外貨建て終身保険は、「万が一の備え」と「資産形成」を同時に実現する手段として注目を集めています。外貨ならではの高い利回りに期待ができるものの、為替リスクが存在する点に注意が必要です。
この記事では、外貨建て終身保険のメリット・デメリットや、向いている人の特徴を初心者向けに詳しく解説します。また、おすすめの保険商品をランキング形式で紹介するため、自身に合った保険を選ぶ際の参考にしてください。
外貨建て終身保険とは?
外貨建て終身保険は、保険料の払い込みや受け取りを外貨で行う生命保険です。被保険者(保障の対象となる人)が死亡した際、遺族には死亡保険金が支払われ、高度障害状態の場合も同様に保険金が支払われます。また、解約した際には、保険料の払い込み期間や金額に応じて、解約返戻金が外貨で支払われます。
保険料や保険金の支払いに使われる外貨の種類は、米ドルや豪ドル、ユーロなど、商品によって違いがあるのが特徴です。保険料の払い込み方法は、一生涯保険料を払い込む「終身払い」や、一定期間保険料を払い込む「有期払い」などがあります。
さらに、契約時に保険料を一括で払い込む保険は「一時払い終身保険」と呼ばれ、多くの保険会社で取り扱っています。
外貨建て終身保険のメリット
外貨建て終身保険のメリットは、以下の通りです。
- 保障が一生涯続く
- 為替差益を狙える
- 円建て保険よりも保険料が割安になる場合もある
それぞれ詳しく解説します。
保障が一生涯続く
外貨建て終身保険の大きな特徴として、「保障が一生涯続く」点が挙げられます。保険料の払い込みさえ続けていれば、途中で保険期間が終了する心配はありません。
外貨建て終身保険であれば、被保険者が何歳で亡くなっても、基本的には契約時に決めた保険金が支払われるため、確実に遺族へ保険金を残せます。なお、将来に必要となる葬儀代の準備を目的に、加入する人が多い傾向にあります。
為替差益を狙える
「為替差益を得られる可能性がある」点も、外貨建て終身保険の特徴の一つです。為替レートとは、異なる国の通貨を交換する際の比率のことで、日々変動しています。外貨建て保険の場合、契約時や保険金受け取り時の為替レートによって、実際に日本円で受け取る金額が変動することがあります。
例えば、1万ドルの死亡保険金が支払われる契約で、受け取り時のレートが1ドル=140円の場合は、140万円を受け取れます。しかし、1ドル=150円に上昇していれば、同じ1万ドルの契約でも150万円を受け取れることになるでしょう。つまり、為替の変動によって同じドル建て保険金でも、日本円に換算した金額が増える可能性があります。
このような為替差益を活用できる点が、外貨建て終身保険の大きなメリットです。
ただし、為替レートが不利な方向に動くことも考えられます。例えば、円高が進んだ場合には、同じ1万ドルでも円に換算した保険金額が減少するリスクがあります。このような為替リスクがあることを十分理解したうえで契約する必要があります。
円建て保険よりも保険料が割安になる場合もある
一般的に外貨建て終身保険は、円建て保険よりも「保険料が割安になる」傾向があります。なぜなら、外貨建て保険は円建て保険よりも「予定利率が高い」傾向にあるためです。
保険会社は、契約者から預かった保険料を積み立てて、保険金や解約返戻金を支払う際の原資としています。ただ積み立てているわけではなく、運用をしてお金を増やしています。このときの運用利回りについて、契約者に約束しているのが「予定利率」です。
予定利率は、基本的に契約時に決まります。予定利率が高いほど、保険会社が高い利回りで積立金を運用することになるため、将来同じ金額を受け取るのに必要な保険料は安くなるという仕組みです。
ただし、外貨建て終身保険の予定利率は、アメリカの金利に応じて変動する可能性があります。そのため、外貨建て保険の利回りが、円建て保険よりも有利になるとは限りません。
外貨建て終身保険のデメリット
外貨建て終身保険にはメリットだけではなく、以下のようなデメリットもあります。
- 元本割れのリスクがある
- 契約・解約時などに手数料がかかる
- 平準払いの場合は支払う保険料が変動する
デメリットをよく理解したうえで加入を検討しましょう。
元本割れのリスクがある
外貨建て終身保険では、保険料の払い込みを完了する前に解約すると、解約返戻金が払込保険料の総額を下回り、「元本割れ」する可能性があります。特に、数ヶ月から数年以内の早期解約では、解約返戻金がほとんど受け取れないケースも少なくありません。
また、保険金の受け取り時に契約時よりも円高が進んでいる場合、為替変動によって受け取れる保険金額が減少するリスクもあります。例えば、1万ドルの保険料を払い込み、1.2万ドルの死亡保険金を受け取れる外貨建て終身保険に加入していた場合、加入時の為替レートが1ドル=140円であれば、死亡保険金は1.2万ドル×140円=168万円となります。
しかし、受け取り時に為替レートが1ドル=110円に下がっていた場合、受け取る保険金は1.2万ドル×110円=132万円となり、払い込んだ保険料より少なくなります。
外貨建て保険は、長期的な運用を前提としており、為替リスクのある商品であることを理解しておきましょう。
契約・解約時などに手数料がかかる
外貨建て終身保険では、契約時や解約時に「手数料が発生する」場合があります。
例えば、契約時には「保険関係費用」という契約にかかる初期費用が必要になることがあります。また、10年未満で解約する場合、解約返戻金から「解約控除」として手数料が差し引かれる商品も少なくありません。さらに、保険料を支払うときに円を外貨に交換したり、保険金を受け取る際に外貨を円に交換したりする場合には、為替手数料が発生します。
