投資では「複利効果を活かすことが大切」と聞いたことがある人は多いでしょう。複利とは、アインシュタインが「人類最大の発明」と呼んだもので、投資で成功するためには必ず知っておきたい知識の一つです。しかし、具体的にどのような仕組みで投資に活用できるのか、よく理解していない人も多いでしょう。
そこでこの記事では、複利効果の基本的な仕組みやメリット・デメリットを解説します。初心者の方も複利を正しく理解し、投資に役立てましょう。
目次
複利効果とは?
複利効果とは、複利の力でお金を増やしていく効果のことです。より具体的にいうと、運用で得た収益を元本に加えて再投資することで、利益が利益を生んでいく効果といえるでしょう。運用期間が長くなるほど、加速度的に(雪だるま式に)資産が増えていくとされています。
単利と複利の違い
単利とは、元本に対してのみ利息がつく方法で、利息は元本に組み込まれず、毎年同じ額が支払われます。たとえば、100万円を年利5%の単利で運用すると、毎年5万円の利息が得られ、10年後の合計利息は50万円、元本と合わせて150万円になります。
一方で、複利は元本と利息の合計に対して利息がつく方法です。毎年得た利息が翌年の元本に組み込まれるため、年を追うごとに元本が増えていきます。先述した例でいうと、年利5%の複利運用の場合、1年目の元本は100万円ですが、2年目は105万円、3年目は110万2,500円と増加します。10年後には合計で約162.9万円となり、単利よりも多くの利益を得られるのです。
このように、複利効果を活用すれば効率よくお金を増やせる可能性があります。
72の法則とは
「72の法則」を知っておくと、複利効果をより理解しやすくなるでしょう。72の法則とは、複利で運用した場合に、お金が2倍に増えるまでの期間を知るために用いられる法則です。「72÷金利=投資期間」の計算式で表すことができます。たとえば、年利4%で運用した場合、72÷4=18となり、おおよそ18年で資産が倍に増える計算です。
この法則を知っておくと、利回りが1%違うだけで資産の増え方が大きく変わることを実感できるでしょう。
複利効果のシミュレーション
複利効果を活用して運用した場合、一括投資と積立投資のそれぞれでどのように資産が増えていくのか、シミュレーションを見てみましょう。
・一括投資
元本240万円を年利5%で複利運用した場合、資産の推移は以下の通りです。
経過年数 | 資産額(元本+収益) |
5年後 | 3,063,076円 |
10年後 | 3,909,347円 |
15年後 | 4,989,428円 |
20年後 | 6,367,914円 |
・積立投資
毎月1万円を年利5%で複利運用した場合、資産の推移は以下の通りです。
経過年数 | 資産額(元本+収益) |
5年後 | 678,137円 |
10年後 | 1,543,632円 |
15年後 | 2,648,246円 |
20年後 | 4,058,045円 |
どちらも最終的な投資元本は同じ240万円です。一括投資では、初めから投資元本全額に対して複利効果が働くため、長期的なリターンは大きくなります。一方で、積立投資は毎月の投資額が徐々に運用されていくため、後半になるほど資産の増加ペースが速くなります。
毎月決まったタイミングで一定額を投資する「積立投資」には、価格のブレを抑え、リスクを軽減できるという大きなメリットもあります。しかし、複利効果を最大限に活かしたい場合は、なるべく早く、できるだけ多くの元本を投資することが重要です。
複利効果のデメリット
複利効果は有益な仕組みですが、万能ではありません。いくつかのデメリットやリスクも存在するため、これらを理解したうえで運用することが重要です。
複利効果がマイナスに働くこともある
元本保証のない投資商品は、利回りがプラスになることもあれば、マイナスになることもあります。特に、複利効果は利益を生む力が強い一方で、元本が大きくなるため、損失も拡大しやすいというデメリットがあります。
たとえば、100万円を年利5%の単利で運用している場合を考えてみましょう。1年目の運用利回りがプラスであれば、資産は105万円になります。しかし、2年目の運用利回りが-5%にマイナス転換した場合、損失は元本の100万円に対して計算されるため、95万円に減少します。単利の場合は、損益が元本ベースでのみ計算されるため、損失が膨らむ速度は一定です。
一方で、複利で同様の運用をした場合、1年目の資産は同じく105万円になりますが、2年目の5%の損失は105万円全体に作用します。その結果、2年目の資産は99万7500円となり、単利よりも大きな減少幅を示します。このように、複利ではプラスのときに利益を大きくできる反面、マイナスのときには損失がさらに大きくなる可能性があるのです。
相場によっては複利効果を実感しにくいこともあるかもしれませんが、長期的に投資を続けるほど元本割れのリスクは少なくなるというデータもあります。一時的な損失に左右されず、じっくりと投資を続けることで複利効果の恩恵を受けやすくなるでしょう。
インカムゲインを狙いにくくなる
複利効果を追求する投資スタイルは、得られた収益を再投資することが前提となっているため、インカムゲイン(配当や利息収入)を得る機会が少なくなります。長期的な資産増加が期待できる一方で、定期的な現金収入を得ることが難しくなる点がデメリットです。
年金生活者など、複利の再投資を続けるよりも、得られた利息や配当を生活費として使える方が大きなメリットを得られることもあるでしょう。
長期間資金を引き出しにくくなる
複利効果をフルに活かすためには、長期間資金を運用し続けることが大切です。急な出費や、住宅購入や教育資金といった大きな出費が発生した際に自由にお金を引き出せない点をデメリットに感じる場合もあるでしょう。
しかし、そもそも投資は当面使う予定のないお金で行うべきです。余裕資金で投資に取り組むことを徹底していれば、それほど困ることはないでしょう。
投資で複利効果を活かす方法
複利効果を最大限に活かし、資産形成を効率的に進めるには、以下の方法を実践することが重要です。以下で詳しく見ていきましょう。
長期的な運用を行う
複利効果を最大化するには、長期的な視点で運用することが大切です。複利効果は、運用期間が長いほど高まります。たとえば、年利5%で20年間複利運用すると、元本が約2.6倍になりますが、30年間運用すると約4.3倍に増えます。短期的な価格変動に一喜一憂せず、じっくりと運用を続けることが大切です。
また、投資信託のように、自動的に運用益の再投資ができる商品を選択するのもよいでしょう。投資信託とは、投資のプロが株式や債券など複数の商品で運用し、収益(分配金)を投資家に還元する商品です。投資信託のなかには、分配金が自動的に再投資される商品も多く存在するため、複利効果の恩恵を受けやすくなります。
手数料や税金を減らす
複利効果を活かすために、手数料や税金の負担を抑えることも重要です。運用コストが高いと、その分だけ利益が減るため、複利の効果が薄れてしまいます。
たとえば、投資信託で運用する場合は、信託報酬(投資信託の管理・運用にかかる費用)がなるべく低い商品を選ぶことが重要です。
また、投資で得た利益には、通常20.315%の税金がかかります。しかし、NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を利用すると、運用益は非課税になるため、資産形成を効率よく進められます。
NISAやiDeCoについて、以下の記事で詳しく解説しています。気になる方は、ぜひご一読ください。
まとめ
複利効果は、利益を再投資することで資産を加速度的に増やす仕組みです。複利は運用期間が長くなるほど効果が大きくなるのが特徴で、上手く活用すれば効率的な資産運用を実現できる可能性があります。
相場によっては、複利効果のメリットを得られないこともありますが、長期的に投資を続けることで、安定したリターンを狙える可能性があります。
複利効果を最大限に活かすためには、低コストの投資商品を選ぶもしくは、NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用することがポイントです。複利効果を上手く活用して、効率的な資産運用を行いましょう。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP