごくわずかしか受け取れないこともあります。ドル建て保険にはこのような仕組みがあるため、せっかく円安で返戻金が増えたとしても元本割れになる可能性があるのです。

保障を失う

ドル建て保険は、保障と貯蓄の両方の機能を備えた商品です。そのため、解約することで、積み立てた資産の一部を受け取れる一方で、死亡保障や医療保障など、本来の保険としての機能を失います。

たとえば、ドル建ての終身保険を解約すると、自身の万が一に備えた家族の生活保障や葬儀費用の準備ができなくなります。

さらに、解約後に新しい保険に加入しようとしても、年齢が上がり保険料が高くなることで加入を検討しにくくなることもあるでしょう。また、健康状態が悪化していると、保険会社の審査に通らないことも考えられます。保障を失うことのリスクを十分に理解し、自身や家族にとって必要な保障が何かを再確認することが大切です。

今後の運用に期待できる可能性もある

円安が進んでいるからといって、すぐに解約することが最善の選択とは限りません。為替は経済状況や国際情勢によって常に変動しているので、今後さらに円安が進む可能性もあります。

また、積立利率が変動するタイプの商品では、積立利率が上昇する可能性もあるでしょう。長期的な運用を考えている場合、現在の一時的な円安に惑わされず、しばらく保有を続けることで将来の利益を最大化できるかもしれません。解約する前に、今後の運用の見通しや為替の動向についてもしっかりと考慮することが重要です。

ドル建て保険を解約するベストなタイミングは?

ドル建て保険を解約するベストタイミングは人によって異なります。しかし、以下の条件を満たした場合は、解約を検討してみてもよいでしょう。

加入当初の目的・目標を達成したとき

特定のライフイベントに備えるために、ドル建て保険に加入するケースは多くあります。解約返戻金の額が十分に増え、「子どもの進学費用」や「老後の生活資金」など、加入時に設定した目標を達成できたときは、解約を検討してもよいでしょう。

また、保障を目的に加入していた場合でも、子どもが自立したことで万が一の際の大きな保障が不要になった場合などは、解約を考えてみてもよいかもしれません。その場合、解約して得た資金を別の目的に使ったり、他の運用方法に切り替えたりすることも選択肢の一つになります。

保険料の払い込みが難しくなったとき

ドル建て保険の保険料を円で支払う場合、円安が進むと支払う保険料も高くなるので、家計への負担が大きくなることもあります。保険料の支払いで生活が苦しくなってしまう状況であれば、解約を検討せざるを得ないでしょう。

ただし、すぐに解約するのではなく、まずは「払済保険」への変更などを検討することをおすすめします。払済保険とは、保険料の払い込みを中止し、その時点での解約返戻金をもとに保障金額の少ない保険に切り替える方法です。払済保険にした場合、保障内容は減額されますが、保険期間はそのまま変わりません。

払済保険にすれば、保険料の支払いが厳しい場合でも一定の保障を残せます。さらに解約返戻金の額が払い込んだ保険料よりも少ない場合でも、期間が経過するにつれて徐々に解約返戻金が増えていくため、元本割れを防げる可能性もあるのがメリットです。

ドル建て保険を解約する際の注意点

解約時に想定外のリスクやコストが発生することを避けるためにも、以下のポイント確認しておきましょう。

為替レートが適用されるタイミングは商品ごとに異なる

ドル建て保険の解約時に適用される為替レートは、保険会社や保険商品ごとに異なります。解約手続きを行った日の為替レートが適用されるとは限らないため、想定していた返戻金が得られない可能性もあります。契約内容をよく確認し、適用される為替レートのタイミングについて事前に把握しておきましょう。

解約返戻金を受け取る際は税金や手数料がかかる

ドル建て保険の解約返戻金を受け取る際には、所得税がかかる場合があります。特に解約返戻金が払い込んだ保険料総額を上回った場合、その差額は一時所得として課税対象です。

また、解約返戻金をドルから円に両替して受け取る場合は、保険会社所定の為替手数料も発生します。

まとめ

ドル建て保険の解約は、為替レートの影響を大きく受けます。円安のときに解約すると解約返戻金が増える可能性もありますが、為替レートだけに注目して安易に解約するのは禁物です。元本割れや保障を失うリスク、税金や手数料などのコストを考慮したうえで、焦らず慎重に、最適な解約タイミングを選びましょう。

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オカネノホンネ編集部

オカネノホンネ編集部

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