手数料が積み重なることで、思ったよりも少ない解約返戻金しか受け取れなかったり、元本割れを引き起こしたりすることもあるでしょう。手数料は商品によって異なり、保険料や解約返戻金に影響を与える可能性があります。そのため、契約時には手数料の詳細をしっかりと確認することが必要です。
平準払いの場合は支払う保険料が変動する
外貨建て終身保険には、保険料を毎月あるいは毎年一定額ずつ支払う「平準払い」を選択できる商品があります。基本的に外貨建て保険の保険料は外貨で支払うため、円と外貨の為替レートに応じて実際に支払う円建ての保険料が変動します。
月払い保険料が100ドルの外貨建て保険に加入した場合、契約時の為替レートが1ドル=120円であれば、毎月の保険料は12,000円(100ドル×120円)です。
しかし、円安が進んで1ドル=140円になった場合、同じ100ドルの保険料でも日本円換算では14,000円(100ドル×140円)に増え、毎月2,000円も余計に支払わなければなりません。
極端に円安が進んだ場合、毎月の保険料負担が大きくなり、家計に影響を及ぼすリスクもあります。一方で、円高が進めば保険料負担が軽減される場合もありますが、為替レートの変動は予測しにくいため、毎月の支出が不安定になる点はデメリットといえるでしょう。
外貨建て終身保険が向いている人
外貨建て終身保険は、特に次のような人におすすめです。
- 相続対策をしたい人
- 余裕資金がある人
- 効率よく資産形成を行いたい人
これから説明するポイントを参考にして、自身に合っているかを判断しましょう。
相続対策をしたい人
外貨建て終身保険は、相続対策をしたい人にピッタリです。生命保険には「500万円×法定相続人の数」という非課税の枠があります。保険金額がこの枠内であれば、受け取った人に対して相続税が課せられることはありません。
また、死亡保険金は「受取人固有の財産」であるため、遺産分割協議(遺産の分け方を決める話し合いのこと)の対象外です。そのため、相続争いのリスクを減らせます。
さらに、通常の遺産を相続するよりも、早く保険金を受け取れる点も魅力です。葬儀代や相続税の支払いなど、すぐにまとまったお金が必要な場合でも、保険金を活用できるため、相続時の資金対策として用いられるケースが多くなっています。
余裕資金がある人
外貨建て終身保険は貯蓄性があるため、資産形成の手段として活用できます。しかし、為替レートの変動によって受け取る解約返戻金の金額が変わる可能性があり、元本割れするケースも少なくありません。資産形成を目的として加入する場合は、家計に大きな影響を与えないように、当面使う予定のない余裕資金で保険料を払い込むことが重要です。
効率よく資産形成を行いたい人
外貨建て終身保険は、円建ての保険よりも予定利率が高い傾向にあるため、効率的に資産を増やしたい人に向いています。米ドルや豪ドルなどの金利が高い通貨で保険料を運用することで、円建て保険よりも高いリターンに期待できます。
外貨建て終身保険のおすすめランキング3選
ここでは、外貨建て終身保険の中でも特におすすめの3つの保険商品をランキング形式で紹介します。
【第1位】メットライフ生命|USドル建終身保険ドルスマート
メットライフ生命の「USドル建終身保険ドルスマート」は、万が一の備えを充実させながら、資産形成に取り組みたい方におすすめです。
特約を付加すれば、死亡時だけでなく、がんや急性心筋梗塞、脳卒中などの三大疾病や、所定の要介護状態になった場合も保険金を受け取れるプランもあります。低解約返戻金特則プランを選べば、保険料を抑えながら充実した保障を確保することが可能です。
さらに、積立利率は「年3.00%以上」が保証されているため、安定した資産運用に期待できます。
【第2位】オリックス生命|米ドル建終身保険US RISE[ユーエス・ライズ]
オリックス生命の「米ドル建終身保険US RISE」は、低解約返戻金タイプの米ドル建て終身保険です。保険料払込期間中の解約返戻金を低く抑えることで、お手頃な保険料を実現しています。
死亡時の保障はもちろん、がんや急性心筋梗塞、脳卒中などの特定疾病、特定の障害状態や要介護状態に該当した場合には、保険料の払い込みが免除される仕組みもあります。
【第3位】ジブラルタ生命|米国ドル建介護保障付終身保険
ジブラルタ生命の「米国ドル建介護保障付終身保険」は、死亡時だけではなく介護状態にも重点的に備えられる終身保険です。低解約返戻金型であるため、保険料を抑えつつ保障を得られるのが特徴です。
「50%プラン」を選ぶと、要介護2以上と診断された場合、死亡保険金の50%に相当する介護保険金を受け取れます。さらに「100%プラン」であれば、死亡保険金と同額の介護保険金を受け取ることが可能です。
「介護保険金割増年金支払特約」を付加して、通常よりも割増された介護年金を受け取れます。
まとめ
外貨建て終身保険は、「万が一の備え」と「資産形成」を同時に実現できる保険商品です。外貨で運用するため、為替差益を狙える、割安な保険料で加入できるといったメリットがあります。一方で、為替リスクによる元本割れの可能性がある点や、各種手数料がかかる点がデメリットです。
一般的な円建て終身保険とは特徴や仕組みが大きく異なる商品も多いため、パンフレットや約款にしっかり目を通し、保障内容への理解を深めてから加入を検討しましょう。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP