現在加入中の生命保険に不安を感じ、新しい保険への乗り換えを検討している人もいるでしょう。
生命保険の乗り換えにはメリットだけではなく、デメリットもあります。慎重な判断をするためにも、事前の情報収集が欠かせません。
本記事では、生命保険の乗り換えをスムーズに進めるために、知っておきたいメリット・デメリットについて解説します。また、乗り換える際のベストなタイミングも紹介しますので、生命保険の乗り換えで後悔したくない人は参考にしてください。
生命保険の乗り換えとは?
生命保険の乗り換えは、現在加入している保険を解約し、新しい保険に加入し直すことを指します。現在の保険が自分のニーズに合わなくなった場合や、よりよい条件の保険商品を見つけた場合に検討する方法です。
乗り換えは、「見直し」「更新」「転換」といった言葉と混同されやすいため、まずはそれぞれの違いを理解しておきましょう。
「乗り換え」と「見直し」の違い
生命保険の「見直し」は、現在の保険内容を再確認し、自分の状況やニーズに応じて調整することを指します。その見直し方法の1つが「乗り換え」です。
一般的に「見直しをする」といった場合には、新しい保険への乗り換えだけではなく、以下のような方法も含まれます。
- 特約を中途付加する・外す
- 保険金を増額・減額する
- 払済保険(※1)に変更する
- 延長保険(※2)に変更する
※1 保険料の払い込みを中止して、その時点での解約返戻金を基に、保障額の少ない保険に変更する方法
※2 保険料の払い込みを中止して、その時点での解約返戻金を基に、死亡・高度障害保障のみの定期保険に変更する方法
「乗り換え」と「更新」の違い
生命保険の「更新」は、現在加入している定期型保険の契約期間が終了した際に、同じ保険内容で契約を延長する手続きのことです。
更新をする場合は、基本的に同一の保障内容・保険金額・保険期間で保障をそのまま継続できます。保障内容を変更しない場合は、告知や診査も不要で、手続きの手間もかかりません。
ただし、更新時の年齢や保険料率を基に保険料が再計算されるため、保険料は更新前よりも高くなるのが一般的です。
一方で、乗り換えの場合は新しい保険に加入するため、告知や診査などの手続きが必要です。その反面、保障内容や保険料を大きく変更できる可能性があります。
「乗り換え」と「転換」の違い
生命保険の「転換」は、現在の保険の積立部分や積立配当金を利用して、新しい保険に加入する方法です。車を下取りに出して新しい車を購入するのと似た方法であり、全く新しく保険に加入するよりも、保険料の負担を軽減できる可能性があります。
ただし、乗り換えと同じように、新しい保険に入ることになるので告知や診査が必要です。また、転換は同じ保険会社でなければ利用できないため、乗り換えに比べると商品選択の自由度は低いといえます。
生命保険を乗り換えるベストタイミングは?
生命保険は基本的に、いつでも新しい保険に乗り換えることが可能です。しかし、以下のタイミングで見直すことで、より大きなメリットを得られる場合があります。
- ライフステージが変化したとき
- 加入中の保険が更新・満期を迎えるとき
- 誕生日が近づいたとき
ライフステージが変化したとき
結婚、出産、転職、住宅購入、子どもの独立など、ライフステージが変化したときは、必要な保障内容が大きく変わるタイミングです。
例えば、結婚や出産で家族が増えれば、遺族補償を手厚くする必要があるでしょう。一方で、子どもが独立して扶養の負担が減れば、保険料を抑えることを考えたほうがよいかもしれません。
ライフステージの変化に合わせて必要な保障を再検討し、必要に応じて保険を乗り換えることで、無駄なく合理的に保障を備えられるでしょう。
加入中の保険が更新・満期を迎えるとき
定期型保険などで更新や満期を迎えるタイミングも、保険を見直すのに適したタイミングです。
一定期間を保障する「定期タイプ」の保険は、契約期間が終了して更新を迎えると、そのときの年齢や保険料率に合わせて保険料が計算されるため、更新前よりも保険料が高くなるケースが一般的です。このタイミングで乗り換えを検討すれば、今よりも保険料の負担を軽減できる可能性があります。
また、満期保険金が受け取れる保険であれば、満期保険金を新しい保険の保険料に充当することもできるでしょう。
誕生日が近づいたとき
生命保険の保険料は年齢に応じて決まるため、誕生日を迎えると年齢が上がり、保険料が高くなることがほとんどです。そのため、誕生日前に乗り換えの手続きを済ませておくと、保険料の負担を軽減できます。
特に注意が必要なのが、契約年齢の計算方法です。近年では多くの保険会社が「満年齢方式」を採用していますが、一部では「保険年齢方式」を用いる場合もあります。満年齢方式とは、実際の年齢をそのまま契約年齢とする方法です。保険年齢方式は契約時の満年齢の端数が6ヶ月以下なら切り捨て、6ヶ月超の場合は切り上げて計算する方法を指します。
どちらの方式でも、手続きが遅れると結果的に1歳上がった年齢で計算されてしまい、保険料が高くなることがあります。誕生日ギリギリで手続きをすると間に合わない場合もあるため、余裕をもって手続きを行うことが大切です。
生命保険を乗り換えるメリット
生命保険を乗り換える主なメリットは、以下の通りです。
- 自分に合った保障内容に変更できる
- 保険料の負担を減らせる可能性がある
それぞれについて詳しくみていきましょう。
自分に合った保障内容に変更できる
今の自分の状況に合った保障内容に切り替えられるのが、生命保険を乗り換えるメリットの1つです。
結婚や子どもの誕生、定年退職など、ライフスタイルが変化すると必要な保障も変わります。また、家計の状況も変化するため、支払える保険料にも違いが出てくるでしょう。
さらに、保険商品そのものも進化しています。医療技術の発展や保険会社間の競争などによって、新しいプランや特約が登場し、これまでよりも少ない負担で手厚い保障を準備できるケースも少なくありません。
生命保険を乗り換えれば、今後起こりうるリスクを適切にカバーできる保険に加入することが可能です。その際は、複数の商品を比較することで、より自分に合った保険に出会える可能性も高まるでしょう。
保険料の負担を減らせる可能性がある
生命保険を乗り換えることで、保険料の負担を減らせる場合もあります。
生命保険の保険料は「純保険料」と「付加保険料」で構成されています。純保険料は保障内容に基づくコストで、年齢や保障内容が同じであれば、基本的にどの保険会社でも大差はありません。一方で、付加保険料は、保険会社の経費に相当する部分で、保険会社によって差が生じます。
インターネット申し込みが可能な保険会社では、店舗運営費や人件費を抑えられるため、付加保険料が少なくなる傾向があります。その結果、同じ保障内容でも保険料の負担を減らせる可能性があります。
生命保険を乗り換えるデメリット
生命保険の乗り換えには、以下のようなデメリットもあります。
- 元本割れするケースがある
- 保険料が割高になることもある
- 同じ保険に再加入できなくなる可能性がある
- 乗り換え手続きや比較・検討に時間がかかる
それぞれについて詳しくみていきましょう。
元本割れするケースがある
貯蓄型の生命保険を保険料払い込み期間中に解約し、新しい保険に乗り換える場合、解約返戻金が払込保険料の総額を下回る(元本割れ)ことがあります。解約返戻金は契約期間に応じて徐々に増えていくため、契約から間もない時期に解約すると、大きく元本割れすることも少なくありません。
乗り換えをする際は、その時点での解約返戻金がいくらになるのか、保険会社に確認してから手続きを進めましょう。
保険料が割高になることもある
生命保険の保険料は、加入時の年齢や健康状態に基づいて計算されます。そのため、高齢になってから乗り換えると、保険料が現在の契約よりも大幅に高くなる場合があります。
乗り換えを検討する際は、保障内容と保険料のバランスを確認し、メリットがあるかを吟味しましょう。
同じ保険に再加入できなくなる可能性がある
「お宝保険」と呼ばれる予定利率の高い貯蓄型保険など、過去に販売されていた商品は、現在では新規契約ができないことがほとんどです。
乗り換えを行ったあとは、当時と同じ条件で契約することはできないので注意しましょう。既存の契約内容をよく確認し、乗り換えだけではなく、保障の追加や削減などの方法で見直しができないかも検討してみてください。
乗り換え手続きや比較・検討に時間がかかる
生命保険の乗り換えには、比較や手続きに一定の時間と労力が必要です。対面での手続きでは営業担当者との打ち合わせが必要になることが多く、ネットで保険を選ぶ場合でも多くの商品を自分自身で比較検討する必要があります。
生命保険を乗り換える際の注意点
生命保険の乗り換えに伴うリスクやトラブルを防ぐためにも、以下の点に注意しましょう。
- 空白期間が生じる可能性がある
- 新しい保険に加入できるとは限らない
- 未経過分の保険料が返還されない可能性もある
- 複数社の商品を比較する
空白期間が生じる可能性がある
新しく契約する保険の保障が開始する前に今の保険を解約すると「保障の空白期間」が生じる可能性があります。この期間中に万が一のことが起きた場合、一切保障は受けられません。
がん保険のように免責期間が設けられている保険の場合は、契約が成立してもすぐに保障が始めるわけではないので、特に注意が必要です。新しい保険の保障が確実にスタートするまでは、現在の保険を解約せず、重複して加入しておくことをおすすめします。
新しい保険に加入できるとは限らない
生命保険を乗り換える際には、保険会社に現在の健康状態や過去の傷病歴を申告する「告知」が必要です。持病がある場合は、新しい保険に加入できないこともあります。
また、加入できたとしても、保険料が割高になったり、一部の疾病が保障の対象外となったりするケースも少なくありません。現在の保険よりも条件が悪化する可能性もあるため、焦って解約せず、慎重に手続きを進めましょう。
未経過分の保険料が返還されない可能性もある
年払いや半年払いなど、保険料を先払いしている場合、解約しても未経過期間の保険料が返還されないケースがあります。2010年3月以前に結んだ契約の場合は、基本的に未経過分の保険料は返還されません。2010年4月以降に結んだ契約の場合、原則として未経過分の保険料は返還されますが、保険商品によっては未経過分の保険料が返還されない場合もあるので、解約前に保険会社に確認しておきましょう。
複数社の商品を比較する
生命保険を乗り換える際には、複数社の商品をしっかり比較することが重要です。ただし、単に保険料の安さだけで判断するのではなく、次のポイントを考慮して比較しましょう。
- 保険の種類
- 保障内容
- 保険期間
- 保険金額
- 解約返戻金の有無
完全に条件を一致させることは難しいかもしれませんが、できるだけ多くの条件を揃えることで、希望に合った商品を選びやすくなるでしょう。
まとめ
生命保険を乗り換えれば、自分に合った保障内容に変更したり、保険料の負担を軽減したりすることが可能です。
一方で、乗り換えには元本割れや保険料が高くなるリスクなどがあります。また、一度解約してしまうと、同じ保険に再加入できないケースもあるため、見直しの際には慎重な判断が必要です。
実際に見直しを行う際には、新しい保険の保障が確実にスタートしてから解約手続きを進めましょう。先に解約すると、保障の空白期間が生じ、万が一のリスクに対応できなくなることがあります。
保険の見直しに迷った場合や、契約や解約のタイミングに不安がある場合は、ファイナンシャルプランナー(FP)や保険代理店の担当者など、信頼できる専門家に相談するようにしてください。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP